2025/08/28

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第45回予告

8月のチェス講座告知です。今月のYouTubeでの講座は今週末、8/31(日) 20時からスタートです。

今月のYouTubeの講座テーマは『Where are you from?』です。様々なチェスのポジションを見ていると、その駒はどこから来たの?と疑問に思うような状況も登場します。駒の配置を不自然に思うのは、自然な駒の動きや配置を学んでいる証拠です。しかし、不自然ながらも良い駒の動きや配置はあるため、自然=良いとは限りません。今月の講座では駒の不思議な配置や動きを見て、盤上で起こりうる様々な可能性について模索していきましょう。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第45回『Where are you from?』|2025.08.31

2025/08/27

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.7


続いては昨年の夏にトレーニングで指したゲームをご紹介します。松村くんは現在、日本でトップクラスの力を持つユースプレーヤーで、こちらのトレーニングの主催者でもあります。毎回、オープニングを指定して集まったメンバーでラピッドを指すのが主な活動ですが、この時はNimzo-Indianがテーマだったため、白番黒番どちらでも指したい変化を調べてきました。

Kojima, S - Matsumura, C
Training

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. e3 d5 5. Nf3 O-O 6. Bd3

この日はオーソドックスなRubinstein Variationを選択しました。6. Bd2が現在はよく指されており、私も何回か経験がありますが、今回は古くからのメインラインに松村くんがどんなセットアップをするかが気になりました。

6... b6!?


白マスビショップの活用して普通に見えますが、センターへの反撃を優先するのが人気の変化です。6... c5 7. O-O cxd4 8. exd4 dxc4 9. Bxc4 b6と進めてIQPを決めてから、a8-h1の広いダイアゴナルをビショップで抑える、いわゆるKarpov Variationは手堅いでしょう。私は黒で主にこの変化を指していました。

7. O-O dxc4 8. Bxc4 Bb7 9. Qe2

他のオープニングでも、c4を黒から交換してからBc8-Bb7と組む変化はありますが、白のセンターの厚みを過小評価するべきではありません。遅かれ早かれc7-c5を狙うのであれば、上記のKarpov Variaitionの手順がやはり優秀に思えます。c7-c5が遅れるようであれば、c7のポーンは白から絶好のターゲットになります。

9... Nbd7 10. Rd1 Qc8?!


これは指されて少し驚いた手です。クイーンの避け場所はe7が安全で、じっくりc7-c5のチャンスを窺えます。c8の位置だと、Ra1-Rc1からクイーンもターゲットになってしまい、苦しい展開でしょう。

11. Bd2 Re8 12. Rac1 h6 13. a3 Bxc3 14. Bxc3

ここもIQPを早めに決めているKarpov Variationとの違いで、d4が孤立ポーンでない本譜では、白はd4-d5をじっくり狙えるため、c3はビショップの位置として悪くなく、黒が黒マスビショップを手放す代償が十分ではないように思えます。

14... Ne4 15. Be1! e5 16. Ba2!


e4のナイトはアクティブではありますが、白は黒マスビショップをキープしてゆっくり対処することで、十分にダブルビショップの強さが活きる展開を目指せます。白マスビショップも退いてcファイルを開ければ、次にQe2-Qc4を狙い、c7、f7にプレッシャーをかける準備が整います。

16... Ba6 17. Qc2 exd4 18. Qxc7! Qxc7

Bb7-Ba6はc4のマスをカバーしますが、代わりにe4のナイトが浮いてしまいます。ここはいずれにしても白勝勢ですが、一か八かc3にナイトを跳びこむべきではないかと、検討で松村くんに指摘しました。ちょうどこの頃に自身の著「チェスが強くなる人の本」の執筆が佳境で、その中で少し触れたInterferenceというタクティクスです。

18... Nc3!?
Analysis Diagram

19. Bxf7+!! (19. Qxc8? Ne2+ 20. Kh1 Raxc8) (19. Rxc3!? dxc3 20. Qxd7 Qxd7 21. Rxd7 cxb2 22. Bc3 Rad8 23. Rxd8 Rxd8 24. Nd4+- 試合後の検討ではこの変化を出しました。) 19... Kh8 20. Qxc8 Ne2+ 21. Kh1 Rexc8 22. Rxc8+ Rxc8 23. Be6+- 先にf7を取れば、すぐにc8でクイーンを交換する変化と違い、白は駒得のうえにe6のマスが使えて勝勢です。

