4日間の日程で開催されたジャパンオープンは、昨日無事に最終日を迎えました。優勝は5連勝後、南條くんにドロー、Fraynaさんに勝った青嶋くんでした。U1800、女子、ユース等、各セクションを含め、入賞者の皆さん、おめでとうございます!
1st Place Aoshima Mirai (FM, JPN, 2352) 6.5/7
2nd Place Yamada Kohei (FM, JPN, 2187) 6/7
3rd Place Schulze Torben Dr (GER, 2325) 6/7
4th Place Otsuka Shou (JPN, 2122) 6/7
5th Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2306) 5.5/7
Japan Open 2023 Final Standings
私は最終日、斎藤くん、中原くんに連勝でなんとか5.5/7での滑り込み入賞でした。最終戦、私より上位4Bで全て決着がついたことによる完全なラッキーです。3日目に崩れたことを反省し、また次の大会に備えようと思います。それにしても、オープンで入賞した5名は直接対決が全くないという珍しい結果でした。
最終日の解説は、熱戦となった最後の中原くんとの試合をお届けしたいところなのですが、自分なりにもう少し振り返りたいところが多いので、また後日にしようと思います。代わりに7Rの斎藤くんとの試合をご紹介します。手数は短いですが、学ぶことが色々あったゲームでした。
Kojima, S (IM, JPN, 2306) - Saito, H (JPN, 1848)
Japan Open 2023 (6)
1. Nf3 e6 2. c4 f5 3. g3 Nf6 4. Bg2 Be7 5. O-O O-O 6. Nc3 d6 7. d3!?
南條くんとも何度も試合形経験のあるClassical Dutchに対しては、これまで全てd2-d4としてきました。私はそもそも1.Nf3から入りながら、なるべく1.d4のメイン系も指すEnglish Playerだと自分で思っています。しかし最近は1.c4を試したり、d2-d3でポーンを止める形も勉強し、指せる幅を広げています。今回、d3でポーンを止めてみたのは、次に黒がe6-e5と突き直すならば、e7-e5と1手で突けている形に比べてテンポロスになると考えたためです。
7... e5 8. Rb1 a5 9. a3 Qe8 10. e3?!
d1-h5ダイアゴナルを開ける、f4のマスを受けるといった、黒のキングサイドアタックに備えるアイディア自体は良いのですが、それはクイーンがh5にきてからでも遅くありません。黒は見逃しましたが、ここでは
10... a4!が成立してb2-b4を止められるため、白は素直に
10. b4と指してクイーンサイドのスペースを拡大し、Bc1-Bb2の準備をしておくべきでした。
10... Qh5?! 11. b4 axb4 12. axb4 g5?
形はSicilian Grand Prixの白黒逆バージョンで、クイーンの使い方など黒の攻め方の基本的な方針は悪くないのですが、クイーンサイドの展開を疎かにしている点が気になります。g7-g5はf5-f4のサポートをする狙いですが、黒キングの守りを弱めるという欠点もあるため、もう少し慎重に指すべきでした。代わりに
12... Nc6と展開しておき、アタックの準備を整えるべきです。白のb4-b5に対してナイトは、Nc6-Nd8-Nf7-Ng5(g7-g5-g4を挟んでからも可) とキングサイドのアタックに参加するアイディアもありそうです。
13. Nd2!
このナイト退きはe2-e3の時点で頭にあった構想で、クイーンを交換した場合、黒のキングサイドアタックチャンスを完全に消すことができます。対する白はb4-b5,c4-c5,Nc3-Nd5などのクイーンサイドを中心としたチャンスが依然として残っているため、白が安全で指しやすい局面になるでしょう。
13... Qg6 14. f4!?
コンピュータの示すベストの手ではないでしが、人間的には黒のf5-f4を止め、キングサイドを安全にしておくのが最も分かりやすいアイディアだと思います。このfポーンをぶつけるアイディアはClosed Sicilianで、黒が指す重要なディフェンスのアイディアとして知られています。(1. e4 c5 2. Nc3 Nc6 3. g3 g6 4. Bg2 Bg7 5. d3 d6 6. f4 e6 7. Nf3 Nge7 8. O-O O-O 9. g4?! f5!) コンピュータの示すのは、
14. c5 f4 15. Nde4と進め、f5-f4を許してもe4のマスを使えれば白が大きく優勢という変化ですが、h7-b1、c8-h3ダイアゴナルを開けさせ、黒にアタックの希望を与える理由もないでしょう。
14... Kh8 15. Bb2!
h8にキングが避ける手もa1-h8ダイアゴナルを活用しやすい白にとって好都合です。上記のClosed Sicilianと違い、黒は黒マスビショップの位置がg7ではなくe7でパッシブ、かつキングの守りを弱めています。もしe7ではなくg7にあれば黒キングもh8で多少は安全ですし、f2-f4に対してexf4とポーンを交換し、ダイアゴナルを開いて勝負する選択肢もあったでしょう。
15... Nc6 16. b5! Nb4 17. Nf3!
Nf3-Nd2と一時的に退いたナイトは、クイーン交換の催促、f2-f4の準備という2つの役割を終えた以上、d2に留まる理由はありません。f3に再び戻ってe5,g5にプレッシャーをかけつつ、クイーンの前を開いてd3を守っておきます。対するb4に跳びこんだナイトはd3を攻撃しているのは良いものの、帰る場所が無いことが気がかりです。
17... gxf4 18. exf4 Nxd3? 19. Nh4! 1-0
黒の見落としから、思わぬ早い決着でした。黒は一時的にd3でナイトを捨てても、e5-e4のポーンフォークで取り返せるという計算でしたが、先にナイトにh4へ逃げられ、チェック付きのクイーン取りをスレットにされてしまえば、単に黒のナイトだけが落ちてしまいます。直前にf4でのポーン交換で黒のg5が消え、h4にナイトが跳べるようになっていることが盲点だったかもしれません。もちろんこの見落としがなくとも、白はa1-h8ダイアゴナルを活用した攻撃で勝勢です。
2年連続で優勝しているジャパンオープンで5位という結果は悔いの残るものではありますが、今年後半の調子を踏まえれば仕方ないと納得もしています。今年はまだ有田のチェス大会に参加する予定ですが、公式戦はこれで全て終了。来年は1月の東海オープンからスタートとなります。今年も1年間、多くのチェスプレーヤー、運営にお世話になりました。また次の公式戦の機会もよろしくお願いいたします。
11/02 13:00 R1 Kato, A (JPN, 1668) - Kojima, S (IM, JPN, 2306) 0-1
11/03 10:00 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2306) - Okabe, Y (JPN, 1862) 1-0
11/03 15:00 R3 Tanaka, S (JPN, 1964) - Kojima, S (IM, JPN, 2306)
11/04 10:00 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2306) - Noguchi, K (JPN, 2006) 0-1
11/04 15:00 R5 Shioguchi, T (JPN, 1903) - Kojima, S (IM, JPN, 2306)
11/05 10:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2306) - Saito, H (JPN, 1848) 1-0
11/05 15:00 R7 Nakahara, K (CM, JPN, 2052) - Kojima, S (IM, JPN, 2306) 0-1