2025/06/21

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第43回予告

6月のチェス講座告知です。今月のYouTubeでの講座は今週末、6/22(日) 20時からスタートです。

今月のYouTubeの講座テーマは『Perpetual Check or Fighting』です。パペチュアルチェックは一方がチェックを続け、他方がチェックを防ぎ続けることで起こるドローのパターンですが、チェックする側にはより良い攻撃手筋が無いか、逃げる側にはチェックを振り切る方法が無いかを探る駆け引きがあります。今回はそんなパペチュアルチェックでドローにするか、それともリスクを取って勝負を続けるかをテーマに、実戦例をご紹介しようと思います。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第43回『Perpetual Check or Fighting』|2025.06.22

2025/06/17

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.3


このシリーズで続いてご紹介するのは、昨年の全日本選手権で指したゲームです。山本くんはこの当時、1900弱のレイティングでしたが、今年の全日本選手権での活躍により、現在は2000を超えています。この1、2年で最も成長した若手の1人でしょう。

Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Yamamoto, S (JPN, 1884)
Japan Chess Championship 2024 (3)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 Bb4+ 4. Nbd2

Bogo-Indianには去年、Nb1-Nd2の変化を用意していました。ビショップ交換を避け、場合によってはビショップペアを持って白は勝負します。ここでナイトとビショップのどちらを挟むかは、1つ前の米満君との試合で、Sicilian Moscowにどちらを挟むかと似ています。

4... O-O 5. a3 Be7 6. e4 d6 7. Be2 b6!?


黒はクイーンサイドフィアンケットを選択しましたが、e6-e5からc8-h3ダイアゴナルを開くアイディアも一般的です。7... Nbd7 8. Qc2 e5 9. Nb1! が私の準備で、c3にナイトを組み直してe4を支えるつもりでした。

8. O-O Bb7 9. Qc2 Nbd7 10. b4 h6 11. Bb2

上記の変化のようにナイトをc3に組み直すことは叶いませんでしたが、b2にビショップを展開できれば、d2とのナイトの相性も良く、白は満足なセットアップです。

11... c5 12. bxc5 bxc5 13. d5 e5 14. Bc3!


センターが固まったので、サイドでの争いが中心となります。白はクイーンサイドで揺さぶりをかけ、bファイルからの侵入を目指します。

14... Ne8 15. Nb3! Bc8 16. Na5 Nb8 17. Rab1+/-

ビショップはb7では使いづらいために退きなおすのは予想通りですが、ナイトも初期位置に戻ったのは意外でした。単純にbファイルを抑えて白が優勢ですが、駒が取れるようになるにはまだひと手間必要です。

17... Qd7 18. Rb2 Bd8 19. Rfb1 Bxa5?!


いずれにせよ黒は消極的で苦しい状況ですが、19... Bb6 としてbファイルをブロックするほうが粘れます。本譜のように黒マスビショップを貰えれば、白は黒マスを使ったプレーが楽になるでしょう。

20. Bxa5 Na6 21. Nh4!

クイーンサイド一辺倒ではなく、キングサイドでもプレーを混ぜるのがポイントです。f5へのナイトの侵入を見せ、黒のキング前の弱体化を狙います。

21... g6 22. g3!?


ナイトの退くマスを作りつつ、f2-f4も場合によっては狙おうと考えましたが、素直に弱くなったh6を攻撃するほうが良かったかもしれません。22. Qc1! Kh7 23. Bd2+-

22... Nac7 23. Bd3 Ng7 24. Qd1 Nce8 25. Bc2

上記の黒マスを狙うプランではなく、逆に白マスビショップを活用しようと考えました。c4,e4のポーンで妨害された白マスビショップを、Be2-Bd3-Bc2-Ba4とマヌーバリングします。

25... Qh3 26. Ba4 a6 27. Bc6 Ra7 28. Bb6 Re7 29. Bd8 Ra7 30. Rb8


白マス黒マス両ビショップで黒ルークに揺さぶりをかけ、ルークも侵入させます。何か上手い手順ですぐルークが取れないかと思っていましたが、はっきりしたアイディアはありません。それでも黒のピースはあまり動けず、白は大きく優勢です。

30... Nh5 31. Qb3?

ここでクイーンもクイーンサイドで侵入していけば勝ちだと思いましたが、キングサイドでの反撃をきちんと考えていませんでした。ここは31. Qf1! が正確な手で、クイーンを強制的に交換してしまい、黒のキングサイドの反撃を消してしまえば、クイーンサイドで圧倒している白の勝勢です。

31... Nef6! 32. Bxf6


ナイトが出てくれば、あらためてクイーンをキングサイドのディフェンスに使うつもりでしたが、32. Qf3? Nf4! が強力で、黒に余計なアタックを許してしまいます。本譜は泣く泣く黒マスビショップを返しますが、これにより白の優位は間違いなく減っています。

32... Nxf6 33. Qf3 Kg7 34. R8b2 Bg4?!

