2018/01/28

27th IVL Tournament Report


昨日、都内で今年初となるIVL が開催されました。参加者は10名で、今回も平均が2200を超えるようなレベルの高いトーナメントになりました。私は嬉しいことに、昨年1回も達成できなかった午前午後フルでの参加となり、全5試合を指してきました。この日はどの試合も、上手くプランを立てることができましたので、その中から1試合ご紹介しようと思います。

Kojima, S - Shiomi, R
27th IVL (3)

1. Nf3 d5 2. d4 e6 3. c4 c5 4. e3 Nf6 5. Nc3 a6 6. cxd5 exd5 7. g3!?



Semi-Tarrasch に対して、g2-g3 を突くアイディアは、何年か前からチェックしていました。この数年でGM が白で勝つゲームをちらほら出てきたため、実戦投入してみます。

7... Nc6 8. Bg2 c4 9. Ne5 Be7 10. O-O O-O 11. b3!


c5-c4 の押し込みに対しては、このbポーンを使ったブレイクが有効です。この時点で私はすでに、c5 をアウトポストにし、ポジショナルプレーで勝負する構想を決めています。

11... cxb3 12. Nxc6 bxc6 13. axb3 Rb8



クイーンサイドのポーンストラクチャーが決まり、白はひとまず満足です。白のb3 のポーンは弱そうですが、黒はa6 とc6 の2つのポーンが弱く、c5 のマスも気を付けなければいけません。コンピュータはQd1-Qc2 を許さない13... Bf5 が正解だと示しますが、白は同じ構想でc5 のマスを狙い、優位に試合を進めることができそうです。

14. Ba3!


Bc1-Be3-Bc5 といったマヌーバリングで黒マスビショップを交換し、c5 のアウトポストを活用するゲームは時々ありますが、これに比べると白はテンポアップでビショップを交換しています。そのうえ、d4 にポーンを残しているストラクチャーであるため、c5 のコントロールも強くなっています。

14... Re8 15. Qc2 Qb6



試合後、このクイーンの位置はNc3-Na4 から当てられてしまうため、良くないのではないという話を塩見さんとしました。しかし、そうでなくとも白のNc3-Na4-Nc5 のアイディアを完全にストップすることは難しく、黒が何を指すかはかなり悩みます。

16. Bxe7 Rxe7 17. Rfb1


ここは一度b3 を守りましたが、私が見落としたのは、17. Rfc1! Qxb3 18. Qxb3 Rxb3 19. Nxd5!+/- という手です。b3 の弱い孤立ポーンと、d5 のセンターポーンの交換であれば、白は満足してエンドゲームに突入できるでしょう。

17... g6 18. Na4! Qc7 19. Rc1!+/-



上記の変化に後れを取りながらも、白はヘビーピースをcファイルに重ね、理想的な形を作れました。g7-g6Bc8-Bf5 を狙う自然な手に見えますが、f6 のナイトを浮かせてしまうという落とし穴があります。Na4-Nc5 が待ち構えているため、黒はビショップでc6 を守ることも難しく、すでに苦しい状況と言えるでしょう。

19... Qb7 20. Qxc6 Ne4 21. Qxb7 Bxb7 22. Bxe4!?


ここはビショップを残すアイディアもあったと思いますが、ナイトさえ消してしまえばc5 のアウトポストを白は完全にコントロールでき、黒からの反撃をほぼ抑え込むことができます。クイーンを交換したことで、弱くなったキング前の白マスを利用される心配もなく、白はほぼリスクのないエンドゲームを、余裕をもって指すことができます。

22... dxe4 23. Nc5 Rc7 24. Ra5 Bc8 25. Rca1 Rb5 26. Rxb5 axb5 27. Kf1 Bh3+ 28. Ke1 Bg2 29. Kd2 Rc6 30. Ra8+ Kg7 31. Rb8 Bf1 32. Nxe4 Ra6 33. Nc3 Ra3 34. Kc2 Kf6 35. Kb2 Ra5 36. Rb6+ Ke7 37. b4 Ra8 38. Nxb5



ゆっくりと白のポーンをかすめ取り、反撃を許さなければ白の勝ちは揺るぎません。最後まで油断せず、指し切れたと思います。

38... Bc4 39. Na3 Bd5 40. b5 Kd7 41. Ra6 Rb8 42. Kc3 Bb7 43. Rf6 Bd5 44. Kb4 Rc8 45. Ra6 Bb7 46. Ra7 Rb8 47. Nc4 Kc7 48. Na5 1-0