19. Rxc7 dxe3 20. Rdxd7 exf2+ 21. Bxf2 1-0


本譜はd7のナイトも見捨ててきたため、白の駒得が大きくすぐに決着となりましたが、c7での交換で7段目を抑えられてしまっているため、黒はどうしても苦しいでしょう。長くNimzo-Indianのメジャーな変化は白側で避けてきましたが、こうしてある程度の自信をもって指せたのは良い経験でした。

2025/08/20

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.6

松本チェスクラブには昨年から、例会に2回、大会に2回足を運んでいます。今年の4月以降、クラブの運営体制が変わっても、活動自体は問題なく継続されているようでなによりです。今夜はそんな松本チェスクラブの第1回大会から、中学生のRyuくんと指したゲームをご紹介します。

Ryu, C - Kojima, S
1st Matsumoto Open(5)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. Nf3 Nd7 7. Bd3 Ngf6 8. O-O e6 9. Re1 Bd6!?

この試合はCaro-Kann Classicalの、h2-h4がない変化でした。この局面では9... Be7が手堅いですが、こちらも指すことができます。

10. c3


10. Nf5 Bxf5 11. Bxf5 O-O 12. Bd3と進んだ場合、黒は白マスビショップを手放すことになりますが、代わりに白のピースの展開を遅らせてバランスが取れています。

0... Qc7 11. Qc2 Bxd3 12. Qxd3 O-O 13. Bd2 Rad8 14. Re2 c5 15. Ne4 Nxe4 16. Qxe4 cxd4 17. cxd4

d4が孤立すれば黒はひとまず作戦成功です。17. Qxd4 Ne5! 18. Nxe5 Bxe5 19. Qxe5 Qxe5 20. Rxe5 Rxd2=/+ ならば、白はポーンを乱さない代わりに7段目にルークを侵入されてしまいます。

17... Nf6 18. Qd3 Bf4?!


IQPの原則に従ってマイナーピースを交換しようと思いましたが、白の黒マスビショップはあまり働きが良くないため、少し白を助けてしまったようです。e2のルークの横利きが開くのももう少し気にするべきでした。代わりに18... Rc8くらいで先にcファイルを抑え、d8にはもう1つのルークを置けば黒が優勢です。

19. Rc1 Qb8 20. Qb3 Bxd2 21. Rxd2 Rd6 22. Rdc2 Nd5 23. a3 h6 24. g3 Rb6 25. Qd3 Qd6 26. Ne5 Qe7 27. Nc4 Rc6 28. Ne3!

f3からナイトを組み替え、e3まで運んでd5のマスを奪い返すのが白の好判断です。cファイルをがっちり握られていると、孤立ポーンを持たせていても黒が良いとは言えなくなってきました。

29... Rxc2 29. Rxc2 Nb6 30. Qe4 Qd7 31. Qe5 Rc8


本当はルークを残してd4にプレッシャーをかけたいところでしたが、Rc2-Rc7を防がなくてはいけないためにルーク交換を仕掛けざるをえません。ナイトとクイーン、あるいはクイーンだけのエンドゲームになれば完全に互角です。

32. Rxc8+ Qxc8 33. Qc5 Qd8 34. Nc4 Nxc4 35. Qxc4 a6 36. b4 Qd7 37. Kf1 Qb5 38. Qxb5?

ここしかチャンスは無いと思い、クイーン交換を仕掛けたところ、相手はそれに乗って自分からクイーンを取ってきました。しかし、白のa,bポーンが動けない状態で、黒のbポーンのみ動く手が残っているポーンエンディングは、黒にテンポ調整のチャンスがあります。正しくは38. Qe2! として黒からのクイーン取りを待つべきでした。

38... axb5 39. Ke2 Kf8 40. Kd3 Ke7 41. Ke4 Kd6 42. g4 g6 43. f3 f5+ 44. Ke3 g5?


