何名かから要望が届いたので、先日のChernin さんとのゲームを解説しようと思います。自分としてはポイントとなる局面でベストの手がさせたので、満足なゲームでした。
Chernin, A - Kojima, S
最近はNizo-Inadian + QGD Ragozin の組みあわせにチャレンジしています。本譜のムーブオーダーにこだわる必要はないのですが、Trompowsky を外すのを一応の狙いとしています。もちろんFrencn にされても大丈夫なよう、用意もしています。
Slav Defence からNimzo-Indian にレパートリーを変えた際、準備が必要になるのがCatalan 対策です。大学時代は私も白で指していましたが、黒で指すのも面白いと思います。Kramnik, Aronian, Gelfand らの研究により、Catalan もこの10年でだいぶ進化しました。
百傑の最終ラウンド、羽生さんとの試合ではBb4+ - Bd6 を試して失敗に終わったので、(もちろん負けたのは定跡のせいではありませんが)違うラインを試してみることにします。日本ではQGD のように堅くセンターをキープしようとするプレーヤーが多いですが、私としてはどこかで、...dxc4 とポーンを取る変化のほうが、黒としては勝負にいきやすいと考えています。
白はすぐにポーンを取り返しにいきます。この変化はUlf Undersson いわく、黒にとって特に危険はありません。私のメインの準備は浜松で見せたように、5.Nf3 Bb4+ 6.Bd2 a5 でした。ちなみに5...a6!? も試してみたいと考えてます。
早めに白マスビショップの道を閉ざしているCatalan では、黒はb7 にどこかでビショップを配置しにいきます。
7.Bxc6+?! は直感的にあまり白が良くならないと判断しました。7...Nxc6 8.Qxc6+ Bd7 と進めば、黒は展開のアドバンテージを得たうえ、白の白マスの弱さを突くことができます。
このポジションはCatalan ではなく、Slav の一変化として研究していました。1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Qc2 (or 4.Qb3) 4...e6 5. g3 dxc4 6. Qxc4 b5 7. Qc2 Bb7 8. Bg2 Nbd7 という手順で同じポジションになります。
ビショップのダイアゴナルを早めに開きます。センターを捌いた後に白マスビショップを開いたり、c ファイルをオープンにするのは黒として望む展開です。
f6 取りを見せることで、c5 のコントロールを弱め、c1 を将来的にルークのマスとして空けておきます。少し理解が難しい場合は、単純に黒マスビショップを他に展開する良いマスがないから、と考えてもOK です。
すぐにセンターを捌く手も考えましたが、ここはルークで裸のクイーンを狙いにいくほうが素直です。
この手はすぐに意味が理解できませんでした。ルークをすでにc ファイルに回しているため、c5 のコントロールはサポートしてあるので、このタイミングでビショップとナイトを交換しにいくメリットが白にはありません。ビショップを諦めるのは、どこかで...h6 と突かれてからで良いと思います。
黒のダブルビショップを解消にいくのは自然な判断です。Ne5-Nd3 と組み直したナイトは強力だとCatalan では言われますが、それはc7 にポーンが残っており、d3 のナイトがc7-c5 を止めている場合の話です。この局面では黒マスビショップが白のナイトに働きで劣るということは、全くありません。
この手は黒の優位を明らかにしてしまいます。16.a4 からクイーンサイドでアクションを起こすのが、白として正しい方針だと思います。
ビショップをキープすることよりも、ポーンストラクチャーを乱すほうが黒の優位がはっきりすると私は考えます!
早速、弱点であるc3 のポーンを狙いにいきます。f2 も狙っている点が18...Nd5 との違いです。
どこかでa4 を突くためにf ファイルのルークを回したのだと思いますが、代わりにキングの周辺が弱くなります。
この手で勝ちを引き寄せたことを確信しました。e3 にポーンを進めさせることでナイトを浮かせ、それを遠くからクイーンで狙います。ポーンの動きによって弱くなったマス、あるいは駒を狙うのは、基本でありつつ私の得意なプレーです。
何らかの手でポーンを諦めるのは、仕方のない判断です。21. a4 Rfd8 22. axb5 Ng5-+, 21. c4 Nd2 22. Qd1 Nxc4 -/+
試合後に、なぜ21...Nxg3 ですぐにポーン取らなかったのか尋ねられましたが、22...Nc5 がスレットになり、オープンファイルをルークで試合はするこちらの手が私のは魅力的に見えました。また21...Nxg3 22.hxg3 Qxf3 23.a4! の後、確実に黒勝ちかは試合中読めませんでした。
最後はRd5-Rh5 がスレットになっており、それを防ぐためにはc3 のポーンを諦めるしかありません。それにより絶望的なルークエンディングになるため、Chernin さんはここでリザインを決意しました。
Chernin, A - Kojima, S
GM Chernin's Simul
1. d4 e6
最近はNizo-Inadian + QGD Ragozin の組みあわせにチャレンジしています。本譜のムーブオーダーにこだわる必要はないのですが、Trompowsky を外すのを一応の狙いとしています。もちろんFrencn にされても大丈夫なよう、用意もしています。
2. g3 Nf6 3. Bg2 d5 4. c4
Slav Defence からNimzo-Indian にレパートリーを変えた際、準備が必要になるのがCatalan 対策です。大学時代は私も白で指していましたが、黒で指すのも面白いと思います。Kramnik, Aronian, Gelfand らの研究により、Catalan もこの10年でだいぶ進化しました。
4...dxc4
百傑の最終ラウンド、羽生さんとの試合ではBb4+ - Bd6 を試して失敗に終わったので、(もちろん負けたのは定跡のせいではありませんが)違うラインを試してみることにします。日本ではQGD のように堅くセンターをキープしようとするプレーヤーが多いですが、私としてはどこかで、...dxc4 とポーンを取る変化のほうが、黒としては勝負にいきやすいと考えています。
