2024/05/20

Chubu Rapid Open 2024 Tournament Report

先日告知した通り、19日に名古屋で開催された中部快速オープンに参加してきました。2年前はScottさんに負けて優勝を逃しましたが、今年は4勝1ドローでなんとか優勝することができました。A,Bクラスを含め、入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2270) 4.5/5
2nd Place Kinoshita Akira (USA, 1869) 4.5/5
3rd Place Scott Tyler (JPN, 1989) 4/5
4th Place Averbukh Alex (CM, JPN, 2105) 4/5

Chubu Rapid Open 2024 Final Standings


私は3Rで木下さんとドローになり、唯一3連勝だったAlexを追うことになります。1Bで指した5ゲームは全て中継されており、すでにご覧になったかたもいらっしゃるかと思いますが、今夜は4RのAlexとの試合をお届けします。

Kojima, S (IM, JPN, 2270) - Averbukh, A (CM, JPN, 2105)
Chubu Rapid Open 2024 (4)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nf3 Bg7 4. g3 d6 5. Bg2 O-O 6. O-O Bf5 7. Nc3 Ne4 8. Nd5!?

黒がc7-c6を指さずにBc8-Bf5と出る手は少し珍しいですが、2年前の東京チェス選手権で大塚さんに指されてから調べていました。e4でのナイト交換から白マスビショップ交換まで見据えられると白は面白くないため、Nc3-Nd5-Ne3とナイトをかわす作戦です。

8... c5?!


d5に白がナイトを入れたタイミングで、d5のマスを弱めるのは違和感があります。8... c6 9. Ne3 Be6 10. Qc2という進行はオンラインで経験があります。

9. dxc5


ここは9. Ng5! Nxg5 10. Bxg5 Nc6 11. dxc5 dxc5 12. Qb3! と進めるのが良かったようで、白はe7へのプレッシャーと早い展開で十分なリードを取っています。本譜でもe7への攻撃は白のアドバンテージのカギとなります。

9... Nxc5 10. Nd4 Bd7 11. Bg5! f6?

11... Re8 12. Qd2 Bxd4 13. Qxd4 Ne6 14. Qd2 Nxg5 15. Qxg5+/- くらいで白は満足ですが、黒は本譜のようにマスを弱めていないのでこちらを選択すべきでしょう。

12. Be3 Nc6 13. Rc1 e6 14. Nc3 Nxd4


e7-e6は白の強力なナイトを追い払う代わりに、d6を致命的に弱くしてしまいます。e7-e6,f7-f6の2つのポーン突きは多くのマスとポーンを弱めるため、このストラクチャーでは極力避けるべきでしょう。本譜の代わりにNc3-Nb5を防ぐa7-a6ならどうしようか悩んでいましたが、14... a6 15. Nxc6! Bxc6 16. b4! この際にd6が落ちるため、いずれにせよ白が勝勢でした。

15. Qxd4 Bc6 16. Rfd1 Bxg2 17. Kxg2 f5 18. Qxd6 Qxd6 19. Rxd6 Bxc3 20. Bxc5!

ここは一時的にbポーンを取られるとしても、ナイトを消しておくのが正解です。20. bxc3 Rac8でも白の優勢は間違いありませんが、cファイルにダブルポーンがあるとポーンアップを活かしづらい状況になってしまいます。

20... Bxb2 21. Rb1 Bf6


試合後、Alexにはbポーンを突く手はどうかと指摘しました。21... b6 22. Rxb2 bxc5 23. Rxe6 Rfb8 24. Rb5!+- それでも、このb5にルークを下げる手が絶妙で、黒はさらなる駒損が厳しいルークエンディングを強いられます。

22. Rxb7 Rac8 23. Bxa7 Rxc4 24. Rxe6 Ra4? 25. Bc5!+-

c5のマスを明け渡してくれると白にとっては楽になります。ルークのバックランク侵入からメイトになるため、黒はRf8-Rf7とは指せず、ビショップ交換を受け入れざるをえません。

25... Rc8 26. Rxf6 Rxc5 27. Rd6 Rc8 28. Rdd7


7段目に2つのルークが並べば黒のポーンを根こそぎ取れるため、勝負は決まりです。

28... Rxa2 29. Rg7+ Kh8 30. Rxh7+ Kg8 31. Rhg7+ Kh8 32. Rxg6 Rxe2 33. Rf6 Re5 34. h4 Kg8 35. h5 f4 36. g4 f3+ 37. Rxf3 Rc4 38. Kh3 Rg5 39. Rd3 Rg7 40. Rxg7+ Kxg7 41. Kg3 Kh6 42. f4 Kg7 43. Rd7+ Kf6 44. Rd6+ Kg7 45. g5 Kf7 46. Kg4 Rc5 47. h6 Ke7 48. Rf6 Rc1 49. h7 Rg1+ 50. Kf5 1-0

