2018/03/29

Grandmaster Preparation Calculation


今夜は、最近読み進めている本の紹介です。Grandmaster Preparation シリーズは、デンマークのGM Jacob Aagaard によって書かれており、彼の公式HP では、Calculation、Strategic Play、Positional Play、Attack and Defence、Endgame Play の5冊が紹介されています。2月に羽生さんとお会いした際、この中の1冊であるCalculation をいただきました。中身は基本的にタクティクスの問題集なのですが、そのタイトル通り、かなり読まなければ正しいラインを見つけられないものが多くなっています。例えば今日解いた中で面白かったのは、以下のポジションです。


Najer, E (GM, RUS, 2681) - Lysyj, I (GM, RUS, 2612)
62nd Russian Championship Higher League 2009(2)
White to move

14. Nb5!


実際のゲームでは14. c4 と指し、それでも白がゆっくりとしたゲーム展開で勝利を収めましたが、こちらの手はさらに強力です。すぐにクイーンを交換する変化は白が良さそうなので、黒はクイーンをかわしますが...

14... Qb6 15. Qxd8+! Bxd8 16. Be3 Qa5 17. b4 Qxb5 18. Rxd8+ Qe8 19. Rxe8+ Nxe8 20. Rd1+/-



まだ駒数こそイコールですが、白はダブルビショップとdファイルのコントロールで大きなアドバンテージを握ります。クイーンを捨てても必ず取りかえせるのが、この変化のポイントですね。しかし、何かあると言われれば気付きそうですが、Najer もベストムーブを逃しているので、なかなか実戦で指せるかというと難しいでしょう。他にもAronian が逃したタクティクスも紹介されており、そちらはさらに難しいかもしれません。


Nakamura, H (GM, USA, 2753) - Aronian, L (GM, ARM, 2807)
Grand Slam Final 4th 2011(8)
Black to move

こちらは解答を書かないでおきます。是非チャレンジしてみてください。ちなみに私はさっぱり分かりませんでした(笑)

私は自分があまり正確に読まないタイプ(大局観とポジショナルプレー中心で、正確に読まずとも指せる局面を目指すタイプ)だと思っていますが、昨年のマン島でのNihal Sarin 戦のように、正確な読みが必要な局面でメイトを見逃して負けということもあります。自身の弱点を克服するために、こうした細かな計算が必要な問題に取り組むのも必要だと思い、この本を読み進めています。しばらくは投げ出さずに続けていきたいですね。


2018/03/26

ACC Spring Camp 2018


3月23-24日の2日間、麻布学園チェス部の合宿に顔を出してチェスの指導をしてきました。私の出身クラブでもある麻布のチェス部は私が現役時代から、春と夏の年2回、関東近郊で合宿を行っています。ここ数年は合宿内での試合数を減らし、2日間は私の行うレクチャーに時間を割くようにしています。今回の合宿地は埼玉県の秩父で、私は初めて足を運ぶ地でした。


池袋から特急レッドアローと市バスを乗り継ぎ、初日の昼前に合宿地である秩父の宿に到着しました。私が着く前日から合宿をスタートさせた後輩たちは、中1から高1まで4学年14人、私が初めて見る顔が半数近くでした。早速、初日の前半はちょっとしたタクティクスの問題と、ゲーム全体の流れを見るためにゲームの紹介をします。例えば以下の局面で白番、子供たちはああでもない、こうでもないと知恵を振り絞って答えを探します。


Ljubojevic, L - Durao, J
Orense 1974
White to move

22. Nd6+! Bxd6 23. Qa6+! Kc7 24. Qxa7+ Kc8 25. Bb5!! 1-0


f1 のマスを守りつつ、Bb5-Ba6 のメイトスレットを作る最後の手が難しいですね。25... cxb5 26. Qa6+ Kc7 27. Bxd6# でもぴったりメイトなのが美しいと思います。


夜は麻布の合宿で恒例となっている同時対局です。ここでの合宿は、私がここ数年で行っている同時対局の中でも、かなりポイントを落とす可能性が高くなっています(笑) 今回こそ全勝を目指しましたが、中学生2人にひどいミスが出て2敗し、12勝2敗にとどまりました。1つ紹介するとすれば、高1の澤部くんとのゲームは面白かったです。

Kojima, S - Sawabe, I
ACC Spring Camp 2018 Simulteneous

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. d3 d6 6. c3 b5 7. Bc2 Bb7 8. O-O Nb8 9. Re1 c5 10. Nbd2 Nbd7 11. Nf1 Qb6 12. Ng3 g6 13. d4 Bg7 14. a4 O-O 15. h3 Rfe8 16. d5 c4 17. Be3 Qc7 18. Qd2



白黒互いにいくつかのテンポロスがありながら、Ruy Lopez Breyer のメインラインとほぼ同じ局面になりました。

18... Reb8 19. Ra2


指した直後にaファイルから手を作るのであれば、b3 のマスもカバーしておく19. Ra3 のほうが良かったと後悔しました。黒は当然ナイトをc5 に運び、b3 のマスへの跳び込みを見せておきます。

19... Nc5 20. Nh2 Nfd7 21. Rf1!?