続く4,5R も青嶋くん、汐口くんに勝ってパーフェクトスコアでの優勝を決めました! 結果を振り返ってみるとフル出場こそ2年ぶりですが、去年の一部参加を含めれば、4月に南條くんに敗れて以来、IVL ではドローも無しの10連勝となっています。ラピッドはクラシカルの公式戦とは違うものですが、こうして結果を数字で残せるのはやはり嬉しいものです。次回のIVL 開催は未定ですが、連続優勝を目指してまた頑張りたいと思います。


いっぷくでの対局の様子, Photo by Fujita

そしてIVL 終了後は、清澄白河のいっぷくに移動し、七盤初心者のためのチェスレッスンを開催してきました。こちらの講座には、前回12月を超える15名もの受講者に集まっていただき、いっぷくの店内は大盛況でした! 2時間のレッスン後、1時間近くも残って対局をするお客さんがほとんどで、多くのかたにチェスを楽しんでいただけたこと、とても嬉しく思っています。普段チェスのプレーヤーとして競技に参加されているかたはあまりおらず、将棋や囲碁をメインでやっているというかたが多いのも、ここでのレッスンの特色であり、面白い点だと思っています。引き続き、いっぷくさんにはお世話になり、こちらのイベントも続けていく予定です。次回は2/16(金) 19時からの開催予定です。

2018/01/24

The Highest Level Training in Japan in January 2018


今日は今年初めての羽生さんとのトレーニングでした。昨年末に竜王位奪取により永世七冠を獲得、国民栄誉賞が授与されることも正式に決まり、羽生さんはますます忙しそうです。そんな中、久々にトレーニングの声がかかったのは嬉しかったですね。いつも通り、午前中に集合して25分+1手30秒のゲームを2局指します。最初は私が白を引きました。

Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Habu, Y (FM, JPN, 2399)
Training (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 d6 3. d4 Bg4!?



珍しい変化ですが、これまで公式戦でも何回か指されたことはあります。黒はf3 を取ってポーンストラクチャーを乱す作戦が多いですが、羽生さんは単にc8 のビショップを閉じ込めたくなかったようです。

4. g3!? Nbd7


4... Bxf3 5. exf3 c6 6. d5 と進めば、白は将来的にf3-f4 とし、eファイルに回したヘビーピースでe7 を狙うでしょう。

5. Bg2 c6 6. Nc3 e5 7. h3 Bh5 8. O-O Be7 9. Nh4!



黒の白マス、黒マスどちらのビショップもナイトと交換できる良い手です。すぐにBh5-Bg6 としてくるかとも思いましたが、羽生さんは白にg3-g4 をさせるほうが良いと判断しました。

9... O-O 10. g4 Bg6 11. Nxg6 hxg6 12. b3


コンピュータの評価は早めにd4-d5 からセンターを閉じることですが、私はダブルビショップを持つ以上、センターは開くチャンスを残しておきたいと考えました。

11... Re8 13. Bb2 Bf8?!



検討ではこの手がどうなのかという意見が出ました。f8 に下がったビショップは特に仕事がなく、黒はポジションを改善する上手い手段がありません。Nd7-Nf8 のほうが、黒としては面白みがあると思います。

14. e3 Qc7 15. Qd2 a6 16. Rac1 Rad8 17. Rfd1 Be7 18. Qc2


d4 をピースで取り返したかった私は、ルークをd1 に回した後、クイーンを最も自然なc2 のマスに振ります。

18... Nh7 19. b4 Nhf8 20. a3 g5 21. dxe5 dxe5 22. c5!?



ダブルビショップを持つ白は、ここでポジションを開いて仕掛けることにします。c4-c5Nc3-Ne4 のどちらを先に指すか迷いましたが、前者を私は選びました。次のNc3-Ne4-Nd6 を黒は止めないといけません。

22... Nf6 23. Ne4 Nxe4 24. Bxe4 Nd7 25. Bd3!?


