2024/02/16

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第28回予告

2024年2回目のチェス講座告知です。2月のYouTubeでの講座は今週末、2/18 20時からスタートです。

2月のYouTubeの講座テーマは『ダイアゴナルの切り替え』です。ビショップ、ないしはクイーンの斜めの利き筋は、相手の駒を攻撃する、あるいは複数のマスを抑えるのにとても重要です。そのため試合の中でいかに、どこのダイアゴナルを抑えるかがしばしば作戦のポイントとなります。様々な状況でどのダイアゴナルを重視し、そのダイアゴナルのコントロールを切り替えていくかを見ていきましょう。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第28回『ダイアゴナルの切り替え』|2024.02.18

2024/02/15

Chess 2024 Day-to-Day Calendar: A Year of Chess Puzzles


X(旧Twitter) で私をフォローしてくださっているかたはご存じだと思いますが、先月半ばから毎朝、白先2手メイトのチェスプロブレムを投稿しています。これらは先月の東海オープンで賞品としていただいた、Chess 2024 Day-to-Day Calendar: A Year of Chess Puzzles から出題しています。こちらは2手メイトの問題が毎日ついている日めくりカレンダーです。今夜は最近のプロブレムの中で、特に面白かったものをご紹介します。
Charles Pelle 1936
White to move and mate in two moves

こちらは2月14日の問題です。バレンタインデーのこの日はハート形に駒を並べたパズルなどが出題されることもありますが、これは特にバレンタインに関係なさそうです。ここから動けない黒キングをいかに2手でメイトするかを考えます。すでにキングを追い詰めているので簡単そうに思えますが、最初の1手で工夫をしないと黒になにかしらメイトを防ぐ手を指されてしまうことになります。

1. 0-0-0!


2手でメイトするにはこの手しかありません。チェスプロブレムにおいてはすでにキャスリングの権利を失っていると証明できない限り、初期位置のキングとルークはキャスリングできるものとします。ここでクイーンサイドにキャスリングすることで、d2のクイーンのピンが外れて自由に動かせるようになり、次のQd2-Qe2#がメイトスレットとなります。これを黒がどう防ぐかがポイントですが、黒の応手に対して7種類の手がメイトになるのがこの問題の面白いところです。

1... Qe3


黒クイーンはb3ルークにピンされているため、クイーン交換はできません。そこでe2を抑えるために横移動をしますが... (最初、1... Qd3と書いていましたが、これはオリジナルのスレットである2. Qe2を防いでいませんでした。コメントでのご指摘、感謝いたします)

2... Ne1#


c3から黒クイーンが離れると、c2のナイトのピンが外れ、Nc2-Ne1#がメイトスレットになります。よくできた2手メイトのチェスプロブレムでは、白が1手目でメイトスレットを作り、黒がどの応手でそれを防いでも、異なるメイトスレットが生まれるものです。(ツークツワンクを利用し、白の初手でメイトスレットができていない場合もあります) 以下、他の黒の応手と白のメイトの手の組み合わせは、1... Nxf1 2. Rxf1#(ここで1段目のルークを使えるのが、1.0-0-0 が正解になるポイントでもあります), 1... e3 2. Qxd5#, 1... Bh6 2. Ne5#, 1... g2 2. Qf2#, 1... Qxb3 2. Qe2#(Qd2-Qe2を防がない場合は全てこれです) となります。上に7種類と書いてありますが、ここではあえて6種類しか説明してありません。よろしければここで挙げていない黒の1手目と、それに対応する白の2手目を考えてみてください。

こうした2手メイトは、チェスのライト層や将棋ファンにも楽しんでもらえるものですので、しばらく毎朝の2手メイト投稿は続けていくつもりです。

2024/02/04

Symmetrical English 6. Qd2!?


久々にオープニングのアイディアについてを中心とした記事です。昨年11月に中野チェスクラブの非公式戦で指した試合をご紹介します。

Kojima, S - Kimura, R
Nakano Chess Club

1. c4 c5 2. g3 g6 3. Bg2 Bg7 4. Nc3 Nc6 5. d3 d6 6. Qd2!?