5. Qa4+!?
白はすぐにポーンを取り返しにいきます。この変化はUlf Undersson いわく、黒にとって特に危険はありません。私のメインの準備は浜松で見せたように、5.Nf3 Bb4+ 6.Bd2 a5 でした。ちなみに5...a6!? も試してみたいと考えてます。
5...c6 6. Qxc4 b5!
早めに白マスビショップの道を閉ざしているCatalan では、黒はb7 にどこかでビショップを配置しにいきます。
7. Qc2
7.Bxc6+?! は直感的にあまり白が良くならないと判断しました。7...Nxc6 8.Qxc6+ Bd7 と進めば、黒は展開のアドバンテージを得たうえ、白の白マスの弱さを突くことができます。
7...Bb7 8. Nf3 Nbd7
このポジションはCatalan ではなく、Slav の一変化として研究していました。1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Qc2 (or 4.Qb3) 4...e6 5. g3 dxc4 6. Qxc4 b5 7. Qc2 Bb7 8. Bg2 Nbd7 という手順で同じポジションになります。
9. O-O c5!=
ビショップのダイアゴナルを早めに開きます。センターを捌いた後に白マスビショップを開いたり、c ファイルをオープンにするのは黒として望む展開です。
10. Bg5!?
f6 取りを見せることで、c5 のコントロールを弱め、c1 を将来的にルークのマスとして空けておきます。少し理解が難しい場合は、単純に黒マスビショップを他に展開する良いマスがないから、と考えてもOK です。
10...Rc8!
すぐにセンターを捌く手も考えましたが、ここはルークで裸のクイーンを狙いにいくほうが素直です。
11. Bxf6?!N
この手はすぐに意味が理解できませんでした。ルークをすでにc ファイルに回しているため、c5 のコントロールはサポートしてあるので、このタイミングでビショップとナイトを交換しにいくメリットが白にはありません。ビショップを諦めるのは、どこかで...h6 と突かれてからで良いと思います。
11...Nxf6 12. dxc5 Bxc5 13. Qb3 a6 14. Ne5 Bxg2 15. Kxg2 O-O
黒のダブルビショップを解消にいくのは自然な判断です。Ne5-Nd3 と組み直したナイトは強力だとCatalan では言われますが、それはc7 にポーンが残っており、d3 のナイトがc7-c5 を止めている場合の話です。この局面では黒マスビショップが白のナイトに働きで劣るということは、全くありません。
16. Nc3?!
この手は黒の優位を明らかにしてしまいます。16.a4 からクイーンサイドでアクションを起こすのが、白として正しい方針だと思います。
16...Bd4!
ビショップをキープすることよりも、ポーンストラクチャーを乱すほうが黒の優位がはっきりすると私は考えます!
17. Nf3 Bxc3 18. bxc3 Ne4!
早速、弱点であるc3 のポーンを狙いにいきます。f2 も狙っている点が18...Nd5 との違いです。
19. Rfc1?!
どこかでa4 を突くためにf ファイルのルークを回したのだと思いますが、代わりにキングの周辺が弱くなります。
19...Qb6! 20. e3 Qb7!-/+
この手で勝ちを引き寄せたことを確信しました。e3 にポーンを進めさせることでナイトを浮かせ、それを遠くからクイーンで狙います。ポーンの動きによって弱くなったマス、あるいは駒を狙うのは、基本でありつつ私の得意なプレーです。
21. Kg1
何らかの手でポーンを諦めるのは、仕方のない判断です。21. a4 Rfd8 22. axb5 Ng5-+, 21. c4 Nd2 22. Qd1 Nxc4 -/+
21...Rfd8!
試合後に、なぜ21...Nxg3 ですぐにポーン取らなかったのか尋ねられましたが、22...Nc5 がスレットになり、オープンファイルをルークで試合はするこちらの手が私のは魅力的に見えました。また21...Nxg3 22.hxg3 Qxf3 23.a4! の後、確実に黒勝ちかは試合中読めませんでした。
22. Qb2 Nxg3 23. hxg3 Qxf3 0-1
最後はRd5-Rh5 がスレットになっており、それを防ぐためにはc3 のポーンを諦めるしかありません。それにより絶望的なルークエンディングになるため、Chernin さんはここでリザインを決意しました。