このポーンエンディングで正確な判断ができなかったのは大きな反省です。ポーン交換のタイミングは遅らせても支障ないと思いましたが、相手がfポーンでしか取り返せず、e4のマスのコントロールを失う今がベストでした。44... fxg4! 45. fxg4 Kd5 46. h4 g5 47. hxg5 hxg5 48. Kd3 e5 49. dxe5 Kxe5 50. Ke3 b6!-+ ここで突けるポーンが1つ残っていることで白に手番を渡し、ツークツワンクにできれば黒の勝ちでした。

45. h3!=

これでg4でのポーン交換の際にhポーンで取り返せれば、白は黒キングのe4への侵入を阻止できます。

45... Kd5 46. Kd3 b6 47. Kc3 fxg4 48. hxg4 Kd6 49. Kd2 Kc6 50. Kc2 Kd5 51. Kd3 e5 52. dxe5 Kxe5 53. Ke3 Kd5 54. Kd3 Ke5 55. Ke3 Kd5 1/2-1/2



大会の最終戦で、優勝を逃がす痛いドローでした。この1年、国内大会で難しいポーンエンディングもいくつか目にしていますので、自分が失敗したものも教訓にしてレベルアップしていきたいですね。

2025/08/16

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.5


久々に去年~今年の未公開棋譜を振り返るシリーズです。この2年間は東海オープンに続き、5月の中部ラピッド選手権で名古屋に遠征をしています。2024年中部ラピッド最終戦の東芝さんとの試合は、優勝を決めるために落とせない一戦でした。

Higashishiba, T - Kojima, S
Chubu Rapid Open 2024 (5)

1. e4 c6 2. Nf3 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Nf6 5. Qe2 Na6!?

当時勉強していたChessableのコースでこれが勧められていましたが、かなり珍しい変化です。Na6-Nb4からc2を狙う含みを見せておき、白の出方を伺います。

6. d4 Nxe4 7. Qxe4 Qd5 8. Qxd5 cxd5 9. Bb5+ Bd7 10. Bxd7+ Kxd7 11. c3 f6!


e5のマスを早めに受けておき、Nf3-Ne5を止めておきます。クイーン交換まで済ませているため、将来的なe6の弱さもさほど気にならないでしょう。

12. h4 e6 13. Bf4 Be7

ドローを目指すのであれば、13... Bd6からビショップ交換を狙う手もありえます。しかし、e7でもa3-f8ダイアゴナルで強力に利くビショップですので、残しておいても悪いはずはありません。この判断が後に黒にチャンスを呼びこむことになります。

14. Ke2 Rac8 15. Rac1 Rc6 16. Rhd1 Rhc8 17. h5 Nc7 18. Bxc7?!


Nc7-Ne8-Nd6のマヌーバリングを恐れたとのことでしたが、それならばd6での交換でも遅くありません。いずれにせよ、黒がビショップを持つ展開になれば、b7-b5-b4のマイノリティアタックもやりやすく、黒は互角以上の形勢で満足です。

18... R8xc7 19. Ne1 Bd6 20. g3 b5 21. a3 a5 22. Nd3 e5 23. dxe5 fxe5 24. f4 exf4 25. gxf4 Rc4

d3に切り替えた白のナイトは、f4,e5,c5,b4の重要な4マスを抑えていますが、それゆえにd3から動きづらい点が気になります。コンピュータ評価はまだ互角ですが、どちらに転ぶかと言われると黒に転びそうな展開に見えます。

26. Kf3 Kc6 27. Rg1 Rf7 28. Rg4 Re7!?


g7は多少気になりますが、eファイルからの侵入を見せて白キングに揺さぶりをかけます。

29. Nf2?


d3のナイトは好位置であるため、これを動かすのは危険です。29. Rd1 Rce4 30. Rd2 として2段目を守れば白は問題ありません。

29... b4?!

ナイトが離れたのでb4を仕掛けるチャンスだと思いましたが、より着目すべきはc5のマスでした。29... Bc5! ならば白はe3のマスを受けることができず、ナイトも危険な状態です。

30. axb4 axb4 31. Nd3 Kb6 32. cxb4 Rce4 33. Nc5 Rxb4 34. Nd3 Rbe4 35. Rc3 Re3+ 36. Kf2 Re2+ 37. Kf1 Rh2 38. Rb3+ Kc7 39. Rg5 d4 40. Ra5?