最終戦は東芝さんに勝って4.5/5を決めましたが、隣のボードでも木下さんが水本さんに勝ち、4.5/5で並んだ結果、タイブレーク勝負で優勝が決まりました。4.5/5で並んでのタイブレーク勝負は1月の東海オープンと同じですが、どちらも優勝できて嬉しいです。参加者、運営の皆さん、今大会でも大変お世話になりました。9月の名古屋オープンは残念ながらオリンピアードと被るので不参加となり、次の名古屋来訪は11月のジャパンオープンとなりそうです。また秋によろしくお願いいたします。

大会終了後は夜のバス便で岐阜県の高山市、いわゆる飛騨高山へと足を運んでいます。こちらの名物である高山ラーメンは、基本はシンプルな醤油ラーメンですが、創意工夫を凝らした店も多いようです。しばらく高山に滞在するので、いくつかのお店で食べ比べをしてみようと思います。

2024/05/12

Chubu Rapid Open 2024 Tournament Review

一昨年の中部快速オープン入賞者たち

全日本選手権が終わったのもつかの間、次の大会がすぐ始まります。私が参加する次の大会は、名古屋チェスクラブ主催の中部快速オープンで、来週末の19日(日)開催です。東京の大会はかなり早めに定員に達し、1週間前ではすでに申し込めないことが多いですが、中部快速オープンは定員にもまだ余裕があり、今からでもエントリー可能です。エントリー締め切りは17日(金)ですので、まだお申し込みでない方は参加をご検討ください。

【日時】 2024年5月19日(日)
【会場】 ウィルあいち (地下鉄名城線、名古屋城駅)
【形式】 FIDE、国内ラピッド公式戦 スイス式5R 25分+1手10秒
【参加費】 7000円 U18 5000円
【主催】 名古屋チェスクラブ
【エントリーリスト】 Chubu Rapid Open 2024

その他詳細は名古屋チェスクラブの大会ページをご参照ください。皆さんと名古屋でお会いできることを楽しみにしております。

2024/05/10

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第31回予告

5月のチェス講座告知です。今月のYouTubeでの講座は今週末、5/12(日) 20時からスタートです。

5月のYouTubeの講座テーマは『全日本チェス選手権2024』です。今年の全日本選手権も先日、無事に閉幕しました。過去最多79名の参加者による熱戦の数々を、ライブでご覧になったチェスファンの皆様も多いかと思います。今月の講座ではそんな全日本チェス選手権2024から面白かった試合、局面の振り返りを行いたいと思います。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第31回『全日本チェス選手権2024』|2024.05.12

2024/05/08

Japan Chess Championship 2024 Day5 Tournament Report

今年の全日本選手権も一昨日最終日を迎え、無事に全日程を終えて閉幕しました。9試合を終え、7.5Pでトップに立ったのは南條くんで、青嶋くんとのわずかなタイブレーク争いを制して二連覇を決めました。今年は10位まで表彰が増え、表彰台もにぎやかになりましたね。入賞者の皆さん、おめでとうございます!

Japan Chess Championship 2024 Final Standings


私は最終戦、米満くんに黒を持ったゲームを勝って、トータル6勝1敗2ドロー。昨年と全く同じスコアではありましたが、1つ順位を落として4位でのフィニッシュでした。最終戦の他のボードの結果次第では2位までありえたので、もう1歩を望んではいましたが、初戦負けを考えればここまで挽回しただけで上出来です。前半のゲームはどこで負けてもおかしくなかっただけに、後半少しずつ安定してきたのは良かったと思います。ただし最終戦の内容はもう少し改善が必要です。

Yonemitsu, K (JPN, 1988) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
Japan Chess Championship 2024 (9)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nd2 e6 5. Nb3 Nd7 6. Nf3 Ne7 7. Be2 Nc8!?

過去何回か、このマヌーバリングは試したことがあります。4.Nf3ラインでは、白からb2-b3,c2-c4と突くアイディアがNe7-Nc8には有効で、b6に出たナイトの行き場を抑えます。しかし、このNd2-Nb3を早めに決めている変化では、Ne7-Nc8と潜るアイディアは十分使えると思います。

8. a4 Be7 9. O-O O-O 10. a5 a6 11. Be3 Re8?!


白はa5までポーンを伸ばすことでNc8-Nb6を防ぎ、黒のナイトのマヌーバリングを制限します。これに対してe7のマスを空け、Nc8-Ne7と戻すアイディアがあったかと記憶していたのですが、少し別の変化と混同していたようです。a7からナイトを組み替えるのは、c2-c4を見てからのつもりでしたが、ここは11... Na7! 12. Ne1 (12. c4 dxc4 13. Bxc4 Nb5 14. Qe2 Nc7) 12... c5! 13. Nxc5 Nxc5 14. dxc5 Nc6と進めるのが良かったようです。f3のナイトがどいたタイミングでc6-c5を仕掛けるのは試したことがありましたが、Nc8-Na7-Nc6の組み替えを失念していました。

12. Ne1 Bf8 13. g4 Bg6 14. f4 f5?

白マスビショップを交換後にf7-f5とするなら良かったのですが、g6に残った状態でのf7-f5は理想的ではありませんでした。キングサイドを開くチャンスを残すf7-f6を、このタイミングか12手目でやっておくほうが良かったでしょう。

