今日は先月に引き続き、羽生さんとのチェストレーニングを行ってきました。いつもは2人でのトレーニングですが、今回は初めて青嶋くんも入れ、3人で集まりました。本当はもう1人声をかけていたのですが、その人がキャンセルとなったために珍しい奇数人数での集まりです。
偶数であれば対局形式がスムーズにできますが、奇数だとそうはいきません。持ち寄りのポジションを一緒に考えることをメインにするか、持ち時間のハンディキャップをつけて誰かが2面指すか、それとも交代で抜けるか。そうした形式を事前に考えていましたが、今朝集まった際に羽生さんから「3人とも2面指ししましょうか」という画期的な提案が! ボードの向きを調整しつつ、3人で3局同時進行という初めての形式でのトレーニングとなりました。普段より負担は大きいため、持ち時間もいつもの25分から、40分+1手30秒増加のフィッシャーモードにしています。
Aoshima, M (JPN, 2272) - Habu, Y (FM, JPN, 2399)
Training
1. e4 c5 2. Nf3 g6!?
Hyper Accelerated Dragon という羽生さんのチョイスは驚きです。白で指す機会も多く、
1. e4 以外からでもこの形になることがあるため、勉強のために指してみたという話です。
3. d4 cxd4 4. Nxd4 Bg7 5. c4 Nc6 6. Be3 Nf6 7. Nc3 O-O 8. Be2 d6 9. O-O Bd7 10. Rc1 Nxd4 11. Bxd4 Bc6 12. Qd3
青嶋くんは
f2-f3 ではなく、クイーンでe4 をサポートする形を選びました。この変化のほうが3段目でのクイーン、ルーク振りなどのアイディアがあり、攻撃的で青嶋くんらしいと感じます。
12... a5 13. b3 Nd7 14. Bxg7 Kxg7 15. Rfd1 Qb6 16. Nd5
f2-f3 と指した形では、このナイト飛び込みからのナイトビショップ交換は、白マスビショップの働きが悪い白にとって良くないとされています。ここでの判断は難しいですが、黒のナイトは十分白のビショップに対抗できそうです。
16... Bxd5 17. exd5 Nf6 18. Qc3 Rfc8 19. a3 h5?!
検討で羽生さんが悔やんでいた手で、黒はキングの周辺を自ら弱めてしまっています。黒はどこかのタイミングで、
Kg7-Kg8 とキングを退く手を入れておき、ナイトをピンから外しておくべきだったでしょう。
20. h3 h4? 21. Rd4! Qc5 22. b4 axb4 23. axb4 Qa7 24. Rxh4 Qa2 25. Qe3 Qb2 26. Qh6+ 1-0
羽生さんらしくなく、ダイレクトなキングへのアタックを通してしまいました。これで3局同時並行の均衡が崩れ、私だけが2面指し状態になります(笑) しかもこの頃には、どちらのボードも形勢が悪く、残り時間も少ないという状況でした。
Habu, Y (FM, JPN, 2399) - Kojima, S (IM, JPN, 2401)
Training
1. Nf3 d5 2. g3 Nf6 3. Bg2 c6 4. c4 g6 5. d4 Bg7 6. cxd5 cxd5 7. Ne5 O-O 8. Nc3 Nc6 9. O-O Ng4 10. Nxc6 bxc6 11. h3 Nf6
ここは大人しくナイトを戻しましたが、
11... Nh6!? という手も面白そうです。せっかくナイトをg4 に飛ばしてピース交換を進めたのであれば、ナイトを退くマスは変えて良かったですね。
12. Bf4 Nd7 13. Na4 Ba6 14. Rc1 Qa5
検討では、
14... Bb5!? としてナイトを早めに捌きにいくアイディアも出ました。例えば、
15. Nc5 Nxc5 16. Rxc5 Qb6 と進めば、
e7-e5 のブレイクが黒の楽しみとなり、本譜よりも指しやすいでしょう。
15. b3 Rac8 16. Bd2 Qd8 17. Bb4! Re8 18. Nc5 Nxc5 19. Bxc5+/=
こうしてビショップでc5 を抑えられてしまうと、黒はc6 に弱点を抱えるだけでうまい反撃のポイントを見つけることができません。
19... Qd7 20. Re1 e5 21. dxe5 Bxe5 22. e3 h5 23. Qd2 Bd6 24. Bxd6 Qxd6 25. Qd4 Qe7 26. Rc5 Qb7 27. Rec1 Qb6 28. Bf3 Rcd8 29. Kg2 Bb7 30. g4 hxg4 31. hxg4 Qc7 32. Rxd5
ここは
32. Bxd5 Rxd5 33. Qxd5+- ですぐに大きな駒得です。
32... Rxd5 33. Bxd5 Qd7 34. Bf3 Qxd4 35. exd4 Rd8 36. Bxc6 Bxc6+ 37. Rxc6 Rxd4 38. Ra6
羽生さんはg4 を捨てても2コネクテッドパスポーンを作る分かりやすいプランを選びました。
38. Kf3 a5 39. Rc5 a4 40. Rc4!+- でもポーン交換を許さず、白の勝ちであることを読むには、互いの持ち時間は少なすぎました。
38... Rxg4+ 39. Kf3 Rb4 40. Rxa7+-
白の2コネクテッドパスポーンを止める方法はなく、白の勝ちです。
40... Kg7 41. Ra4 Rb5 42. Rc4 g5 43. b4 Kg6 44. a4 Rd5 45. Rc6+ f6 46. a5 Rd3+ 47. Kg2 Ra3 48. a6 Kf5 49. Rc5+ Kf4 50. Ra5 1-0
この試合は中盤からジリ貧状態が長く続き苦しい展開でした。この試合終了時には青嶋くんとのゲームも佳境を迎えます。
Kojima, S (IM, JPN, 2401) - Aoshima, M (JPN, 2272)
Training
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 a6 5. cxd5 exd5 6. Bg5 Be7 7. e3 O-O 8. Qc2 h6 9. Bf4 c6 10. h3 Be6 11. Bd3 Bd6 12. Bxd6 Qxd6 13. O-O-O Nbd7 14. g4 b5 15. Kb1 Rac8 16. g5 hxg5 17. Nxg5 b4 18. Na4 c5 19. dxc5 Nxc5 20. Nxc5 Rxc5 21. Qe2 Rfc8 22. Rhg1 a5 23. Qf3 Qe5 24. h4 a4 25. Nxe6 fxe6 26. Qg3 Qxg3 27. Rxg3 R8c7 28. Rdg1 b3 29. axb3 axb3 30. Rf3 Nd7 31. Rf4 Ne5 32. Be2 Ra7 33. Rd1 Rc2 34. Bg4 Nxg4 35. Rxg4 Ra2
