2017/10/29

Nagoya Open 2017 Day2 Tournament Report


今年の名古屋オープン入賞者たち

名古屋オープン2日目、私はSimon と松尾さんとの試合を含め、無事に3連勝を果たし、逆転優勝となりました。初日に負けたときはどうなるかと思いましたが、久々の国内トーナメントをこうして優勝でき、とても嬉しいです! 入賞者の皆さん、おめでとうございます。

1st Place Kojima, S 5/6
2nd Place Baba, M 4.5/6
3rd Place Matsuo, T 4/6
4th Place Bibby, S 4/6


昨日、0.5P差でトップを走っていた馬場さんは、午前の試合で松尾さんに負け。Simon は午後の試合で私に負けで、トップから後退です。最終戦は4/5 で並んだ松尾さんと直接対決でした。

Kojima, S - Matsuo, T
Nagoya Open 2017 (6)

1. Nf3 Nf6 2. c4 c5 3. Nc3 g6 4. d4 cxd4 5. Nxd4 Bg7 6. e4 Nc6 7. Be3 Ng4 8. Qxg4 Nxd4 9. Qd1 Ne6 10. Rc1 Qa5 11. Qd2 g5!?



前回、松尾さんとの試合の後でこうした手がありますと、私から指摘しました。アイディアはf4 のマスを抑え、白からのf2-f4 を牽制しながら、Ne6-Nf4 の跳び込みも見せておくことです。

12. b3 Qe5


白がf2-f4 とできなくなったことで、e5 をアウトポストのように使えれば黒は良いのですが、この手は少し早いように思えます。私は普通はキャスリングをしてキングを安全にすることにこだわりますが、ここではキャスリングを諦めても、スペースを取りつつ、クイーンを追い回して有利になると考えました。

13. g3! d6 14. f4 gxf4 15. gxf4 Qh5 16. Nd5!



これですでに序盤、かなり有利になったと思いました。黒のクイーンはやや働きづらいポジションになった上、c7 へのナイトの跳び込みやe7 へのプレッシャーを気にしなければいけません。

16... Kf8 17. Be2 Qh4+ 18. Bf2 Qh6 19. h4!


この手でさらに黒クイーンの行き場を削り、黒のプレーを限定します。Bf2-Be3、f4-f5 にどう対処するか、黒は考えなければいけません。

19... Nc5 20. Bf3!



c5 に来たナイトを取り除き、Nd5-Nc7 からルーク取りとメイトをダブルスレットにするか迷いましたが、a8 のナイトは帰れずにトラップされてしまうため、そのエクスチェンジアップは確実に勝てるか自信がありませんでした。黒はBg7-Bd4 からdファイルをブロックし、タフなディフェンスを見せるでしょう。そこで急いで駒を取りにいかず、ゆっくりとe4 を守ってピースのポジションを改善することにします。

20... Be6 21. e5 Bxd5


ここで黒が何を指すかは迷うところですが、松尾さんはポーンを取りにきました。少しの間白はポーンダウンになりますが、cファイルを抑えることで十分な代償を得ることができます。

22. cxd5 Qxf4 23. Qxf4 Nd3+ 24. Kd2 Nxf4 25. exd6 exd6 26. Rc7 b6 27. Re1?!



白はアクティブなルークとダブルビショップでポーンの代償がありますが、ここからどう進めていくか、大事なポジションです。本譜のアイディアは、一度eファイルから2つ目のルークの侵入を見せることで、e5 のマスでのブロックをさせ、その後でルークをfファイルに振りなおすというものです。しかし、実際にはルークの切り替えは必要なく、ストレートにfファイルで抑えば白の勝ちでした。27. Rf1! Be5 (27... Bh6 28. Be3 Re8 29. Rxa7+-) 28. Be3+-

27... Be5 28. Be3 Rg8 29. Rf1 Ke8?


私も松尾さんも、黒の正しいディフェンスが見えていませんでした。黒が生き延びるためには、29... Rg6! から6段目でルークを振り、f4 のナイトを守るしかありません。それでも白は7段目に侵入したルークの力で、有利に試合を進められそうです。

30. Bh1! Rg4 31. Rc4!



これでf4 のナイトはピンになってしまい、白は駒得が確定します。

30... Rxh4


ここは松尾さんに勘違いがあり、せめて2ビショップ vs. ルークにするべきだったと思いますが、いずれにせよ白が勝てそうです。31... b5 32. Rcxf4 Bxf4 33. Bxf4+-

32. Bxf4 b5 33. Re4 Rh5 34. Bf3 Rf5 35. Bg4 Rf6 36. Be2 Rf5 37. Bxe5 Rxe5 38. Rxe5+ dxe5 39. Rf5 1-0



この試合がドローだと、4.5P で3人が並ぶため、単独優勝のためには勝たなければいけないゲームでした。全体のレベルも高く、ファイティングなゲームの続いて勉強になりました。また来週のジャパンオープンでも、しっかりと結果を残したいと思います。参加者の皆さん、お疲れ様でした。


2日目の夕飯は妻のススメで、味噌煮込みうどん。名古屋は10回以上大会出来ていますが、味噌煮込みうどんは初体験でした。また食べに来たいと思える満足な味です!