15. Bd3 Ne7 16. h3 h6 17. Nf3 Bh7 18. Rf2 Kh8 19. Rg2 g6


奇妙な形で黒の駒は働きに不満があります。しかし、白もどう仕掛けるか悩ましく、コンピュータの評価は大きく白優勢なものの、ゲーム中は難しいと思っていました。白も油断すれば、g6-g5の反撃が飛んできます。

20. Bf2 Bg7 21. Qe2

試合後に米満くんには、d2の位置のほうが良いのではないかと指摘しました。黒がビショップ退いたことで、b4のマスは白クイーンにとって安全になっています。21. Qd2! Rf8 22. Qb4? (22. Re1!) 22... g5! しかし、先述のg6-g5からの反撃には気を付けなくてはなりません。タイミングを見て、キングサイドとクイーンサイドの仕掛けを織り交ぜるのが白にとって良い作戦なのではないかと思います。

21... Rg8 22. Bh4 Qf8 23. Bxe7?!


この黒マスビショップとナイトの交換は即決で、少し気になりました。確かにf4-e5-d4と黒マスで白ポーンは連なっており、黒マスビショップの働きにはやや不満があることは分かります。しかし、あまり早めに黒マスビショップを諦めてしまうと、黒からの黒マスを利用した反撃に気を配る必要が出てきます。23. Rf1 Qf7 24. Kh1のような得になる手をいくつか挟み、様子を見ても良かったでしょう。

23... Qxe7 24. g5 h5 25. Nbd2 Rgd8 26. Nh4 c5!

白はキングサイドを閉じつつ、h5への将来的なサクリファイスを狙っていることは気づいていました。それには十分気を付けながら、黒は待望のクイーンサイドでの反撃を試みます。

27. c3 cxd4 28. cxd4 Qb4! 29. Qe3 Nb8!?


d4への反撃を作るためには、このナイトの組み替えは必須です。ただしルークをcファイルに先に回すべきかどうか、かなり悩みました。d4への反撃が遅れるとNd2-Nf1-Ng3からh5へのサクリファイスを準備されることを恐れたのですが、そこまで気にせずとも良かったようです。29... Rac8 30. Nf1 Nb8 31. Ng3 Nc6 32. Nxh5 gxh5 33. g6 Qxd4!= ピースを返すアイディアはなんとなくイメージしていましたが、本譜のほうがh5へのサクリファイスが難しく、安心だと考えました。

30. Be2 Nc6 31. Nb3 Bf8 32. Bxh5!?

f8へビショップを退き、c5のマスをカバーしつつKh8-Kg7の逃げ場を作ったことで、h5へのサクリファイスは難しくなっただろうと思いました。その矢先、それでもお構いなしにピースを切ってきたことには驚きです。このサクリファイスは成立してはいるものの、白がアドバンテージを作れるかは疑問です。32. Bf1 Kg7!と進めば、h5へのサクリファイスはいよいよ実現不可能ですが、それでも白はd4を守り続けて戦える状況です。キングサイドの突破にこだわらず、作戦を変えてじっくり戦うのもありでした。

32... gxh5 33. g6 Bg8 34. g7+!?


gファイルとg6のマスを開くことで攻撃のチャンスを作ります。しかしg8に退いたビショップがh7を守っている限り、簡単に白に決定的なアタックを許すことはないと読んでいました。代わりに34. Rg5!? Kg7 35. Rxh5 Rac8と進める変化もあったようで、黒はh7を受けているものの、g8のビショップはどこにも動けず、ピースアップと言えるかは疑問です。

34... Bxg7 35. Ng6+?

この攻めは不発に終わり、白のアタックチャンスは霧散します。白のアタックにはクイーンの協力が不可欠ですが、クイーンで狙うべきはh5のポーンではなく、直接g7のビショップでした。35. Qg3! Rd7 36. Kh1 Nxd4 37. Nxd4 Qxd4 38. Ng6+! Kh7 39. Nh4! Kh8 40. Ng6+ Kh7 41. Nh4= このようにgファイルにクイーンを寄せられた後、Nh4-Ng6-Nh4の往復をされると、黒はパペチュアルチェックを受け入れざるをえません。これは試合中気づいていませんでした。

35... Kh7 36. Qf3 Bf7! 37. Qxh5+ Bh6!


