羽生さんとのトレーニングのゲームから、未公開のものを2つ、タクティクスのパズルとして出題しようと思います。1つ目は白がg7 のビショップを取ったところです。普通に考えればキングで取り返す1手ですが、他の手の可能性はあるでしょうか? 2つ目は1ポーンダウンの黒が、ナイトをd3 に押し進めたところです。白のベストムーブはなんでしょうか。答えはいつも通り、コメント欄にお気軽にどうぞ。
2017/06/29
Weekly Chess Puzzle Vol.37
羽生さんとのトレーニングのゲームから、未公開のものを2つ、タクティクスのパズルとして出題しようと思います。1つ目は白がg7 のビショップを取ったところです。普通に考えればキングで取り返す1手ですが、他の手の可能性はあるでしょうか? 2つ目は1ポーンダウンの黒が、ナイトをd3 に押し進めたところです。白のベストムーブはなんでしょうか。答えはいつも通り、コメント欄にお気軽にどうぞ。
ラベル:
Weekly Chess Puzzle
2017/06/28
Saturday Lecture on 8th July 2017
Krasenkow, M (GM, POL, 2668) - Nakamura, H (GM, USA, 2648)
Casino de Barcelona 2007 (2)
Position After 21. Bxf6
【日時】 2017年7月8日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Amazing Sacrifice
【テーマ詳細】
チェスの試合では、時には驚くようなサクリファイスが登場することがあります。駒得はアドバンテージの1つではありますが、駒を捨ててでも相手のキングを攻めたり、長期的な代償を得ることができれば、自ら駒損になるような手を指すこともありえるのです。7月のレクチャーでは、そんなサクリファイスにスポットを当て、いくつかのゲームをご紹介しようと思います。
【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満
ラベル:
Saturday Lecture
2017/06/27
The Youngest Candidate Master from Japan
先日、モンゴルのウランバートルで行われていた、2nd Eastern Asian Youth Chess Championship が全日程を終えました。日本からは6セクションに8人のプレーヤーが参加していましたが、その中でU14 セクションに参加していた逢坂拓真くんが、5勝4ドローの7/9 という好成績で準優勝となり、一発でCandidate Master のタイトル獲得となりました! 逢坂くんは日本のジュニアでトップクラスの実力を持つプレーヤーの1人で、これまでもギリシャやスロバキアのユース大会に参加してきましたが、表彰台に上ったのは今回が初めてです。拓真、おめでとう!
Osaka, T (JPN, 1867) - Hitgelt, K (MGL, 2136)
2nd Eastern Asian Youth Chess Championship U14 (3)
1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 c5 4. d5 exd5 5. cxd5 d6 6. e4 g6 7. Bd3 Bg7 8. h3 Nbd7 9. Nf3 a6 10. a4 Nh5!?
2nd Eastern Asian Youth Chess Championship U14 (3)
2日前に書いたAntonさんのゲームの記事では、このナイト跳びを遅らせたために白にBc1-Bf4 を許し、d6 のポーンが負担になりました。早めにh5 にナイトを跳ばすのは近年の流行で、黒はf4 とe5 のマスをカバーしておき、ピースの交換を狙います。
11. O-O Ne5 12. Nxe5!?
Antonさんが指したように、12. Be2 Nxf3+ 13. Bxf3 Nf6 (13... Qh4!?) といった流れが自然に見えますが、いずれにせよ黒はナイトを1組交換することができます。
12... Bxe5 13. f4 Bd4+ 14. Kh2 O-O 15. Qf3 Bd7 16. Be3 Bxe3 17. Qxe3+/=
基本的にこのように2ピースを交換するのは黒の満足な展開ですが、f4 に出られずに困った黒マスビショップを白が捌き、センターの厚みをもってe4-e5、f4-f5 のどちらの狙いも作れるのであれば、白にとって良さそうなポジションに思えます。するとどこが黒のミスなのかという話になりますが、おそらく14... Qh4!? と指し、白が弱めたg3 のマスを狙えば本譜よりも良かったでしょう。
17... Re8 18. Rae1 Qb6 19. Qf2 Ng7 20. f5! Red8 21. f6
f6 にポーンを刺されるのも嫌ですが、ここfファイルを単純に開いても、白のアタックは強力です。21. fxg6 fxg6 22. Qf7+ Kh8 23. Re2+- これでfファイルにルークを回した場合、黒はルークもナイトもビショップも、簡単にポジションを改善することができず、苦しい状況です。
21... Ne8 22. Qd2 Qb4 23. Rf4!