ここは先述のようなクイーン交換が起こり、bファイルを抑えている白が有利となります。代わりに34... g5! 35. Nf5+ Bxf5 36. Qxf5 Qxf5 37. exf5 e4!=/+ と進めば、黒のナイトは白のビショップに勝る働きをしています。

35. Qd3 Bc8 36. f3! Nh5 37. Qf1 Qxf1+ 38. Kxf1 f5 39. exf5 gxf5?


この自然に見えるポーンの取り返しで、再度白にチャンスが生まれました。39... g5! 40. Ng2 Bxf5 41. Rb7+ Rf7 ならば黒は不満の無い流れです。d3でのチェックがあるため、g3-g4はポーンフォークのスレットになりません。

40. Rb6 Kf6 41. Rb8 Rc7 42. R1b6+-

a6、d6、f5といった複数のポーンがターゲットになっており、黒は全てを守り切るのが大変でしょう。

42... Ng7 43. Bb7 Rd8 44. Bxc8 Rcxc8 45. Rxc8 Rxc8 46. Rxd6+ 1-0


最後は重要なポーンが落ち、あっさりとした決着がつきました。盤全体のプレーで上手くチャンスを作っただけに、不必要な反撃を許して形勢を怪しくした点を反省しています。

2025/06/16

Chubu Rapid Open 2025

昨日は名古屋で開催された中部快速オープンに参加してきました。すでに10回以上参加している1日制の大会で、毎年この大会のために名古屋遠征できることを楽しみにしています。昨年は1つドローがありましたが、今年はなんとか全勝での優勝を果たすことができました。入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2278) 5/5
2nd Place Noda Ryo (JPN, 1796) 4/5
3rd Place Higashishiba Teruomi (JPN, 1907) 4/5

Chubu Rapid Open 2025 Final Standings


今大会一番の山場は、3連勝同士で迎えた4Rの東芝さんとの試合でした。序盤で優位になったにもかかわらず、適切なプランが分からずに苦戦します。今夜はこちらのゲームをご紹介させていただきます。

Higashishiba, T (JPN, 1907) - Kojima, S (IM, JPN, 2278)
Chubu Rapid Open 2025 (4)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nd2 e6 5. Nb3 c5 6. dxc5 Bxc5 7. Nxc5 Qa5+ 8. c3 Qxc5 9. Nf3 Qc7!?

Caro-Kann は様々な研究に目を通していますが、こちらはJobavaの勧める手です。クイーンを早めに退いてe5を狙い、白のセットアップを早めに決めさせます。

10. Bf4 Nc6 11. Be2 Nge7 12. Nd4 Nxd4 13. cxd4 Nc6 14. O-O?!


本譜のb2を捨てるプランは難しいですが、白が手堅く指したければ避けるべきでしょう。14. Qd2! と先にクイーンを上げておき、d1にルークが移動する準備をすれば本譜の流れにはなりませんでした。

14... Qb6 15. Be3 Qxb2 16. Bd3 Bxd3 17. Qxd3 Qb6 18. Rab1 Qc7 19. Qb5 Rb8

思わずポーンアップした黒ですが、ここはb7を返すことも考えました。19... O-O!? 20. Qxb7 Qxb7 21. Rxb7 Na5! こうしてc4のマスにナイトを置けば、働きの良いナイトと働きの悪いビショップの構図を作ることができます。しかし、せっかくのポーンを返してでもこうすべきか判断ができませんでした。

20. f4! O-O 21. f5 Ne7?!


ここはf5を早めにカバーし、反撃するべきだと思ったのですが、c7のクイーンhが狙われることをなぜか失念していました。21... Na5!? からc4を目指すプランはやはり有力です。

22. Rbc1?!


22. f6! Nf5 23. Rfc1 Qd8 24. Bf2 はポーンの代償がある難しい局面です。私はRf1-Rc1,Qc7-Qd8抜きでこの局面を考えており、ポーンの代償を軽視していました。

22... Qb6! 23. Qxb6 axb6 24. fxe6 fxe6 25. Rc7 Rxf1+ 26. Kxf1 Nc6

黒はポーンストラクチャーを乱しましたが、ポーンアップをキープしたままエンドゲームに入りました。b7の守りにルークは縛られているように見えますが、タイミングを見てaファイルからの反撃を仕掛けることができます。またここでは、26... Nf5! 27. Bf2 h5! としてf5のマスを確保し、ナイトを強く使うアイディアも有力です。

27. h4?! h6?!


お互いにキングサイドを見ていましたが、より重要なのはクイーンサイドです。aファイルからの反撃は当然考えていたものの、なぜかa2を落とす前にbポーンを極力伸ばすアイディアを考えていませんでした。27... b5! が強力な1手です。

28. g4 Na5?!


c4へのナイトの侵入は様々なタイミングで考えていましたが、e6、b7を落とす前にできる限りの準備をしておくべきです。ここが最後のb6-b5のチャンスでした。

29. Re7 Nc4 30. Bc1 Ra8 31. g5?!

指されてみて、g5-g6が嫌なアイディアだと思ったのですが、ここはaポーンを受けておくほうが良かったようです。しかし、31. a3! Nxa3 32. Bxa3 Rxa3 33. Ke2 Rg3 34. g5! hxg5 35. hxg5 Rxg5 36. Rxe6= がドローに持ち込めるエンドゲームだと読むのは、なかなか大変でしょう。

31... Kf8! 32. Rxb7 hxg5 33. Bxg5 Rxa2 34. Rb8+?!