最近見たHou Yifan のゲームで、f2-f4 からキングサイドで上手くアタックが決まる好例がありました。aファイルでいかないとなれば、白はキングサイドからのアタックを準備します。

21... Nb6 22. f4!? Ncxa4?


私は思い切ってa4 を捨て、キングサイドアタックのスピードに期待します。22. axb5 axb5 23. Rxa8 Rxa8 24. f4 も安全策としてありそうですが、黒のaファイルからの反撃は早そうですし、いざというときに2つ目のルークが無ければ、キングサイドアタックのパワーが落ちると考えました。

それに対する黒の手が失敗で、22... exf4 23. Bxf4 Nbxa4 24. Ng4 としてビショップをf6,h6 のマスのカバーに残しておくか、22... Nbxa4 23. fxe5 Bxe5 24. Ng4!? Bxg3 25. Bd4 Be5 26. Qg5 として、a4 のポーンを違うナイトで取るほうが良かったでしょう。

23. fxe5! Bxe5 24. Ng4!



私はある程度読んで、g3 のナイトを捨ててもOKだと判断しました。黒キング前の黒マスの弱さをついて白はアタックを仕掛けます。

23... Bxg3 25. Nh6+ Kh8


25... Kg7 26. Rxf7+ Qxf7 27. Nxf7 Kxf7 28. Bxb6 Nxb6 29. Qe3!+- この局面でb6 のナイトとg3 のビショップがダブルアタックになるのがポイントです。22手目でもう1つのナイトでa4 を取るべきだったのは、白のこのタクティクスを防ぐためでした。

26. Rxf7! Qxf7


クイーンを逃す手には多少迷いますが、白は黒キングへの攻撃が豊富にあり、その中から分かりやすいものを選ぶだけです。26... Qc8 27. Bd4+ Be5 28. Bxe5+ dxe5 29. Qg5 Nd7 30. Nf5!+- (30. Qe7? Qc5+!)

27. Nxf7+ Kg8 28. Ng5+-



クイーンを取り、黒キングもまだ危険な状態にあるため、これで白の勝勢です。ここから数手でブランダーがあり、黒のピースがさらに落ちて白勝ちとなりました。


2日目も朝食後、昼まで3時間ほどレクチャーです。前日に続いて、Botvinnik やSpielmann のゲームを紹介し、白が築く序盤の優位や、それに黒がどう対抗するかなどを解説しました。昼過ぎののゲームの途中で私は宿を後にし、後輩たちよりも早く東京に戻ります。2日間で学んだことを活かせたかは気になるところですが、今後の大会でそれは見せてもらおうと思います。今年も麻布のチェス部での合宿は非常に楽しく、私にとっても勉強になる場でした。


バスで西武秩父駅前に戻り、帰りの電車の時間まで少し近場を散策してみることにします。羊山公園は西武秩父駅からすぐの小高い丘にあり、ここに向かうのはちょっとした運動にぴったりです。秩父の桜は少し遅れ気味でしたが、それでもなんとか咲いているのを発見。今週末には見ごろなのではないかと思います。


西武秩父線は羊山公園を横切るように通っています。時間が合えば、貴重な特急列車、レッドアローと遭遇することもあるでしょう。

2018/03/19

第4回七盤初心者のためのチェスレッスン

カペルから戻り、一週間のんびりしていると、次のいっぷくのレッスンまで2週間を切っていました。いっぷくでのチェスレッスンは3月はお休みで、次は4月の1日開催です。皆さんのお越しをお待ちしております。

【日時】 2018年4月1日(日) 18:30~20:30
【会場】 どうぶつしょうぎcafe いっぷく(最寄駅:清澄白河駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答+対局
【テーマ】 タクティクス
【参加費】 2000円
【申し込み】 どうぶつしょうぎcafe いっぷく ご予約フォーム

4月のレッスンでは、相手の駒を取ったりキングを攻撃したりする手筋、いわゆるタクティクスをテーマとします。基礎的なタクティクスの説明から、面白い組み合わせまで、皆さんに楽しんでいただける話をできればと思います。4月のレッスンも、よろしくお願い致します。

そしてこの日はいっぷくで14時からスタートの、Tokyo Chess Meetup が主催するブリッツ大会にも参加する予定です。このチェスクラブには私も先日、下北沢の例会に参加してきました。いつもと違う顔ぶれでのチェスが楽しめることを期待しています。それではどちらのイベントの参加者も、4/1 にいっぷくでお会いしましょう。

2018/03/11

Cappelle la Grande 2018 R9


優勝スピーチをするGM Bauer

今年の長かったカペルもようやく最終戦を迎え、大会は全日程を終了しました。私は最終戦、イタリアのFM Santagati との対戦です。彼は私が5年前に参加したイタリア、シチリア島はアグリジェントのトーナメントでも一緒にプレーしており、私のことを覚えてくれていました。今大会はニカラグアのFM と行動を共にしており、期間中に何度か顔を合わせて話をしています。

Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Santagati, A (FM, ITA, 2247)
Cappelle la Grande 2018 (9)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 Bb4 5. Bg5 h6 6. Bxf6 Qxf6 7. e3 O-O 8. Rc1 dxc4 9. Bxc4 c5 10. O-O!?



