9R の相手はイングランドのMark, Lyell, 前回は私がCaro-Kann を指して勝っています。今回もAnti-Sicilian を避けての勝負にしました。
Lyell, M (FM, ENG, 2184) - Kojima, S (FM, JPN, 2264)
CAISSA 2012 June IM (9)
1. e4 e6!?
French Defence は私にとって、Sicilian, Caro-Kann と並んで信用できる武器です。
2. d4 d5 3. e5 c5 4. c3 Qb6 5. Nf3 Nc6 6. a3 Bd7!?
Advanced Variation を公式戦で指すのは初めてです。Vitugov の勧める、クイーンサイドの展開を急ぐラインで勝負です。
7. b4 cxd4 8. cxd4 Rc8 9. Bb2 Nh6 10. Nc3 Na5!
白がb2 にビショップを置いた形では典型的な手なので、知らなかった方はぜひ覚えてみてください。
11. Na4 Qc6 12. Nc5 Nc4 13. Bxc4 dxc4 14. O-O b6 15. Nxd7 Qxd7 16. Qc2
オープニングは黒にとって満足なものでしょう。同色ビショップの働きは黒が良く、c4 のパスポーンも、駒が捌ければ強力な武器となりえます。
16... Be7 17. Rad1 O-O 18. d5!?
予想していなかった1ポーンサクリファイスです。白はこのままではb2 のビショップの働きが悪いだけなので、黒マスのポーンを一つ消し、d4 のマスを活用して勝負します。私が一番気にしていたのは、
18. Bc1 Nf5 19. g4!? Qd5 20. Qe2 Nh4 21. Nxh4 Bxh4 22. g5 f6-/+ というラインですが、h4 のビショップはどうやらエスケープできるようです。
18... exd5 19. Nd4 Rfe8!
f8 のマスを空けるとともに、e5 のポーンをアタックします。
20. f4?!
私が試合後に彼に指摘したのは、ここでナイトを取りにいく変化です。
20. Bc1! a5 21. Bxh6 gxh6 22. Qc3 ならば、黒のキング前は開き、白としては1ポーンを捨てた代償があると考えられるでしょう。Lyell はh6 のナイトを使えないピースとして盤上に残そうと考えたようですが、キングが危なくないならば、黒は本譜のようにクイーンサイドから強力な反撃を作ることができます。
20... Bf8 21. h3 a5! 22. Bc3
22.bxa5?! bxa5 とポーンを交換すれば、c5 のマスが使えるようになります。
22... axb4 23. axb4 Ra8 24. g4 Ra3 25. Rf3 g6
慌てず、一旦
g4-g5 のスレットを止めます。h6 のナイトがどうしようもなければ、g4 で切りますが、まだその必要はありません。
26. Rd2 Qa4?!
しかし、ここで少し慌ててしまいました。
26... Ra4-/+ と指してb4 をアタックしにいけば、黒はアドバンテージをキープできます。
27. Qb2?
正直、期待していた手です。彼は強力なアタッカーですが、時にはクイーンを交換して大人しい局面にする判断も必要です。
27. Qxa4! Rxa4 28. Nc6 Rc8 (28...b5 29.Rxd5 Rc8 30.Nd4+/= 黒からb5 を突けばb4 が落ちるので良いと思っていましたが、黒もb5 のポーンが落ちるのを完全に失念していました・・・ )
29. b5 Rca8 30. f5+/= こうなると、ナイトの位置が悪い黒が、やや劣勢になってしまいます。
27... Rxc3!
Lyell は黒がサクリファイスするとしたら、g4 だとばかり思っていたのでしょう。それより強力なのは、クイーンサイドでエクスチェンジを捨て、3コネクテッドパスポーンを作るアイディアです。
28. Qxc3 Bxb4 29. Qc2 Qxc2 30. Rxc2 Bc5 31. Rd2
予想したポジションになりました。dポーンはブロックされているので、実質、c,bファイルの2コネクテッドパスポーンのようなものですが、十分黒にチャンスがありそうです。ところがここでベストの手を逃がし、ポジションを怪しくしてしまいます。
31... Rc8?
パスポーンの力を過信し、後ろからのルークの支えがあれば十分勝てると勘違いしました。使えていないピースを使えるようにするという、重要なアイディアをなぜ使わなかったのか疑問です。
31... f6! 32. Kg2 fxe5 33. fxe5 Nf7 34. e6 Ng5-+ ナイトがこの試合、初めて戦場に繰り出せば、黒の勝ちは間近です。
32. Kg2!
私は白がピンを外すために動かすキングの位置を、間違って読んでいました。パスポーンを止めるため、少しでもクイーンサイドによると思っていたのです。
32. Kf1?? Bxd4 33. Rxd4 c3 34. Rd1 b5 35. Ke2 b4 -+ これならば確かに、cファイルからのサポートだけでパスポーンが進めます。
32... Bxd4 33. Rxd4 Rc5 34. Rf1 b5?!
34... Kg7 35. Rfd1 c3 36. Kf3 Ng8 ならば形勢不明ですが、この後の展開次第では黒が勝つこともありえるでしょう。、
35. Rb1?!
34...b5?! を指した直後に、d5 を攻める手に思い当りました。(考えてみれば、最も自然です。)
35. Rfd1 c3 36. Rxd5 c2 37. Rd8+ Kg7 38. Rc1 b4 39. Rb8 Rc4
検討でこれは、黒がドローにできるだろと話し合いましたが、そう簡単ではありません。
40. Rb7 Kf8 41. Kf2 Rxf4+ 42. Ke3 Rc4 43. Kd2 Re4 44. Rb5 b3 45. Kd3 Rxe5 46. Rxe5 b2 47. Ree1 bxc1=Q 48. Rxc1 f5 49. gxf5 Nxf5 50. Rxc2 Kf7 で、おそらくはドローです。もちろん白はどこにも負ける危険性がないので、本譜よりもこちらを選択しておくべきでした。
35... Kf8
指した直後は、キングの動かす位置が違えば、黒が勝てるのではないか(本譜のチェックがないので)と思いましたが、そんなことはありませんでした。
35... Kg7 36. Rbd1 c3 37. Kf2! Ng8 38. f5=
36. Rbd1!
ばれました。白がドローにするためにはこの一手しかありません。黒が
Nh6-Ne7-Nc6 と回せれば、パスポーンがいよいよ進んできます。
36... c3 37. Rxd5 c2 38. Rd8+ Ke7 39. R8d7+ Ke8 40. Rd8+ Ke7 1/2-1/2
最後はパペチュアルチェックでドロー。キングがg7 に戻る手も考えましたが、上記の変化となって白にのみ勝ちのチャンスがありそうなので、仕方なくドローを受け入れました。
そして10R はIM Kiss との試合予定でしたが、彼が別の試合に参加するために、早く帰らなければならないとのことで(早く言えよ!)、試合なしでのドローとなりました。本来ならばあまりよろしくないことですが、ごねても面倒なのでここは受け入れました。
最終試合の11R は1日ずらし、今日行われます。最下位が確定しているノルウェー人に勝って、ブダペストに帰りたいと思います。
9,10R 後に広場にいくと、逆立ちしたり、ぐるぐるしたりしながら、激しく踊る集団がいました。彼らはなぜぐるぐるするのでしょうか。そして、なぜ奥の男性のシャツには一番と書いてあるのでしょうか(笑)
前日の失敗を生かし、食事は安全パイを選択しました。このケチケメートの食事とも、今日でお別れです。