32手目の段階では、ここでキングをg8に逃がすつもりでした。これでも黒は守り切って優勢なのですが、本譜のほうがより良いアイディアだと直前で気づきます。h7にキングを残すのは危険にも思えますが、むしろピンにっているg6のナイトにキングの攻撃が残っている効果が大きく、白はさらなる駒損を避けられません。

38. Kh2 Rg8 39. Rag1 Qxb3 40. Nf8+ Raxf8 0-1

最後にf8にナイトを跳びこませたのは、勘違いではなくリザインの代わりなのでしょう。h5へのサクリファイスにこだわりすぎていたことが白の失敗で、きっぱりとこのアイディアを諦めるか、実行するならばもっと丁寧に読む必要があったと思います。

この全日本選手権では6.5Pを取った中原くんを筆頭に、大学生の活躍が非常に目立ったと思います。全日本初参加ながら、大きくレイティングを伸ばしたプレーヤーもいます。私も大学生たちと同じトレーニンググループに入っており、彼らの成長を間近に見ています。簡単に世代交代とはならないよう、日本代表の一員としてまだまだ頑張るつもりではありますが、それと同時に彼らには大いに期待しています。

最後になりましたが、今年も全日本選手権の運営をありがとうございました。日本チェス連盟の理事たち、スタッフ、スポンサーの皆様に心より感謝いたします。次は来週末の中部快速オープンでよろしくお願いいたします。

2024/05/07

Japan Chess Championship 2024 Day4 Tournament Report


全日本選手権は昨日最終日を終えましたが、こちらのブログの更新が追い付いていないので4日目のレポートからお届けします。5/6が7人並んで大混戦で迎えた4日目、私は1Bに初めて上がり、Tuさんとの直接対決に臨みました。Tuさんには昨年のジャパンチェスクラシックスで勝っていますが、全日本選手権ではこれまで勝ち星がありません。

Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Tran, T T (CM, JPN, 2389)
Japan Chess Championship 2024 (7)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bf4 O-O 6. e3 c5 7. dxc5 Bxc5 8. a3 Nc6 9. Qc2 Qa5 10. Rd1 Be7 11. Be2 Ne4!?

TuさんとQGDのオーソドックスな変化を指すことになるとは思いませんでした。11手目のナイト跳びこみは白のクイーンサイドのポーンストラクチャーを崩す古くからある手ですが、トップレベルではさほど評価されていないと考えていたため、Tuさんのチョイスとしては意外でした。近年見直されているかもしれないので、少し調べてみるつもりです。

12. cxd5 Nxc3 13. bxc3 exd5 14. O-O h6 15. a4


実はこの変化は1週間前、シモキタ名人戦の同時対局で全く同じ局面を持っています。その時はb1のルークを先にまわしましたが、試合後にaポーンを突き直して取られないようにする手順が正確であると確認していました。

16... Rd8 16. Rb1 Bd6 17. Bxd6 Rxd6

この辺りの数手はTuさんがすぐ指してきたので、準備手順だったのだと思います。白のクイーンサイドのポーンの乱れをどう評価するかは難しいところですが、基本的にはIQPポジションの考え方を使い、d5を攻める、d4のマスを抑えるアイディアを上手く使いながら試合を進めていきたいところです。

18. Rfd1 a6 19. h3 Rb8 20. Nd4 Bd7 21. Rd2!?


ここは少しどう進めるか悩みました。すぐにc6でナイト交換をすれば、c3への早い反撃を助けてしまうことになります。黒のナイトがc6から捌ければRb1-Rb4がa4を守りながらb,dファイルにルークを重ねる準備になるため、少し様子を見ることにしました。

21... Ne7 22. Rb4 Qc7 23. Qb3 Nc6!

一度交換を避けたナイトを戻し、局面を単純化するのは黒にとって安全策です。白はb4のルークの逃げ場がないため、ナイト交換に応じるほかありません。

24. Nxc6 Rxc6 25. Qxd5 Be6 26. Qe4 Rxc3 27. Rdb2??


自分で指しておきながら、あまりにひどいブランダーで驚きました。バックランクを受けるのは消極的かつ、すぐには必要ないと思ったのでb7を先に攻撃しておき、様子を見るつもりでした。しかし、ここで黒ルークのバックランク侵入を許すことは、決定的なチャンスを黒に与えることになります。ルークをd1に下げる手もありますが、27. f4!? くらいでh2のマスをカバーし、キングが上がれるようにしておいたほうが良かったでしょう。e3が弱くなるため好みではないと感じていましたが、バックランクをカバーできるメリットのほうが大きいうえ、本譜でもどうせ指すことになる手です。

27... Rc1+ 28. Bf1 Rd8!

b7を無視して2つ目のルークをバックランクに突入させるアイディアがあることに気づき、愕然としました。29. Rb1 Rdd1 30. Rxc1 Qxc1-+ でもディフェンスにならないため、他の守り方を考えなければ位なりません。

29. f4 Rdd1 30. Rf2 Bc4


30... Bd5のように、一度b7を受けておく手もありましたが、本譜を指されるまでこのビショップはただ取りできると勘違いしていたので、ここでの見落としもひどかったです。黒は一気にピンになっているf1のビショップを攻めてゲームを決めにきますが、ここで少しTuさんにも見落としがあってゲームは難しくなります。

31. Rxb7 Bxf1?!

b7を取れた私は、こちらもバックランク、クイーン、f7への反撃が同時に生まれてなんとかなるのではないかと、細い希望を見出していました。これに対してTuさんがすぐf1を取ったのは少しありがたく、31... Qc8とされていたほうが白は困っていたと思います。本譜でも正確に指せば黒は勝つのですが、余計な難しい変化を読み切らなければなりません。