最終戦は3Rと同じRagozin になりましたが、私から前回の手を変えます。3R後に調べなおしたところ、こちらのラインも面白いと感じました。どうしても勝って大会を終えたかったため、早い段階のライン選びから工夫を凝らします。

10... cxd4 11. Ne4 Qe7 12. a3 Ba5 13. Qxd4 Rd8 14. Qe5 Nc6?!


試合後にSantagati とは、この手がすでに不正確なのではないかと話をしています。一見自然な展開の手にも見える14... Nc6 ですが、クイーンをキングサイドに振られた後で、キング前のディフェンスに気を配らなくてはならなくなります。14... Bb6! と早めにビショップを退いておけば、c5 のマスをカバーしつつ、Nb8-Nd7-Nf6 のチャンスを残すことができました。

15. Qh5 Bd7 16. g4!



白は黒駒がクイーンサイドに集まりすぎていることに着目し、薄いキングサイドを攻撃しにいきます。単純な狙いですが、次のg4-g5 を防がなければ、黒はキング前を崩されてしまいます。

16... f6 17. Qc5?!


しかし、私もこの手は緩手でした。黒のf7-f6 でe6 のポーンが弱くなり、クイーン交換からe6 を狙うアイディアが良いように感じました。ただし、これは少しタイミングが早く、17. Rfd1 Bb6 18. Nd6 Be8 19. Nxe8 Rxd1+ 20. Rxd1 Rxe8 と指したほうが良かったと思います。

17... Kf8?


この手は最初はなるほどと思いましたが、大きな落とし穴があります。17... Bb6! 18. Qxe7 Nxe7 19. Rfd1 Kh7! であれば、黒はe6 の守りも大丈夫で、満足にゲームを続けることができそうです。

18. Nh4!+-



g6 のマスが弱くなっているため、ここでのナイトフォークのアイディアは単純ながら強烈です。

18... Qxc5 19. Nxc5 g5 20. Bxe6 Ke7 21. Bxd7 gxh4


ひとまず駒得を確定させた私は、ここで少し時間を使ってこの先のプランを考えます。2ポーンアップのダブルルークエンディングになる未来は見えますが、そこから確実に勝つ方法があるか、この時点から読みを進めます。私は白のポイントとなる手をいくつか見つけ、そのラインに跳び込む決意を固めました。

22. Bxc6 bxc6 23. Nb7 Rd5 24. Nxa5 Rxa5 25. Rxc6 Rb8 26. Rb1!



これが大事な手で、白はa3 でポーンを1つ返してしまっても、ルークを1つ交換したうえでキングをg2 に上げることができれば、確実に勝てるルークエンディングを迎えることになります。そのため、黒は26... Rxa3 とは指せないことが分かります。ならばパッシブにも見えるこの手で、一時的でもb2 を守っておき、その間にキングの前進を目指します。

26... h3 27. f3!


まだ油断は禁物ですが、これでキングを上げる準備を整え、少し余裕が出てきました。22手目の時点からここまでの形をイメージできたのは、この試合に冷静に取り組めていた証拠だと思います。

27... h5 28. Kf2 hxg4 29. fxg4 Ra4 30. Kf3 Rg8 31. Rg1 Rg5 32. Rg3 Kf7 33. Rxh3 Raxg4 34. Rh6 1-0



前日の希望通りに有終の美を飾り、6.5/9 でのフィニッシュです。当たりの厳しさが違うので単純に比較はできませんが、カペルでの4つ勝ち越しは自身の最高戦績です!

3/3 16:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Dumas, V (FRA, 2070) 1-0
3/4 14:00 R2 Cieza, A (FM, PER, 2181) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/5 09:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Nadhini, S(IND, 1833) 1-0
3/5 16:00 R4 Real, T (BEL, 2218) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 0-1
3/6 14:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Shyam, S (GM, IND, 2525) 1/2-1/2
3/7 14:00 R6 Rabineau, C (FM, FRA, 2248) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1-0
3/8 14:00 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Kollar, R (FRA, 2135) 1-0
3/9 14:00 R8 Holtel, J (FM, GER, 2194) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/10 10:00 R9 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Santagati, A (FM, ITA, 2247) 1-0

Cappelle la Grande 2018 Final Standings

最終順位は22位で、スタートよりもほんの少しだけ上がっています。しかし、レイティングは-2 と微減で、なかなかベスト更新はかないません。また5月の全日本選手権で、レイティングを稼げるように頑張りたいと思います。

今回の試合で良かったことは白番での戦績で、下がほとんどながらGM 戦も含めて負けはなく、4勝1ドローの高パフォーマンスを残しています。黒でも同じパフォーマンスを出すことができれば、大幅なレイティングアップ、そしてそれに伴うノーム獲得もかなうかもしれません。自分の試合をこれまで以上に振り返りながら、さらなるレベルアップを図りたいですね。


最終戦、7P でGM Bauer、GM Nikolov、Gukesh が並び、見事に白でBauer とNikolov が勝利を収めました。トップの写真にもある通り、優勝のカップはタイブレークでBauer がゲットしています。一方でGukesh とStany のインドコンビも最後まで上位勢に迫りましたが、あと一歩及ばず残念。2006年生まれのGukesh はインドジュニアでも注目株で、これからも成長が楽しみです。


最終戦の後、会場を綺麗に片づけ、それから表彰式です。カペルではレイティング100ごとにセクション分けし、全セクションでトッププレーヤーが表彰されます。日本から参加したTさんも、最終戦に勝利したことで見事、1500-1600セクションでの優勝です!