ここはe6を取りにいく判断をしますが、逆に黒キングを積極的に使わせてしまうため良くなかったようです。ルークは7段目で黒キングの動きを制限したまま、34. Kg1!? のようにじっと待つ手をコンピュータは推奨しますが、積極的に反撃を作りにいきたい気持ちも理解できます。

34... Kf7 35. Rb7+ Kg6 36. Re7 Nd2+?

g7を捨てた際のhポーンの脅威がいかほどか判断できず、残り数秒で弱気な手を指してしまいました。36... Kf5! 37. Rxg7 Ke4! 38. h5 Rh2 39. h6 b5 40. h7 b4 41. Rb7 b3 42. Bf6 b2-+ 白がh8を抑える速度に、十分bポーンが対抗できるのは意外でした。d2でのフォークがあり、b1でのプロモーションは有効です。

37. Ke2 Ne4+ 38. Kd3 Ra3+ 39. Ke2 Nxg5 40. hxg5 Kxg5 41. Rxe6 Kf5 42. Rd6??


ここは42. Rxb6= でドローでしたが、おそらく黒キングの動きを見誤ったのでしょう。黒はd5を守りつつ、d4を取りにいく余裕があります。

42... Ke4! 43. e6 Kxd4 44. Rxb6 Re3+?

私もここはひどいミスでした。44. e7?? Re3+ がeポーンを止めるアイディアだったのですが、それが頭にあったために本譜でもパスポーンをe3から止めに行ってしまいました。パスポーンに対応するのは当然ですが、g7を生かさなければフィリドールポジションになってしまいます。44... Ra7! ならばeポーンを止めつつ、自身のgポーンを守ることができて黒の勝勢です。

45. Kd2 Re5 46. Rb4+ Kc5 47. Rg4 g5 48. e7 Kd6 49. e8=Q Rxe8 50. Rxg5 Kc5


互いのポーンを取り合い、黒のdポーンだけが残るルークエンディングになりました。白キングはすでにポーンをブロックする位置にいるため、理論的にはドローですが、実戦ではこうした局面でも間違えて決着がつくことも少なくはないため、当然黒は最後まで指します。

51. Rg7 Rh8 52. Kd3 Rh3+ 53. Kd2 Kc4 54. Rg4+ d4 55. Rg8 Rh2+ 56. Kd1 Kc3 57. Rc8+??

フィリドールポジションの必修局面が現れました。このオフェンス側キングが6段目、ポーンが5段目の状況ではディフェンス側がドローに持ち込める手は1つしかありません。57. Rd8! Kd3 58. Kc1 Rh1+ 59. Kb2 Ke3 60. Kc2!= ここでキングを寄り、d4-d3のポーンの前進を止めるのが必須です。それを実現するためには、白は早い段階でルークをポーンの後ろに回すしかないのです。

57... Kd3 58. Ke1 Rh1+ 59. Kf2 Kd2


白キングを追い出し、黒キングが逆に潜り込めばルセナポジションになります。

60. Ra8 d3 61. Ra2+ Kc3 62. Ra3+ Kc2 63. Ra2+ Kb3 64. Rd2 Kc3 0-1

なんとかこの試合を勝ち、4連勝となりました。最終戦は同じ4連勝の野田くんとの優勝争いを制し、9回目の中部快速オープン優勝を決めています。0.5Pでも落とせばレイティングマイナスだったため、プレッシャーはありましたが、なんとか結果を残すことができて安心です。来年も10回目の優勝を目指して頑張ります! 参加者、運営の皆さん、今年もありがとうございました。
大会後は久々にひつまぶしをいただきました。週末は鰻屋を含めどこも混む名古屋ですが、事前に予約しておけば楽に入れるようです。

2025/06/14

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.2


2つ目はトレーニングのゲームです。都内で開催されているトレーニングでは、毎回オープニングを決めて白黒1試合ずつを目安に指しています。メンバーのレベルは回によって異なり、フランスのIM Song Julienを招いたりと、ゲストで強豪が登場することもあります。昨年1月に集まったこの日はSicilian Moscowがテーマで、米満くんに黒を持ちました。

Yonemitsu, K - Kojima, S
Training

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. Bb5+ Bd7

GMレベルではピースを残すか、ビショップナイトの交換から局面の複雑化を図りやすい3... Nd7が多いと思います。実際、私も白番ではその対策に苦労してきました。しかし、ビショップ交換をするシンプルな3... Bd7変化も、黒から様々な可能性があって面白いと考えています。

4. c4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Bxd7+ Nbxd7!?


d4のマス争いをするのであればd7はクイーンで取り返し、Nb8-Nc6と展開するほうが自然で、将来的なキングサイドのフィアンケットビショップとも相性が良いでしょう。一方で本譜のナイトでd7を取り返す変化は、クイーンをa5に出したり、cファイルからの反撃を作りやすいのがポイントです。