2017/10/28

Nagoya Open 2017 Day1 Tournament Report


この時期、名古屋のたぬきもハロウィン仕様です。

この週末、名古屋オープンに参加するために名古屋を訪れています。初日の今日は2勝1敗で3位グループにつけています。馬場さんとの試合は面白い展開でしたが、時間のない状況で押され、対処が上手くできませんでした。一方でその直前、2R では前回名古屋の大会で負けた北神さん相手に、上手い指し回しができたと思います。

Kojima, S - Kitagami, S
Nagoya Open 2017 (2)

1. Nf3 c5 2. c4 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6



以前、北神さんに白番を持った際は、5... g6 のMaroczy Bind でした。本譜のようなHedgehog 型もありえますが、私はe4 にポーンがない形は、経験上白が指しやすいと思っています。

6. g3 e6 7. Bg2 Be7 8. O-O O-O 9. b3 Nbd7 10. Bb2 Qc7 11. Rc1 Rb8 12. Qd2 Re8 13. Rfd1 Ne5 14. h3 Ng6 15. Nf3!?


ここは悩みましたが、ナイトをいったんf3 に退き、Nf3-Ng5 を狙うことにしました。このナイトの動きは別のラインで見たことがあり、このポジションでも有効だと考えました。

15... b6 16. Ng5 Bb7 17. Nce4 Nxe4 18. Nxe4 Red8



白はe4 で1つナイトを交換し、黒マスビショップの利きを開きながら、d6 にプレッシャーをかけています。これはHedgehog 型では白として良い形で、黒はd6 のディフェンスに縛られてやや苦労しそうです。

19. h4 h6 20. Qe3 Ba8 21. Rd2 Qc8 22. Qc3! Bf8?


g7 へのメイティングアタックは、白として大事なアイディアです。本譜は明らかな間違いですので、黒はe6-e5f7-f6 と指さなければいけませんが、どちらもポーンストラクチャーを乱しているので白は満足でしょう。22... f6 23. Rcd1 d5 24. cxd5 Bxd5 25. Qe3+/=

23. Nxd6! Qc7 24. Bxa8 Rxa8 25. Rcd1+-



白はd6 のポーンをかすめ取り、完全に盤面を支配しています。あとはエンドゲームも見据えながら、丁寧に進めていきます。

25... f6 26. Qe3 e5 27. h5 Ne7 28. Qe4 Qc6 29. Qxc6


タクティカルなチャンスもありそうなので、クイーンを残しておくことも考えましたが、残ったビショップの働きとポーンストラクチャーを踏まえれば、エンドゲームに持ち込んでも白は十分に勝てそうです。

29... Nxc6 30. e3 Rd7 31. Nf5 Rxd2 32. Rxd2 Ra7 33. Rd5 Kf7 34. Bc3



e5 のポーンにブロックされて利きの悪くなったビショップを、ダイアゴナルを切り替えて使いやすくします。

34... Ke6 35. e4 Rc7 36. Bd2 Rb7 37. Be3


g7 だけでなく、b6 もターゲットにできれば白は勝ちまでもう少しです。黒はすでに指す手に困っていますが、本譜のブランダーですぐに終わったのはラッキーでした。

37... Ba3? 38. c5! Bxc5 39. Bxc5 1-0



c4-c5 の押し込みで黒マスビショップの利きを消し、Rd5-Rd6+ からのナイト取りを狙えば白の勝ちです。馬場さんとの試合で負けてしまったには残念ですが、気を取り直して明日の後半3試合も頑張ります!

初日を終え、ドローになった馬場さんとSimon が2.5P でリードしており、私、松尾さん、野口さんら7人が2P で並んでトップの2人を追っています。今大会は私の知る限り、名古屋で初めてSwiss Manager を使ったペアリングが行われていますが、2日目のペアリングは明日の朝発表だそうです。参加者の皆さん、2日目もよろしくお願い致します!

Our Honeymoon in London

こちらで記事を書こう書こうと思いつつ、時間がたってしまいました。マン島への試合は遅めの新婚旅行も兼ねており、大会後はロンドンに4泊、パリに1泊してきました。内容はあまり新婚旅行らしくは無かったですが、帰国後に新婚旅行は如何でしたかと頻繁に聞かれますし、どんなことをしてきたか、簡単にご紹介しようと思います。あまり参考にはならないかもしれませんが(笑)


ロンドン初日は少しプライベート色が強いので割愛し、夕飯から。宿泊先の近くのベイズウォーターで、美味しそうなブラジリアンレストランを見つけました。日本でも少しずつ浸透しつつあるブラジリアンバーベキュー、シュラスコは、ダイナミックに串焼きにした様々な種類の肉を、好きなだけ食べられるのが特徴です。店員さんが串を席まで持ってきて、目の前で取り分けてくれるのが良いですね。


このマークの表裏を使い、もっと肉が欲しいか、もういらないかを示します。夫婦そろってシュラスコ初体験でしたが、大満足の夕食でした。


翌日は朝食の後、ホテルすぐ裏のハイドパークに北側の入り口から入ってみます。ハイドパークは複数の地下鉄駅に囲まれたロンドン有数の大きさを誇る公園で、休日ともなれば多くの人でにぎわいます。5年前のロンドン滞在では、同じベイズウォーター近くのホステルに滞在しながら、ハイドパークでゆっくりすることはありませんでした。