最終日の夜はフランスのIM Payen とホテル近くの日本料理屋、Sakuraへ。Payen は4年前にケチケメートのトーナメントで知り合い、このトーナメントで久々の再会となりました。篠田くんも以前のカペルで親しくなっており、彼を交えた夕食の席になったのです。話も大いに盛り上がり、ダンケルクの夜はあっという間に更けていくのでした。

最後になりますが、8日間のトーナメント、応援ありがとうございました。関東勢は今日、リールでフランス最後の時間を過ごし、夜の便で日本へと帰国します。また日本の大会でも、よろしくお願い致します。

2018/03/10

Cappelle la Grande 2018 R8


カペルも残りは2試合で、会場にはトロフィーが姿を現しています。これらを誰が手にするかも、残り2試合の結果で全てが決まります。

Hostel, J (FM, GER, 2194) - Kojima, S (IM, JPN, 2402)
Cappelle la Grande 2018 (8)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. exd5 cxd5 4. c4 Nf6 5. Nc3 Nc6 6. Nf3 Be6 7. c5 g6 8. Bb5 Bg7 9. Ne5 Qc8!?



今大会、Shyam - Villgas のゲームがこのラインで、その試合では9... Bd7 が指されました。私も先週調べていた際に9... Bd7 を見直していたのですが、相手がよく知っている雰囲気を出しながら手を進めてくるので、あえて準備から手を外して勝負することにします。

10. Qa4 Bd7


結局黒はビショップを退きますが、白のクイーンもa4 が良い位置なのか将来的に疑問になるため、9... Qc8 は成立すると考えられます。

11. O-O O-O 12. Re1 Re8 13. Bxc6 bxc6?!



相手が30分の長考の末、ビショップナイトの交換を決断したのに対して、私ももう少し考えるべきだったと反省しています。ただ時間を使ったとしても、この局面の評価が正しくできる自信はありません。黒のポイントはビショップで取り返すかナイトで取り返すかです。6年前のゲームではビショップで取り返し、c6 でさらにナイトビショップの交換も進めることで、黒はNf6-Nd7,e7-e5 を成功させ、アドバンテージを得ました。しかしここでは、白にクイーンをd1 に退かれ、将来的なb2-b4-b5 にどう対処すべきかが分かりません。実際には13... Bxc6! 14. Qd1 Ne4 15. f3 Nxc3 16. bxc3 b6= くらいで満足なのですが、これが本譜の流れより黒にとってずっと良いと判断するには、自分の力が足りていませんでした。

14. h3 h6 15. Bf4 g5 16. Bh2 Nh7!?


私のプランは、なんとかしてf7-f6 からナイトを消し、e7-e5 を成功させることです。ただそれにかかるスピードと、白のクイーンサイドのポーンが伸びてくるスピードを上手く計算できていませんでした。

17. b4 a6 18. Qb3 f6



白マスビショップを残すアイディアも考えましたが、白のシンプルなプランに対し、黒はあまりに悠長です。18... Bf5 19. Na4 Qb7 20. Nb6 Ra7 21. a4+/-

19. Nxd7 Qxd7 20. Na4 Rad8 21. Nb6 Qb7 22. a4 e5 23. b5


センターブレイクを成功させたものの、g7 のビショップの利きは止まっており、なおかつナイトもまだ端にいます。これでは白のクイーンサイドのアクションに対抗しきれていないと分かり、残り時間が10分ほどになっても冷静に考えることを心がけて手を探します。ここで間違えれば一気に負けもあると思っていました。

23... axb5 24. axb5 Nf8 25. dxe5 fxe5 26. bxc6



私の読みでは、このポーン交換を先に入れてくれたのはありがたかったです。しかし、26. Rad1 Re6 27. bxc6 Rxc6 28. Bxe5 Bxe5 29. Rxe5 Rxc5 30. Rexd5 Rdxd5 31. Rxd5 Rxd5 32. Qxd5+ Qxd5 33. Nxd5 と進めて白がポーンアップのナイトエンディングになったとして、残りポーンがキングサイドで3対2まで減らせているのであれば、ドローのチャンスは十分にあると思います。

26... Qxc6 27. Rad1 Qxc5 28. Rxd5 Rxd5 29. Qxd5+?!


黒のキングの守りが薄いことを考えれば、クイーンを残しておいてほうが、黒の課題は残ったでしょう。29. Nxd5 Kh8 30. Ne3+/-

29... Qxd5 30. Nxd5 Ne6 31. Ne3 1/2-1/2



ここまでくればどちらかが勝つということもないと思います。彼からのオファーを快く受け入れドロー。最後は緩手がありましたが、彼の力強いプレーに終始押されていたため、私としては助かりました。

3/3 16:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Dumas, V (FRA, 2070) 1-0
3/4 14:00 R2 Cieza, A (FM, PER, 2181) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/5 09:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Nadhini, S(IND, 1833) 1-0
3/5 16:00 R4 Real, T (BEL, 2218) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 0-1
3/6 14:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Shyam, S (GM, IND, 2525) 1/2-1/2
3/7 14:00 R6 Rabineau, C (FM, FRA, 2248) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1-0
3/8 14:00 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Kollar, R (FRA, 2135) 1-0
3/9 14:00 R8 Holtel, J (FM, GER, 2194) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/10 10:00 R9 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Santagati, A (FM, ITA, 2247)

Cappelle la Grande R9
Live Games

最終戦はイタリアのFM に白です。今度こそ勝って有終の美を飾りたいですね。最終戦はいつもより早く、日本時間の18時スタートです。


先日、インドのNo.2 Harikrishna が結婚しました。その盛大な式の写真を見て食欲をそそられた私が、この日は夕飯にインド料理を提案しました。幸い宿の近くに一軒あったので、初めてそこに足を運んでみます。値段、ボリューム、味、全てに満足できました!