b4 のマスへの侵入はよく見られるアイディアですが、fポーンをすでに進めている白は、4段目でルークを振り、黒クイーンに対抗するアイディアが使えます。
23... c4? 24. Bxc4! b5
黒はこの手を見落としていたのでしょう。黒はクイーンでビショップを取ることができません。24... Qxc4 25. e5! Qc7 26. e6! Bc8 27. exf7+ Qxf7 28. Re7 Qf8 29. f7++- と進めば、白の勝ちです。
25. Ba2 Qc5 26. b4!
1ポーンアップになった白は、着実に試合を進めます。ここでクイーンサイドを固めてしまえば、黒のカウンタープレーのポイントはcファイルのみに絞られます。一方で白はキングサイドで十分にアタックのチャンスを残しています。
26... Qc7 27. a5 Rdc8 28. Re3 Qd8 29. Qf2 Rc7 30. g4 Rac8 31. Ne2 Rc2 32. Bb3 Rb2 33. g5 Rc1 34. Rff3
攻め合いにして押し切ろうとするのは理解できますが、安全にプレーすることを心がけるのであれば、2ルークとクイーンの交換をして、黒のカウンタープレーを完全に消してしまっても良かったでしょう。34. Nxc1 Rxf2+ 35. Rxf2+-
34... Bc8 35. Rc3 Rcb1?
ここは黒のラストチャンスでした。35... Rxc3! 36. Rxc3 h6! 37. h4 Bg4! ならば、黒はビショップが突然使えるようになり、侵入した2ルークと合わさって反撃を作れています。
36. Bc2! Ra1 37. Nd4!?
本譜のナイトが侵入するプランも、もちろん強力です。もう1つの面白いフィニッシュは、37. Qb6! Qxb6 38. Rxc8!!+- で、バックランクメイトの受けがなく白勝ちという変化です。
37... Qd7 38. Nc6 Kh8 39. Ne7 Bb7 40. Qh4! h5 41. gxh6 Kh7 42. Nxg6! fxg6 43. f7 1-0
リスト2のプレーヤーを下した逢坂くんは、この後も崩れることなく最後まで乗り切りました。リスト1のプレーヤーには途中でトップの座を明け渡してしまったものの、3位以下にきっちりとポイント差をつけての2位は、立派な結果だったと思います。この戦績で逢坂くんは、現在日本で登録されている6人に追加で、7人目の、そして最年少のCandidate Master となります。
他の7名のプレーヤー、そして付き添った保護者の皆さんも、モンゴルへの遠征お疲れ様でした。近年はこうして、ジュニアたちが団体で海外大会に遠征に行くことが多くなり、私のジュニア時代との違いにただ驚くばかりです。今後も近い世代同士、皆さんで競い合い、互いに腕を磨いてほしいと思います。また7月、ジュニア選手権や小学生選手権で顔を合わせると思いますので、そちらの大会でも悔いのない試合ができるよう応援しています!
ラベル:
Benoni Defence,
海外大会
2017/06/26
国内レイティング S113
全日本選手権やゴールデンオープン、快速選手権の結果を反映した、新しい国内レイティングが公開されました。今期は試合をし、レイティング変動のあったプレーヤーも多かったと思います。変動のあった上位は以下の通りです。
Tuさんは快速選手権での7/8 での優勝を受け、ベストレイティングを更新しました。これまで短期間来日し、一大会に出場して高い仮レイティングをつけるGM はいましたが、そういった特殊な例を除けば、国内の公式戦で2500に乗ったのは、私の知る限りTuさんが初めてです。Tuさん、おめでとうございます!
