Modern Benoni は、特徴的なポーンストラクチャーを持つ面白いオープニングです。黒はd6 に弱いポーンを抱え、e4-e5 のブレイクも気をつけなければいけませんが、e4 やb2 への反撃、クイーンサイドのポーンマジョリティなどでチャンスを作ります。
そんなModern Benoni の中で時々見られるピースのマヌーバリングが、Nf6-Nh5 です。狙いは白のBc1-Bf4 を防ぐことや、すでにf4 にきたビショップの追い返し、f4 のマスへのナイトの侵入、f7-f5 突きなどが挙げられます。昨年末に公開された完全なるチェックメイトでも、Fischer がSpassky に対して、Modern Benoni でNf6-Nh5 と指したゲームが、作品の大きな鍵として扱われています。
Spassky, B - Fischer, B
World Championship 28th (3)
1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 c5 4. d5 exd5 5. cxd5 d6 6. Nc3 g6 7. Nd2 Nbd7 8. e4 Bg7 9. Be2 O-O 10. O-O Re8 11. Qc2 Nh5!?
World Championship 28th (3)
Fischer にとってすでに崖っぷちとも言えた、世界チャンピオン決定マッチの3R で出た妙手です。黒はポーンストラクチャーを乱してでも、クイーンとビショップのダイアゴナルを開き、マッチの流れを引き寄せる大きな白星を手にしたのでした。
そんなModern Benoni のNf6-Nh5 について、日本のプレーヤーが指した手がChess.com の最新記事で紹介されています。記事を書いたのは、最近日本に越してきたアメリカのIM Jeremy Silman です。
Chess Patterns Are For Everyone
Mitsuya, N - Fukuya, N
Japan Open 2015(3)
1. d4 Nf6 2. c4 c5 3. d5 e6 4. Nc3 exd5 5. cxd5 d6 6. e4 g6 7. Nge2 Bg7 8. Ng3 O-O 9. Be2 a6 10. a4 Re8 11. O-O Nbd7 12. f3 Nh5!?
Japan Open 2015(3)
詳しいゲームの流れは記事内で見てもらうことにしますが、このタイミングでのNf6-Nh5 は、黒マスビショップをd4 に置き、白が弱めてしまったg1-a7 のダイアゴナルも利用できるので、非常に上手い手になっていると思います。私もMisha に習ったことですが、一般的に弱点となることでも、相手に付け込まれる心配が無ければ問題ないという考え方があります。ここでは、黒はキング前のポーンストラクチャーを乱しても、その代わりにピースをアクティブにし、早く攻撃することで、白に攻める隙を与えなければ大丈夫なわけですね。
Jeremy Silman はこれからオリンピアードに向け、日本の女子チームをサポートしてくれるそうです。今後、彼の協力の元で、女子だけでなく日本のプレーヤー全体のレベルが上がったり、日本のプレーヤーがもっと注目されるようになると良いですね。
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