Kojima, S (FM, JPN, 2312) - Ashwin, J (IM, IND, 2446)
Thailand Open Chess Championship 2010 (6)
White to move
2週間ほど前から用意していた記事ですが、後半を書くのに手間取ってしまい、公開が遅くなりました。先月、エンドゲームの問題として出したこの局面、よくよく解析をしてみると、私の予想と違う答えが出てきました。それが非常に面白かったため、その解析をご紹介しようと思います。
実を言えばこのポジション、私は試合中、なんとかドローに持ち込むアイディアを見つけ、実際にそれを指してゲームはドローになりました。試合後の検討と解析でも、このポーンエンディングは問題なくドローにできるという結論になり、白がドローに持ち込む問題として出題をしました。しかし、あらためてこのポジションを解析してみると、結果はなんと白勝ちでした!
49. d5!
この手自体を見つけることは、そこまで困難ではないと思います。白のd4 のポーンはどうやっても黒キングに取られてしまうため、自ら突き捨て、白に有利な形で取らせてしまうのが白が負けを回避する唯一の方法です。
49... exd5
これで黒はパスポーンを得ましたが、白もeファイルよりキングサイド寄りが4ポーンと、黒の3ポーンよりも1つポーンが多くなりました。これで、f2-f4-f5, e5-e6 でパスポーンを作り、反撃するチャンスを得ます。しかし、このアイディアしか見えなければ、白はドローに持ち込むしかありません。勝つために必要なのは、隠されたブレイクスルーをみつけることです。
50. f4!
私は試合中、キングが寄ればドローになることを読み切り、実際にそう指しました。 50. Kb2?! Kc4 51. Kc2 Kd4 52. f4 Ke4 53. g3 d4 54. Kd2 d3 55. Kd1 Kf5 56. Kd2 Ke4 57. Kd1 1/2-1/2 こうなれば、白キングはdポーンの前進を、黒キングはf4-f5, e5-e6 のブレイクを止めてないといけないため、互いにポジションを改善できずにドローです。
50... d4 51. f5!
私はコンピュータがこの手を示した際、何かの間違いかと思いました。それは黒キングが単純に寄った際に、e5 のポーンが落ちてしまうためです。それでも白が大丈夫だと判断するためには、大胆な発想力と正確に先まで読む力が要求されるでしょう。
51... Kc5 52. g4! Kd5 53. g5! Kxe5 54. f6! gxf6 55. gxh6+-
黒キングはf6 のポーンが邪魔でスクエアに入れず、白の勝ちが決まります。5年前、試合後の検討でも解析でも見つからなかった変化が、こうしてふと顔をのぞかせるということは、チェスは私が思う以上にまだまだ奥深いということでしょう。今年も、こうしたチェスの面白さ、難しさに少しずつ触れていければと思います。
2 件のコメント:
長老Averbakhのゲーム
(CHESS TACTICS For Advanced Players Bobby Fischer Memorial Ed. に掲載)
51手目ぐらいからごらんください
http://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1772558
ありがとうございます。他の方からも、ブレイクスルーの好例を見せてもらいました。やはり実戦でもこうした形は出てきますね。自分の試合で見逃さないようにしようと思います!
コメントを投稿