7. d4 cxd4 8. Nxd4 g6

自然な手はありますが、ここは8... Rc8! を先に挟むほうがより正確でした。 c3のナイトが浮くとb7-b5からポーンを崩されてしまうため、白は9. Qe2とするしかありません。e2がクイーンの位置として悪いわけではないですが、白のセットアップを限定しておくことができます。

9. O-O Bg7 10. Bg5?!


Dragon Pawn Structureにおいては、Nc3-Nd5の跳びこみからe7ポーンにプレッシャーをかけるのがよく見られるプランで、その際にBc1-Bg5も登場することはあります。しかし、ここでは黒のナイトは連携されており、Bxf6はあまり脅威になりません。白の理想的なビショップの使い方は、c4を守ることも踏まえてb2-b3,Bc1-Bb2だったのではないと思います。

10... O-O 11. Qd2 Qa5! 12. Rfe1 Rfc8 13. Nb3 Qb4 14. Bxf6?

黒は理想的なピースのセットアップでcファイルからの反撃を作っています。本譜の白の構想はそれに十分対抗できるものではなく、黒に黒マスの支配を与えて苦しい展開になります。14. Nd5 Nxd5 15. exd5 Rxc4 16. Rxe7 Ne5=/+ 先述のe7を狙う構想ならばこう進めるでしょうが、これでも黒はやや有利だと考えられます。

14... Nxf6 15. c5 dxc5 16. e5 Rd8!


f6のナイトをどかしてNc3-Nd5を狙いたかった白ですが、このIntermediate Moveがありました。クイーンに反撃を作りつつ、d5のマスをカバーしてナイトの侵入を防ぎます。

17. Qg5 Qg4!?

本譜でも良いですが、17... Nd5 18. Nxd5 Rxd5 19. Qxe7 Bf8! 20. Qf6 Re8!-+ 一時的にポーンを返しても、e5をターゲットにすれば黒の勝勢でした。

18. Qxg4 Nxg4 19. e6?


ここは19. f4 で我慢し、g7のビショップを止めつつ、g4のナイトを追い返して耐えるしかありませんでした。ゲームの手順では、黒のナイト、ビショップがいずれも強く、白は抵抗が難しいでしょう。

19... c4! 20. Na5 Rac8 21. Re4 Ne5 22. exf7+ Kxf7 23. Rae1 b6 24. f4 Nd3!-+

e7のポーンを取られても継続の攻めはなく、黒は駒得が確定しています。

25. Rxe7+ Kf8 26. R1e2 bxa5 27. g3 Re8 28. R7e6 Rxe6 29. Rxe6 Nxb2 30. Nd5 c3 0-1


しばらくこちらのトレーニングも参加できていないため、また機会を見て参加したいですね。

2025/06/13

My Memorable Games of 2024-2025 Vol.1


大会参加時以外に棋譜の解説はおろか記事もあまり書かなくなっているため、リハビリがてらシリーズものを始めてみようと思います。このシリーズでは去年から今年にかけ、ブログで取り上げてこなかったゲームの中で、面白かったものをご紹介していきたいと思います。まずは昨年最初の大会、東海オープンの一試合です。

Kojima, S (IM, JPN, 2298) - Bhatia, P (JPN, 1724)
Tokai Open 2024 (2)

1. Nf3 Nf6 2. g3 g6 3. Bg2 c5 4. c4 d5 5. cxd5 Nxd5 6. Nc3 Bg7 7. O-O O-O 8. Nxd5!?

この当時は新しい1. c4のレパートリーや、古くから慣れ親しんだ1. Nf3の少し違う可能性を模索していました。Symmetrical Englishのこちらの変化では、白からd5のナイト交換を行い、d5に出てきたクイーンをターゲットにするセットアップを試します。

8... Qxd5 9. d3 Nc6 10. Be3 Qd6


昔調べたKarpovの試合では、10... Bd7 11. Nd4 Qd6 12. Nxc6 Bxc6 13. Bxc6 Qxc6 14. Rc1 Qe6 15. Rxc5 Qxa2 16. Rb5 b6 17. Qa1 Qe6 18. Qa6+/= という進行で、a7をターゲットににした白がやや優勢となりました。本譜ではc5とb2の交換になるため、黒がセンターを抑える力を弱めたうえで、bファイルからの反撃に期待できます。

11. Rc1 Bxb2 12. Bxc5 Qd7 13. Rc2 Bf6 14. Ba3 Rd8 15. Qd2 e5 16. Rfc1 Qf5 17. Qh6?!

クイーンの位置を改善するベストのプランが分からず、直接的な手を選びました。ここではクイーンはd2に残しておき、e5を狙うプランが良かったようです。17. Bb2! Be6 18. Rc5! こうして5段目にルークを上げ、e5、b7を狙えば白が優勢です。

17... Be6 18. h4 Rab8?


この手は白の直接的な攻撃を軽視しています。18... Bg7 19. Qe3+/= こうして一度白クイーンを黒キングから遠ざけておくべきでした。

19. Ng5! Bxg5 20. hxg5 Nd4 21. Be7!

おそらく黒が見落としていた手がこれです。エクスチェンジ取りではなく、Be7-Bf6からのメイトが狙いで、黒はクイーンを遠ざけておかなかったこと、黒マスビショップを失ったことで黒マスが弱くなっていることが痛手となります。

21... Qg4 22. Be4! Qh5 23. Qxh5 gxh5 24. Bxd8 Nxc2 25. Bf6!