実は私も乗るかなと思っていましたが、全日本の戦績だけでは届きませんでした。また次のサマーオープンで星を重ねて大台を目指そうと思います。今年の公式戦もまだ半分が終わった程度ですので、前半の戦績が振るわなかった人は後半戦での巻き返しを図りましょう。これから本格的な夏を迎え、公式戦の多いシーズンになりますからね!
今回のレイティング変動も松戸チェスクラブのHP で確認ができます。まだご自身のレイティングを知らないプレーヤーはぜひこちらをチェックしてみてください。
Tran Thanh Tu 2503 +12
小島慎也 2493 +7
南條遼介 2447 +3
青嶋未来 2397 -1
馬場雅裕 2363 -15
Alexander Averbukh 2338 +8
小島慎也 2493 +7
南條遼介 2447 +3
青嶋未来 2397 -1
馬場雅裕 2363 -15
Alexander Averbukh 2338 +8
Tuさんは快速選手権での7/8 での優勝を受け、ベストレイティングを更新しました。これまで短期間来日し、一大会に出場して高い仮レイティングをつけるGM はいましたが、そういった特殊な例を除けば、国内の公式戦で2500に乗ったのは、私の知る限りTuさんが初めてです。Tuさん、おめでとうございます!
実は私も乗るかなと思っていましたが、全日本の戦績だけでは届きませんでした。また次のサマーオープンで星を重ねて大台を目指そうと思います。今年の公式戦もまだ半分が終わった程度ですので、前半の戦績が振るわなかった人は後半戦での巻き返しを図りましょう。これから本格的な夏を迎え、公式戦の多いシーズンになりますからね!
今回のレイティング変動も松戸チェスクラブのHP で確認ができます。まだご自身のレイティングを知らないプレーヤーはぜひこちらをチェックしてみてください。
2017/06/25
25th IVL Tournament Report
6/24 に25回目となるIV League が開催されました。今回はリストが上位から、南條くん、羽生さん、青嶋くん、馬場さん、Antonさん、私と豪華なメンバーが揃い、白熱した戦いが繰り広げられました。前回のIVLで初優勝を飾ったAntonさんは、今回も好調でスタートから星を重ねます。彼からはベストゲームだという3R の棋譜を貰っているため、今夜はそれをご紹介しようと思います。
Kockum, A F (FM, SWE, 2365) - Sano, T (JPN, 2148)
25th IVL (3)
1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 c5 4. d5 exd5 5. cxd5 d6 6. Nc3 g6 7. h3 Bg7 8. e4 a6 9. a4 O-O 10. Bd3 Nbd7
25th IVL (3)
Antonさんはここ2回のIVL で、篠田くん、東野さん、佐野さんと3連続で、Benoni をこのModern Variation で受けています。この先の本譜の流れが嫌であれば、黒には10... Nh5!? と早めに跳び、f4 のマスを受けておくアイディアもあったでしょう。11. g4!? Nhf6 と戻っても、白はキングサイドキャスリングがしづらく、h7-h5 から崩すチャンスもあるので、黒は大丈夫だと思います。
11. Bf4 Qe7 12. O-O Nh5 13. Bh2 Ne5 14. Be2 Nxf3+ 15. Bxf3 Nf6 16. e5!?
Benoni ではときどき見られるポーンサクリファイスです。白はポーンを捨てる代わりにdファイルのパスポーンと、ナイトが跳ぶのに絶好の、d5,e4 といったマスを得ます。
16... dxe5 17. d6 Qe6 18. Re1 Ne8 19. Ne4
このナイトはd6 を守りつつ、c5 のポーン取りかえしとg5 跳びを見せる、黒にとって嫌な存在です。
19... Rb8 20. Qd2 b6 21. Rad1 Bd7 22. Ng5!