初めて見たときは、なんと奇妙な手なのだろうかと思いました。展開していない黒マスビショップの進路をふさぐようにクイーンを配置するのはどう考えても不自然です。この変化を見つけたのはアジア大会でSindarov相手に5. Nf3 d6 6. 0-0 Rb8!?の変化で負けてからラインを調べ直していた時でした。ここでの黒の6手目はいくつも面白い手があるのですが、その1つに6... Qd7!?があります。本譜はこの黒の手を先に白で指してしまおうというもので、白はクイーンサイドにフィアンケットを組めばクイーンの位置の不自然さも解消できます。近年はCarlsenにも指されている、注目すべき手の1つです。

6... e5


黒はc7-c5とe7-e5を組み合わせた、いわゆるBotvinnikのセットアップです。d5をアウトポストにすることを嫌うのであれば、6... e6 7. b3 Nge7 8. Bb2 O-O 9. h4 h6とする流れもありえるでしょう。

7. b3 Nge7 8. Bb2 Rb8 9. e3 a6 10. Nge2 Be6 11. Nd5

白はd6-d5を防ぐよう、黒のBc8-Be6を見てからナイトをd5に侵入させます。白の駒組みはClosed Sicilianで白黒を反転させたようで、とても手堅い形になっています。以下、参考の棋譜と局面です。1. e4 c5 2. Nc3 Nc6 3. g3 g6 4. Bg2 Bg7 5. d3 d6 6. f4 e6 7. Nf3 Nge7 8. O-O O-O 9. Be3 b6 10. Bf2 Bb7 11. Qd2 Qd7 12. Rad1 Rad8 13. Rfe1 Nd4!=/+ / Grigoryan - Dubov / EU-ch 2013
Reference Diagram

こうした形で指せるのであれば、本譜の6. Qd2もタイミングが早くて奇妙に見えるものの、バランスの取れた手になってくるでしょう。

11... b5 12. O-O Qd7 13. f4 Bh3?

d5でのナイト交換に備えた手ですが、センターに残ったキングが危険になります。13... O-O 14. Rf2!? f5 15. Raf1+/= くらいで白やや優勢ですが、もちろん黒も指せる局面です。

14. Bxh3! Qxh3 15. fxe5


15. Nc7+ Kf8 16. fxe5 dxe5 17. Nxa6+- 先にe5のポーン交換を入れておけばa6を取った後でc5にナイトの逃げ場があることを失念していました。しかし、本譜も面白いアイディアが登場します。

15... Nxd5 16. exd6!

黒はキャスリングが遅れており、g7のビショップがまだ浮いています。それを利用したIntermediate Moveでポーンアップを決め、白勝勢です。一方でb2のビショップが浮いていないのは、奇妙に思えた6. Qd2の恩恵です。

16... O-O 17. Bxg7 Nxe3 18. Qxe3 Kxg7


試合後、木村くんにはルークを先にクイーンに当てればc5が落ちることを防げるのではないかとしてきましたが、h6にクイーンの逃げ場があるためダメでした。18... Rbe8 19. Qh6! Qxh6 20. Bxh6 Rxe2 21. Bxf8+-

19. Qxc5 Rbe8 20. Nf4 Qd7 21. Qg5!?


最後はどう決めるか悩みましたが、d6を返しても黒キングに迫るのに十分だと判断しました。21. cxb5 axb5 22. Rac1+-も堅実です。

21... Qxd6 22. Nh5+ Kh8 23. Nf6 Qd4+ 24. Kh1 Re5 25. Qh6 Rh5 26. Qxf8# 1-0

ビショップが抜けたフィアンケットの跡地を利用し、f6にナイト、h6にクイーンを刺す形は鉄板で、h7のメイトと浮いたf8のルークを狙ってメイト受け無しとなります。この変化を対面のゲームで指したのは初めてで、次回使うかは分かりませんが、面白い棋譜が残せてなによりです。
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