Photo by Hasegawa
昨日は今年最後となる19回目のIVL が開催されました。今年はここまで、私と羽生さんが3回ずつ優勝しており、今回でどちらが最多優勝になるかという争いだと思っていました。しかし、実際に優勝をさらったのは、20歳の青嶋くんです! 青嶋くんは羽生さんに敗れたものの、馬場さんと私を含め、残りの4戦をすべて勝ち、0.5P のリードで優勝を決めました。最終戦の棋譜を公開しておきます。
Aoshima, M (JPN, 2378) - Kojima, S (IM, JPN, 2457)
19th IVL (5)
Position After 17. fxe3
17... Rhd8?
ルークの展開が遅れている黒は、こうしてルークをぶつけるのが当然だと思っていましたが、この後の展開を楽観視していました。代わりに
17... Ngxe5 18. Nxe5 Nxe5 19. Bxe6+ Bc6= と進めていれば、全く問題なかったでしょう。ビショップがどくディスカバードチェックは、痛手になりません。
18. Nd6! Be8 19. Bd3!
これでcファイルを開き、e5 のポーンを守ります。これで黒には有効な打開策が無く、苦しいエンドゲームへと突入することとなります。
19... Nge7 20. Be4 Nc8 21. Nxe8+ Rxe8 22. Bxc6 bxc6 23. Nd4 Ne7 24. Nxc6!
白はピースの展開の早さを、駒得へと繋げました。このルークエンディングは絶望的で、ここでリザインしても良いぐらいではありますが、優勝のかかったラウンドですので、勝負を投げずに続けます。
24... Nxc6 25. Rd6 Reb8 26. Rcxc6+ Kb7 27. b4 a5 28. b5 Rd8
bポーンをプロテクテッドパスポーンにするのは気が進みませんが、取られてしまってはそれこそだめです。一時的に2ポーンダウンになっても、1つルークを交換して反撃を狙います。
29. Rb6+ Ka7 30. Ra6+ Kb7 31. Rxa8?!
f7 を取れれば白が勝勢にも見えますが、黒に反撃のチャンスを与えてしまうことになります。ここは落ち着いて
31. a4! と指せばゲームオーバーだったでしょう。
31... Rxd6 32. exd6 でも、黒は自分の首を絞めているだけです。
31... Rxa8 32. Rd7+ Kb6 33. a4 Rc8
黒はようやく、ルークがアクティブに働けるようになります。ルークエンディングでは、ルークを消極的に守りに使うより、積極的に反撃に使うほうが有効です。
34. Rxf7 Rc4 35. Rf4 Rc5 36. Re4 Rc2 37. Rd4 Ra2 38. Rc4 Kb7 39. h4 Re2 40. e4 Ra2 41. Kh2 Rb2!
最初はa4 のポーンを後ろからアタックするのが当然だと思っていましたが、キングがhファイルに行ったタイミングで、b4 のマスでぶつけるアイディアが見えました。これでポーン交換を進め、パスポーンを作れれば、黒にも小さなチャンスが出てきます。
42. Rc6 Rb4 43. Rxe6 Rxa4 44. Kg3 Rxe4 45. h5 a4
黒のaポーンは意外なほど早く、後ろにルークが回るような流れも見えています。これは大逆転もあったかと思いましたが、青嶋くんの手は正確でした。
46. Kf3 Rb4 47. Re7+ Kb6 48. Rxg7 a3 49. Rg6+!
白が負けを避けるためには、この手しかありません。b5 を取らせるのは損に見えるかもしれませんが、プロモーションの際にチェックがかかるようにする、非常に大切なアイディアです。
49... Kxb5 50. e6 Ra4 51. e7 Ra8 52. Re6
互いにパスポーンを進め、そしてルークでサポートとディフェンスに奔走します。冷静に考えれば、このポジションはドローなのですが、互いに時間がない中でミスを出してしまったのは私でした。
52... a2 53. Re1 Kc6?
キングが寄るべきは、相手のポーンではなく、自分のポーンです!
53... Kb4! 54. Re4+ Kb3 55. Re3+ Kc2 56. Re2+ Kb3= もう少しポーンを進めさせても大丈夫ですが、いずれにせよ白は、こうして連続チェックでドローにするほかありません。
54. Rd1!
54. Ra1? Kd7-/+ ならば、黒にチャンスが出ますが、dファイルでカットオフすれば、白勝ちとなります。
54... Re8 55. Ra1 Ra8?
最後は焦ってダメな手を指してしまいましたが、
55... Rxe7 56. Rxa2 Re6 57. Kf4+- (検討戦で塩見さんが指摘した、
57. Ra6+ Kd5 58. Rxe6? Kxe6 59. Ke4 Kf6 60. Kf4 Ke6= このポーンエンディングがドローであるというのは、非常に面白いと思います。) で白勝ちとなります。h6 のポーンが落ちるのは時間の問題でしょう。
56. Rxa2 1-0
あの絶望的な状況から、よくここまで粘ったと自分を褒めたい気持ちも、だからこそ最後のミスで負けたことが悔しいという気持ちもあります。あらためて、ルークエンディングの難しさを感じるゲームでもありました。そしてこの白星で、青嶋くんが私と羽生さんを引き離し、4/5 でIVL 初優勝を決めました。青嶋くん、おめでとう! 来年も強力なライバルとして、私たちの前に立ちはだかりそうですね。
IVL 終了後は、参加者のほかに南條くんも合流し、1年を締める忘年会が行われました。まだ年内に会う人もいると思いますが、ひとまず皆さん、2015年もお疲れ様でした! 来年も、IVL をよろしくお願い致します。
チェス盤(本来、将棋盤と書くべきところかもしれませんが、私にとってはチェス盤です)を離れ、話をする二人のこうした姿は、意外とこれまで見たことなかったかもしれません。2人とも、年末から年始にかけて参加する予定の海外大会でも、頑張ってもらいたいですね。