黒はクイーンを交換することでメイトの危機こそ脱しましたが、白のダブルビショップに対抗するのは苦しい状況です。

25... Nd4 26. Rc7 Bxa2 27. Bxe5 Nxe2+ 28. Kf1+-

e2のナイトはトラップされており、白の勝勢です。

28... Nxg3+ 29. fxg3 Re8 30. Bf6 a5 31. Rxb7 a4 32. Ra7 Bb3 33. Kf2 Bd1 34. Ke3 Bb3 35. Kf4 Be6 36. d4 Bb3 37. d5 a3 38. d6 a2 39. d7 Rb8 40. d8=Q+ Rxd8 41. Bxd8 1-0


この大会は結局4勝1ドローで優勝できたものの、Bhatiaさんにはこの2か月後の東京チェス選手権の最終戦で敗れ、ここまで1勝1敗となっています。三度目の対戦の機会も楽しみにしています。

2025/05/16

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第42回予告

5月のチェス講座告知です。今月のYouTubeでの講座は今週末、5/18(日) 20時からスタートです。

今月のYouTubeの講座テーマは『King Hunt』です。チェスはチェックメイトで勝ちになりますが、特にピースを捨てて相手キングをおびき出し、時にセンター、時に自陣まで引き寄せてチェックメイトにするようなゲームを、キングハントと呼びます。今月の講座ではどのような相手キングのおびき出しがあるか、実戦からその例を見ていきましょう。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第42回『King Hunt』|2025.05.18

2025/05/07

Japan Chess Championship 2025 Day5

今年の全日本チェス選手権入賞者たち

昨日、今年の全日本チェス選手権も最終日を迎え、9試合を戦い抜いたプレーヤーたちの最終順位が決まりました。私はトップボードでTuさんとトップボードでドローになり、6.5/9でのフィニッシュになりました。Tuさんの単独優勝は4日目終了の段階で決まっていましたが、6.5Pグループはなんと7人が並び、タイブレークで私は5位に決まりました。6R終了時点で18位だったため、前半の停滞を考えれば十分な戦績です。入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Tran Thanh Tu (IM, JPN, 2420) 8/9
2nd Place Chen Muxi (CHN, 2188) 6.5/9
3rd Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2349) 6.5/9
4th Place Otsuka Shou (FM, JPN, 2339) 6.5/9
5th Place Kojima Shinya (IM, JPM, 2315) 6.5/9
6th Place Yamamoto Soichiro (JPN, 1963) 6.5/9
7th Place Okuno Rion (JPN, 2125) 6.5/9
8th Place Matsuyama Koya (JPN, 2001) 6.5/9
9th Place Yamada Kohei (FM, JPN, 2182) 6/9
10th Place Kobayashi Atsuhiko (CM, JPN, 2106) 6/9

Japan Chess Championship 2025 Final Standings


最終戦でTuさんと対戦することはこれまでの大会でほぼありませんでしたので、多少の緊張はありました。しかし、2023年神戸のジャパンチェスクラシックスで勝って以来、色に関係なくドローが続いています。ゲーム内容を見れば強さは感じますが、かつて持っていた苦手意識はだいぶ払拭されてきていると言えます。

Tran, T T (IM, JPN, 2420) - Kojima, S (IM, JPN, 2315)
Japan Chess Championship 2025 (9)

1. e4 c6 2. Nf3 d5 3. d3 Bg4!?

以前の対戦でもこの変化でしたが、すっかり忘れて準備不足でした。3... dxe4 4. dxe4 Qxd1+ 5. Kxd1 Nf6の変化を指しても良いのですが、この変化を試すということは白がこのクイーン交換をしていたがっているとも取れます。そこでしっかり準備したわけではないですが、Two Knights メインラインのアイディアを使える、3... Bg4をやってみることにしました。

4. h3 Bxf3 5. Qxf3 e6 6. g3 Nd7 7. Bg2 g6!?


f3のナイトを消している分、白はe5,d4の利きが弱くなっています。7... Bc5も自然なピースの展開ですが、私は先述のセンター2マスを抑えることを優先しました。

8. O-O Bg7 9. exd5!? cxd5 10. c4

d5でのポーン交換はかなり意外で、9. Qe2のように退いてから、f2-f4を目指すのが普通だと感じました。本譜はd5にプレッシャーを素早くかけ、g2のビショップの存在を主張する作戦ですが、黒は黒マスのコントロールでこれを上手く捌くことができます。

10... Ne7 11. Nc3 O-O! 12. Rd1


12. cxd5 Ne5! 13. Qe4 Nxd5 14. Nxd5 exd5 15. Qxd5 Qxd5 16. Bxd5 Nxd3ならば黒はポーンを取り返し、異色ビショップで安全にドローを目指せる局面です。

