2018/01/24

The Highest Level Training in Japan in January 2018


今日は今年初めての羽生さんとのトレーニングでした。昨年末に竜王位奪取により永世七冠を獲得、国民栄誉賞が授与されることも正式に決まり、羽生さんはますます忙しそうです。そんな中、久々にトレーニングの声がかかったのは嬉しかったですね。いつも通り、午前中に集合して25分+1手30秒のゲームを2局指します。最初は私が白を引きました。

Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Habu, Y (FM, JPN, 2399)
Training (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 d6 3. d4 Bg4!?



珍しい変化ですが、これまで公式戦でも何回か指されたことはあります。黒はf3 を取ってポーンストラクチャーを乱す作戦が多いですが、羽生さんは単にc8 のビショップを閉じ込めたくなかったようです。

4. g3!? Nbd7


4... Bxf3 5. exf3 c6 6. d5 と進めば、白は将来的にf3-f4 とし、eファイルに回したヘビーピースでe7 を狙うでしょう。

5. Bg2 c6 6. Nc3 e5 7. h3 Bh5 8. O-O Be7 9. Nh4!



黒の白マス、黒マスどちらのビショップもナイトと交換できる良い手です。すぐにBh5-Bg6 としてくるかとも思いましたが、羽生さんは白にg3-g4 をさせるほうが良いと判断しました。

9... O-O 10. g4 Bg6 11. Nxg6 hxg6 12. b3


コンピュータの評価は早めにd4-d5 からセンターを閉じることですが、私はダブルビショップを持つ以上、センターは開くチャンスを残しておきたいと考えました。

11... Re8 13. Bb2 Bf8?!



検討ではこの手がどうなのかという意見が出ました。f8 に下がったビショップは特に仕事がなく、黒はポジションを改善する上手い手段がありません。Nd7-Nf8 のほうが、黒としては面白みがあると思います。

14. e3 Qc7 15. Qd2 a6 16. Rac1 Rad8 17. Rfd1 Be7 18. Qc2


d4 をピースで取り返したかった私は、ルークをd1 に回した後、クイーンを最も自然なc2 のマスに振ります。

18... Nh7 19. b4 Nhf8 20. a3 g5 21. dxe5 dxe5 22. c5!?



ダブルビショップを持つ白は、ここでポジションを開いて仕掛けることにします。c4-c5Nc3-Ne4 のどちらを先に指すか迷いましたが、前者を私は選びました。次のNc3-Ne4-Nd6 を黒は止めないといけません。

22... Nf6 23. Ne4 Nxe4 24. Bxe4 Nd7 25. Bd3!?


ナイトを交換し、ビショップをアクティブにした白は、ここでダイアゴナルを切り替えます。b1-g8 のダイアゴナルをビショップで抑え、Qc2-Qf5(or Qg6) を狙えば、白は駒得のチャンスだと考えたのです。e5 のポーン、f5 のマス、g5 のポーンが弱い黒はディフェンスが難しいかと思いましたが、羽生さんは上手く指して粘ります。

25... Nf6 26. Bc4 e4! 27. Qb3 Rf8 28. Bd4 Nd5 29. Qc2



私は本譜のようにピース交換を進めても、ビショップナイトの差で白にわずかでもチャンスがあると思いました。しかし、e4 の進みすぎたポーンは弱点として残しておき、ルークをdファイルに重ねるくらいで白は優位を保てたでしょう。

29... Rfe8 30. Qxe4?! Bxc5 31. Qf3 Bxd4 32. Rxd4 Nf6 33. Rcd1 Rxd4 34. Rxd4 Rd8 35. Qd1 Rxd4 36. Qxd4


一気に駒交換が進み、エンドゲームに突入します。ビショップの強みはナイトよりも広く利くことですので、このように両サイドにポーンが分かれている局面ではビショップの良さが出やすいはずです。

36... Qe7 37. Bd3 Qd7 38. Qxd7 Nxd7 39. f4 gxf4



白はh3 のポーンが抑え込まれたままではキングサイドのポーンマジョリティを活かしづらいため、ダブルポーンを解消させてでも、f2-f4 を仕掛けます。一方で黒はg5 にポーンを残すのが良いとの判断であれば、ダブルポーンを消すよりも一見不自然な39... f6!? もありえそうです。

40. exf4 c5 41. Kf2 Kf8 42. Ke3 Ke7 43. h4?!


