1日遅れましたが、東京チェス選手権2日目のレポートです。大会2日目の昨日は私は中継ボードに残りながらも1勝2敗と崩れ、トータルで4勝2敗の入賞圏外でした。4R と6R で私が敗れた長瀧くんとTonyくんはそれぞれ1位、3位の入賞でした。オープン2位の野口さんと各セクションを含め、入賞者の皆さん、おめでとうございます。
今大会は誰もストップをかけることができず、長瀧くんの全勝優勝となりました。レイティングも初の2000台に乗るでしょうし、実力はすでに十分すぎるほどあったと思います。5月の全日本選手権に出場するのであれば、そちらでの活躍も楽しみです。私は長瀧くん、Tonyくんには上手く指したと思った局面もありましたが、肝心なところで間違えて白番ながら2つの黒星を喫してしまいました。最終戦のゲームをご紹介します。
Kojima, S - Wijaya, T
Tokyo Chess Championship 2023 (6)
1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. Bb5+ Nd7 4. a4
Sicilian Moscow Variation
3... Nd7 に対しては、この1年でいくつかの手を試していますが、昨年の東京チェス選手権で優勝を決めた青嶋くんとの試合もこの
4. a4 でした。この試合は黒がDragon のセットアップを採用します。
4... a6 5. Be2 Ngf6 6. Nc3 g6 7. O-O Bg7 8. Re1!?
いくつか候補はありますが、私はClassical Dragon の
Rf1-Re1, Be2-Bf1 のラインと同じアイディアにすることを決めました。
Bf1-Bb5-Be2-Bf1 の組み直しに時間がかかっていますが、黒も
a7-a6 が必要なのかと、ナイトの位置がベストなのかが疑問です。
8... O-O 9. d4 cxd4 10. Nxd4 Ne5 11. Bf1 Bd7 12. Nb3 Rc8 13. a5 Nc4 14. Ra2!?
不思議な手ですが、a5 まで伸びたポーンは守りを続けたまま、b2 を守ることで
Nc3-Nd5 の跳びこみのタイミングを計ります。
14... Re8 15. f3 Nh5 16. Nd5 Be6?!
試合後にTonyくんは
e7-e6 ができないのが見落としで、
Nf6-Nh5 と跳んだ手がミスになってしまったと話してくれましたが、ここは実はポーンを突く手がありえました。
16... e6! 17. Bxc4 exd5! 18. Bxd5 Qh4! と進んだ場合、黒は
Bg7-Be5 も組み合わせた黒マスの反撃でポーンの代償を伴ってプレーできます。
17. c3 Nf6 18. Ra4
この手でナイトをc4 からどかし、白が有利になったと感じました。しかし、ここでの黒の進め方が上手く、私が期待したような優位が築けませんでした。
Ra2-Ra4 のルーク上りは上手く手だと思いましたが、他の候補として
18. Bxc4 Rxc4 19. Nb6 Rc6 20. Be3+/= もありえます。
18... Bxd5 19. exd5 b5! 20. axb6 Nxb6!
ルークが4段目に上がる前は
b7-b5 の際、クイーンで取る手ばかりを読んで白は問題ないと考えていました。実際にこうしてナイトで取られてみると、d5 のポーンへの反撃が厄介です。
21. Rd4 Nfd7 22. Bxa6!
ここでルークを避けても
Nd7-Nf6 と戻られてd5 を狙われ、ドローになる可能性がでてきます。勝負にいくにはエクスチェンジを捨ててa6 を落とし、d5 のセンタポーンはなるべくキープするようにします。
22... Bxd4+ 23. Qxd4 Rb8 24. Bh6?!