白はテンポ良くdファイルにヘビーピースを重ね、d6 のポーンを守ってからナイトをアタックに使いにいきます。このナイトはクイーンをe6 のマスを追い出しつつ、f7 を狙う働きをしています。
22... Qb3 23. Bxe5! Qxa4 24. Bxg7 Kxg7 25. Qc3+ Kg8 26. Re7!
依然として黒は1ポーンアップですが、7段目にルークが侵入され、f7 がいよいよ危なくなってきます。白はd1 のルークのお守りさえなえれば、次にBf3-Bd5 とビショップを進めて勝負を決められそうです。ここからのAntonさんのアタックの作り方に、ぜひ注目してみてください。
26... Rd8 27. Qe5! Bc6 28. Nxf7!
ここでナイトをサクリファイスし、白は決定的な攻撃を作り出します。f3 のビショップが消えるとd1 のルーの守りもなくなるため、黒のカウンターは多少ありそうにも見えますが...
28... Rxf7 29. Rxf7 Kxf7
もう1つの先にビショップを取る変化に対しては、29... Bxf3 30. Rd3!! このルーク避けで白の勝ちです! ルークをビショップとクイーンから避けつつ、3段目で振ることで、黒のキングを一気に追い詰めます。
30. Qe7+ Kg8 31. Qxd8 Bxf3 32. d7!!
f3 のビショップを取らせただけでなく、d1 のルークも無視します! 黒はカウンターを続けることも、クイーンを残したままプロモーションを止めることもできません。
32... Qxd1+ 33. Kh2 Qd6+ 34. g3 Bc6 35. dxe8=Q+ 1-0
こうして綺麗なフィニッシュで佐野さんを下したAntonさんが単独3連勝。次のラウンドで馬場さんにこそ敗れましたが、最後は南條くんに勝って、連続でのIVL 優勝を決めました。
一方で馬場さんも、南條くん、青嶋くんにドローのみで他の3試合を勝ち。Antonさんと並んで4P となり、同時優勝となっています。Antonさん、馬場さん、おめでとうございます! 今回は会場の都合でタイブレークまではできず、2人同時優勝という扱いですが、タイブレークのブリッツも毎回盛り上がりますので、時間が許せば次回はタイブレークをやりたいですね。
1st-2nd Place Kockum, A F (FM, SWE, 2365) 4/5
Baba, M (CM, JPN, 2378)
3rd-5th Place Nanjo, R (IM, JPN, 2444) 3/5
Kojima & Sano (JPN, 2317)
Higashino, T (JPN, 2128)
Baba, M (CM, JPN, 2378)
3rd-5th Place Nanjo, R (IM, JPN, 2444) 3/5
Kojima & Sano (JPN, 2317)
Higashino, T (JPN, 2128)
私個人としては、午前の2R のみ参加でどちらも勝ち。青嶋くんに勝てたゲームは内容は良かったと思っていましたが、やや形勢判断の甘いところや、詰めが緩かったのを反省します。最近は5R フルでの参加がなかなかできないので、次回は自分も1日時間が取れるスケジュールでIVL を企画したいと思います。IVL 参加者の皆さん、今回もお疲れ様でした。また次回もよろしくお願い致します。
ラベル:
Benoni Defence,
IVL
2017/06/20
The Highest Level Training in Japan on 19th June 2017
昨日の月曜日は羽生さんとのトレーニングでした。4月には青嶋くんを交えて3人の形式も試していますが、今回はそれ以前の2人形式に戻っています。この日は先に私が白を持ち、久々の1. e4 を試してみることにします。
Kojima, S (IM, JPN, 2401) - Habu, Y (FM, JPN, 2399)
Training (1)
1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 Nf6 4. e5 Nfd7 5. f4 c5 6. Nf3 Nc6 7. Be3 a6 8. Qd2 b5 9. a3 g5!?