ナイトを交換し、ビショップをアクティブにした白は、ここでダイアゴナルを切り替えます。b1-g8 のダイアゴナルをビショップで抑え、Qc2-Qf5(or Qg6) を狙えば、白は駒得のチャンスだと考えたのです。e5 のポーン、f5 のマス、g5 のポーンが弱い黒はディフェンスが難しいかと思いましたが、羽生さんは上手く指して粘ります。

25... Nf6 26. Bc4 e4! 27. Qb3 Rf8 28. Bd4 Nd5 29. Qc2



私は本譜のようにピース交換を進めても、ビショップナイトの差で白にわずかでもチャンスがあると思いました。しかし、e4 の進みすぎたポーンは弱点として残しておき、ルークをdファイルに重ねるくらいで白は優位を保てたでしょう。

29... Rfe8 30. Qxe4?! Bxc5 31. Qf3 Bxd4 32. Rxd4 Nf6 33. Rcd1 Rxd4 34. Rxd4 Rd8 35. Qd1 Rxd4 36. Qxd4


一気に駒交換が進み、エンドゲームに突入します。ビショップの強みはナイトよりも広く利くことですので、このように両サイドにポーンが分かれている局面ではビショップの良さが出やすいはずです。

36... Qe7 37. Bd3 Qd7 38. Qxd7 Nxd7 39. f4 gxf4



白はh3 のポーンが抑え込まれたままではキングサイドのポーンマジョリティを活かしづらいため、ダブルポーンを解消させてでも、f2-f4 を仕掛けます。一方で黒はg5 にポーンを残すのが良いとの判断であれば、ダブルポーンを消すよりも一見不自然な39... f6!? もありえそうです。

40. exf4 c5 41. Kf2 Kf8 42. Ke3 Ke7 43. h4?!


指した直後にしまったと思いましたが、後悔しても仕方がありません。g4 の守りを消せば、ナイトがf6 に来た際にターゲットになってしまいます。しかし代わりに白が勝つチャンスを作れる変化が何かと言われると、なかなか見つけるのが難しいです。43. g5 f6 44. h4 fxg5 45. fxg5 cxb4 46. axb4 Ne5 47. Be4 b6 48. Kf4 Nd7 49. h5 a5 50. bxa5 bxa5 51. Bb1 a4 52. Ba2 Kf8 53. Kf5 Ke7 くらいでも、黒はタフなディフェンスで白に決定打を与えません。

43... cxb4 44. axb4 Nf6 45. Be4



Nf6-Nxg4Nf6-Nd5+-Nxb4 に同時に対応するには、この1手しかありません。ナイトとビショップを交換したポーンエンディングは、少なくとも負けはないと思っていましたし、それ以上にこの手以外の選択肢がないため、ビショップをe4 に進めます。

45... Nxe4


検討ではこの手が悪く、b7 のポーンをかわすほうが良いとの話でしたが、実際にはそんなことはありませんでした。45... b6 46. Bf3 a5 47. bxa5 bxa5 48. Kd4 という展開良いりも、ピースを交換したほうが黒にとっては分かりやすいでしょう。しかし、それはキングの動きを間違えなければの話です!

46. Kxe4 Kd6??



この何気ない1手でゲームは終わりました。キングがどのマスに動くかはポーンエンディングの要ですが、ここは黒の負けとなります。代わりに46... b6 47. h5 f6! (47... a5!? 48. bxa5 bxa5 49. g5 Kf8 50. Kd5 Kg8 51. Kc5 Kh7 52. Kb5 f6! 53. Kxa5 fxg5 54. fxg5 Kg8 55. Kb6 Kf7 56. Kc5 Ke6 57. Kd4 Kf5 58. h6 gxh6 59. gxh6 Kg6= この変化は黒のキングの動きが面白いですが、こんな苦労をする必要はありません。) 48. Kd5 Kd7 49. g5 fxg5 50. fxg5 Ke7 51. Kc6 a5 52. bxa5 bxa5 53. Kb5 Ke6 54. Kxa5 Kf5 55. h6 gxh6 56. gxh6 Kg6= これでポーンを全て捌き、ドローです。

もう1つ、キングを動かすとすれば、それはe6 のマスです。46... Ke6!? 47. f5+?? (47. Kd4 b6 48. h5 f6 49. Kc4 Kd6 50. Kd4=) 47... Ke7 48. Ke5 b6 49. Kd5 a5 50. bxa5 bxa5 51. Kc5 Kf6 52. Kb5 Ke5 53. h5 f6-+ 白が誘いに乗ってほいほいとfポーンを突くと、大変なことになります。こうした変化があることを踏まえると、このポーンエンディングはどの結果もありえ、見た目よりもずっと難しいということが分かります。大変勉強になりました。