キングへプレッシャーを積極的にかける狙いですが、g7への当たりを外してしまうと、e7のルークが自由になってしまい、黒のほうが早くダブルルークを活用して白キングへの攻撃を仕掛けられるようになってしまいます。代わりに40. Rbb5! がb2を受けつつ、様子を見る1手として良かったでしょう。

40... Re3

d3のナイトに揺さぶりをかけるつもりでしたが、40... Ree2 と素直に7段目のダブルルークにして、メイトに近い状態を作っておくほうがシンプルです。

41. Ra7+?


a5にルークを振った以上指したくなる手ですが、黒キングは危険なくするすると逃げてしまいます。41. Ra4! Re4 42. Rc4+ Kd7 43. Rb6 Rd2 44. Rcc6= ならば、白も6段目のダブルルークを作って問題ない局面でした。

41... Kc6 42. Ra6+ Kd5 43. Kg1 Rd2 44. Rb5+ Kc4-+

ダブルルークのチェックを振り切った黒キングは、逆に白の2ピースにフォークをかけ、決定的な駒得で黒勝勢となります。

45. Rxd6 Kxb5 46. Nf2 Re1+ 47. Kg2 Ree2 0-1


Caro-Kann Two Knightsは、黒から様々な変化があるので選ぶ楽しみがあります。また違う形も別の機会にご紹介したいと思います。

2025/08/02

麻布学園チェス部夏合宿2025

7/30-31の2日間、山梨県の石和温泉で行われた麻布チェス部の夏合宿に指導でお邪魔させていただきました。山梨県の合宿地としては、これまで河口湖と三つ峠を訪れたことがありましたが、石和温泉は初めてです。新宿や八王子からは特急あずさを活用しても来ることができますが、私は京王線で高尾乗り換え、そこから中央線でのんびりやってきました。去年はあずさを使わずに長野の松本まで行ったので、その途中の石和温泉であれば、さほど遠くは感じません。
午前中に石和温泉に到着し、駅前の散策と昼食後に徒歩で宿に向かうつもりでしたが、ちょうど駅前で到着したばかりに現役生たちと合流しました。彼らは送迎のバスを頼んでいたため、ありがたく便乗させてもらい、合宿所の宿へと向かいます。後輩たちの昼食が済んでから、初日の指導がいよいよ始まります。
Fernandez Coria - Capablanca
Buenos Aires 1914
Position after 16.Qd2

最初は私の講座ではお馴染みになりつつある、Capablancaが指したゲームの局面から。ここでの黒番のタクティクスを紹介するだけなら簡単なのですが、ビショップとナイトの特性、どう組み合わせて使うか、2ピースvs.ルークなどを丁寧に説明していると、少し手間がかかります。Capablancaが指したベストの手は16...Bh3! ですが、16...Nxg2 だとどうなるかなど、検討の甲斐があるアイディアは豊富にあり、現役生たちには2人1組になって考えてもらいました。
Alexey Selezniev
Tidskrift for Schack, Dec 1921
White to move and win

可能なアイディアはなるべく全て考えるというテーマで、こちらの局面も出題しました。こちらはなかなか正解にたどり着かず、現役生たちは苦戦しましたね。こちらの問題をご存じないかたは是非チャレンジしてみてください。
初日の夜は同時対局で、春合宿の9面指しから17面指しと倍近くになり、とにかく大変でした。大阪の万博ではJuditが16面指して全勝だったため、それを超える17勝を目指しましたが、結果は部長の大沼くんとドローで、他勝ちの16勝1ドローでした。ある意味、Juditと同じですね笑。同時対局の中で唯一、危ないと思った試合をご紹介します。

Kojima - Kumasawa
Azabu Summer Chess Camp 2025 Simul

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 c5 5. Nf3 O-O 6. O-O cxd4 7. Nxd4 Nc6 8. Nc2 b6 9. Nc3 Ba6 10. b3 Rc8 11. Bb2 d6 12. Qd2 Qc7 13. Ne3 e6 14. Rac1 Ne5 15. h3 Rfd8 16. f4 Nc6?!

翌日の振り返りで16...Ned7 のほうが良いことを指摘しましたが、熊沢くんは自分でも解析で見つけていたようです。部員たちはレベルも熱意もまちまちではありますが、自分で試合を調べたり、質問を積極的に持ってくる子も予想より多くて感心しました。

17. Ncd5! exd5 18. cxd5 Qe7 19. Rxc6


典型的なナイトのサクリファイスで優位を築いたのは良かったのですが、ここは19. Bxf6! Qxf6 20. dxc6 Qd4 21. Rfd1+- のほうが本譜のNf6-Ne4に悩まされることが無く、良かったと思います。黒マスを自分から手放すのは少し抵抗がありましたが、黒からの反撃は限定的で問題ありませんでした。

19... Bb7 20. Rxc8 Bxc8 21. Rc1?! Ne4!