ハイドパークには2つの池があり(1つは流れがあり、川のよう)、水辺には多くの野鳥が訪れます。これらの鳥とのふれあいや撮影、餌をあげようとする人もハイドパークには多いでしょう。鳥たちは人間など慣れたもので、全く物おじせずに近づいてきます。


ハイドパーク内には美術館もありました。入館は無料で、一回りですべての展示品が見られる大きさの美術館です。休憩も兼ねてこうした美術館に寄ったり、池の近くのお土産屋さんを見たり、専用のカードが無いために自転車のレンタルができずに落ち込んだり、色々と過ごしているうちに、ハイドパークで2時間が過ぎていました。この日は次にベイカーストリートに行くことは決めていましたが、基本的に何時にどこに行くかはノープランです。


昼過ぎに、行きは1人で寄ったベイカーストリートのチェスセンターを、初めて2人で訪問します。2人で見ながら相談して、新しい本を何冊か購入しました。それらはまた別の記事でご紹介します。


ベイカーストリートのもう1つの目的地は、シャーロックホームズ博物館です。私はシャーロックホームズ作品を読んでたことがありませんでしたが、それでも引き込まれるような世界観を再現した館内はとても魅力的でした。妻の様子を見る限り、館内にあるシリーズ作品に登場する小道具やシーンの再現など、原作を知っているとさらに楽しめそうです。小さな博物館ではありますが、私たちが到着した際には行列ができており、1時間弱入館にかかりました。


館内の展示物は基本的に触ってはいけませんが、暖炉の前だけは椅子に座っての記念撮影が可能でした。


シャーロックホームズ博物館を出た後は、オックスフォードサーカスまで地下鉄で移動し、そこからピカデリーサーカスまでの大通りをぶらぶらと歩きます。特に目当てのものはないウィンドーショッピングのつもりでしたが、ピカデリーサーカス駅付近のチケットショップで、その日の夜公演のミュージカル、WICKED のチケットを購入。突如、夜のプランを決めました。ラスベガスで大会後、シルクドソレイユのショーを見たことを思い出します。ちなみに、劇場内は撮影禁止なので様子をお見せすることができないのは残念。


ミュージカルの時間までに早めの夕食を済ませようと考え、近場で評判の良さそうなシーフードレストラン、BENTLEY'S に足を運んでみます。調べてお見せに向かう途中、もしやと思っていましたが、5年前に森内さんらとLondon Chess Classic に参加した際、ロンドンに住む日本人のかたに案内して連れてきてもらったお店でした。その際は昼で、しかも大会直前だったので生カキなどは避けましたが、今回は遠慮なく食べたいものを頂きます。


妻が開けた貝からミニ蟹が出現! お店の人に伝えると、大興奮で他の店員に見せて回っていました(笑) こうしたサプライズも旅の楽しみです。この日は夕食後にミュージカルを楽しみ、それでロンドン滞在2日目は終わりです。


3日目は朝早くからバスで移動し、ハリーポッターのスタジオ見学ツアーにやってきました。前日はノープランで動き回りましたが、この日のチケットは日本で事前確保しています。ハリーポッターの映画シリーズは、2人で結婚前に全て見た思い出の作品です。


暴れ柳にぶっ叩かれる空飛ぶ車


秘密の部屋への入り口


賢者の石に登場する魔法のチェスセット。展示品を紹介しているときりがないですが、子供から大人まで長時間楽しめるテーマパークであることは間違いありません。ロンドンを訪れた際は、ぜひハリーポッターのスタジオツアーをプランに入れてみると良いと思います!


スタジオツアーから戻ると夕方に近い時間で、ホテルに一度戻って一休みしてから夕飯です。この夜はロンドンに住む私の生徒家族と会い、5人での食事になりました。ロンドンでは、ロブスターをメインに掲げるレストランが多いようですが、ベイズウォーター近くの中華レストラン、マンダリンキッチンはロブスターヌードルが名物で、訪れる人のほとんどが注文するそうです。他にも海鮮をメインに、たらふく美味しい中華をいただきました。イギリスは食事が良くないと言われますが、場所を選べば大丈夫。(逆に下調べをしないで知らないレストランに入るのは危ないそうです。) 今回のロンドン滞在中の食事は、全て美味しかったです。

翌日はまた早朝からパリに移動するのですが、長くなりすぎたので次の記事に回します。また週明けによろしくお願い致します。

2017/10/25

国内レイティング S115

2か月ぶりに国内のレイティングが更新されました。今期は中部快速、クラブ選手権、東京オープンなどが主な大会でした。試合をしたプレーヤーの上位勢は以下の通りです。ちなみに数試合をして、とび抜けた新規レイティングをつけたプレーヤーがいましたが、数字が正確でない可能性が高いため除いています。

小島慎也 2485 -11
馬場雅裕 2410 +14
青嶋未来 2400 -3
Alexander Averbukh 2332 +2
松尾朋彦 2256 +5


印象的だったのは、ジャパンリーグに続いてクラブ選手権でも好成績を収めた馬場さんです。今回のプラスで、初の2400台に到達しています。私は中部快速での2敗でレイティングを落とし、2500が遠のきました。名古屋で落とした分は名古屋で取り戻したいと思いますので、今週末の名古屋オープン、頑張ってきます!