2018/03/09

Cappelle la Grande 2018 R7


昨日、3/8 は国際婦人デーでした。試合開始前、参加している全女性選手が一人ずつ名前を呼ばれて紹介され、壇上で記念にバラの花を貰います。私もカペルにはかなりの回数参加していますが、こうした粋なイベントは初めてだと記憶しています。

さて試合ですが、私はフランスの15-16歳の男の子との対戦でした。6R までで4人下に勝ち、2人上に負けなので戦績は普通ですが、2連続下にポイントを落とすわけにはいかないため、気を引き締めて試合に臨みます。

Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Kollars, R (FRA, 2135)
Cappelle la Grande 2018 (8)

1. Nf3 c5 2. c4 g6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 Nc6 6. Nc2 Bg7 7. g3 O-O 8. Bg2 b6!?



試合前、このラインになるのを予想して調べ直していました。8... b6 は初めて見ましたが、基本的には8... d6 と同じだと考え、d5 のマスのコントロールを軸に戦うプランで進めます。

9. O-O Bb7 10. b3 Rc8 11. Bb2 Qc7 12. Qd2


ここは指した直後、白マスビショップをキープする12. Re1 もありだったかと思いました。ただ白としてはビショップを交換しても、大きくアドバンテージを失うわけではありません。

12... Na5 13. Ne3 Bxg2 14. Kxg2 e6?



白のナイトがいつd5 に入ってくるのかを常に気にしながら指し続けるのは、黒にとって大変であると理解できます。しかし、この単純なポーン突きでは、d5 を守る代わりにd6 のマスを致命的に弱くしてしまうのが痛手となります。

15. Nb5! Ne4 16. Qc2 Qb7 17. Bxg7 Kxg7


白のNc3-Nb5 は強力で、クイーンのb7,c6 の2か所の避け場所に対して、それぞれチェックを防いだ後、d6, a7 がナイトフォークのスレットになります。そこで黒は先にナイトをe4 に飛び込ませますが、これも逆に白クイーンのターゲットになってしまいます。17... Nd2+ 18. Nd5 Nxf1 (18... exd5 19. Bxf8+-) 19. Bxf8 Rxf8 20. Nbc3 exd5 21. Nxd5+/- も白に上手く捌かれて駒損のため、黒はディスカバードチェックを活用することはできません。

18. f3! a6 19. Qxe4 Qxe4 20. fxe4 axb5 21. cxb5 Rc5



1ポーンアップした白は、すでに駒得以上の大きなアドバンテージを得ています。白のポーンストラクチャーは悪く見えますが、cファイルでは入られる危ないマスは無いですし、b6,d7,f7 のポーンはターゲットになりうるでしょう。21... Rc3 22. Rf3! の流れは逆にNe3-Nf5+ がディスカバードチェックになるため、黒としては指しづらいと思います。そこで黒の選んだ21... Rc5 は少しトリッキーですが、私は先まで読んで白勝ちのエンドゲームになることを確信し、一気にゲームを進めます。

22. b4! Nc4 23. bxc5 Nxe3+ 24. Kf2 Nxf1 25. Kxf1 bxc5 26. a4+-


1ポーンは返してしまいましたが、白の2コネクテッドパスポーンは決定的です。

26... Rb8 27. Rb1 c4 28. Ke1 1-0



この日はさっくり勝って2時間でゲーム終了でした。R7 では落ち着いて手も探せましたので、次の試合でもこの調子でポイントを取れるよう頑張ります。

3/3 16:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Dumas, V (FRA, 2070) 1-0
3/4 14:00 R2 Cieza, A (FM, PER, 2181) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/5 09:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Nadhini, S(IND, 1833) 1-0
3/5 16:00 R4 Real, T (BEL, 2218) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 0-1
3/6 14:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Shyam, S (GM, IND, 2525) 1/2-1/2
3/7 14:00 R6 Rabineau, C (FM, FRA, 2248) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1-0
3/8 14:00 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Kollar, R (FRA, 2135) 1-0
3/9 14:00 R8 Holtel, J (FM, GER, 2194) - Kojima, S (IM, JPN, 2402)
3/10 10:00 R9

Cappelle la Grande R8
Live Games

カペルもいよいよ大詰めです。私はドイツのFM Holtel に黒をもっての対戦が組まれました。Holtel は途中のラウンド、隣のボードで2400近くのWGM を撃破しており、レイティング以上の実力を持つ嫌な相手です。R6 の二の舞にならぬよう、ここをしっかり勝って白での最終戦に弾みをつけたいところです。