指した直後にしまったと思いましたが、後悔しても仕方がありません。g4 の守りを消せば、ナイトがf6 に来た際にターゲットになってしまいます。しかし代わりに白が勝つチャンスを作れる変化が何かと言われると、なかなか見つけるのが難しいです。43. g5 f6 44. h4 fxg5 45. fxg5 cxb4 46. axb4 Ne5 47. Be4 b6 48. Kf4 Nd7 49. h5 a5 50. bxa5 bxa5 51. Bb1 a4 52. Ba2 Kf8 53. Kf5 Ke7 くらいでも、黒はタフなディフェンスで白に決定打を与えません。

43... cxb4 44. axb4 Nf6 45. Be4



Nf6-Nxg4Nf6-Nd5+-Nxb4 に同時に対応するには、この1手しかありません。ナイトとビショップを交換したポーンエンディングは、少なくとも負けはないと思っていましたし、それ以上にこの手以外の選択肢がないため、ビショップをe4 に進めます。

45... Nxe4


検討ではこの手が悪く、b7 のポーンをかわすほうが良いとの話でしたが、実際にはそんなことはありませんでした。45... b6 46. Bf3 a5 47. bxa5 bxa5 48. Kd4 という展開良いりも、ピースを交換したほうが黒にとっては分かりやすいでしょう。しかし、それはキングの動きを間違えなければの話です!

46. Kxe4 Kd6??



この何気ない1手でゲームは終わりました。キングがどのマスに動くかはポーンエンディングの要ですが、ここは黒の負けとなります。代わりに46... b6 47. h5 f6! (47... a5!? 48. bxa5 bxa5 49. g5 Kf8 50. Kd5 Kg8 51. Kc5 Kh7 52. Kb5 f6! 53. Kxa5 fxg5 54. fxg5 Kg8 55. Kb6 Kf7 56. Kc5 Ke6 57. Kd4 Kf5 58. h6 gxh6 59. gxh6 Kg6= この変化は黒のキングの動きが面白いですが、こんな苦労をする必要はありません。) 48. Kd5 Kd7 49. g5 fxg5 50. fxg5 Ke7 51. Kc6 a5 52. bxa5 bxa5 53. Kb5 Ke6 54. Kxa5 Kf5 55. h6 gxh6 56. gxh6 Kg6= これでポーンを全て捌き、ドローです。

もう1つ、キングを動かすとすれば、それはe6 のマスです。46... Ke6!? 47. f5+?? (47. Kd4 b6 48. h5 f6 49. Kc4 Kd6 50. Kd4=) 47... Ke7 48. Ke5 b6 49. Kd5 a5 50. bxa5 bxa5 51. Kc5 Kf6 52. Kb5 Ke5 53. h5 f6-+ 白が誘いに乗ってほいほいとfポーンを突くと、大変なことになります。こうした変化があることを踏まえると、このポーンエンディングはどの結果もありえ、見た目よりもずっと難しいということが分かります。大変勉強になりました。

47. h5! b6 48. g5! Ke6 49. f5+ Ke7 50. Kd5+-



ここまでくれば白の勝ちは明らかになります。白キングはクイーンサイドを捌いた後、ゆっくりとキングサイドに戻ってきます。それに対する黒キングは、h5-h6 のブレイクスルーを止めるため、キングサイドから離れることができません。

50... f6


この手では粘りになっていませんが、上記の変化にあった黒キングがh7 まで走り、f7-f6 を仕掛けるのも1手足りていません! 50... Kf8 51. Kc6 a5 52. bxa5 bxa5 53. Kb5 Kg8 54. Kxa5 Kh7 55. Kb6 f6 56. gxf6 gxf6 57. Kc6 Kh6 58. Kd6 Kxh5 59. Ke7! (59. Ke6?? Kg5-+) 59... Kg5 60. Ke6+- e6 とg5 はMined Squares になっており、1手間に合った白の勝ちです。

51. g6 Kf8 52. Kc6 a5 53. bxa5 bxa5 54. Kb5 1-0



最後はキングをキングサイドに戻し、タイミングを見てh5-h6 を仕掛ければ白の勝ちです。

つい先日、Chess.com のポーンエンディングレッスン100問を終え、その成果が出たかと試合直後は思っていましたが、解析してみるとまだまだ理解していないことがたくさんあると分かりました。エンドゲームに関しては、また別途記事を書くかもしれません。


お昼は近くにできたという新しいハンバーガー屋さんへ。将棋の対局中の食事ではなかなかないと思いますので、ハンバーガーを食べる羽生さんというのは新鮮かもしれませんね。お昼の席では今後の海外大会の話や、ライブで見ているゲームの話をしていました。

午後の2試合目もご紹介したいですが、今日は1試合の解説に力を入れすぎたのでこれくらいにします。今日、羽生さんから頂いたチェスの本も、中身をチェックしていずれ紹介するかもしれません。

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