47. h5! b6 48. g5! Ke6 49. f5+ Ke7 50. Kd5+-



ここまでくれば白の勝ちは明らかになります。白キングはクイーンサイドを捌いた後、ゆっくりとキングサイドに戻ってきます。それに対する黒キングは、h5-h6 のブレイクスルーを止めるため、キングサイドから離れることができません。

50... f6


この手では粘りになっていませんが、上記の変化にあった黒キングがh7 まで走り、f7-f6 を仕掛けるのも1手足りていません! 50... Kf8 51. Kc6 a5 52. bxa5 bxa5 53. Kb5 Kg8 54. Kxa5 Kh7 55. Kb6 f6 56. gxf6 gxf6 57. Kc6 Kh6 58. Kd6 Kxh5 59. Ke7! (59. Ke6?? Kg5-+) 59... Kg5 60. Ke6+- e6 とg5 はMined Squares になっており、1手間に合った白の勝ちです。

51. g6 Kf8 52. Kc6 a5 53. bxa5 bxa5 54. Kb5 1-0



最後はキングをキングサイドに戻し、タイミングを見てh5-h6 を仕掛ければ白の勝ちです。

つい先日、Chess.com のポーンエンディングレッスン100問を終え、その成果が出たかと試合直後は思っていましたが、解析してみるとまだまだ理解していないことがたくさんあると分かりました。エンドゲームに関しては、また別途記事を書くかもしれません。


お昼は近くにできたという新しいハンバーガー屋さんへ。将棋の対局中の食事ではなかなかないと思いますので、ハンバーガーを食べる羽生さんというのは新鮮かもしれませんね。お昼の席では今後の海外大会の話や、ライブで見ているゲームの話をしていました。

午後の2試合目もご紹介したいですが、今日は1試合の解説に力を入れすぎたのでこれくらいにします。今日、羽生さんから頂いたチェスの本も、中身をチェックしていずれ紹介するかもしれません。

2018/01/23

First and Third Saturday GM Tournament


ドゥブロヴニク旧市街の城壁 Wikipedia より

今年は9月の終わりから10月に頭にかけ、2年に一度のチェス界最大級のイベント、チェスオリンピアードが開催されます。今回の開催地はジョージアのバツミで、2016年にはオリンピアードに先駆け、World Cadets の開催地となりました。私は今回も、オリンピアード日本代表としてプレーするつもりです。

そしてオリンピアード後の予定ですが、日本にはしばらく戻らずに、ヨーロッパでプレーを続けようと考えています。マレーシアのノームトーナメント、First Friday も検討していますが、日程が合わせづらいことと、バツミから移動するには手間がかかることから、まずはハンガリーのブダペストへ戻るのが有力候補です。2400にレイティングを乗せるために最後にハンガリーでプレーしてから、今月でちょうど3年が経ちました。振り返ればあっという間の3年間だったと思います。

以前であれば、月の前半はブダペスト、後半はケチケメートと、ハンガリー国内だけでノームトーナメントに参加し続けることができました。しかし、昨年ケチケメートのオーガナイザーが亡くなったことを受け、ハンガリーのノームトーナメントは、ブダペストのFirst Saturday だけになってしまいました。そこで去年からスタートし、注目しているのが、モンテネグロのヘルツェグ・ノヴィで開催される、Third Saturday です。

この大会は名前の通り、毎月第3土曜日から9-11日間の日程で開催されるノームトーナメントで、IM、GM 両クラスがあります。(月によって片方だけの場合もあるようです) ヨーロッパでノーム獲得を目指すプレーヤーは、ブダペストとヘルツェグ・ノヴィを往復するというのが、昨年からの新しいスタイルのようです。私は昨年、一昨年同様、10月はマン島のトーナメントに参加したいと思っているため、Third Saturday に参加するとなれば、11月からになるでしょう。いずれにせよ、なるべく早くGM ノームを獲得して、日本に帰国したいですね。そもそも1つ目を取れるのか...(笑) パフォーマンス2600という数字は私にとって未知の領域ですが、今年はこれを達成できるよう頑張りたいと思います!

