2016/02/21

Capplle la Grande 2016 Tournament Report


昨日の日本時間夜遅く、フランスの伝統的なトーナメント、カペル大会が終了しました。年末に私がブログで告知した通り、今年も日本に4名分の招待状が届き、大学生を中心としたメンバーが、カペルへと足を伸ばしてきました。カペルのトーナメントは、名のあるGM たちから地元の子供たちまで、幅広いレベルのプレーヤーが集まり、500名以上がクラス分けなく(ハンディ付きの加速スイスではありますが) 戦う、世界最大規模のオープン大会です。対戦相手とのレイティング差が大きいため、下手をすると上位のプレーヤーに負け、下位のプレーヤーに勝ちを続け、何事もなく9R が終わることもあります。そんなカペルですが、今年は日本のプレーヤーが前半から、上位を相手にポイントを取るラウンドが続きました。

Shinoda, T (JPN, 1941) - Uhoda, P (BEL, 2122)
Cappelle la Grande Open 2016(1)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 d6 5. Nf3 O-O 6. Be2 e5 7. O-O Nc6 8. d5 Ne7 9. Ne1 Nd7 10. Be3 f5 11. f3 f4 12. Bf2 g5 13. Rc1 Ng6 14. Nb5 b6 15. b4 a6
16. Nc3 Rf7 17. Na4 Bf8 18. c5 b5 19. cxd6 cxd6 20. Nc3 Nf6 21. a4 bxa4 22. Nxa4 Rb8 23. Nb6 Rxb6 24. Rxc8 Qxc8 25. Bxb6 g4 26. Qd3 Nh4 27. fxg4 Rg7 28. h3 Qb8 29. Bf2 Ng6 30. Nc2 Be7 31. Ra1!



私が試合を見ていて、最も感心したのはこの1手です。黒のキングサイドからの仕掛けは不十分で、すでに白に大きなアドバンテージがあります。しかし、King's Indian では、ちょっとした油断からキングサイドを食い破られ、白のディフェンスが崩壊することもありえます。白がクイーンサイドからのアタックをさらに強めるためには、単にクイーンでa6 を取るよりも、ルークをプレーに参加させるのが良いでしょう。

31... Ne8 32. Rxa6 Bh4 33. Qb5 Bxf2+ 34. Kxf2 Qd8 35. Rb6 Rc7 36. Bd3 f3 37. Rb8 Qh4+ 38. g3 Qxh3 39. Qxe8+ Kg7 40. Ne3 Qh2+ 41. Kxf3 Rf7+ 42. Nf5+ Rxf5+ 43. gxf5 Qh1+ 44. Ke2 Qg2+ 45. Kd1 Qg1+ 46. Kc2 Qf2+ 47. Kb3 Qxg3 48. Rb7+ Kh6 49. Rxh7+ 1-0


篠田くんは続く2R でも、GM Eremeevich からもドローで、GM からの初ポイントとなりました。200以上上と当たりやすいカペルで、格上から1.5P を取るというのは、素晴らしい戦績だと言えるでしょう。篠田くんはこの後のラウンド、上に負け、下に勝ちを繰り返しましたが、トータルでは4.5/9 で、レイティングを20以上稼いでいます。


Photo by Matsumura

そして、大会前から注目を集めていたのは、チェスを初めて1年半弱で日本のトップクラスまで実力をつけてきた、プロ棋士の青嶋くんです。海外大会初参戦となる彼は、昨年夏に参加したジャパンリーグで、2167 というレイティングがついたばかり。この数字は彼の実力からすれば低いものですし、試合数も少ないために係数がまだ40です。そのため、今大会で青嶋くんがどれほどレイティングを稼ぐのかというのは、私だけでなく、多くのチェスファンが気にしていたことだと思います。

実際、青嶋くんはGM と4戦、IM と1戦し、2敗3ドロー。下相手には4戦全勝と好成績を残しました。この戦績で青嶋くんは、レイティングを61上げることとなります。カペルの結果報告が早ければ、来月頭のレイティング更新で2228 となり、日本のアクティブプレーヤーランキングで、5位につけます。(計算が間違っていたらすみません) 現在の実力を考えれば、30試合をこなすころには、2300 にも到達するでしょう。青嶋くんが次回参加するFIDE 公式戦も楽しみですね。

さらに、青嶋くん同様にカペル初参戦となる平尾くんは、格上相手に3勝を挙げる大活躍です! 私が知る限り、カペルで上から3勝した日本のプレーヤーは、これまでいなかったでしょう。250以上高いパフォーマンスを残し、レイティングも60近くアップしました。小林くんのみは本来の実力を発揮できず、レイティングを下げてしまいましたが、それでも今回のカペル遠征で、日本のプレーヤーたちは過去最高戦績を残したと言えると思います。

皆さん、1週間お疲れ様でした。日本へも、気をつけて帰ってきてください。また日本国内の大会でも、活躍を期待しています。

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