今日のダンケルクは久々の綺麗な晴模様でした。港町ダンケルクでは、大小様々な船が停留している様子が見られます。


上位ボードは、前日ドローだったポーランドのIM Kryzanowski(右奥) と、GM Bauer(右手前) が今日は2人とも勝ち。6.5/7 で並ぶデッドヒートが続いています。Kryzanowski は今大会、GM ノーム獲得者の筆頭候補です。ノーム獲得のためには、これくらい勝たないといけないんですね。


日本のチェスファンの皆さんはライブ中継をご覧になっているかもしれませんが、会場にいる私たちも同じ中継を見ています。トップ12B の様子は、壇上の幕にプロジェクターでかわるがわる映し出され、遠くからでも状況をチェックすることができるようになっています。

2018/03/08

Cappelle la Grande 2018 R6


ダンケルクの夕暮れ

今日から後半戦がスタートです。この日は4人になった日本チームにとって、苦戦の1日でした。

Rabineau, C (FM, FRA, 2248) - Kojima, S (IM, JPN, 2402)
Cappelle la Grande 2018 (6)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. e3 e6 7. Bxc4 Bb4 8. O-O O-O 9. Nh4



この変化はかつて私も白で愛用していましたが、上手く結果を出せなかったため指すのを諦めたのでした。白は早めにダブルビショップを得ますが、そのかわり展開が遅いため、黒は十分にイコアライズにチャンスがあります。

9... Nbd7 10. Nxf5 exf5 11. Qc2 g6 12. f3 Rc8


12. f3 のラインに対して、何が自分のメインの準備だったかはっきりと覚えていませんでした。それでも、c6-c5 のブレイクを用意するのは白のe3-e4 に対抗できると思い、実行に移します。

13. Kh1 Qb6!?



この手は過去のデータになく、新しい試みです。悪くはありませんが、素直に13... c5 14. Na2 (14. d5 Nb6 15. Ba2 Re8 16. e4 fxe4 17. Nxe4) 14... Nb6! と進めていれば良かったかもしれません。

14. a5!?


このポーンサクリファイスは受け入れざるをえません。白は黒のビショップを一旦端に寄せておき、その間にセンターで手を作ります。

14... Bxa5 15. e4!? c5?!



私はこのタイミングでcファイルから反撃すべきだと思いましたが、さらっとかわされて白が一気に良くなってしまいます。15... Qxd4! 16. Bb3 (16. Ne2 Qb6 17. exf5 Ne5 18. Bb3=) 16... Bc7 17. exf5 Qh4= 黒としては、d4 をクイーンでとっておき、f5 を返すほうが面白い展開だったでしょう。

16. d5! fxe4 17. Nxe4!


a5 のビショップはゲームに戻すののに時間がかかり、c3 のナイトと捌いてしまうアイディアも考えました。しかし、ダブルビショップvs. ダブルナイトの構図にすることにためらいがあり、さらにはbファイルからの反撃も恐れていました。そこでポーンだけ交換して様子を見ようと思ったところ、相手はfポーンではなくナイトで取り返してきました。私の頭の中には白はf7 へのアタックをメインにするため、17. fxe4 としてくる手ばかりが思い描かれており、ナイトで取る手を軽視していたのはこのゲームの大きな反省点でした。実際、白はナイトをアクティブに使うほうが、17. fxe4 Rfe8= よりも優位にゲームを進められます。

17... Bb4 18. Bh6 Rfe8?



f7 へのアタックは問題ないとなぜ思ったのか、ここでもっと時間を使って考えなければいけませんでした。白がやや優勢でも、18... Nxe4 19. fxe4 a6 20. d6!? (20. Bxf8 Rxf8 21. Qf2 Ne5) 20... Qxd6 21. Bd5+/= このような展開で、f8 のルークは諦めるべきでした。

19. d6!


この手はあらかじめ考えていたつもりでしたが、実際に指されてみて、黒がどうしようもなくなっていることに気が付きました。白はf7 でビショップを捨ててクイーンでチェックする狙いも、単にビショップとクイーンを重ねる狙いもあり、黒にはすでにf7 の満足なディフェンスがありません。

19... Rxe4 20. fxe4 Qxd6 21. Rad1 Qe7 22. Rxd7 Nxd7 23. Rxf7 Qxf7 24. Bxf7+ Kxf7 25. Qb3+ 1-0



GM と熱戦の末にドローをもぎ取った翌日、こうしたひどいプレーで短手数で負けてしまうのはかなりショックでした。やはり自分の思い込みをもう少し減らし、丁寧に考えることを心がけて残り3試合に臨もうと思います。

3/3 16:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Dumas, V (FRA, 2070) 1-0
3/4 14:00 R2 Cieza, A (FM, PER, 2181) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/5 09:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Nadhini, S(IND, 1833) 1-0
3/5 16:00 R4 Real, T (BEL, 2218) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 0-1
3/6 14:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Shyam, S (GM, IND, 2525) 1/2-1/2
3/7 14:00 R6 Rabineau, C (FM, FRA, 2248) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1-0
3/8 14:00 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Kollar, R (FRA, 2135)
3/9 14:00 R8
3/10 10:00 R9

Cappelle la Grande R7
Live Games

明日はフランスの16歳の少年との対戦です。昨日の負けを払しょくできるような内容にして、また上位との対戦に望みをつなげたいですね。

心くんが去って最初のラウンドだったこの日、日本チームは1勝3敗と初めて2つの借金です。今日は下相手が多いですので、今度こそ白星を積み重ねなければいけません。また気を取り直して頑張ってきます!