Training (1)
French Defence は予想の範囲内でしたが、ここでg7-g5 と突く珍しい変化は予想外です。黒はキングサイドを崩しても、白のセンターポーンを壊してアンバランスなポジションを目指します。
10. fxg5
私にとっては自然なリアクションです。1ポーンを取っても、黒マスビショップを失う10. Nxg5!? cxd4 11. Bxd4 Nxd4 12. Qxd4 Bc5 という流れは、好みではありません。
10... cxd4 11. Nxd4 Ncxe5 12. Be2 Be7!?
この手は見たことのないもので、試合中不思議に感じました。e5 のポーンを崩したのであれば、12... Bg7 と組んでh8-a1 のダイアゴナルを抑え、キャスリングした際のディフェンスとしてビショップを使うほうが自然なのではないかと思います。
13. O-O O-O 14. Rae1 Bb7 15. Bh5!
Kg1-Kh1 を入れておくかどうか迷いましたが、遅かれ早かれこの1手は指すつもりでした。fファイルが開いた以上、f7 を狙うのは自然な流れです。気になるのは当然c4 のマスの守りですが、ここはある程度読んで大丈夫だと判断しました。
15... Nc4?!
本譜の流れを見る限りこの手は機能せず、検討では15... Rc8 などとゆっくり準備をするのが良いのではないかという意見が出ました。ナイトが5段目の弱いマスに侵入する手は良さそうに見えますが、白のアタックをやや軽視しています。
16. Qf2 Nde5 17. Bf4! Ng6 18. Bxg6! hxg6 19. Nxe6!
羽生さんが見落としていたのはこの手で、白はピースを捨てても十分な代償を得られます。もう1つの候補はQf2-Qh4 ですが、これにはBe7-Bc5 の返し技があり、キングをh1 に寄せておかなかったことを白は後悔しそうです。
19... fxe6 20. Rxe6 Qd7
ここは様々な手があり、黒は選択に頭を悩ませます。20... Rf5 21. Rxg6+ Kf7 22. Rh6! Bxg5 23. Bxg5 Rxf2 24. Rxf2+ Kg7 25. Bxd8 Kxh6 26. Bb6+-, 20... Qe8 21. Rfe1! Rf7 22. Rxg6+ Rg7 23. Rxg7+ Kxg7 24. Qd4+ Kg6 25. Re6+ Kf7 26. Nxd5 Kxe6 27. Nc7++-, 20... d4 21. Qe2! Bf6 22. Rxf6 Rxf6 23. gxf6 dxc3 24. Qe6+ Kh8 25. Qh3+ Kg8 26. f7++- どの変化も難しいですが、白は駒取りかえすか決定的なアタックを仕掛けて勝ちとなります。
21. Rxg6+ Kf7 22. Rh6 Ke8 23. Re1 Kd8 24. Rh7?
あと一歩で白の勝勢がはっきりするという状況で、ひどいミスをしてしまいました。残り時間は3分半、最も自然に見える手を選んだつもりでしたが、黒の反撃を見通しています。代わりに24. Rhe6! Bd6 25. Rxd6! Nxd6 26. Qb6+ Qc7 27. Qxd6+ Qxd6 28. Bxd6 Re8 29. Rd1+- と進め、3ポーンエクスチェンジのマテリアルにすれば、黒には白のパスポーンを止めるすべがなく、白の分かりやすい勝ちでした。
24... Rxf4!
このディフェンスの1手を見ていなかったのは、深く反省すべきです。これでも白は駒を取りかえせますが、上記の変化に比べて形勢判断はとても難しいポジションになります。
25. Rh8+ Kc7!
25... Rf8 26. Rxf8+ Bxf8 27. Qxf8+ Kc7 28. Qc5+ Kd8 29. g6 Qd6 30. Qxd6+ Nxd6 31. h4+/- ならば、白はまだピースを捨てた状態ですが、黒は白の2コネクテッドパスポーンを止めるのが難しそうです。