ちなみにヘルツェグ・ノヴィの試合会場までは3つの空港から行けるようで、今からどのルートで行くか検討しています。1つ面白いのは、南クロアチアのドゥブロヴニクから行く方法です。ドゥブロヴニクはアドリア海の真珠とも呼ばれる美しい街で、ジブリ映画、紅の豚の舞台のモデルにもなっています。ヨーロッパ遠征のメインの目的はもちろん試合をしてノームとレイティングを獲得することですが、どうせであれば今まで行ったことのない街に足を運び、見識を広げたいですね。

Third Saturday

2018/01/15

第2回七盤初心者のためのチェスレッスン


12月に開催した第1回の様子

12月に清澄白河のいっぷくで開催した、第1回七盤初心者のためのチェスレッスンは、多くのボードゲームファンに集まっていただき、私自身とても楽しませていただきました。いっぷくでのチェス講座は、今後も1月に1回のペースで秋まで続けさせていただく予定です。今月は27日(土) の開催で、キングの動きを中心とした解説をしようと思っています。池上で行っていたサタデーレクチャーとは一風違ったレクチャーを行っていこうと思いますので、引き続きよろしくお願い致します。

【日時】 2018年1月27日(土) 18:30~20:30
【会場】 どうぶつしょうぎcafe いっぷく(最寄駅:清澄白河駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【参加費】 2000円
【申し込み】 どうぶつしょうぎcafe いっぷく ご予約フォーム

それでは1月もよろしくお願い致します。今月もチェスプレーヤーだけでなく、様々なボードゲームファンの皆様と交流できることを楽しみにしています。


2018/01/12

FIDE Arbiter's Seminar in Tokyo 2018 Information

昨年末から話題になっていたアービター講習会の情報が、先日正式に公開されました。日本で初となるアービターのセミナーは、2月終わりに東京の蒲田で開催されます。以下、Yumiko Hiebert さんからの情報です。

【日時】 2018年2月23日(金)~25日(日)
【会場】 大田区民センター第5教室(最寄駅:JR蒲田駅)
【形式】 講習+試験
【参加費】 8000円
【スケジュール】 2月23日、24日 10時~18時、25日 10時~16時半
【備考】 2018 Arbiter's Manualをダウンロードしたパソコンをご持参ください。
セミナーは英語で開催されます。空き時間の質問は日本語でも可能ですが、原則的にセミナーに通訳はつかないことをご了承ください。
【申し込み】 yumichan(a)thehieberts.com (a) を@ に変えて、メールしてください。

知らない人のために補足しますと、アービターというのはチェスの公式の大会では必ず会場にいて、試合進行や選手間のトラブル解決に携わる役職のことです。今回のセミナーでは、3日間続くセミナーと最終日の試験をパスすれば、国際チェス連盟が認める正式な、FIDE National Arbiter の資格を取得することができます。また、将来アービターになろうと思っている人だけではなく、アービター側から見たチェス、ルールなどをもっと深く知りたい、などと言う人にも、とても勉強になるセミナーであるとのことです。

申し込みや事前の問い合わせは、私ではなくYumikoさんにお願いします。この機会にアービターの資格を持つ人が日本に増えると良いですね。どんなセミナーになるか、私も楽しみにしています。

FIDE Arbiters' Seminar in Tokyo, Japan
2018 Arbiter's Manual

2018/01/09

Chess Center in Tokyo Will Be Closed on 28th January 2018


チェスセンターでのレクチャーの様子 Photo by Kawanaka

先週、私のもとに1つ残念なニュースが飛び込んできました。私がチェスを始める以前から池上で営業をしていたチェスセンターが、今月いっぱいでクローズドになることが決まったとのことです。チェスセンターは日本チェス協会の営業する貴重なチェス交流の場でしたので、急な閉鎖をとても残念に思います。そして私が長く続けていたチェスセンターでのレクチャーも、今週13日が最後となります。

実はチェスセンター閉鎖の話は昨年から私の耳には入っていたのですが、当初の予定はもうしばらく先でした。それが今月に早まったことで、今週末のレクチャーのテーマも変更にしようと思います。昨年末に出した告知の記事は削除します。

【日時】 2018年1月13日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Positional Play
【テーマ詳細】