この手が来ることは分かっていたのですが、直前にどう対応すべきか自信が持てませんでした。21.Bd4!? くらいでビショップの位置をあらかじめ改善しておき、交換するとしてもb2でない場所を選ぶべきだったかもしれません。

22. Bxe4 Bxb2!


先に黒マスビショップ交換になり、クイーンがナイトの守りから引き離されてしまうことを失念していました。これでh3が落ちることが決まり、かなり焦りながら反撃しやすい形を模索します。

23. Qxb2 Qxe4 24. Kf2 Bxh3?!

試合中に気にしていたのは24... Re8! として先にeファイルからの反撃を強化しておく手で、これならば白クイーンはナイトの守りから離れられないため、本譜のa1-h8ダイアゴナルを抑える反撃は作れず、キングが不安定な白はやや劣勢かと思っていました。しかし、1ポーンダウンの黒が早くポーンを取り返したいと焦る気持ちは理解できます。

25. Qc2 Qb4 26. Qc3 Qa3? 27. g4!


黒にあまり良いディフェンスが無いことを確認し、このポーン突きを実行しました。h3に跳びこんだビショップの帰り道を消し、Rd8-Rc8のような反撃もできないようにしておきます。さらにここでRc1-Rh1がビショップトラップの狙いになることが、あらかじめKg1-Kf2と寄っておいたアイディアでもありました。

27... h5 28. Rh1!

g4を取る手に対しても、Ne3-Ng4ができ、h8でのメイトが狙えるためにビショップは助かりません。これで勝利を確信しましたが、途中かなりひやっとするところのあるゲームでした。

28... Qc5 29. Qxc5 dxc5 30. Rxh3 hxg4 31. Nxg4 Rxd5 32. Nf6+ Kg7 33. Nxd5 f5 34. Kf3 Kf7 35. e4 Ke6 36. Rh7 1-0


合宿2日目は午前中に17人全員に振り返りとアドバイスを行い、私の指導は全て終了しました。今年は久々の春夏両合宿にお邪魔しましたが、現役時代を思いしてやはり合宿は良いですね。呼んでくれた現役部員たちだけでなく、指導内容をメモして渡してくださったり、写真を提供してくださった顧問の先生2人にも深く感謝いたします。
現役生たちは3泊4日の合宿ですが、私の指導は最初の1泊2日だけですので、1人宿を離れて帰路につきます。駅から少し離れた場所に、リニューアルオープンしたばかりの甲斐の駅いさわがあり、寄ってみることに。動かざること山の如しを体現するような、巨大な武田信玄の像がありました。
山梨県は宝石や天然石加工の技術に優れてるそうで、県内で採掘ができなくなった現在でも、海外から素材を輸入して加工をしているそうです。言われてみれば、河口湖近辺にも天然石を扱うお店や宝石の美術館がありました。こちらは肉に見える石で、奥の焼き鳥か手前の豚肉のどちらかが天然の石です。どちらか分かりますか?

2025/07/26

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第44回予告

7月のチェス講座告知です。今月のYouTubeでの講座は今週末、7/27(日) 20時からスタートです。

今月のYouTubeの講座テーマは『ドローの境界線』です。チェスの試合は大差になることもありますが、実力伯仲のプレーヤー同士の試合であれば長く互角が続き、最後の最後で一方がミスをして決着がつくことも多いでしょう。ドロー模様だった局面でどのようなミスが出て決着がつくか、または勝てそうなゲームをどのようにしてドローにしてしまうかを見ていきましょう。また少し違う内容ですが、エンドゲームにおけるドローゾーンというものを考えられる局面もご紹介しようと思います。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第44回『ドローの境界線』|2025.07.27