今期のレイティング、全員分はいつものように松戸チェスクラブのHP で確認できます。しかも、今回は全員の増減付きです! リストを作成されている方には頭が下がりますね。それでは今期は皆さん、このレイティングで名古屋オープンやジャパンオープンを戦いましょう。

2017/10/20

Winning Against 2500


マン島での試合 Photo by Alena Vasilevskaya

マン島から戻り、早2週間がたちました。ようやく重い腰を上げ、マン島での最後の試合を振り返ろうと思います。マン島の友人から写真が今日送られてきたことも、この記事を書く良い決心になりました。

今年のマン島は4勝3敗2ドローで、ポイントだけを見れば3勝3敗3ドローだった昨年を上回っています。しかし、昨年はGM から3ドローがあったのに対し、今年はGM に2敗でした。GM との対戦数も、昨年の6から2へと大幅にダウンしています。ここを見ると昨年よりインパクトは落ちますが、今年は最終戦でドイツのLubbe に勝つことができました。彼はIM でしたが、レイティングは2500を超えており、GM のタイトルを持っていてもおかしくないプレーヤーです。

試合後にふと、最後に2500台に勝ったのはいつだっただろうかと思い返してみましたが、いつなのか全く分かりません。ハンガリーでGM に勝った記憶はあっても、彼らは2400台でした。ここ数年の2500台のプレーヤーとの試合は、負けかドローばかりです。そこできちんとデータベースを見て、記録を確認してみました。

Al Modiahki, M (GM, QAT, 2559) - Kojima, S (JPN, 2272) 0-1 Dresden Olympiad 2008
Rowson, J (GM, SCO, 2596) - Kojima, S (JPN, 2272) 0-1 Dresden Olympiad 2008
Lubbe, N (IM, GER, 2515) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1 IOM 2017

なんと、私が公式戦で2500以上に勝った試合はたった3試合だけでした。(ハワイでGM Shankland に勝った試合は、ラピッドとブリッツなので除きます。) するとマン島でのLubbe 戦は、9年ぶりの2500台からの白星ということになります。これには正直驚きました。貴重な勝利は嬉しいですが、それよりもこんなに勝てていないことが問題です!

私は格上から金星を挙げるよりも、下への取りこぼしをなるべく少なくし、安定した戦績を目指すタイプのプレーヤーであると自覚しています。そのこと自体は悪くないですが、おそらく平均的な2400台のプレーヤーは、自分より100程度レイティングが上の相手からも、もっと勝ち星を挙げているでしょう。私が2500以上との試合が少ないかと言えば、そんなこともありません。勝たなければいけないゲームを、勝てていないだけです。これがIM 取得以降、この2年半でレイティングが上がっていない(下がってもいないですが)要因だと思います。今年のマン島での敗れた3戦も、ポイントを取る、さらに言えば勝てておかしくないゲームでした。

自分がこれから2500台を目指すのであれば、これまでのように2500台から白星を挙げられないようではいけません。今回のことで記録を見直し、あらためて自分のチェスの問題が見えたような気がしますので、今後はそれも意識して精進していければと思います。

2017/10/13

A New IM Tournament First Friday


マン島終了後に始まり、私が個人的に注目していた大会が昨日、最後の試合を迎えました。それがマレーシアの首都、クアラルンプールで開催されていたFirst Friday です。この大会は今月から始まった新しいIM トーナメントで、今後も毎月開催が予定されています。IM トーナメントでは、参加者が事前に決められ、IM タイトルホルダーの数と対戦相手のレイティングも保証されているため、IM 以外のプレーヤーは何ポイント取ればIM ノーム獲得になるか、大会開始前から分かるようになっています。このFirst Friday は言うまでもなく、私が2014年まで参加していたブダペストのFirst Saturday を意識して企画、名づけられています。

初回のFirst Friday では、IM を開催国のマレーシア、ミャンマー、インドネシアから確保し、IM トーナメントとしての形式を成立させました。そこにインドから複数のプレーヤーがノーム狙いで参加し、見事、11歳のGukesh が7/9 でトーナメント優勝、そしてノーム獲得となっています。ひとまず初回は大会成功と言えるでしょう。ただ、ハンガリーのようにIM トーナメントを定着させるためには、今後もプレーヤーを確保、大会を開催し続ける必要があります。一発だけのイベントで終わらず、今後も開催が続けられると良いですね。

私がこの大会に注目していたのは、マレーシアというハンガリーよりも圧倒的に日本から近い国で開催されること、そしてFirst Saturday 同様、毎月の開催を目指してることが理由です。毎月同じ地でノームトーナメントが開催されるのはハンガリーだけ、というのが長年のチェス界の常識でしたが、ここにマレーシアが加われば、同じアジアのプレーヤーとしてとても喜ばしいことです。これから日本の若いプレーヤーが、気軽にノーム獲得のチャレンジができる大会として、定着してほしいですね。IM トーナメントはFIDE 2100台ならば参加しても大丈夫だと思うので(過去、2000台の参加も見たことがありますが、参加者平均が下がるのでオーガナイザーとの相談が必要)、ノーム狙いでなくとも、IM トーナメントがどんなものか体験したいプレーヤーは、参加を検討してみると良いと思います。