宿泊しているibis も大会中はチェス模様になっています。こちらはロビーの壁紙です。


置かれているテーブルもチェス仕様。向きが違ったので直しておきました(笑)


夕飯は馬肉を使ったハンバーグ。こちらだとMinced horse steak というんですね。卵を乗せるのもスタンダードなようです。


2018/03/07

Cappelle la Grande 2018 R5


カペルは前半の4試合で3.5Pを挙げ、ようやく上位ボードに上りつめました。4Bで対戦するのは2年ぶりの顔合わせとなるインドのGM Shyam です。白も引けたことですし、大事な勝負のラウンドです。

Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Shyam, S (GM, IND, 2525)
Cappelle la Grande 2018 (5)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 O-O 5. d4 d6 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 exd4 9. Nxd4 Re8 10. h3 Nc5 11. Re1 Bd7 12. Rb1 h6 13. Kh2



Queen's Gambit Ragozin でくるという期待は裏切られ、King's Indian のモダンな変化になりました。この変化は羽生さんと3年前に指して研究しています。

13... a5 14. Ndb5 h5 15. Bf4!? Bxb5


先日見たMikhalevsky のゲームで、白がc7 へのサクリファイスを決めて勝っていたのを見て、f4 へビショップを出してみましたが、この場合は上手くいきません。15... h4 16. Nxc7 Qxc7 17. Bxd6 Qb6 18. e5 Bf5!-/+ b1 にルークを動かしたことが仇となり、この反撃があります。それを考えてみると、ここでナイトを消す必要はないかもしれません。

16. cxb5 h4 17. gxh4!+/=



17. g4 Ne6 18. Be3 g5!? という展開から、f4 のマスを抑えられるのは好みではありません。そこで思い切ってh4 を取って勝負します。Baku Olympiad ではGM Amanotov 相手に負けはしたもののこのアイディアを試し、感触は悪くなかったことを覚えています。

17... Nh5 18. Bg5 Bf6 19. Qd2 Ne6 20. e5!


ここも正しい判断ができました。20. f4? Nhxf4!-+ はポーンがタダ落ちでダメ。駒を捌くとBf6-Be5 の串刺しが待っています。 20. Nd5!? Nxg5! 21. Nxf6+ Qxf6 22. hxg5 Qe5+ 23. Kg1 Nf4= の後、b5 のポーンが落ちる展開も好ましくありません。ならばクイーンを交換して、エンドゲームに持ち込みます。

20... dxe5 21. Qxd8 Raxd8 22. Bxf6 Nxf6 23. Rxe5 Rd2 24. Kg1?!



この辺りからやや不正確な判断が出始めます。自然に見える24. Re2 Rxe2 25. Nxe2+/= ならば、白は優位をキープできそうです。Re8-Rd8-Rd2 を恐れていましたが、Bg2-Bxb7-Bf3 がぴったりで問題ないため、黒はb7 を一度守らないといけないんですね。これを見通したのは、少し冷静でなかったかもしれません。

24... Nf4! 25. Rxe8+ Nxe8 26. Ne4 Re2 27. Nc3 Rc2 28. Ne4 f5!?


e8 のナイトを抑え込もうとする私に対し、Shyam はg5 を弱めても白のナイトをどかして勝負です。

29. Ng5 Nd6 30. a4 Ne2+ 31. Kf1 Nc1 32. Kg1?!



c1 にナイトが潜り込み、私のルークを抑え込もうとするのは実に面白い構想です。これに対してキングが戻るのは弱気すぎで、d3 にナイトがいく形でチェックになることを恐れる必要はありませんでした。32. b4! axb4 33. Rxb4 Nd3?! 34. Rd4! Nxf2 35. b6!+/- このブレイクは後で考えたものの、こうした早いタイミングで使えました。

32... b6 33. Bf1 Kg7 34. b4 axb4 35. Rxb4 Kh6 36. Rd4 Nb3 37. Rd3


最初は3段目から7段目を目指すつもりでしたが、e4 でブロックされてしまうため、37. Rd5! と5段目からが良かったでしょう。

37... Nc5 38. Rd5 Nce4


38... Ra2 39. Re5 Rxa4 40. Re7 Rxh4 41. Nf7+ Nxf7 42. Rxf7 Rb4 43. Rxc7 Rb1=/+ 少し黒が指しやすいですが、白はドローに持ち込めると思います。38... Nxa4 39. Re5 Kg7 40. Re7+ Kf6 41. Re6+ Kg7 42. Re7+= ならばすぐドローが決まります。

39. Nxe4 Nxe4 40. Bd3 Rc1+



これで40手に到達し、持ち時間が増えます。今大会は40手90分+30分で、この増えた30分を互いにフルに使い、ここから長くゲームは続きます。

41. Kg2 Nc5 42. Be2 Nxa4 43. Rd7 Rc5 44. Kg3 Nc3 45. Bd3 Nd5 46. Kf3 Nb4 47. Be2 c6


b5 とc7 を交換し、ルークエンディングになればドローは間違いないでしょう。白は7段目のルークの位置が絶妙で、見事に黒キングの動きを縛っています。ただこうして単純にポーンを交換してくれるのも、白はドローを目指すうえでありがたいと思っていました。