2025/07/21

Japan Chess Classic 2025 Day4

札幌で開催されたジャパンチェスクラシックは、無事に最終戦を終えて全日程を終了しました。6連勝で最終日を迎えた私は、弘平くんとドローで6.5/7となり、単独での優勝を決めています。ジャパンチェスクラシックは2回目の優勝だと思っていましたが、前身の大会である2018年のジャパンリーグで優勝したことと勘違いをしていました。ジャパンチェスクラシックは初優勝で、日本の3大大会の1つを取れたことをとても嬉しく思います。入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Kojima Shinya 6.5/7
2nd Place Tran Thanh Tu 6/7
3rd Place Kuroda Yunosuke 6/7
4th Place Moritani Sho 5.5/7
5th Place Yamada Kohei 5.5/7
6th Place Furuya Masahiro 5.5/7
7th Place Gishi Takeshi 5/7
8th Place Averbukh Alex 5/7
9th Place Matsunaga Toma 5/7
10th Place Noguchi Koji 5/7

Japan Chess Classic 2025 Final Standings


最終戦の弘平くんとの試合をご紹介します。ずっと上位ボードで試合をしていてタイブレーク有利かと思いきや、負けると直接対決の結果で2位に陥落することもありえたので、緊張感がありました。

Yamada, K (FM, JPN, 2189) - Kojima, S (IM, JPN, 2307)
Japan Chess Classic 2025 (7)

1. c4 c6 2. Nf3 d5 3. e3 Nf6 4. Nc3 a6 5. Be2 e6 6. O-O Nbd7 7. d4 Bd6 8. b3 O-O 9. Bb2 Re8 10. Qc2 e5!?

序盤はSemi-Slavとなりました。私も白でこの変化を指したことがあるため、どのような作戦でいくか悩みましたが、黒が早めにa7-a6を入れているため、オーソドックスなb7-b6からフィアンケットではなく、e6-e5からのビショップの利き筋を開くことにします。黒はIQPを持ちますが、直前にc2に移動した白クイーンがターゲットになりうるため、黒は十分に指せる局面でしょう。

11. dxe5 Nxe5 12. cxd5 cxd5 13. Rad1


ここは13. Rfd1 Be6 14. Rac1のほうが自然だと考えていましたが、f1のルークはしばらくf2を守り続けることで、黒からのキングサイドへのアタックを警戒する作戦だったようです。

13... Be6 14. h3 Rc8 15. Qb1 Qe7 16. Na4 Ned7 17. Bd3 b5 18. Nc3 Nc5

黒のナイトはd7-e5-d7-c5と組み替え、最終的にはe4のマスを抑えることを目標とします。

19. Ne2 Nfe4 20. Nf4 Qc7!? 21. Nxe6 fxe6


黒は白マスビショップを諦めますが、d5が孤立ポーンでなくなった分、バランスは取れているでしょう。

22. Nd2 Nxd3 23. Qxd3 Nxd2 24. Rxd2 Bh2+ 25. Kh1 Be5

この辺りでピースを総清算し、ドローを目指すことにします。6R終了時点で2位と1P差だったため、ドローでも単独優勝が確定です。

26. e4!? Bxb2 27. Rxb2 Qe5 28. Re2 Rc3!


28... d4!? 29. f4 Qc5 30. e5 と進むことも可能ですが、d4のポーンはブロックされており、パスポーンとしての強さはあまり発揮できないでしょう。ドローで満足であれば、本譜のようにクイーンを交換してしまうのが得策です。

29. exd5 Rxd3 30. Rxe5 Rxd5=

ポーンの形は黒が少し乱れていますが、ルークエンディングにおいては小さな問題です。以下、ドロー交換を目指して手堅く指します。

31. Re2 Kf7 32. Rc1 Red8 33. Rc6 R8d6 34. Rc7+ Rd7 35. Rc6 R7d6 36. Rc7+ Rd7 37. Rcc2 Kf6 38. g3 Re5 39. Rxe5 Kxe5 1/2-1/2


今大会は結果だけでなく、内容が安定して大きく崩れることが無かったのが良かったですね。地方開催は運営の苦労も多いと思いますが、今回も盛況で何よりでした。参加した全ての参加者と10名の大会運営人に感謝いたします。また次の大会でもよろしくお願いいたします。

2025/07/20

Japan Chess Classic 2025 Day3

ジャパンチェスクラシック3日目です。7月20日はInternational Chess Day ということで、社会的な貢献をしたクラブとして、佐賀の伊万里チェスクラブが表彰されました。伊万里チェスクラブの主催する有田焼を使ったチェス大会は、私も昨年まで3年連続で参加させていただいています。

