一週間ぶりの更新です。前回の週末は、IVL とサマーオープンでしたが、この週末はジュニア選手権、小学生選手権、シニア選手権が開催され、私は金曜日から日曜日まで会場に足を運んできました。子供たちは今年も白熱した好ゲームを見せてくれました。一つ面白かったゲームをご紹介しましょう。
土曜日のジュニア選手権二日目、トップボードは4連勝の大多和くんと、3.5P の柏原くんの大阪対決となりました。柏原くんのうまい指しまわしで、白のアドバンテージはあまりない序盤だと思っていましたが、私がポジションを見に戻るとこうした中盤戦に。ここで優勝を決めたい大多和くんは、勝負を仕掛けます。
1. e6!?
私がこの局面で考えていたのは、1. f5! と突く手で、こちらのほうがh7 への攻撃が通りやすく、白の勝ちが明白です。1. f5! Qxe5 (1... gxf5 2. Bxf5 Qxe5 3. Bxh7++- こうなれば、fファイルに追い出された黒キングは、白のルークたちの餌食となり、ゲームオーバーです。 2. f6!+- こうしてg6 を取るのではなく、ポーンを突いて勝負ありです。次にBe4-Bxg6 で黒キングの守りは崩壊します。
1... Qxf4 2. Bxg6 Qc1+
私は恥ずかしながら、この当たり前の1手が見えておらず、1. e6 でも勝ちになるかと思っていました。黒陣に刺さったg5 のポーンを掠め取り、黒は抵抗を続けます。
3. Kg2 Qxg5+ 4. Rg3 Qxg3+ 5. Kxg3 Rxg6+
黒はクイーンを捨てましたが、ポーンとルークとビショップを取って、自らのキングを生かしました。ちなみに柏原くんが指したビショップを取る手が正解で、h2 のルークを取る手はだめです。5... Bd6+ 6. Kh3! 私はこの手が見えておらず、ルークを取りにいく手が良いと勘違いしていました。(6. Kf2? Bxh2 7. Bf7+ Kf8 8. Qf5=) 6... Rxg6 (6... Bxh2? 7. Bf7++-) 7. Rg2! こうしてすぐにルークが交換できる展開は、白にとってありがたいものです。
6. Kf2 Rf6+?
時間切迫で、柏原くんはミスを犯しました。難しいポジションですが、6... Bg7 と出しておけば、黒はキングの守りを厚くしながら、d4 のポーンを守れたため、白は本譜のように簡単に勝つことはできなかったでしょう。
7. Kg1 h6 8. Rg2+ Kh8 9. Qg3 1-0
先程とマテリアルは変わっていませんが、素早くgファイルにヘビーピースを重ねた白が、メイトスレットを作って勝利を収めました。このラウンド、Gary は長瀬くんとドローだったため、これで大多和くんは5R 終了時点で2位に1P 差をつけ、最低でも同時優勝を決めました。
ジュニア選手権の最終戦は、Gary が直接対決で大多和くんを破り、4P の小柴 - 星野(華)戦は逆転で小柴くんが勝利を収め、大多和くん、Gary、小柴くんの3名が、6R の全ラウンドを終えて5P で並びました。全日本でも活躍した大多和くんとGary にとっては順当な結果だとして、今年の頭から400近くレイティングを伸ばしてきた小柴くんは、完全にダークホースでしたね。タイブレークでトロフィーは、Gary、大多和くん、小柴くんの順に1位-3位と贈られていますが、3人ともジュニアチャンピオンと呼んで差支えないでしょう。3人とも、おめでとう!
日曜日に開催された小学生選手権は、昨年に引き続き、アメリカから来た泉くんが4戦全勝での優勝を決めました。2位、3位を分けたのは、同じくアメリカから来たGlshausser 翔くんと、逢阪くんの2人です。翔くんは、私が3月に対戦したアメリカのGM Gareev から、泉くんもソ連でコーチをしていたプレーヤーから指導を受けているそうで、アメリカのチェスのレベルの高さが伺えました。この3人のプレーの質や、試合に臨む姿勢は、とても小学生のものとは思えません。
小学3年生以下のAクラスでも、初めて会う子供たちと交流ができましたし、私の生徒たちも良い試合を見せてくれました。子供たちの大会はここ最近、非常に盛り上がりを見せていますので、彼らの中から将来、マスターになるプレーヤーが育ってくれればと期待しています。
最後に、今回引率として会場にいらっしゃった保護者やチェスクラブの皆さん、お疲れ様でした。子供たちには、こうしたジュニア、小学生だけの大会だけでなく、一般の大会にもチャレンジしてもらえたらと思います。また別の大会で、お会いできることを楽しみにしています!