ちなみにGM トーナメントも同時に開催する企画もあるそうで、これが何月頃からスタートするのか、これからも情報をチェックし続けたいと思います。GM トーナメントも毎月開催されることが保証されれば、私もハンガリーまで足を延ばさなくて済みますからね。オーガナイザーは今後も頑張ってください! Chessbase India に掲載されていたレポートも面白かったので、こちらもよろしければご覧ください。

11-year-old Gukesh makes his maiden IM norm!
First Friday IM Oct 2017 Results

2017/10/10

名古屋オープン2017 Tournament Inforamtion


昨年の名古屋オープン入賞者たち

例年は夏の時期に開催されている名古屋オープンは、今年は会場の都合で秋の開催になります。私も昨年同様、参加することを決めました。名古屋の皆さん、そしてまた関東や他の地方から参加される皆さん、よろしくお願い致します。

日程: 10/28(土)、29 (日)
会場: 青少年文化センター 
大会形式: 6R スイス式
タイムコントロール: 60分+1手30秒
参加費: 10000円 (18歳未満8000円)
賞金: 優勝100000円、2位50000円、3位25000円、A優勝25000円 (レイティング1700未満)

その他、細かいタイムスケジュールなどは、名古屋チェスクラブのHP をご覧ください。今回はいつもと違う矢場町駅が最寄りの会場で、私は初めてです。会場を間違えないように注意しましょう。それでは月末、また名古屋でお会いできることを楽しみにしています!

2017/10/08

Saturday Lecture on 21st October 2017


Bok, B (GM, NED, 2620) - Shvayger, Y (WGM, ISR, 2442)
Position after 38... g6

【日時】 2017年10月21日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Games of Isle of Man 2017
【テーマ詳細】

今年もマン島のトーナメントは、世界各国のスーパースターたちが集まり、レベルの高い試合を見せてくれました。そんな中で、周囲の期待を裏切らず、きっちりと優勝を果たした世界チャンピオンのCarlsen は、さすがに世界ランク1位の実力者だと思います。そこで今回は終わったばかりのマン島のトーナメントから、Carlsen のものを含め、いくつかゲームをご紹介しようと思います。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

2017/10/02

Isle of Man International 2017 R9


優勝のスピーチをするCarlsen

今年もマン島のトーナメントが無事に終わりました。優勝は大会初日からトップを走り続けたCarlsen です! 最終戦も危なげなく、Hikaru とドローにして単独フィニッシュを決めました。Olympiad 以外でCarlsen と一緒のトーナメントに参加するのは初めてですが、今回あらためて世界最高峰のプレーヤーのレベルの高さを垣間見ることができたように思えます。

私は最終戦、ドイツのLebbe Nikolas との対戦です。去年同様、最終戦も白を持てるかと期待していましたが、不運なことに8R に続いて黒を引いてしまいます。なんでも指せるLebbe 相手の準備は大変でしたが、自分にとって好ましい形に持っていくことができました。

Lubbe, N (IM, GER, 2515) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)
Isle of Man International 2017 (9)

1. e4 c6 2. Nc3 d5 3. Nf3 Bg4 4. h3 Bxf3 5. Qxf3 e6 6. d3 Nd7 7. Bd2 Qb6!?



トリッキーなラインを使うことの多いLebbe のようなプレーヤーは、Caro-Kann においては、セオリー勝負になりにくい Two Knights Variation を選択することがしばしばあります。ここ最近の大会でも、Two Knights に何を指すか悩んできましたが、今回、Dreev のゲームを見直してみて、これはと思う変化を見つけていました。

8. O-O-O d4 9. Ne2 c5


アイディアはNg8-Ne7-Nc6 からクイーンサイドを攻めることです。黒のキャスリングはどちらもありえますが、キングサイドのポーンが伸びてくるようであれば、クイーンサイドへ逃げるのが安全でしょう。

10. Kb1 Ne7 11. g4 Nc6 12. Qg3 O-O-O 13. Nc1!? Qa6!?



b6 をナイトのために空けるアイディアですが、b5 とa6、どちらがクイーンのマスとして相応しいか、少し悩みました。b2 を当てたままにしておくのも良さそうですが、b5 ではクイーンが浮いていること、bポーンを伸ばすチャンスがなくなることから、最終的にはa6 に決めます。他には全く考えていませんでしたが、すぐに13... Bd6 と指す手もあったようです。クイーンでビショップを取れば、Nd7-Ne5 がクイーントラップです。

14. Qf3!? Nce5 15. Qe2 Nb6 16. Nb3 Na4 17. f4 Nd7!?


e5 にナイトを跳んだ当初は、f2-f4 に対してc6 に戻るつもりでした。しかし、b6 のナイトが早々にa4 にいけたことを見て、もう1つのナイトもb6(チャンスがあればさらにd5)へ運ぶプランを思いつきます。

18. e5 Ndb6 19. c4!?