さて、この日は午前の試合でTuさんに勝ち。相手の勘違いでルークを取れたのはラッキーでした。午後の試合では全日本でドローだった森谷くんに、前回と色を変えて白での対戦です。今夜はこちらの試合をご紹介します。

Kojima, S (IM, JPN, 2307) - Moritani, S (JPN, 2076)
Japan Chess Classic 2025 (5)

1. d4 Nf6 2. c4 d6 3. Nf3 Nbd7 4. Nc3 e5 5. g3 g6 6. Bg2 Bg7 7. O-O O-O 8. e4 c6 9. h3 exd4 10. Nxd4 Qb6!? 11. Nde2!

長くFianchetto King's Indianを指していますが、このタイミングのクイーンの飛び出しは初めて見ました。Qb6-Qb4のような手を警戒し、ナイトはe2に退いてナイト同士を連携させ、b2-b3のような手を指せるようにしておきます。

11... Qb4 12. b3 Ne8 13. Qc2 Nc5 14. Bd2! Qb6 15. Be3! f5


ナイトを退いたからにはfポーンを突きたくなりますが、f5のマスを奪う代わりにキングの守りを弱めるのが気になります。15... Qc7 16. b4 Ne6 17. Rad1+/- ならば白は満足な流れで、黒はQd8-Qb6-Qb4-Qb6-Qc7のテンポロスが痛いでしょう。

16. Rad1 Qc7 17. exf5 Bxf5 18. Qd2

展開したばかりのビショップにクイーンを当てられるのは嫌なようにも思えますが、落ち着いてd2に避ければd6にプレッシャーが続き、f5のビショップも将来的なターゲットになります。

18.... Bf6 19. Nd4 Bd7 20. Rfe1 Ng7 21. b4 Nce6 22. Ne4!


2つのナイト跳びで黒の両ビショップを退かせ、ナイトがセンターで強く働きます。このナイトはd6へプレッシャーをかけるだけでなく、f6への跳びこみも見据えています。

22... Be7 23. Nxe6 Bxe6 24. Bd4!?

a1-h8ダイアゴナルを抑え、黒キングにプレッシャーをかけ続けます。

24... Rf7 25. Qc3 Raf8 26. g4!?


f5のマスを抑えてNg7-Nf5を防いでおきます。このナイトがg7から切り替えることができないと、黒は苦しい時間が続くでしょう。

26... h6 27. Qc1 g5 28. Re2 c5

何かしらしなければいけないのは間違いないですが、この手はd4のマスを奪ってビショップを退かせる代わりに、d5のマスが弱くなります。

29. bxc5 dxc5 30. Ba1 Bd7 31. Nc3!


ナイトを切り替え、d5への跳びこみを見せれば白の勝勢です。

31... Ne6 32. Nd5 Qd8 33. Qe3 Re8 34. Qe4 Bf8 35. Qg6+ Bg7 36. Nf6+!

このナイトの跳びこみで駒得することに気づき、勝ちを確信しました。

36... Kf8 37. Nxe8 Nf4 38. Bxg7+ Kg8 39. Bf6+ Nxg6 40. Bxd8 1-0


最後はクイーンの取り合いですが、ルークまで貰っている白が完全に勝ちとなります。Tuさんに勝った直後に負けることがこれまで何回かあったので、ここは落とさずに安心しました。これで6連勝となり、2位と1P差をつけています。

Japan Chess Classic 2025 R7 Pairing


ここまできたらしっかり優勝したいですね。明日の最終戦も頑張ります!
今夜は札幌の人気店、雪だるまでジンギスカンをいただきました。

2025/07/19

Japan Chess Classic 2025 Day2

試合会場のかでる2.7は、北海道庁旧本庁の近くです。

ジャパンチェスクラシック2日目です。今日は午前の試合で、モンゴルのTsogt-Ochirさんと対戦になりました。先日のゴールデンオープンで優勝しているプレーヤーで、対戦してみたいと考えていました。