26. Qxf4+ Bd6 27. Qd4 Rxh8 28. Qxh8 d4?!
2ビショップをキープしたまま、黒はキングを逃がした窮地を脱しました。ところが、これでもまだ白のgポーンをストップしながらカウンタープレーを作らなければいけないという課題が残ります。d5-d4 から白マスビショップのラインを開くのは良さそうなアイディアに見えますが、白ナイトにe4 の好位置を与えてしまうことになります。まずは28... Qg4! と指してg5 を狙いつつ、d5-d4 のチャンスを伺えば形勢不明でした。
29. Ne4 Ne3?
ディフェンスしなければいけないこちらはひやひやですが、黒マスビショップを消させてくれるのはありがたいと感じました。29... Bxe4 30. Rxe4 Qf5 31. Qg7+ Kc6 32. Re1 ならば、まだどちらも指せる状況です。
30. Nxd6 Qxd6 31. Qh7+ Kb8 32. g6
こうしてパスポーンが6段目に到達できれば、いよいよプロモーションが現実味を帯び、勝ちが近づいてきます。しかしまだまだミスがお互いに出ます。
32... Qd5 33. Re2?
33. Qh3! Qg5 34. Qg3+! ならば、黒の反撃はこれ以上なく、完全に白の勝勢でした。
33... Qe4?
読み切るのは少し難しいですが、ここはパペチュアルチェックのチャンスでした。33... d3! 34. cxd3 Qxd3 35. Qh8+ Ka7 36. Kf2 Nd1+ 37. Ke1 Ne3 38. g7 Nxg2+ 39. Rxg2 Bxg2 40. g8=Q Qe3+ 41. Kd1 Bf3+ 42. Kc2 Be4+ 43. Kd1 Bf3+= と進み、白はクイーンを作ったにもかかわらず、キングがチェックから逃げきれずにドローとなります。
34. Qh8+ Ka7 35. g7 Qf4 36. Qf8 1-0
難解なポジションが続き、お互いに反撃やディフェンスにミスが出ましたが、それでも通して振り返ると面白いゲームだったと思います。それにしても最後までハラハラしました(笑)
お昼は近くで和風パスタを頂きました。食事の席での話題はいつも通り多岐にわたりましたが、囲碁界とAI の話は個人的に興味深かったです。そしていつも通り、チェスや囲碁など、他の業界の最新情報にも詳しい羽生さんに驚きです。
午後のゲームは簡単にエンドゲームだけを振り返ろうと思います。イコールで全てのポーンが同じファイルにいるため、順当にいけばドローになりそうですが、白キングのみセンターに出てこられないため、どちらかと言えば黒が指しやすく、続けるべきだと考えました。
30. f4?
この手ははっきり悪く、黒に狙われる弱点を作ってしまいます。検討ではh4-h5 を白から突くべきだという意見も出ましたが、コンピュータはもっと明快なドローの筋を示します。30. Bc5+! Bxc5 31. dxc5 b4 32. Ba4 Ke7 33. Kg2= 私たちは2人とも、黒マスビショップを交換してイコールであることに、試合後も気づいていませんでした。c5 のポーンは落ちると思い込んでいましたが、Bd1-Ba4 からa4-e8 のラインを抑えてしまえば、黒キングはポーンに近づけないのですね。勉強になります。
30... Be1! 31. Bc5+ Ke8 32. Kg2 h5!
このタイミングであれば、g3、h4 をターゲットとして固定しておく効果が分かりやすく、白は自分からh4-h5 を突かなかったことを後悔します。これで白キングはg3 の守りに縛られることになり、黒キングのみがポジションを自由に改善するチャンスとなります。
33. Bc2 Kd7 34. e4
このポーン突きはどこかでブレイクしないとジリ貧である白にとって当然かもしれませんが、私は白マスビショップの交換から有利なエンドゲームを迎えられると感じました。白ポーンを黒マスにすべて固定し、黒マスビショップだけを残せば黒に勝ちのチャンスがある、その判断自体は間違いではないのですが...
34... dxe4 35. Bxe4 Bd5?