48. bxc6 Nxc6 49. Rb7 Rc3+



49... Nd4+ 50. Ke3 Nxe2 (50... Re5+ 51. Kxd4 Rxe2 52. f3 Rf2 53. Ke3 Rh2 54. Rxb6 Rxh3 55. Kf4 Rxh4+ 56. Ke5=) 51. Kxe2 Rc3 52. Rxb6 Rxh3 53. Kf1 Rxh4 54. Kg2= おそらくShyam も読んでいたのは、ナイトとビショップを交換し、1ポーンアップのルークエンディングを目指す形です。しかしこれは、fポーンvs.f,gポーンになってしまうため、黒が勝つことはできないでしょう。

50. Kg2 Nd4 51. Bf1 f4 52. Rxb6 Nf5 53. Rb2 Nxh4+ 54. Kh2 Nf3+ 55. Kg2 Nh4+ 56. Kh2 Kg5 57. Bb5


ビショップはf1 で窮屈に閉じこもるよりも、c8-g4 のダイアゴナルのほうが広々として良いだろうと思い、切り替えにいきます。

57... Nf3+ 58. Kg2 Ne1+ 59. Kh2 Kh4 60. Bd7 Nf3+ 61. Kg2 Ne5 62. Rd2 Rd3 63. Rxd3 Nxd3



ルークを交換してピースのエンドゲームにしても、まだまだShyam は勝ちを諦めません。私はこれはドローに決まっていると思いつつも、最後まで油断せずにプレーを続けます。

64. Bc8 Ne1+ 65. Kf1 Nf3 66. Kg2 Nd4 67. Bg4 Kg5 68. Kh2 Nc6 69. Kg2 Ne5 70. Bc8 Kh5 71. Be6 g5 72. Bf5 Kh6 73. Bc8 Kg6 74. Be6 Kg7 75. Bf5 Kf7 76. Bc8 Kf6 77. Kh2 Nf3+ 78. Kg2 Nh4+ 79. Kf1 Nf3 80. Kg2 Nd2 81. Bg4 Ke5 82. Bh5 Kf5 83. Bd1 Ke4 84. Bc2+ Kd4 85. Bg6


黒はキングをセンターから回して、あわよくばf2 を狙おうという構想ですが、これに対しては本譜でもでてくるポーンの捌きが通用します。85. h4! gxh4 86. Kh3=

85... Nc4 86. Bf5 Ne5 87. h4!



私がポーンブレイクが分かりやすいと考えたタイミングは、キングd4、ナイトe5 の形です。これでポーンを捌いてしまえば、ドローがとても分かりやすくなります。

87... gxh4 88. Kh3 Nf3 89. Kg4 Ke5 90. Bc8 Ne1 91. Kxh4 Nd3 92. Kg4!


92. f3? Ke3! はf3 のポーンを取られたうえ、キングがすでに潜り込まれているかなり悪い形です。どうせ落ちるfポーンなのであれば、取らせている間にキングが戻ってくるのが正解です。

92... Nxf2+ 93. Kf3 Ne4 94. Bb7 Ng5+ 95. Kg4 Ne4 96. Kf3 Nc5 97. Ba8 Ne6 98. Kg4 Nd4 99. Bh1 f3 100. Bxf3 Nxf3 101. Kxf3 1/2-1/2



途中やや指しづらかったものの、なんとか耐えきってドローです。1ポーンアップの良さを活かしきれなかったのは、反省として持って帰ります。

3/3 16:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Dumas, V (FRA, 2070) 1-0
3/4 14:00 R2 Cieza, A (FM, PER, 2181) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/5 09:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Nadhini, S(IND, 1833) 1-0
3/5 16:00 R4 Real, T (BEL, 2218) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 0-1
3/6 14:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Shyam, S (GM, IND, 2525) 1/2-1/2
3/7 14:00 R6 Rabineau, C (FM, FRA, 2248) - Kojima, S (IM, JPN, 2402)
3/8 14:00 R7
3/9 14:00 R8
3/10 10:00 R9

Cappelle la Grande R6
Live Games

次のラウンドはフランスのFM に黒です。2200台に数字を落としていますが、今回は2400台に2ドローのようなので気を引き締めていこうと思います。

この5R で、パリからきていた松村心くんはトーナメントを一足先に終えました。最終戦は1900に勝って大きくレイティングを稼いでいます。これで日本チームは4人に減って寂しいですが、残り試合もしっかりと戦ってきます。心くん、また会える機会を楽しみにしています!


会場脇に出る、カペル伝統のチェスショップは健在です。ここでは様々なチェスセットの他、最新のチェス本が販売されています。


今年は食事が出ないため、これまで食堂として利用していたスペースを開放し、広い検討室にしています。


検討室脇には巨大なチェスセットが! 時々参加者の子供たちがここでゲームをしています。


昨夜は私が最長の5時間半ゲーム。ダンケルクに4人で戻り、夕飯はポークリブを選びました。濃い味付けに手が止まりません!

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