私のチェスの基本になっているのは、いかにポジションを改善し、自分に良いポイントを作り、相手に悪いポイントを作るか、そして相手との差を作るかといったことです。そうしたポジショナルプレーのアイディアは、これまでのレクチャーでもかなり紹介してきましたが、今回はその総まとめをしようと思います。日本のプレーヤーはややタクティカルなプレーに走りがちな面があると思いますので、最後のレクチャーを皆さんのポジショナルプレーを見直す、1つのきっかけにしていただければ幸いです。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

チェスセンターの営業は週末のみですので、今月の土日6日間が最後のオープンとなります。行きたかったのにうっかり2月になってしまった、ということのないようお気を付けください。

2018/01/08

Simultaneous Games at Nagoya 2018 Event Report


この時期、サカエチカも新年仕様です

昨日は今年最初のイベントとして、名古屋で同時対局を行ってきました。これまで名古屋ではTuさん、南條くんが同時対局を行っておりますが、私は初めてでした。昨年は自身最多となる1年に3回の名古屋大会への参加があり、年々名古屋チェスクラブとの付き合いも増えているように思えます。


今回の参加者は8名で、11月の函館と比べれば少ないですが、その分レイティング2000オーバーも参加しており、全体的にレベルは高いです。そのような中でいくつか難しいポジションも現れてハラハラしましたが、大きく崩れることなく指し続けられたと思います。


Kojima, S - Suzuki, M
Nagoya Simul 2018
Position After 32... Qd8

鈴木さんとのゲームは細かなマヌーバリングを繰り返し、このようなポジションになりました。e4-e5 を警戒し、黒がクイーンをQf6-Qd8 と退いたところで勝負に出ます。

34. Ne6!? fxe6 35. Qxg6 h5 36. Bd4?!


ナイト交換をしたことで、もう少しで黒キングに迫れると考えましたが、少し見込みが甘かったです。ダイレクトなメイトスレットを作りますが、黒のディフェンスをきちんと計算していませんでした。代わりに36. e5! h4 37. g4 h3 38. Be4+/- ならば、白優勢でゲームは続いたでしょう。

36... Qe7??



これはディフェンスになっておらず、すぐに黒のピースが落ちます。36... e5! 37. fxe5 Nxe5 38. Rf7 Rh7 39. Bxe5 Rxe5 40. Ref2 Kh8 と進んだ場合、形勢判断は非常に難しいポジションになっていたでしょう。互いにfファイルが開けば、黒キングは危ないと思い込んでいました。

37. dxe6 Bxe6 38. f5+- Ne5 39. Bxe5 Bc4 40. Bxg7 Qxg7 41. Qxe8+ Kh7 42. Qg6+ Qxg6 43. fxg6+ 1-0


もう1つ難しかったのが藤沢さんとのゲームです。私がミドルゲームでのワンチャンスを逃し、エンドゲームに突入することになります。


Kojima, S - Fujisawa, H
Nagoya Simul 2018
Position After 33... Ke6

黒は1ポーンダウンですが、キングの位置の良さとダブルビショップ、e5 の分かりやすいターゲットにより、ポーンの代償はありそうです。

34. f3 g5! 35. Kf2 h5?!


g7-g5 はg7 のマスを空け、f4 のマスを抑える手として良いでしょう。しかし、h7-h5 は余計です。この時点で藤沢さんはg5-g4 を仕掛けるつもりなのかと思いましたが、キングサイドの4対2のポーンを捌き、白にコネクテッドパスポーンを与えることは、黒にとって得になりません。35... Bg7 から、すぐにe5 をアタックしておいたほうが良かったでしょう。

36. Ke3 g4?! 37. hxg4 hxg4 38. Bf4 gxf3 39. gxf3



白はBg7-Bh6 も恐れる必要はありません。黒に助けてもらってパスポーンとオープンファイルを作り、eポーンを進める方法をここから考えます。

39... Bg7 40. Rg1!


40. Bg5 Rd7 41. f4 と迷いましたが、せっかくオープンファイルができたのであれば、ルークを積極的に使うべきでしょう。

40... Rd7 41. Rg6+ Kd5 42. Ne4 Kc4



42... Bxe5 43. Bxe5 Kxe5 44. f4+ Kd5 (44... Kf5 45. Rf6+ Kg4 46. Rxc6! bxc6 47. Nf6++-) 45. Nf6++- e5 のポーンを取ってしまえば、ナイトフォークが避けられません。

43. e6 Bd4+ 44. Ke2 Re7 45. Nd6+ Kc3?