12... Ne5 13. Qe2 N5c6

ナイトを組み替え、Nc6-Nd4の跳びこみを準備しておきます。これこそf3でナイトを消し、フィアンケットで黒マスビショップをe5、d4に利かせてきた狙いです。白は白マスで勝負、黒は黒マスで勝負しているような様子です。

14. Bg5 Qd7 15. Rac1 Rac8 16. Qd2 Rfe8 17. cxd5 Nxd5 18. Ne4!?


d3を孤立にしてでもナイト交換を避けて勝負してくるのは、Tuさんならありえる(私ならばやらない)と思いました。とは言え、d5のアウトポストナイトは消される心配なく、f6の重要なマスを守っているので、e4のナイトが何か黒キングに大きなプレッシャーをかけてはいません。18. Nxd5 exd5 19. Rc5 Nd4!が私の読みで、こちらのほうがポーンストラクチャーは対称で安全ですが、d5を捨ててe2、c2のマスを狙う反撃でバランスが取れていると考えていました。

18... b6 19. h4 h5 20. Kh1 1/2-1/2

最後は20... Nd4から勝負にもいけますが、Tuさんからドローオファーがあり、ここで試合を終わらせることにしました。とにかくファイティングが多い私とTuさんの試合にしては、珍しい短手数ゲームでした。

今年も無事に全日本チェス選手権が終わり、まずは一安心です。私自身、優勝はかなり遠ざかっていますが、全日本は2012年から13回連続5位以内入賞(2021年はコロナ禍により中止)と、安定した戦績を残していることは、ある程度満足しています。今年は10位以内も怪しいかと、3日目終了時点では思っていました... 毎年、しっかりした運営をしてくださっている日本チェス連盟のスタッフたち、そして後援してくださっているアルゼンチン大使館に深く感謝いたします。また次の大会でお会いしましょう。
今年はアルゼンチンワインではなく、ラテンアメリカの伝統菓子、ドゥルセ・デ・レチェをいただきました。キャラメルのようなものだとイメージしていますが、どんな味かこれから食べてみることを楽しみにしています。

2025/05/05

Japan Chess Championship 2025 Day4

全日本選手権は4日目まで終了しました。今日の7Rは、黒番を持って野口さんに勝ち。3試合ぶりの白星ですが、前回の勝ちは内容的にはドローだったため、気持ち的には初戦以来の勝利です。続く午後の8Rは配信のある4Bに上がり、藤井さんに白を持ちます。日本チェス連盟で配信が始まって以降、配信のある上位ボードまで到達するのに、ここまで苦労した大会は他にありません。

Kojima, S (IM, JPN, 2315) - Fujii, C (JPN, 2016)
Japan Chess Championship 2025 (8)

1. d4 Nf6 2. c4 c6 3. Nc3 d5 4. e3 g6 5. Nf3 Bg7 6. Be2 O-O 7. O-O a6 8. a4 Nbd7?!

このg6 Slavは私がIMタイトルを獲得した頃に黒番で愛用していた変化で、アイディアは今も覚えているつもりです。黒のナイトを展開する手は手堅く見えますが、c6にナイトを出せなくなったタイミングでd5でのポーンを交換するのが戦略的に正しいと言えます。代わりに8... a5と指し、b4のアウトポストを抑えておくのが黒で使っていたアイディアです。

9. cxd5 Nxd5 10. Nxd5


10. e4 Nxc3 11. bxc3 c5は少し変わった手順のGrunfeldになります。本譜ではシンプルにcファイルを早く抑える作戦で戦おうと考えました。

10... cxd5 11. Qb3 Nf6 12. Bd2 Ne4 13. Rfc1 Bg4 14. Be1 Rb8

試合後に藤井さんには、この手でcファイルを抑えるのが遅れたのが痛かったのではないかと指摘しました。しかし、私の考えていたクイーンの上がる手に対しても、14... Qd7 15. Ne5! Bxe5 16. Bxg4 Qxg4 17. dxe5+/-と進んで白が良さそうです。

15. h3! Bxf3 16. Bxf3 Nf6 17. Rc5 e6 18. Rac1 Re8 19. Rc7!


黒はRe8-Re7、Bg7-Bf8で粘ろうとするため、これをどう破るか時間をかけて考えました。結果としてシンプルな7段目へのルーク跳びこみと、Be1-Ba5の組み合わせが良いと判断します。

19... Re7 20. Ba5! b6 21. Rxe7 Qxe7 22. Rc6!

22. Bxb6? Qb7 23. a5 Nd7= であれば、黒はポーンを取り返して互角です。本譜はb8のルークが浮いていることを利用し、さらなるルークの侵入でb6を攻めます。

22... Nd7 23. Bxb6?!


ほぼ完ぺきに進めてきたと思っていましたが、この手がやや不正確でした。ビショップを退きなおす手も考えはしましたが、こちらが楽だと勘違いしました。23. Bb4! Qe8 24. Bd6 Rc8 25. Qc3 Rxc6 26. Qxc6 Bf8 27. Bxf8 Kxf8 28. Be2!+- こうして白マスビショップを戻せば白の勝勢です。

23... Nxb6?