32. Qe8+ Kh7 33. Qe4+ g6 34. Rxf1!


残り2分を切るまで考え、ここはルークを丸々捨てることにしました。マテリアルでは勝負になりませんが、黒の白マスビショップを消し、Bf1-Bd3-Bc4のようなビショップを退くディフェンスの手のチャンスをなくしておくことで、f7,g6への反撃が通りやすくなると考えたのです。本譜の代わりに34. Kh2 Bd3-+であれば、黒はピースアップで白の反撃がないことから勝勢が分かりやすく、34. Rxc7 Bd3+-+も黒のピースアップで、f7を取っても反撃や駒数が足りません。

34... Rxf1+ 35. Kh2 Rh1+ 36. Kg3 Rc4

黒はルークアップですがクイーンとf7が一直線に狙われているため、どう守るか悩むところです。f7を単純に守ろうとしても、36... Qc4 37. Qe8!があり、黒キングは危なくなります。意外とg3に上がった白キングに迫る手が無いのにも、局面を面白くしているポイントです。

37. Qd5 Rc5 38. Qe4 Rc4


Tuさんも時間ギリギリまで考え、勝つアイディアがないと結論づけて繰り返しのドローを選択しました。しかし、実際にはここでは38... Rg5+! 39. Kf3 Qd8! という手があり、ルークを捨てて黒勝勢というコンピュータの評価です。40. fxg5 Rf1+ 41. Kg3 Qd6+-+ ここまで進めば明らかですが、黒キングの守りも怪しく見えるため、時間のない中でルークを返して勝負をするのはかなり難しい決断です。私も38... Rg5は考えていましたが、続きが無いと思っていました。

39. Qd5 Rc5 40. Qe4 Rc4 1/2-1/2


続く南條くんとの試合も難しい応酬の末にドローになり、私は4日目を2ドローの1Pで終えることになりました。この日2勝だった青嶋くん、1勝1ドローだった南條くん、Tuさんの背を追って最終戦を迎えます。

2024/05/04

Japan Chess Championship 2024 Day3 Tournament Report

全日本選手権は折り返しの3日目を迎えました。4連勝のTuさんとの差を詰めたい私は、午前中の試合で麻布の後輩、長瀧くんとの対戦です。昨年の全日本選手権では黒で勝っていますが、別の大会では2敗しており、海外大会の経験も積んできて油断のできない相手です。Grunfeldは予想通りでしたが、早い段階で知らない変化に突入しました。

Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Nagataki, K (JPN, 2024)
Japan Chess Championship 2024 (5)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nf3 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d5 6. cxd5 Nxd5 7. O-O Nc6 8. Nc3 e5!?

8... Nb6を中心に多くの変化をチェックしてきたつもりでしたが、これは記憶にありませんでした。いきなりピース交換が進みそうですが、その中で白が良くなりそうな変化を探します。

9. Nxe5 Nxc3 10. Nxc6 Nxd1 11. Nxd8 Nxf2


f2を取る変化はナイトの行き場が難しく、おかしな手ではないかと読んでいましたが、進めてみると難しかったです。11... Rxd8 12. Rxd1 Rxd4とポーンを取り返す手順もありえるでしょう。

12. Nxb7 Nh3+ 13. Kh1 Bxd4 14. Na5 Bg4

次のNa5-Nc6を食らわないためには、a8のルークを諦めざるをえませんが、これで黒は十分に戦えます。白マスビショップが抜けた後、白はキング周りの弱さを気を付けなければいけません。

15. Bxa8 Rxa8 16. Nb3!?


これは長瀧くんにとって意外だったようですが、私はeポーンを無理に守るよりも返してしまい、ナイトは早くゲームに戻すほうが良いと考えました。

16... Bxe2 17. Nxd4 Bxf1 18. Bh6 Nf2+ 19. Kg1 Ng4

しかし、私もこのナイトの動きがぴったりビショップに当たるため、f1のビショップを無視できることを見落としていました。黒がビショップを逃がすことを優先し、h6にビショップが残るようであれば、バックランクの弱さとナイトの逃げ場のなさでポーンが無くとも有利に戦えると考えていました。

20. Bf4 c5?!


ここでビショップを逃がさないのは小さなミスで、単にc7を返して良かったと思います。私はRa1-Rc1から様子を見てポーンを取り返し、クイーンサイドのポーンマジョリティに期待するつもりでしたが、それで勝ちに繋げられるようなアドバンテージがあるかは疑問です。

21. Rxf1 cxd4 22. Rd1 Rd8 23. h3 Nf6 24. Be5 Ne4 25. Rxd4 Rxd4 26. Bxd4 Nxg3?

d4でポーンを取り返し、ルークも交換してビショップvs.ナイトのエンドゲームになったところで、黒から再び大きなミスが出ました。ここでg3とa7の取り合いにすると、白がクイーンサイドに2コネクテッドパスポーンを持つ、とても勝ちやすいエンドゲームに入ります。ここは26... a6とポーンをかわすべきだと思いますが、それでもクイーンサイドにポーンマジョリティを持ち、キングサイド、クイーンサイド両方に広く利くビショップを持つ白が指しやすいでしょう。