d4 にせっかくクイーンが上がれましたが、黒キングへの直接攻撃がさほど有効ではないことは計算外でした。ビショップがh6 にいくことで、b2 のポーンが弱くなって反撃されてしまうことも問題です。代わりにプランはクイーンサイドの白マスを利用するものですが、
24. Bb5 Nf6!? 25. Bxe8 Qxe8 26. Na5 Nbxd5 27. b4+/= と進んも白の優位はわずかです。白はクイーンサイドにパスポーンがありますが、黒もセンタポーンの厚みがあり、実際には難しい形勢だと思います。
24... Nf6 25. Na5 Nbxd5 26. Nc6 Qb6
ナイトフォークでエクスチェンジは取り返せますが、なるべく残したかったd5 のポーンを消され、クイーン交換の際にポーンがバラバラになるため、ダブルビショップでも白の優位は期待できません。
27. Nxb8 Qxd4+ 28. cxd4 Rxb8 29. Re2?
ここはバックランクの弱さを利用し、
29. Rc1! が正しい手です。e7 に長く当てているほうが得かと思いましたが、d5 のナイトを消すことはできず、e7 へのプレッシャーはあまり意味がありません。
29... Ne8?
29... Nb4! 30. Bc4 d5 31. Bb3 Nc6-/+ とされるとバラバラにされたb,dポーンを同時に狙われ、ポーンが落ちてしまいます。
30. Rc2 Nec7 31. Bc4 f6 32. Ba2 e6 33. Rc6 Kf7 34. Bxd5?
試合中、
Ra2-Ra4 の切り替えから優位になったと思ったので、その後の進行でさほど良くないと気づいた時はショックでした。それでもこのエンドゲームなった以上、ビショップを使って上手くポーンの弱さをカバーして戦えば、まだ何が起こるか分かりません。ここで白マスビショップを放棄したのは時間切迫にしてもひどいミスで、ビショップが一色にしか利かないという弱点が出てしまいます。a2 に残した白マスビショップはすぐにターゲットになってしまうだけだと思っていましたが、
34. Rxd6 Ke7 (34... g5 35. Rd7+ Kg6 36. Bg7 Rxb2 37. Bc4! という白マスビショップを残すアイディアは驚きです。g6 に逃げた黒キングに多少なりプレッシャーをかけられるようにします)
35. Rc6 Rxb2 36. Bxd5 Nxd5 37. h4 Rd2 38. Rc8 Rxd4 39. g3= くらいで互角の展開で、ビショップナイトの交換をするとしても、もう少し後のタイミングであるべきでした。
34... Nxd5 35. Rxd6 g5!
これは見落としていた手で、一時的にh6 の黒マスビショップを閉じ込めると同時に、白が白マスビショップを手放してコントロールできなくなったg6 にキングを逃げられるようにするアイディアです。ここまで進んで初めて、私は白がかなり悪い局面になっていることを感じました。しかも、かなり挽回が難しい悪さです。
36. h4 gxh4 37. Rd7+ Kg6 38. Bc1 Rc8 39. Bd2 Rc2 40. Be1 Nf4 41. Bxh4 Rxg2+ 42. Kf1 Rxb2
ポーンダウンであるだけでなく、キングを完全に1段目で抑え込まれていることが大きな痛手です。なんとか黒に決定打を与えないようルークで抵抗します。
43. Re7 h5 44. Bg3 Ne2 45. Bf2 Kf5 46. Rh7 Nf4 47. Bg3 Rd2!
ナイトビショップの交換を許し、hポーンを失っても、黒は他のポーンを落としつつ、アクティブなキングで十分勝勢です。
48. Bxf4 Kxf4 49. Rxh5 Kxf3 50. Rh3+ Ke4 51. Rh6 Kf5 52. Rh4 Kg5 53. Re4 Kf5 54. Rh4 Kg6 55. Re4 Kf7 56. Rh4 Ke7 57. Rh7+ Kd6 58. Rh6 f5 0-1
ポーンを交換できればフィリドールポジションを目指せましたが、d4 のポーンも落ちることが確定したのでここで負けを認めました。悔しくはありますが、途中の形勢判断は勉強になるものでした。この反省は次の大会に活かしたいと思います。
大会運営と参加者の皆さん、お疲れ様でした。そして今大会の結果で全日本選手権の参加資格を得た皆さん、おめでとうございます。次は別の予選か、全日本選手権の会場でお会いできることを楽しみにしています。