Tsogt-Ochir, B (MGL, 1932) - Kojima, S (IM, JPN, 2307)
Japan Chess Classic 2025 (3)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Qc2 dxc4 5. Qxc4 Bf5 6. g3 e6 7. Bg2 Be7 8. O-O Nbd7 9. e3 O-O 10. Nc3 b5!? 11. Qe2

c6のポーンを捨てるのが私の準備でした。クイーンを退く手にはクイーンサイドを伸ばして黒は満足になります。11. Qxc6 b4 12. Ne2 Bd3 13. Re1 Rc8 14. Qa4 Qb6 15. Nf4 Bc2 16. b3 Be4 17. Nd2 Bxg2 18. Nxg2 Rc2 19. a3 Qb7 を研究していました。

11... b4 12. e4 Bg6 13. e5 Nd5


13... bxc3 14. exf6 cxb2 15. Bxb2 Bxf6 とナイトを取り合う展開も考えられますが、d5のアウトポストのナイトで勝負します。

14. Ne4 h6 15. Rd1 Qb6 16. Nfd2 Rfd8 17. Nc4 Qa6 18. Bf1 N7b6 19. Ncd6 Qxe2 20. Bxe2 Nc8

クイーンを交換し、少しおとなしい局面になりました。d6に侵入したナイトも丁寧に捌いてリスクを減らします。

21. Nxc8 Bxe4!?


21... Raxc8 22. Nc5 の局面が自信がなく、あえてビショップナイトを交換して不均衡を作ります。

22. Nxe7+ Nxe7 23. f3 Bc2! 24. Rd2 Ba4 25. Bd3 Rd7 26. b3 Bb5

白マスビショップを交換し、白のダブルビショップを消すのは黒が望む展開です。白の黒マスビショップはd5のアウトポストをカバーできず、ナイトの働きが勝る局面になります。

27. Bxb5 cxb5 28. a3 Rc8! 29. Bb2 Rdc7 30. axb4 Rc2 31. Rad1 Nd5


b4を取り返すのは急がず、cファイルを占拠してアドバンテージを得ます。白のビショップは黒マスの味方ポーンで遮られており、黒はよっぽどのミスがでない限り負けない形になっています。

32. Kf2 Kf8 33. Ke2 Ke8 34. Rxc2 Rxc2+ 35. Rd2 Rxd2+?!

ここは35... Rc6 と退いてルークをキープするほうが良いとコンピュータは指摘しますが、ナイトvs.ビショップでも負けようがないため、黒は気楽にルークを交換したエンドゲームを指すことができます。

36. Kxd2 Nxb4 37. Ba3?


試合中は気づいていませんでしたが、これが負けを決定する手でした。37. Bc3! Nd5 38. Ba5! とa5のマスを抑える手が有効らしく、黒がクイーンサイドでパスポーンを作ることを遅らせて抵抗します。

37... Nd5 38. Bc5 a5 39. Kd3 h5 40. g4 g6 41. Ke4 a4 42. bxa4 bxa4-+

aファイルにパスポーンを作れば、後はキングかナイトでa3のマスを抑えにいければ黒勝ちです。ナイトはd5の白マスから黒マスを抑え、ポーンは白マスを抑えているため、安全策はキングでa3を抑えることでしょう。

43. h3 Kd7 44. f4 Kc6 45. f5 Kb5 46. gxh5 gxh5 47. f6 Kc4


白キングが黒のhポーン、fポーンを狙うのは時間がかかるため、黒キングはa3でビショップをいただき、戻ってくる時間が十分にあります。

48. Kf3 Kb3 49. Kg3 a3 50. Bxa3 Kxa3 51. Kh4 Kb4 52. Kxh5 Kc4 53. Kg5 Kxd4 54. h4 Kxe5 0-1

f6も落ちてhポーンを止められるため、ここで白はリザインしました。無理せず手堅く、自分らしいゲームが指せたと思います。午後の試合では、中国のXu Nuoさんと対戦して勝ち、Tuさんととも4連勝となりました。Xuさんは名前をどこかで見たことがあると思っていましたが、昨年少し覗きにいった国際将棋フォーラムの国際将棋トーナメント優勝者で、藤井竜王・名人と対局したかただと、試合前に本人から教えてもらいました。チェス、将棋、どちらも興味がある人が海外から参加してくれるのは嬉しいですね。トップ対決となる明日も頑張ります。

Japan Chess Classic 2025 R5 Pairing

今夜は十勝名物の豚丼をいただきました。
Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.