27. Bxa7 Kf8 28. a4 Ke8 29. Kf2 Nf5 30. b4 Kd7 31. b5


ビショップを持つエンドゲームでは、ポーンはビショップの色を逆に置き、白マス黒マス両方を抑えるのが基本です。

31... Kc7 32. Bc5 Nd6 33. Ke3 Nb7 34. Bd4 Nd6 35. Be5! Kd7 36. Bxd6!

このポーンエンディングが1手差で白勝ちだと分かると、このエンドゲームはとても楽に指せるでしょう。

36... Kxd6 37. Kd4 f5 38. a5 f4 39. a6 Kc7


39... f3 40. Ke3ならばポーンを取って勝ちです。

40. Kc5 f3 41. b6+ Kd7

41... Kb8 42. Kc6 f2 43. a7+ Ka8 44. Kc7 f1=Q 45. b7+ Kxa7 46. b8=Q+ Ka6 47. Qb6# があり、黒に先にプロモーションを許しても白が勝つ教科書的なエンドゲームです。

42. a7 f2 43. a8=Q f1=Q


互いにクイーンを作り合いましたが、白の残ったパスポーンとキングの位置が良すぎるため、これは問題なく白勝ちです。

44. Qd5+ Ke7 45. Qe5+ Kd7 46. Qd6+ Ke8 47. b7 Qf2+ 48. Kc6 Qc2+ 49. Qc5 Qe4+ 50. Kb6 Qe6+ 51. Qc6+ 1-0

何度も辛酸をなめたクイーンエンディングでしたが、今回はスタートの局面が良かったため特に事件も起こらず助かりました。クイーンのチェックするマス、正しいキングの逃げかた等、大会後に確認しておこうと思います。

Japan Chess Championship 2024 R7 Pairings


続く午後のラウンドは初戦以来の中継ボードに戻りました。松尾さんを破って上がってきた前嶋くんをここは退け、5連勝でトップグループに追いついています。この日はTuさんが2ドローで連勝が止まったため、5/6が7人並ぶという大混戦です。明日誰かが抜け出すか、目の離せない4日目をこれから迎えます。
中継ボードに戻れたため、スポンサーから配布されている水をようやく受け取れました。明日は1Bで頑張ります!

2024/05/03

Japan Chess Championship 2024 Day2 Tournament Report


全日本選手権2日目です。初日に痛い黒星を食らいましたが、この日は連勝で上位ボードに戻ってきました。しかし、どちらの試合も途中でアドバンテージを捨てるようなまずい手があり、そこは反省しなければいけません。初対戦となる山本くんを午前中に下し、午後は同級生の汐口くんとの対戦です。

Shioguchi, T (JPN, 1973) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
Japan Chess Championship 2024 (4)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 dxc4 5. a4 Bf5 6. Ne5 Nbd7 7. Nxc4 Nb6 8. Ne5 a5 9. h4 h6 10. f3 e6 11. e4 Bh7 12. Be3 Be7 13. Qb3 Nfd7 14. O-O-O O-O 15. g4 Bxh4 16. f4 Be7 17. Nf3?!

序盤を少し割愛し、ここから始めます。少し私に不正確な手順があり、危ない局面になりました。本譜ではナイトを退いてg4-g5を準備しましたが、17. g5! hxg5 18. Qc2!+-という手をお互い見落としていました。

17... Nf6!


ここはe4への反撃を作るチャンスだと思い、ナイトをキングサイドに戻します。いかにもg4-g5は危なそうですが、e4を取る手で白マスビショップの利きを開けば黒は十分に戦えます。それよりも気になるのは、b6の浮いたナイトです。

18. d5 Nxe4!


黒はピースを捨てざるをえませんが、どうやって捨てるかは難しい選択です。18... Nbxd5? 19. exd5 Nxd5 20. Nxd5 cxd5 21. Bd3+- ならば、白はキング前をカバーして3ポーンピースながら勝勢です。18... cxd5? 19. Bxb6 Qb8 20. e5!+- もf4を守って白十分でしょう。黒が勝負できるのは、f4に反撃できる本譜だけです。

19. Bxb6 Qd6!

b6でナイトを捨てるアイディアを思いついた際、最初に考えたクイーンの位置はb8でしたが、ルークが連携できないうえ、d5-d6を許してしまいます。19... Qb8? 20. d6! Bxd6 21. Bd3+- こうなるとf4取りチェックがビショップからになってしまうため、パワーが半減して黒失敗です。

