今月頭から、オンラインでのオリンピアードが開催されています。これは本来であれば今月開催される予定であった、ロシア、モスクワでのオリンピアードが、新型コロナの影響で来年夏に延期されたことを受け、急遽企画されたイベントです。Division 3 Pool A で登場した日本チームは、残念ながらシンガポール、アルバニアなどの強豪国を含むDivision 3 突破はなりませんでしたが、3日目にGM を含む格上のモナコに勝ったことで、応援実況も大きく盛り上がりました。NCS のYouTube チャンネルで応援実況をご覧になっていない方は、アーカイブから是非チェックしてみてください。私は2日目に解説役として登場しています。
そして日本が敗れた後もこのイベントは続き、そろそろクライマックスを迎えます。日本時間の昨晩、インド、ポーランド、ロシア、アメリカがベスト4に残り、先ほどインドvs. ポーランドのセミファイナルが終わりました。6人対6人のチーム戦を2回行い、決着がつかなかった場合にアルマゲドンになるセミファイナルでは、インドとポーランドは一歩も譲らず、1回目はポーランドが4-2 で勝ち。2回目は4.5-1.5 でインドが勝ちます。その中で私が面白いと思ったゲームを簡単にご紹介しましょう。
白は1ポーンアップのうえ、黒キングを危険な場所に追い出しています。後は黒の反撃を気にしつつ、このキングを仕留めにいきます。
一度手を繰り返してクイーンを戻したWojtaszek でしたが、ここはきっちりとナイトの手を読み切り、勝負を決めてきました。このナイトを取るとg6 のポーンが落ちてゲームは終わりです。
ここまでくれば読める手ではありますが、f7 やh6 に比べると、g7 のマスというのはナイトでチェックする場所になりづらく、盲点になるかもしれません。e8 に黒キングがいるうちは、なかなかナイトはg7 まで潜り込めませんし、本譜のようにf5 まで黒キングを追い出すパターンも珍しいでしょう。
Duda はここまで絶好調で、直前には黒番でAnand を破っています。この試合も2ポーンアップで、g,h のパスポーンは止まらず、勝負はすでに先が見えているように思えます。しかし、ここで信じられないブランダーが出ます。
大人しくキングがf2 に寄れば黒のルークは脅威ではなく、それからゆっくりパスポーンを進めるべきでした。Duda はh7 でビショップを取ってプロモーションが止まらないと勘違いしたか、パスポーンがg6 だけになっても黒キングが寄れないと勘違いしたか、定かではありません。いずれにせよ、Anand にとっては逆転の絶好のチャンスです。
瞬く間に黒は3ポーンを奪い、逆転に成功しました。キングがクイーンサイドから侵入するプランも明らかで、Anand が間違えるような状況ではないでしょう。
もしこの試合、Duda が勝っていてもスコアは3.5-12.5 ですので、インドの勝ちです。しかし、ここまで信じられないほどの高いパフォーマンスを出してきたDuda が突如崩れたことで、ポーランドチームにも動揺が走ったかもしれません。勝ち抜けを決めるアルマゲドンは、Koneru がSocko を黒番で下し、インドが決勝へと駒を進めています。通常のオリンピアードとは違う、オンラインの早指しですので、ミスや大崩れも起こりがちです。それでもと言うべきか、だからこそと言うべきか、見ていてわくわくするようなドラマが盤上で今日も繰り広げられています。ロシアvs. アメリカの勝者とインドが当たる決勝まで、きっちりチェックしてこの大会の行く末を見守りたいと思います。
Wojtaszek, R - Vidit, S
2020 FIDE Online Olympiad
Position After 42... Kh6
43. Rg8! Qf3 44. Qg7+ Kg5 45. Qe5+ Kh6 46. Qg7+ Kg5 47. Ne6+!
47... Kg4 48. Qd4+ Kf5 49. Ng7+!
49... Kg5 50. Qh4# 1-0
Wojtaszek, Duda が男子1B,2B でともに勝ち、マッチの勝利も決めました。この勢いでポーランドが決勝に進むかと思われましたが、色を変えた次の試合で事件が起こります。
Duda, J - Anand, V
2020 FIDE Online Olympiad
Position After 55... Rd1
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