久々の更新です。毎年この時期に、イギリス領のジブラルタルで行われているチェストーナメントが終了しました。7/9 で8人が並ぶ混戦の中、最終戦をともに勝ったフランスの Maxim Vacier Lagrave と、アメリカのNakamura Hikaru がタイブレークを行い、Hikaru の優勝が決まりました。今年は、Tata Steel に参加しなかった多くの強豪がジブラルタルに流れ、非常に見ごたえのある試合が多く行われましたね。応援する選手のプレーを毎晩、ライブ中継で追っていたチェスファンも多かったと思います。
そんな今年のジブラルタルで注目を集めたのは、23年ぶりにオープントーナメントに参加した、前世界チャンピオンのAnand です。招待制のトーナメントばかり出場していたAnand は、久々のオープントーナメントで活躍を期待されていましたが、残念ながら2500台に2人負け。レイティングを大きく落とす結果となってしまいました。最終戦の結果次第では、絶好調のインドNo.2、Harikrishna とのランキングが逆転していたことでしょう。Carlsen とのリベンジマッチに敗れてもなお、Anand の王座復活を願うファンにとっては、冷や冷やの結果だったと思います。
Anand を破ったのは、フランスのGM Demuth Adrien と、ハンガリーのIM Gledula Benjamin です。16歳のBenjamin は、ハンガリーで現在、最も有望視されているジュニアプレーヤーでしょう。彼のゲームを棋譜だけ載せておきます。
Gledura, B (IM, HUN, 2515) - Anand, V (GM, IND, 2784)
Gibraltar Masters 2016 (7)
1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 e6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3 O-O 8. O-O e5 9. cxd5 cxd5 10. e4 exd4 11. Nxd5 Nxd5 12. exd5 h6 13. Nxd4 Qh4 14. Nf3 Qh5 15. Bh7+ Kh8 16. Qf5 Qxf5 17. Bxf5 Nf6 18. Bxc8 Rfxc8 19. Rd1 Rd8 20. Be3 Be7 21. d6 Rxd6 22. Rxd6 Bxd6 23. Rd1 Bc7 24. Kf1 a6 25. h3 Kg8 26. b3 Rd8 27. Rxd8+ Bxd8 28. Ke2 h5 29. Bg5 Kf8 30. Kd3 Ke8 31. Bxf6 Bxf6 32. Ke4 Bd8 33. Ne5 Ke7 34. Kd5 Bb6 35. Nd3 Kd7 36. Nc5+ Bxc5 37. Kxc5 Kc7 38. h4 Kd7 39. Kb6 Kc8 40. b4 Kb8 41. f3 Kc8 42. g4 hxg4 43. fxg4 Kb8 44. h5 f6 45. a4 Kc8 46. Ka7 Kc7 47. b5 a5 48. Ka8 1-0
Gibraltar Masters 2016 (7)
これまでも使ったことのある、Semi-Slav Anti-Meran のソリッドな変化をチョイスしたAnand でしたが、ちょっとしたミスから多少悪いエンドゲームとなり、最終的には白勝ちのポーンエンディングとなりました。ハンガリーのJudit Polgar も、最終ポジションは綺麗なツークツワンクだと、Benjamin のプレーを称賛しています。ゲームの解説を細かく見たい方は、リンク先のChess News の記事をご覧ください。
Benjamin とは2012年にハンガリーに渡った頃、一度だけ対戦した経験があります。当時から力強いプレーでベテランを圧倒し、ハンガリーやヨーロッパのジュニアタイトルを取ってきた彼は、ハンガリーの同世代でも頭一つ抜けた存在でした。今回のジブラルタルでAnand を破ってさらに脚光を浴び、GM タイトルも間近となった彼を見ていると、また彼と対戦したい、そして私ももっと頑張らなければという思いに駆られます。ハンガリー代表はまだ少し気が早いですが、いつかオリンピアードの舞台でも再会できることを楽しみにしています。
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