評価の難しい手ですが、d5 のマスを抑えたい気持ちは理解できます。黒は当然、これを崩して勝負です。

19... dxc3 20. bxc3 Be7?!



ここは悩みました。しっかりと見えていながら指すのをやめたのは、20... c4!? 21. dxc4 Ba3! 22. c5! (白はポーンを返して、Na4-Nb2 を防ぎます。) 22... Qxe2 23. Bxe2 Nxc5 24. Kc2= この変化で、黒は満足なエンドゲームながら、白のダブルビショップを相手にチャンスを作れるか自信がありませんでした。もう1つの指し方は、20... Nd5 21. Rc1 Kb8= とするもので、これならば黒はピースを残したままプレーできます。本譜よりもこのどちらかがベターでしたが、私はd3 のポーンを攻撃することをメインに考えました。

21. c4! Rd7 22. Ka1 Rhd8 23. Ba5?


白は、黒ナイトとクイーンの行き場をなくすというプランの方向性自体は良いのですが、ここで大きな間違いを犯します。私も指された瞬間はなるほどと思いましたが、よくよく考えてみるとポーンを取ることができます。代わりに23. Qe4! であれば、黒はナイトを組み替えるのに手数がかかるため、白がやや良いポジションだったでしょう。

23... Qxc4!-/+



指す前に何度も間違いがないことを確認しました。このクイーンを取るとメイトになるため、白はポーンダウンです。おそらくLebbe はナイトでc4 を取られないことのみを気にし、クイーンを軽視していたのでしょう。

24. Qf2 Qb5 25. Rc1 Kb8 26. Be2 Rc8 27. Rc2 Qc6 28. Rhc1 Qd5 29. Rd2 Rdc7


ポーンアップになった黒は、丁寧に反撃を抑え込もうとします。クイーンはやや危険だった白マスから脱出し、センターに戻ってきました。ここからはc5-c4 のタイミングを伺います。

30. Bf3 Qd7 31. Be4 h6 32. Qg2 Qb5! 33. Rdc2 f6!?



ここですぐに33... c4 34. dxc4 Rxc4 としても良かったですが、まずはe5 を弱め、これを取るチャンスを作りにいきます。クイーンがb5 のマスに移動したのは、c5-c4 のサポートだけでなく、e5 をターゲットにすることも狙いに含んでいます。

34. Qe2 fxe5 35. fxe5 c4! 36. dxc4 Qxe5+ 37. Kb1 Rxc4


ここは残り時間3分を切る前で考えましたが、c1 のルークを先にアタックしておくべきなのか読み切れませんでした。37... Bg5 38. Rf1 (38. Re1 Nxc4!! 39. Bb4 Na3+ 40. Bxa3 Rxc2 41. Bxc2 Nc3+-+) 38... Rxc4 39. Bd3 Qxe2 40. Rxe2 Nc3+ 41. Bxc3 Rxc3-+ これでも本譜でも勝勢です。

38. Bd3 Qxe2 39. Rxe2 Rxc1+ 40. Nxc1 Nc3+ 41. Bxc3 Rxc3



メイティングアタックこそ成功しませんでしたが、黒は満足な駒得でエンドゲームに入り、時間も40手に到達して増やすことができました。ここからは辛抱強く、ポジションを改善していきます。

42. Rxe6 Ba3 43. Re8+ Kc7 44. Re1


このアイディアでポーンを取りかえすのは、なるほどと思いました。ピースを交換してナイトビショップのエンドゲームにするのも考えましたが、a3 のビショップは白キングを抑え込んでおり、交換してしまうのももったいなく思えます。ここはじっくりいくことにしました。

44... g5 45. Bc2 Nc4 46. Nb3 Rxh3 47. Bf5 Rh2 48. Nd4 a6 49. Re2 Rh1+ 50. Kc2 b5 51. Bd3 Rc1+ 52. Kb3 Bc5 53. Nf5 Nb6!



少しプランが迷走しましたが、a4 にナイトを切り替えれば、白のキングは動けずに困っています。

54. Rh2?


粘るのであれば、54. Kb2 とするしかありませんでした。それでも黒はゆっくりポジションを改善し、勝勢でしょう。

54... Na4! 55. Bc2 Rg1! 56. Rxh6 Rxg4 57. Bd3 Rg2


g4 のポーンを取ってから、ルークでメイトを狙います。

58. Bc2 Rf2 59. Rh3 g4 60. Rg3 Kb6 61. Nh4 Rf4 62. Bd1 Bf2 63. Rxg4 Rxg4 64. Bxg4 Bxh4 0-1



メイトのチャンスを絡めながら、最後はナイトを取って勝ち。途中、ポイントが伸びずに苦しんだ大会でしたが、良い内容のゲームで締めくくることができて嬉しかったです。

2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666) 0-1
2017/09/26 R4 Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
2017/09/27 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Oyama, A (ENG, 2198) 1/2-1/2
2017/09/28 R6 Heimisson, H (ISL, 2185) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
2017/09/29 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Nihal, S (IM, IND, 2483) 0-1
2017/09/30 R8 Osmanodja, F (WIM, GER, 2245) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
2017/10/01 R9 Lubbe, N (IM, GER, 2515) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1

Isle of Man International 2017 Final Standings


今年も表彰式前のブリッツは非常に盛り上がっていました!