20. Nxe4?


指された瞬間、これはf3のナイトが負担になりすぎてしまうため、黒にチャンスがきたと感じました。代わりの良い手はよく分かりませんでしたが、ナイトをかわす手が良かったようで、20. Ne5! Qxe5! (20...cxd5!? 21. Nxe4 Bxe4 22. Bd3 Rfc8+ 23. Kb1 Bxh1 24. Rxh1もありえる変化です) 21. fxe5 Bg5+ 22. Kb1 Nd2+ 23. Ka2 Nxb3 24. Kxb3 exd5 これで形勢不明というコンピュータの評価です。

20... Bxe4 21. Qe3 cxd5 22. Bd4

22. Qxe4 dxe4 23. Rxd6 Bxd6 24. Ne5 f6 25. Ng6 Rfc8+ 26. Kb1 Kh7-+ 3ポーン2ピースルークにする駒交換も考えましたが、3ポーン多ければ黒は十分でしょう。

22... Rfc8+ 23. Bc3 Bf6


23... Rxc3+! 24. bxc3 Qa3+ 25. Kd2 Bc5-+ いくつかのタイミングでルークを切る手は考えていたつもりでしたが、黒マスで揺さぶりをかけ、f3のナイトからクイーンの守りを引きはがす手は見えませんでした。

24. Rh3 Bxc3 25. bxc3 Qa3+ 26. Kd2 Qb2+ 27. Ke1 Rxc3

これで4ポーンvs.ピースとなり、白キングが危険なことも相まって黒は十分に勝勢です。

28. Qe2 Qa3 29. Ng1 Rac8 30. g5 hxg5 31. fxg5 Qxa4 32. Qh2 Rxh3


hファイルにヘビーピースを重ねられたタイミングで予定通りのルーク交換ですが、ここは32... Qxd1+! 33. Kxd1 Rc1+ 34. Kd2 R8c2+ 35. Ke3 Rxh2 36. Rxh2 Rxf1-+ というタクティクスは見えなければいけませんでした。

33. Bxh3 Qb3 34. Ne2 a4 35. Nf4 Qe3+ 36. Kf1 Rc2 37. Ne2 Bf3?!

勝ちまであと一歩というところで、少し見落としがありました。37... Rxe2! 38. Qxe2 Qxh3+ 39. Ke1 a3-+ で圧倒的なリードだと分かっていたものの、本譜で白にはディフェンスのチャンスが無いと思ってしまいました。

38. Qb8+ Kh7 39. Bf5+! exf5


試合中も試合後も、このビショップを取らずにポーンを挟んで黒勝ちだと思っていましたが、それこそ黒が負けになるひどい手でした。39... g6?? 40. Qh2+ Kg8 41. Bxc2+- f5のビショップはc2のルークに当たっているため、クイーンを戻してe2を守れば、ルークを取ることができます。

40. Qh2+ Bh5?

g6にキングを上がった際、Ne2-Nf4がチェックになることを見落とし、37... Bf3+を指しました。しかし、ここはナイトチェックを食らっても、クイーンを捨てて依然黒が勝勢です。40... Kg6! 41. Nf4+ Qxf4! (41... Kxg5?? 42. Qg3+ Kf6 43. Nxd5++- これは白のクイーンがあえなく落ちます) 42. Qxf4 Bxd1-+ このクイーンvs.ビショップ+ルーク+複数ポーンも考えたのですが、時間のない中で自信が持てず、本譜を選択しました。

41. Qxh5+ Kg8 42. Rxd5 Qe8 43. Nf4??


黒がパペチュアルチェックを切るためにビショップを捨て、さぁ勝負は分からなくなったというタイミングで勿体ないミスが出ました。43. Qf3! g6 44. Qd3 Rc8-/+ ならば黒良しながらまだ分かりません。

43... Rc1+ 44. Kg2


ルークを退く変化にはe3にクイーンが跳びこむ手が良いでしょう。44. Rd1 Qe3! 45. Ng2 Qd3+ 46. Ke1 Qc3+ 47. Ke2 Qc4+ 48. Ke1 a3-+

44... Qe4+ 45. Kg3 Rg1+ 46. Kf2 Qe1+ 0-1

今大会、青嶋くんに土をつけた汐口くんをここでは退け、なんとか3/4で2日目を終えることができました。まだ半分も終わっていないので、また気を引き締め直して折り返しの3日目を迎えたいと思います。

Japan Chess Championship 2024 R5 Pairings


4連勝はTuさん1人となり、明日は注目の南條くんとTuさんの直接対決です。昨年と色が逆なので、どんな戦いになるか見ものですね。私も5Bまで戻ってきましたので、近くで見守りつつ自分の試合もしっかり指してきます。
今大会中、会場の写真を撮り損ねているので、夜ご飯に食べた上海風焼きそばをお届けします。

2024/05/02

Japan Chess Championship 2024 Day1 Tournament Report


今年もGWの全日本選手権が開幕しました。私は初戦、中国のChenくんにかなり良い局面から優位をどう活かすか分からず、逆転を許してあえなく負け。16歳から参加している全日本選手権で、黒星スタートは今回が初めてです。2戦目は慶應チェスクラブの後輩、竹内くんに黒でした。彼とは今回が初対戦です。

Takenouchi, A (JPN, 1744) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
Japan Chess Championship 2024 (2)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. g3 Bf5 5. Nc3 e6 6. Qb3 Qb6 7. c5 Qxb3 8. axb3 Be7 9. b4 O-O 10. b5 cxb5 11. Bf4?