この試合はエンドゲームから始めます。すでに黒は7段目にルークを2つ入れて勝勢に見えますが、白もなんとか抵抗しようとします。
36. Rdg1 Raxb2+ 37. Ka1 Ra2+ 38. Kb1 Rc7?!
ここはg7 を守るよりも、7段目を抑えつつさらにポーンを取ったほうが良かったでしょう。
38... Rcb2+ 39. Kc1 Rxf2! 40. Rxg7+ Kf8 41. Kb1 Rab2+ 42. Ka1 Rbe2 43. Rb7 Rxe3-+ ならば、白はメイトやパペチュアルチェックのチャンスを作ることができず、苦しい状況が続いていたでしょう。
39. Rg6 Rxf2?
このポーン交換で助かったと感じました。ポーンを交換しすぎると、白はタブルルークエンディングでも、ルークエンディングでもドローを取りやすくなります。黒が勝つためにはポーンを残しつつ、ルークを交換するのが良かったでしょう。
39... Rca7! 40. Rc1 Ra1+ 41. Kb2 Rxc1 42. Kxc1 Kf7!-+ これならば白はh4 が弱く、敗色濃厚のルークエンディングです。
40. Rxe6 Re2 41. Rd6 Rxe3 42. Rxd5 Rh3 43. h5 Kh7 44. Rb5 Rf7 45. Rg2 Rhf3 46. Rbg5 Kh6 47. Rg6+ Kh7 48. Kb2 Ra7 49. Kb1 Rf5 50. Kb2
ルーク交換は受け入れ、1ポーンダウンでもドローに持ち込めるエンドゲームを目指します。
50.... Ra2+ 51. Kxb3 Rxg2 52. Rxg2 Rxh5 53. Kc4 Re5 54. Kd4 Re7 55. Kd3?!
この手でも問題ありませんが、先にルークを退いておけば、f-hファイルの連続チェックがあり、黒の
g7-g5 を防いでもっと簡単だったでしょう。
55. Rg1! Kh6 56. Rh1+! Kg5 57. Rg1+ Kf4 58. Rf1+ Kg3 (ここでキングがルークをアタックしておらず、もう一度チェックできることが、
Rg2-Rg1 と最奥まで退いた効果です。)
59. Rg1+ Kf2 60. Rg6! こうしてgポーンをブロックしてしまえば安全です。
55... Kh6 56. Kd2 g5 57. Rg1 Re5 58. Kd3 Kh5 59. Kd4 Re2 60. Kd3 Re5 61. Kd4 Re8 62. Rh1+!
2ファイル離されてカットオフされているため、一瞬負けを覚悟しましたが、よくよく見ればファイルが足りないため、白キングはチェックをかわしつつ潜り込むことができません。
62... Kg6
62... Kg4 63. Rg1+ Kh4 64. Rh1+ Kf3 (ここでキングが右側の3段目に逃げるファイルがあれば黒勝ちです!)
65. Rf1+ これで黒キングは後退するしかなく、局面を改善できません。
63. Rg1!
g5-g4 を許してしまうと黒勝ちになるので、キングを下げさせたら正面からルークでポーンを攻撃するのが絶対です。ポーンをこれ以上前進させず、黒キングに潜り込まれることもなければドローです。
63... Re7 64. Kd3 Re5 65. Kd4 Kf6 66. Rf1+ Rf5 67. Rg1 Rf4+ 68. Ke3 Kf5 69. Rg2 Rf1
69... g4 70. Rf2 ならば、ルークを交換してドローのポーンエンディングです。
70. Ke2 Rf4 71. Ke3 Kg6 72. Rf2 Ra4 73. Kf3 Kh5 74. Kg2 Kg4 75. Rb2 Kh4 76. Rc2 g4 77. Rb2 Ra3 78. Rc2 Ra4 79. Rb2 g3 80. Rb8 Ra2+ 81. Kg1 Kh3 1/2-1/2
カットオフを外せれば、最後はフィリドールポジションに落ち着きます。白の後ろからのチェックは止まらず、白は勝つことができません。青嶋くんとの最近のゲームは、タフなエンドゲームばかりです...
大変なゲームの後、14時近くなってから沖縄料理へ。旅行の話や、最近話題の藤井聡太四段の活躍の話などを聞くことができました。青嶋くんが入るといつもと少し話題が変わり、フレッシュな雰囲気になったのが良かったですね。午後はもう1ゲームやる時間はとてもなく、残った検討と持ち寄ったポジションの研究を行いました。いつもとは違う形式も面白かったので、またこうしたトレーニングの機会を設けたいですね。2人とも、今日はありがとうございました!