写真撮影一番人気はAnand でした。インドの若いプレーヤーも殺到していました。


かつて日本で働いていた、カナダのIM Leon Piasetski とは、6年ぶりの再会です。


今大会、妻と結婚してから初の海外大会でした。互いに1つ勝ちこし、レイティングは微減ですので、満足せずにこれからも一緒に邁進していこうと思います。大会後はハネムーンとして、ロンドンとパリに週末まで滞在します。

2017/10/01

Isle of Man International 2017 R8


トップボードではCarlsen がCaruana を黒で破り、優勝まであと一歩です!

この日は1番ボードのことから書きましょう。去年、タイブレークで敗れてマン島での優勝を惜しくも逃したCaruana が、この8R で白をもってCarlsen に挑みます。私は対戦相手が遅れたので、トップボードの開始を間近で見守ります。1. e4 で始まったゲームは、Ruy Lopez からArchangel Variation になりました。私が驚いたのは、Caruana は直前の7R で白を持ち、Gawain Jones のArchangel Variation をきっちり破っていたのにもかかわらず、Carlsen がこのオープニングをチョイスしたことです! 結果は鮮やかなタクティクスでCarlsen の勝ち! すぐ近くでこのようなドラマチックな展開を見ることができるのは、この大会の大きな魅力です。

さて、私はと言えば、Nihal にメイトを見逃して敗れたショックを振り切り、新たな気持ちで臨むラウンドです。相手のWIM はとても鋭くアタックしてくるスタイルのようなので、それを上手くかわして手堅くゲームを進めようと思いました。しかし、私の思惑とは裏腹に、最後は非常にシャープなゲーム展開を迎えます。

Osmanodja, F (WIM, GER, 2245) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)
Isle of Man International 2017 (8)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nd2 e6 5. Nb3 Nd7 6. Nf3 Ne7



この試合、Advanced Variation であるならば、4. Nf3 だと思っていましたが、彼女はデータベースにない手を指してきました。ならばと私も過去に指した6... a6 ではなく、4. Nf3 のラインに手順前後する6... Ne7 を指します。

7. Be2 Nc8!?


全日本で弘平くんに指した7... h6 でも良かったのですが、すでにNbd2-Nb3 を入れている形では、ナイトをc8 に退く変化にしてみます。Dreev のAttacking Caro-Kann では、黒がこのようにナイトを退いた際は、b2-b3, c2-c4 と仕掛けるのが良いと書かれています。そのため、ナイトをb3 にすでに決めているのであれば、Nc8 と退くのもありだと考えたのです。この変化は2年前のJapan League で、桑田くんに指して勝っています。

8. O-O Be7 9. Ne1 O-O 10. Nd3 Ncb6 11. f4



ナイトをd3 に組み替えた以上、キングサイドのポーンが伸びてくることは予想していましたが、fポーンからであることは意外でした。11. g4 Be4 12. f3 Bg6 13. f4 と進めるのが普通の手順で、これにはf7-f5 を突こうかと考えていました。本譜でも11... Bg6 と下がれば同じですが、先にf4 までポーンを伸ばしたことでe4 のマスがアウトポストになっており、黒はe4 にビショップを跳び込ませるアイディアが使えます。

11... Nc4!? 12. g4 Be4 13. Nf2 Bg6 14. Nh1 f6!


白は相変わらずf4-f5 を狙いますが、これにはf7 にマスを作りつつ、センターポーンを崩しにいくf7-f6 のアイディアが使えます。

15. Ng3 Qb6



コンピュータは15... fxe5 16. dxe5 Qb6+ 17. Kg2 Rad8 で黒が大丈夫だと判断しますが、e6 のポーンを弱めた以上、あまり早くd4 にマスを空けたくはありませんでした。

16. Kg2 a5?


ここは試合中、すぐに後悔した一手です。a5-a4 を見せておけば、白はナイトを退かされないようにするために、a2-a4 と止めてくるものだと思い込んでおり、ルークがセンターに回るのはその後でも構わないと思っていました。実際には白は本譜のように仕掛けることができるため、16... Rae8! とe6 をサポートしておくのが先であるべきです。

17. f5! Bf7 18. exf6 Bxf6 19. g5 Bd8 20. Bd3



彼女は力強くこの手を指しましたが、私はビショップを置くのであればもう1つのマスを考えていました。20. Bg4! exf5 21. Bxf5 a4 22. Qg4! (22. Bxd7 axb3 23. cxb3 Nd6 ならば、ポーンの代償は十分ありそうです。) 22... c5 (22... axb3? 23. Bxh7+! Kxh7 24. Rxf7!+-) 23. Bxd7 axb3 24. cxb3+/- これは上記の変化よりもポーンの代償は少なく、黒は苦しそうに見えます。

20... e5 21. g6?