ここはビショップ交換を焦りすぎました。本譜の流れを見ると、黒はg3、d4 だけがターゲットでは不十分で、白のbポーンも黒マスに固定しておく必要があることが分かります。そのため、黒はbポーンをb3 まで刺してから白マスビショップを交換するのが正解でした。35... b4 36. Kh2 b3 37. Bf3 Bd2 38. Ba3 Kc7 39. Kh3 (39. Kg2 Bd5 40. Bxd5 exd5 41. Kf3 Kc6 42. Ke2 Bc1 43. Kd3 Kd7 44. Ke2 Ke6 45. Kf2 Kf5 46. Kf3 f6-+) 39... Kb6 40. Bd1 Kc6 41. Bf3+ Kb5 42. Kh2 Be3 43. Bc5 Bd3-+ これでc4 のマスにキングを侵入させれば、d4 のポーンが落ちて黒の勝ちでした。
36. Bxd5 exd5 37. Kf3 Ke6 38. b3 Kf5 39. Bd6 Bc3
ここまで進めてみましたが、黒には決定打がありません。b2-b3 を許してしまったことで、c4 のマスを使えないことが上記の変化との違いです。
40. Bc5 Ke6 41. Ba7 Kd7 42. Bc5 Be1 43. Bf8 Bd2 44. Bc5 Kc6 45. Be7 f5 1/2-1/2
こうなってしまってはドローは仕方がありません。またビショップのエンドゲームは試合でも、本でも勉強しなおしてこようと思います。また次のトレーニングの機会も楽しみにしています。羽生さん、いつもありがとうございます!
ラベル:
Endgame,
French Defence,
Training
2017/06/11
Saturday Lecture on 24th June 2017
【日時】 2017年6月24日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Combination of Positional Play and Tactical Play
【テーマ詳細】
チェスは99% がタクティクスだという名言がありますが、私はそれは少し違うと思っています。勝負の決定打はタクティクスであることも多いですが、そのタクティクスが成功するポジションに到達するためには、丁寧なポジショナルプレーが隠されているものです。目の行ってしまいがちな派手なタクティクスだけでなく、それを導くポジショナルプレーにスポットを当て、ゲームをご紹介させていただきます。
【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満
ラベル:
Saturday Lecture
2017/06/02
CHESS STRATEGY FOR CLUB PLAYERS
先日の名古屋の大会で、優勝の副賞としていただいた2冊の本のうちの1冊がこちらです。オランダのIM Herman Grooten 著のCHESS STRATEGY FOR CLUB PLAYERS The Road to Positional Advantage は、2009年に1st Edition、今年の頭に3rd Edition が出版されています。Material Advantage、Passed Pawn、The open file などのテーマに各章で分かれ、丁寧に解説が書かれている良書です。自分の勉強とレッスンとどちらにも使いやすく、早くも重宝しています。
この本を読んでいて嬉しかったのは、さほど有名ではなくとも、非常に勉強になると個人的に注目していたゲームが取り上げられていることです。古典の名局としてよく取り上げられる棋譜ならばともかく、よくこれを見つけてきたな、といった感じです(笑)
Fischer, Robert James - Gadia, Olicio
Mar del Plata 1960 (3)
1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Bc4 e6 7. Bb3 b5 8. O-O Bb7 9. f4 Nc6 10. Nxc6 Bxc6 11. f5 e5 12. Qd3 Be7 13. Bg5 Qb6+ 14. Kh1 O-O 15. Bxf6 Bxf6 16. Bd5 Rac8 17. Bxc6 Rxc6 18. Rad1 Rfc8 19. Nd5 Qd8 20. c3 Be7
21. Ra1! f6 22. a4 Rb8?? 23. Nxe7+ Qxe7 24. Qd5+ 1-0
Mar del Plata 1960 (3)
まだ半分ほどざっと目を通しただけですので、私の知らない面白いゲームもこれから出てくると思います。それを楽しみにして、今後も読み進めてみようと思います。素晴らしい本を賞品として用意してくださった名古屋チェスクラブの堀江さんには、とても感謝しています!