このゲーム最後のミスです。黒が粘るのであれば、キングはせめて下がらなければいけません。45... Kd5 46. Nf5 Re8 47. Nxd4 Kxd4 48. Bd6+/- このエンドゲームはまだ異色ビショップで難しいですが、私の経験上、白の2コネクテッドパスポーンに黒が対抗するのはかなり大変だと思います。

46. Bd2+!



この手がポイントで、黒キングをd4 のビショップから離しておくことで、Nd6-Nf5 での駒得を確定させます。

46... Kc2 47. Nf5! Bb5+ 48. Ke1 Bc5 49. Nxe7 Bxe7 50. Bg5 Bd6 51. Kf2 Bd3 52. Rg8 1-0


50手目で黒にBe7-Bh4+ の大逆転メイトを許すこともなく、なんとか勝ち切ることができました。最後まで残った藤沢さんとの試合も勝ったことで、今回の同時対局は私の8戦全勝という結果でした。私にとっても勉強になるゲームが多く、名古屋まで足を運んだ甲斐がありました。今回のイベントを企画してくださった名古屋チェスクラブの堀江さん、参加者の皆さん、同時対局のサポートをしてくれた妻に感謝したいと思います。ありがとうございました!

イベント後は手羽先で有名な世界の山ちゃんで、参加者たちとの打ち上げです。ここでもチェスボードを出していくつかポジションを考えたり、チェスの勉強について話し合ったり、ジャパンチェスマガジンについて説明をしたりと、楽しい時間を過ごすことができました。次回、名古屋に足を運ぶのは夏の大会でしょうかね。また名古屋にいける機会を今から楽しみにしています。


今回は到着後すぐに、名古屋駅地下のマグロ専門店、鮪小屋でから揚げ定食を堪能。たまには名古屋名物以外も良いですね。

2018/01/05

国内レイティング S116

2017年12月締め切りの国内レイティングが、ようやく今日確認できました。今回はジャパンオープン、名古屋オープンがメインで、年末のクリスマスオープンと学生選手権は未集計のようです。変動があったプレーヤーの上位勢は以下の通りです。

小島慎也 2475 -10
南條遼介 2437 +-0
馬場雅裕 2406 -4
青嶋未来 2389 -11
Alexander Averbukh 2332 +-0
山田弘平 2301 +14
松尾智彦 2288 +32
小林厚彦 2248 +6


ジャパンオープンで優勝した弘平くんは、初の2300台へ。名古屋で馬場さん、ジャパンオープンで南條くんに勝った松尾さんが、上位勢の中では大きく上げて2300目前です。逆にトップ5は、ジャパンオープンの冴えない結果が影響していますね... 私も大きくマイナスでした。

2018年はこのレイティングでのスタートです。私は1月2月と公式戦の機会が無いかもしれませんが、新年チェス大会、2月スタートの地方予選などに参加するプレーヤーは頑張ってください! 私も指し始めとなる明後日、名古屋での同時対局イベントをしっかりこなしてこようと思います。S116 の他のプレーヤーのレイティングは、いつも通り松戸チェスサークルのHP から確認ができます。

2018/01/02

謹賀新年 2018

明けましておめでとうございます。2017年もあっという間に終わり、もう2018年ですね。本年もどうぞよろしくお願い致します。

2015年の頭にIM タイトルを獲得し、そろそろ3年になろうとしています。この3年間、海外大会はHawaii Chess Festival、Baku Olympiad、IOM、North American Open くらいで、2012-2014の4年間に比べると、ぐっと海外でのFIDE 公式戦は少ない期間でした。今年は心機一転、3月のCappelle la Grande に始まり、海外大会にも積極的にチャレンジしていこうと思います。具体的には9月から10月にかけてのBatumi Olympiad の後、またハンガリーか、新しいマレーシアのGM トーナメントへの参加を検討していますが、まだ正式には決まっていないので、決まり次第お知らせします。

昨年は結婚、引っ越しと私生活でも大きな変化があり、妻をはじめ多くの人からのサポートを受けて、また新しい年を迎えられたと思っています。もう少しで8年目に入るこちらのブログもしっかり続けていくつもりですので、引き続きよろしくお願い致します。

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