正念場の7R は、インド注目のユースプレーヤーNihal Sarin との対戦です。現在、最年少GM 記録更新が期待されるPraggnanandhaa と並び、Nihal もあと少しでGM のタイトルに手が届きそうなところまできています。
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Nihal, S (IM, IND, 2483)
Isle of Man International 2017 (7)
1. Nf3 Nf6 2. c4 g6
Isle of Man International 2017 (7)
Nihal は今年になって対1. d4 のメインレパートリーをQGD Vienna にしていましたが、勝ちを狙うこのラウンドは去年まで頻繁に指していたKID にしてきました。
3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nc6 7. Nc3 a6 8. d5 Na5 9. b3!?
6... Nc6 のPanno Variation に何を指すか、長年悩んできましたが、今年のJapan League からはこの変化を試しています。黒がクラシカルなプランでc7-c5 と突くようであれば、これをとってEnglish のポーンストラクチャーにしてしまいます。
9... c5 10. dxc6 Nxc6 11. Bb2 Ne4 12. Qc1 Nxc3 13. Bxc3 Bxc3 14. Qxc3
ひとまずここまでの流れは白満足です。Nc3-Nd5 と飛び込むアイディアは消えましたが、c4-c5 とQc3-Qd2(or Oe3)-Qh6、Nf3-Ng5 の組み合わせはどちらも効果的なアイディアで、黒は気を付けなければいけません。
14... Bd7 15. Rfd1 Rc8 16. Rac1 Qc7 17. Qd2!?
指してから思ったのは、17. c5! dxc5 18. Qxc5 Rfd8 19. Nd4+/= と指していれば、白は手堅く有利なエンドゲーム持ち込めるということです。私はc4-c5 のアイディアとして、d7 のビショップを狙うことをメインに考えていましたが、普通に取りかえしてcファイルの圧力を活かしてもOKでした。本譜ではもう少し駒を残し、Qd2-Qh6 を見せることにします。
17... Bg4
ここはc4-c5 に備え、ビショップをどこに逃がしてくるだろうかと思いましたが、Nihal の判断はf3 のナイトを交換するというものでした。これならば白はビショップナイト交換を受け入れ、やや優勢で試合を進められそうです。
18. h3 Bxf3 19. Bxf3 Rfd8 20. h4 Ne5 21. Bg2 h5 22. Qf4 Qb6 23. Qe4 Rd7 24. Bh3 e6
細かく揺さぶりを入れながら、黒にe7-e6 を突かせ、d6 のポーンを弱くしました。Bh3-Bxe6 のサクリファイスも考慮しつつ、さらなる進め方を考えます。
25. Rc2 Qb4 26. Kg2 Qc5 27. Rcd2 b5 28. f4
キングの守りを弱めるために不安もありますが、c4 を崩されないようにするためには仕方がありません。ここでビショップとナイトを交換し、ポジションを単純化します。
28... Ng4 29. Bxg4 hxg4 30. Rd4 Rcd8 31. Qd3 bxc4?!
Nihal は先に時間切迫になっており、残り時間は10分を切っていました。私としてはクイーンサイドは白から取るよりも、黒から取らせたほうが良いとの判断でルークを4段目に上げたため、こうして早々に交換してくれるのはありがたかったです。31... d5 32. Qd2= ならば、お互いにテンションを保って難しい形勢でしょう。
32. Rxc4 Qb6 33. Rdc1 a5 34. Rc6 Qb7 35. Kh2 a4 36. h5!?
a5-a4 を許し、少ししまったと思いました。このポーンを取るか、それともキングサイドで思い切って仕掛けるかを残り3分まで悩み、後者を実行することにします。36. bxa4 Qa7 37. Kg2 Qxa4 38. h5 Qa8= でも形勢は互角のようです。
36... gxh5 37. f5 axb3 38. axb3 Re8??
ここはいくつかの変化があったようですが、38... Qa7 39. fxe6 Qf2+ 40. Kh1 fxe6 41. Qg6+ Kh8= (41... Kf8?? 42. R6c4! e5 43. Qg5+-) とするのが黒にとって安全策で、ドローに落ち着いたでしょう。時間切迫でNihal が指した手を見て、私も狙いだったf5-f6 押し込みからのメインティングアタックを決行します。
39. f6! Qa7 40. Rf1?
時間の増える40手目、私はメイトになる決定打を見落としました。40. R6c5!! dxc5 41. Qe3!+- ならばメイト受け無しで白の勝ちです。ショックだったのは、試合後にその場ですぐにNihal がこの手を指摘したことです。彼としては時間切迫の中、38手目がブランダーで、白の必勝局面であることに気付いていたのでしょう。私は彼よりも多少時間を残しつつも、勝ちの手を見つけられなかったことに落ち込みました。
40... Qa5
私も当然この手を考えての40. Rf1 でしたが、続く変化の中でQa5-Qg5 があることを見通していました。
41. Qe3
私はメイトもパぺチュアルチェックもなくなったことを悟り、落ち着いてベストの手を探そうとしましたが、黒キングを8段目に置いたままd6 を取るのが良いのか、6段目まで上げさせてから取るのが良いのか、判断ができませんでした。41. Rxd6 Rxd6 42. Qxd6 Rd8=/+ 実際にはこれでも黒がやや優勢ですが、本譜よりは良かったでしょう。
41... Kh7 42. Qd3+ Kh6! 43. Rxd6
43. Qe3+ Qg5! が40手目の時点で見落としていた1手で、こうなれば明らかに黒が優勢です。私はポーンを取るほかないと思いましたが、この変化もダメでした。ポーンがバラバラなうえ、キングの守りが薄すぎます。
43... Rxd6 44. Qxd6 Rd8 45. Qe7 Kg6 46. Qb7 Qe5 47. Qg2 Rd2 48. Rf2 h4 49. b4 Rb2 50. b5 Rb3 0-1
今回負けた3試合のうち、最も分かりやすい決定機を逃してしまいました。悔しいですがこれも勉強だと思い、残りの2試合、思い切り指してこようと思います。
この日、私は敗れましたが、マイナーセクションでプレーしている妻のなつみが3勝目。ここまで3勝1敗1ドローで2位タイにつけています。5連勝でトップを走るGaspar Ioan-Dan は、実力が頭1つ飛びにけているように見えるので、彼の優勝はほぼ間違いないでしょう。一方で今日の試合で勝利をつかめれば、妻も入賞が見えてきます。
私は今日のラウンドでは、ドイツのWIM Osmanodja Filiz と対戦します。彼女は100近くレイティングを落としていますが、ベストは2370 と私とほぼ変わりません。これ以上ポイントを落としたくはないので、黒番ですがチャンスを作りにいきたいと思います。
2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666) 0-1
2017/09/26 R4 Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
2017/09/27 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Oyama, A (ENG, 2198) 1/2-1/2
2017/09/28 R6 Heimisson, H (ISL, 2185) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
2017/09/29 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Nihal, S (IM, IND, 2483) 0-1
2017/09/30 R8 Osmanodja, F (WIM, GER, 2245) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)
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