近年、Slav Defenceに対して4.g3とするのはよく見かけますが、ここでポーンを捨てるのはやりすぎです。11. Nxb5 Nc6とすべきですが、これでも黒はナイトがc6に展開できてd4を攻撃でき、満足な流れでしょう。

11... b4 12. Nb5 Nc6 13. Ne5 a5 14. Nxc6 bxc6 15. Nc7 Ra7


白のナイトは帰るマスがなく、いかにも怪しい跳びこみです。これに上手くつけこめばあっという間にゲームが終わるかと思いましたが、ここからとんでもないことになります。

16. e3 Rc8?!

16... g5! 17. Be5 Ng4! 18. Na6 Be4 19. Rg1 Nxh2-+ gポーン突きは考えていましたが、h2を落としにいくという発想はまったく思い浮かびませんでした。ここからf3でのチェックを狙うと、白はビショップを捌かなければいけなくなり、結果としてa6のナイトが落ちそうです。

17. Na6 Ne8


d6へのビショップ跳びこみを消し、g7-g5を狙うつもりでしたが少し悠長でした。17... Nd7 18. Bd6 Bxd6 19. cxd6 e5!とするくらいで満足すべきです。

18. h4 h6


h4-h5を誘うことで将来的にh5がターゲットになるかと思いましたが、これも上手くいきませんでした。18... f6! 19. Nxb4 e5! 20. dxe5 Be4! 21. Rg1 g5! 22. exf6 Bxf6 23. hxg5 Bxb2-+ eポーンとgポーンを両方突く手は考えていたつもりが、ビショップトラップを避けてf6を取った際、b2への反撃があるところまで読めませんでした。

19. h5 Be4 20. Rg1 Rb7?

一度ルークをbファイルに振ってa5取りを誘う手は遅いと分かりつつ、時間をかけても正解が見つけられませんでした。20... Nf6 21. g4 Nd7 22. Rxa5 Bd8 23. Ra1 Rca8 24. Kd2 Bf6 ここから再度e6-e5を狙って黒は悪くないでしょう。

21. Rxa5 Bd8 22. Ra1 Ra8 23. Be2 Rba7


ルークをダブルaファイルにしたものの、Ra7-Rb7-Ra7のテンポロスがあり、上記の理想的な展開から離れてしまっています。白も2つ目のルークをaファイルにまわす余裕があり、a6のナイトはもはや負担ではありません。むしろb4が弱点の黒が気を付けるべき展開です。

24. Kd2 Nf6 25. g4 Nd7 26. Bd6 f6 27. f4 Kf7 28. Ra4 Bh7 29. Rga1 f5 30. b3


30. gxf5 Bxf5 31. b3 Nf6 32. Kc1! と逃げる手がここは上手く、e4でのナイトチェックをかわして白が大きなアドバンテージです。

30... Nf6 31. gxf5 Ne4+ 32. Ke1?

なんとかNd7-Nf6-Ne4を実現し、息を吹き返したと思っていましたが、単にキングの逃げる位置の問題でした。32. Kc1! Nc3 33. fxe6+ Kg8 34. Nxb4! Nxe2+ 35. Kd2 Rxa4 36. Rxa4 Rxa4 37. e7!! (37. bxa4? Ba5!=) 37... Bxe7 38. bxa4+- は白がフォークでピースを取り返し、勝勢となります。d6でのピース交換の際に白のパスポーンが止まらないことがポイントですが、かなり難しい変化です。

32... Bxf5 33. Bd1 Nc3


すでに互いに時間がなく、かなり焦って指していました。33... Rb7! 34. Nxb4 Rxa4 35. Rxa4 Rxb4-+ 一度冷静にb4を守る手も良く、Bd8-Ba5があるため、白はb4を取ることができません。e1のキングの位置が悪いことがよく分かります。

34. Bb8?


試合後の検討でb4を取る手を指摘しました。34. Nxb4 Nxa4 35. Nxc6 Ba5+ 36. b4 Nxc5 37. Kf1 Ra6 38. Ne5+ Ke8 39. bxc5 これでも黒有利ですが、時間のない状況ではまだ難しいでしょう。

34... Rb7 35. Be5 Nxa4 36. Rxa4 Bd3 37. Nxb4 Rxa4 38. Nxd3 Ra2 39. Nc1 Ba5+ 40. Kf1 Ra1 0-1

初日連敗も覚悟したゲームでした。序盤の優位をどう活かすかは課題ですね。他のボードを見ても、初日の2試合でだいぶ上位勢も星を落とし、かなり混沌としたスタートになりました。私は中間くらいのボードから浮上を狙っていこうと思います。

Japan Chess Championship 2024 R3 Pairings

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.