今度はこちらのビショップがピンのため、この交換は急ぐ理由がありません。試合後にa6-a5と先にポーンを突く手を提案しましたが、私の予想よりこの手が強力でした。23... a5 24. Bc5 (24. Qb5 Bf8! 25. Qxa5 Nxb6 26. Rxb6 Qc7! 27. Rb5 Qc1+ 28. Kh2 Rc8! この反撃が強烈だと試合中は気づいていませんでした。) 24... Qd8 25. Qc3 Nxc5 26. Qxc5+/= こうなれば白はポーンアップでも、そう簡単に勝てないでしょう。

24. Rxb6 Rxb6 25. Qxb6 Bf8 26. Be2!

a6を急いで取る必要はないため、白マスビショップをプレーに戻し、Be2-Bf1からキングを守る準備も整えておきます。

26... Qd7


26... Qb4 27. Qxb4 Bxb4 28. Bxa6+- クイーンを交換しても、2コネクテッドパスポーンを持つ白は勝てそうです。

27. Qxa6 Bd6 28. a5 Bb4 29. Qb6 Qa4 30. a6 Qa1+ 31. Bf1 Qxb2 32. a7 1-0

今大会初の連勝で、6/8までポイントを戻してきました。Tuさんが8Rの勝利で7.5/8となり、すでに単独優勝は決まっています。それでも、せっかくの最終戦1Bを楽しんできたいですね。皆さん、最終日もよろしくお願いいたします。

Japan Chess Championship 2025 R9 Pairings

2025/05/04

Japan Chess Championship 2025 Day3

全日本チェス選手権3日目となる今日は、午前中の試合前に年間表彰が行われました。日本のプレーヤーで最も活躍した者に贈られるベストプレーヤー賞は、ブダペストオリンピアードの1Bで獅子奮迅の活躍を見せたTuさんが受賞しました。日本籍のプレーヤーとして18年ぶりのGMノーム、そしてIMタイトル確定ということで、文句なしの戦績だったでしょう。その他の最多対局賞、ベストアービタ―賞を受賞された横田さん、阿部くんもおめでとうございます!

今日は午前中の試合が初対戦となる森谷くんで、序盤でちょっとした勘違いでポーンダウンになったゲームを、なんとか粘ってドローに持ち込みました。続く6Rは昨年も対戦した長瀧くんです。同じ白番で少し違うGrunfeldの変化になりました。

Kojima, S (IM, JPN, 2315) - Nagataki, K (JPN, 2042)
Japan Chess Championship 2025 (6)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nf3 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 c6 6. O-O d5 7. Qb3 Qb6 8. Nc3 Rd8 9. Na4

オンラインでは経験がありますが、クラシカル公式戦では初めて試す変化です。クイーンを交換し、c5へのナイトの侵入を目指します。

9... Qxb3 10. axb3 Na6 11. Bf4 Be6 12. Rfc1 Ne8 13. h3!?


オンラインでのゲームは単にeポーンを突いてd4を守りましたが、その後、f4のビショップの行き場に困りました。試合後、長瀧くんからは13. e3 f6 14. h4 h6 15. cxd5 Bxd5 (15... cxd5 16. Bf1) 16. g4 Bxb3 17. Bf1はポーンの代償があることを教えてもらいました。本譜のd4を捨ててダブルビショップを得る展開も実戦があるようです。

13... dxc4 14. bxc4 Bxd4 15. Nxd4 Rxd4 16. b3 Rdd8 17. Be3 Ng7 18. Nc5

ここは18. g4!?としてf5のマスを抑えるか、本譜のポーンをすぐ取り返すかどちらか迷いました。ポーンを取り返すのは安全策ではありますが、黒のa6のナイトとa8のルークを捌かせる手助けをしているとも見ることができます。

18... Nxc5 19. Bxc5 Rd2 20. e3


20. Bxe7 Rxe2 21. Bf6でも黒マスのコントロールで、ポーンの代償が十分あるというコンピュータの形勢評価は、試合中正確にできませんでした。

20... Nf5 21. Bxa7 Nd6 22. Bd4 Raa2 23. Rxa2 Rxa2 24. Rd1 Bf5?

しかし自然に見えたこの手があまり良くありませんでした。24... Ra3 25. Ra1 Rxa1+ 26. Bxa1= ならばドロー模様ですが、白はルークを残し、ダブルビショップを活かす展開が見えてこないので仕方がありません。

25. c5?


25. e4! Be6 (25... Bxe4 26. c5! Bc2 27. cxd6 Bxd1 28. d7 Ra8 29. Bb6 Bxb3 30. d8=Q+ Rxd8 31. Bxd8 Kf8 32. f4+- この変化は難しいですが、3ポーンよりも白のビショップが勝りそうです。25... Nxe4 26. g4!+- こちらはピースの代償がはっきりありません。) 26. e5 Nc8 27. g4+/= こうしてe5までポーンをすぐ押し込めるのであれば、これを選ぶべきでした。

25... Nb5 26. b4 f6 27. e4?!

a1でルークをぶつけるのが安全策だと分かりながら、勝負にいくことにしました。しかし感覚通り、白マスビショップの利きを遮るこのポーンはいまいちです。27. g4 Be6 28. Ra1=

27... Nxd4?!


