2015/07/18

16th IVL Tournament Report


注目のプロ棋士対決、羽生さんと青嶋くんの試合は、羽生さんの勝ちでした。 Photo by Hasegawa

予告していた通り、16回目となるIVL を表参道で開催しました。前回に引き続きの参加となる羽生さん、さらにはプロ棋士の青嶋未来くん、スウェーデンのFM Anton Frisk さんたちが集まり、豪華なメンバーとなりました。10人での5R スイスの結果は以下の通りです。

1st Place Habu Yoshiharu (FM, JPN, 2415) 5/5
2nd-5th Place Yamada Kohei (CM, JPN, 2220) 3/5
Kockum Anton Frisk (FM, SWE, FIDE 2358) 3/5
Aoshima Mirai (JPN, 2407) 3/5
Kojima Shinya (IM, JPN, 2449) 3/5



驚くべきことに、前回に続いて羽生さんの全勝優勝です! 4人のマスターと、実力はマスタークラスの青嶋くんの5人全員を相手に、全て勝つというのは、並大抵ことではありません。もともと高い実力はありましたが、今の羽生さんにはそれ以上の勢いがあり、劣勢のポジションでもひっくり返して、逆転勝ちしてしまいます。3R での、私とのゲームを公開しておきます。

Kojima, S (IM, JPN, 2449) - Habu, Y (FM, JPN, 2415)
16th IVL (3)

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nd2 Be7 4. c3 c5 5. dxc5 Bxc5 6. exd5 exd5



こうしたFrench Tarrasch のIQP ポジションを持つのは久しぶりです。白はd4 のアウトポストをしっかりと抑えたうえで、ゆっくりとd5 にプレッシャーをかけていけば、長期的なアドバンテージがあるはずです。

7. Ngf3 Nf6 8. Bb5+ Nc6 9. O-O O-O 10. Nb3 Bd6 11. Bg5 Bg4 12. Be2!


白は、ひとまずチェックでb5 に展開していたビショップを退き、ピンを外しておきます。IQP を持たせている白にとって、白マスビショップを始めとするピースの交換は望むところです。

12... Re8 13. Re1 Bc7 14. Nfd4



羽生さんにとって一つ予想外だったのは、この手が成立することでした。

14... Bxe2 15. Rxe2 Qd6


15... Bxh2+? 16. Kxh2 Ng4+ 17. Kg3 Qxg5 18. Rxe8+ Rxe8 19. Qxg4 は当然、黒ダメです。

16. g3 Ne4 17. Nb5 Qd7 18. Rxe4!



どうすれば白が良くなるか考えていた私は、面白いアイディアを思いつきました。こうして一時的にエクスチェンジを捨てることにより...

18... Rxe4 19. Nc5 Qc8


c7 のビショップが狙われている以上、クイーンが下がるのはこのマスしかありません。

20. Nxe4 dxe4 21. Qd5!+/-



ここで重要なことは、ビショップナイトを交換しておくことよりも、e4 の進みすぎたポーンをアタックし、1ポーンアップすることです。これにより駒得が確実となり、是非とも勝ちたいゲーム展開になってきました。

21... Bb6 22. Nd6!?


試合後の検討で、22. Re1! と指したらどうかと羽生さんに指摘されました。これならば、本譜のように黒がポーンを突き捨て、白キングを弱体化させるアイディアは使えません。確かに、ここは少し勇み足でした。

22... Qd7 23. Rd1 e3!?



実戦的には非常に良いアイディアです。黒はどうせ落ちてしまうポーンを自ら相手に差し出し、白のポーンをfファイルからeファイルにずらしておきます。シンプルなアイディアでありながら、試合中あまり警戒していませんでした。

24. Bxe3 Bxe3 25. fxe3 Rd8 26. e4 Qe7 27. Nf5


ここはピンにされたナイトをどう組みかえようかと、工夫を凝らします。

27... Qf6 28. Qb3 g6 29. Rxd8+ Qxd8 30. Ne3 Qd2 31. Ng4?



指した直後に、これはまずい手だと分かりましたが、羽生さんに指摘されるまではなにが正解なのか気づいていませんでした。白の正着は、31. Nf1! とナイトを下げる手で、攻めよりも守りを重視するべきでした。f1 のナイトはアタックされる心配がなく、e3 のマスも守り続けているために黒クイーンのチェックも防いでいます。そうして守りをきちんとした後で、b7 を取りにいくなり、クイーン交換を持ちかけるなり、仕掛け方を考えるべきでした。

31... Qe1+! 32. Kg2 Qxe4+


e4-e3 によって弱められたポーンを奪い返され、さらにキングが危ない状況へと追い込まれます。

33. Kh3 Kg7 34. Qxb7 h5 35. Nf2 Qf3 36. b4 g5 37. b5 Qxf2 38. Qxc6 Qf1+ 0-1



はっきりとした駒得から負けるというのは、やはり悔しいものです。この後のラウンドでも、羽生さんはAnton さんと馬場さんを破り、5連勝での優勝を決めたのでした。


前回は負け越しだった弘平くんも、羽生さんと青嶋くんに負けた以外、3試合を勝って2位グループに入っています。タイブレークのブリッツを制したのは良かったですが、3/4 でリードしながら迎えた最終戦、白で青嶋くんに負けてしまったのは勿体なかったですね。羽生さんに敗れた初戦も、内容は良かったと聞いています。


IVL 初参戦の青嶋くんも、見事に勝ち越しです。2R で早速注目の羽生さんとの試合があり、敗れはしたものの、かなり良い勝負だったと思います。明日以降、棋譜をチェックできることも楽しみにしています。チェス界注目のニューフェイスは、今後も活躍を続けることでしょう。


日本に来て3か月というAnton Frisk さんは、本来の実力を出し切ってはいないと思いますが、それでも地力があることが分かる結果と内容でした。今後、東京での公式戦にも是非参加してもらい、日本のプレーヤーとの交流を広げていってほしいと思います。


私も今回は、なんとか勝ち越しを果たしましたが、まだまだ満足のいく結果ではありません。来月のジャパンリーグに向け、もっと調子と実力を上げていこうと思います。

今回も急なスケジュールの中で、10名のプレーヤーに参加していただいたこと、運営責任者として深く感謝します。また次回のIVL 開催の際も、よろしくお願い致します。

3 件のコメント:

ピカチュウ さんのコメント...

22.Nd6 の解説の 白金 は 白キング の打ち間違いのようですね・・・▼o・~・o▼汗

Shinya_Kojima さんのコメント...

修正しました。ありがとうございます。

AKA48 さんのコメント...

将棋の棋士も、チェスをプレイしたほうが良いことは、最早明らかでしょう。
チェスは、将棋型ゲームの本質的な要素を持っていると思われるからです。
青嶋さんの、今後の将棋界での活躍も期待できそうです。

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