ここはどちらのポーンを伸ばすか悩みますが、fポーンが正解です。21. f6 g6 (21... exd4 22. Qg4!) 22. Qg4! Qc7 23. Nc5 Nxc5 24.dxc5+/- ならば、c4 に跳び込んだナイトの行き場がなく、負けを覚悟しなければいけなかったでしょう。g7-g6 の押し込みも考えていましたが、黒キングはさほど危険ではなく、これならば勝負できると思っていました。

21... Be8 22. gxh7+ Kh8 23. c3



h8 のキングには追撃がなく、黒はここから反撃を作ることができます。

23... a4 24. Bxc4 dxc4 25. Nd2 exd4!?


白マスビショップを貰ったため、g2 のキングが攻撃しやすくなったと思い、ポジションを開きにいきます。25... Bf7! 26. dxe5 Nxe5 も黒のピースはアクティブで、ポーンの代償が間違いなくあるポジションです。

26. Nxc4 Qb5 27. Qxd4 Bf6 28. Qg4 Bf7 29. Nd6 Bd5+ 30. Kh3 Qa6 31. Bf4 a3 32. bxa3?!



黒は8段目で眠っていたダブルビショップを叩き起こし、キングサイドとクイーンサイド、両方に揺さぶりをかけます。a3 のポーンは取ってしまうと、黒のクイーンとルークをアクティブに使うチャンスを与えてしまうため、c3 のポーンをあきらめるとしても、32. b3 のほうが良かったでしょう。

32... Bxc3 33. Nh5


データベースで彼女の試合を見ていると、とにかくエクスチェンジサクリファイスが好きなことが分かりました。ここでもa1 のルークを逃げませんが、g7 への攻撃を考えるのであれば、黒はディフェンスの要である黒マスビショップを残しておくほうが安全でしょう。

33... Qxa3! 34. Bg3 Bf6?



白は次にf5-f6 の押し込みを狙っているため、ここは1手、ディフェンスを入れんなければいけないと思いました。しかし、34... Ra4! 35. Nf4 Rf6! 36. Ng6+ Rxg6 37. Qxg6 Bxa1 38. Re1 (38. Rxa1? Qf3! 39. Rg1 Nf6 40. Nf7+ Bxf7 41. Qxf7 Rh4+ 42. Kxh4 Qg4#) (38. Qe8+ Kxh7 39. Qh5+ Kg8 40. Qe8+ Nf8-+) 38... Ra8 39. Rxa1 Ne5 40. Qh5 Qxd6-+ このようにして勝ちでした。すべてを読み切れなくても、a4 にルークを上げる手は見えなければいけません。

35. Rae1! Ra4


次のNh5-Nf4-Ng6 に対するディフェンスがわからず、こう指すしかありませんでしたが、これで正解でした。しかし、振り返ればもう1手早く指していれば黒勝ちだったのにと惜しまれます。

36. Rf4?


36. Nf4! Rxf4 37. Qxf4 Qxa2+/= ならば黒はエクスチェンジを捨てるしかありませんでしたが、まだ形勢は難しいと思います。彼女はh5 のナイトがg7 へのアタックの要だと思い込み、g6 へ切り替えることができなかったのでしょう。

36... Qxa2!



ここはa2 を取るか、b2 に侵入するか時間のない中で迷いましたが、これもOK でした。f6 のビショップに紐をつけなければいけない理由は特に見当たらず、ポーンを早めに貰っておきます。g2 でのメイトがあるため、白はa4 のルークを取れないことがポイントです。

37. Bf2?


37. Re2 Qb1 (Qb1-Qf1 の狙いを作ることで、a4 のルークを取られないようにします。) 38. Re1 Qb2 39. Re2 Qc1 40. Re1 Qc2 41. Re2 Qd1! 42. Re1 Bg2+ 43. Kxg2 Qxg4 44. Rxg4 Rxg4-+ 1段目と2段目を交互に動き、d1 まで潜り込めればドローにはなりません。それでもこちらのほうが難しい変化で、本譜のようにすぐに黒が勝つことはなかったでしょう。

37... Ra3+! 38. Be3 Qd2 39. Qg3


39. Qg1 Bd4 40. Rxd4 Qxd4-+ でも黒の勝ちです。

39... Bg2+! 40. Qxg2 Qxe1 0-1



今大会でこれまで鬼門だった時間の増える40手目、この試合では正しい手を指せました。この駒損ではどうしようもないため、白は増えた時間をさして使うことなくリザイン。私にとって嬉しい白星を挙げました。

最終戦はなぜか連続で黒... ドイツのLebbe Nikolas との対戦です。序盤はCaruana からドローを取ったものの、ここ3試合は下相手にドローでピリッとしません。私にとっては今大会初の2500台との試合で、ポイントが取れると嬉しいですね。最終戦のみ、いつもより1時間半早い、日本時間の20時スタートです! ライブで観戦予定の方はご注意ください。

2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666) 0-1
2017/09/26 R4 Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
2017/09/27 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Oyama, A (ENG, 2198) 1/2-1/2
2017/09/28 R6 Heimisson, H (ISL, 2185) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
2017/09/29 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Nihal, S (IM, IND, 2483) 0-1
2017/09/30 R8 Osmanodja, F (WIM, GER, 2245) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
2017/10/01 R9 Lubbe, N (IM, GER, 2515) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)

Isle of Man International 2017 R9 Pairings
Isle of Man International 2017 Live Games


最終日を前に、景気づけに近くのグリルへ。400g 以上の肉を2人で分けました。

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