27... Be6 28. Be3 Ra8=/+ これは試合中考えていましたが、白のダブルビショップはともに味方のポーンに止められていて、黒のほうが少し有利であるというコンピュータの評価です。ただしルークを退かせたので、実戦的にはまだまだ分からないと思います。

28. Rxd4


どちらを取るかとても悩みましたが、ビショップvs.ナイトにしても形勢は互角です。28. exf5 Ne2+ 29. Kh2 Nc3 30. Rd7 Rxf2 31. Rxb7=

28... Ra1+ 29. Kh2 Be6 30. Rd8+ Kf7 31. Rb8 Ra2!

b7のポーンをターゲットにできれば有利だと信じていましたが、f2への反撃を軽視していました。b7とf2の取り合いでは白にアドバンテージはなく、ドローを受け入れることにします。

32. Kg1 Ra1+ 33. Kh2 Ra2 34. Kg1 Ra1+ 35. Kh2 1/2-1/2


今日は2ドローでやはりぴりっとしませんが、最後まで粘り強く指し続けたいと思います。今年の全日本選手権も、残り3試合です。

Japan Chess Championship 2025 R7 Pairings

長期間に渡るチェス界の功績を称える日本チェス殿堂には、ピノーさんが選ばれました。羽生さんからのお祝いのメッセージとともに、本人からのスピーチがありました。

2025/05/03

Japan Chess Championship 2025 Day2

今大会は大会名入りペンが配布され、棋譜を書くのに使用しています。

全日本チェス選手権2日目です。今日は2つともドロー模様のクイーンエンディングでした。3Rは古谷くんに黒を持ったゲームです。
Furuya, M (JPN, 1991) - Kojima, S (IM, JPN, 2315)
Japan Chess Championship 2025 (3)
Position after 41...Qd4

先にルークを潜り込ませてアタックし、h5の進みすぎたポーンも狙えれば少し黒にチャンスがあると試合中は考えていましたが、そう簡単ではありませんでした。

42. Qf3 Rd8 43. Re3 Ra2 44. Rce1 Ra1 45. Qe2 Rxe1+ 46. Qxe1 Qxc4 47. Re8+!


47. Qxa5 Rd1+ 48. Re1 Rxe1+ 49. Qxe1 Qxa4-/+ これならばと少し期待しましたが、ルークを交換してクイーンエンディングに持ち込むのが正解です。

47... Rxe8 48. Qxe8+ Qg8 49. Qb5!

この位置がポーンを取り返す好位置です。黒はパペチュアルチェックを避けながら、白のポーンを狙う手段がありません。

49... Qd5 50. Qe8+ Qg8 51. Qb5 c4


51... Qd8 52. Qxc5 Qd1+ 53. Kh2 Qxa4 54. Qc8+ Kh7 55. Qf5+= これはすぐにパペチュアルチェックです。

52. Qxa5 Qb8 53. Qc5 Qb1+ 54. Kh2 Qd3 55. a5 c3 56. a6 Qxa6 57. Qxc3 Qe2 58. Qc8+ Kh7 59. Qf5+ Kg8 60. Qc8+ Kh7 1/2-1/2

続く4Rは北神さんに白を持ちました。序盤の優位を駒得に繋げ、以下の局面にたどり着きました。
Kojima, S (IM, JPN, 2315) - Kitagami, S (JPN, 1904)
Japan Chess Championship 2025 (4)
Position after 37...Kg7

38. Qxb7 Rxe2 39. Qxe7+ Kh6 40. Qg5+ Kg7 41. Qe7+ Kh6 42. Bxe2 Qxe2


2ピースvs.ルークのマテリアルから、2ピースを返して2ポーンアップにします。白には強力なパスポーンがありますが、黒クイーンのパペチュアルチェックがあります。

43. Qh4+ Kg7 44. Qe7+ Kh6 45. Qh4+ Kg7 46. g4

h4-e1ダイアゴナルを開き、クイーンをディフェンスに使えるようにします。

46... fxg4 47. Qe7+ Kh6 48. Qg5+ Kg7 49. Qe7+ Kh6 50. Qh4+ Kg7 51. Qe7+ Kh6 52. Qa7


この直前の51... Kh6で3回目でしたが、黒は手を指してから指摘をしようとしたため、私は気にせず自分の手を指しました。アービタ―が呼ばれましたが、指して相手番になってからの3回同一局面の指摘は警告の対象で、私の持ち時間に2分が追加されます。黒は正しくは、51... Kh6を指す前に棋譜に手を書き、時計を止めてアービタ―を呼んで3回同一局面を指摘する必要があります。

52... Qd1+ 53. Kf2 Qd2+ 54. Kg3 1-0

ここで黒はキングに触り、タッチ&ムーブを指摘した時点でリザインしました。54... Kh5?? 55. Qxh7# のヘルプメイトです。最後の局面もドローなので、0.5Pを拾う形となりました。2日目もすっきりしない内容ですが、中継ボードに上がれるよう明日も頑張ります。

Japan Chess Championship 2025 R5 Pairings


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