優勝スピーチをするGM Bauer
今年の長かったカペルもようやく最終戦を迎え、大会は全日程を終了しました。私は最終戦、イタリアのFM Santagati との対戦です。彼は私が5年前に参加したイタリア、シチリア島はアグリジェントのトーナメントでも一緒にプレーしており、私のことを覚えてくれていました。今大会はニカラグアのFM と行動を共にしており、期間中に何度か顔を合わせて話をしています。
Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Santagati, A (FM, ITA, 2247)
Cappelle la Grande 2018 (9)
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 Bb4 5. Bg5 h6 6. Bxf6 Qxf6 7. e3 O-O 8. Rc1 dxc4 9. Bxc4 c5 10. O-O!?
最終戦は3Rと同じRagozin になりましたが、私から前回の手を変えます。3R後に調べなおしたところ、こちらのラインも面白いと感じました。どうしても勝って大会を終えたかったため、早い段階のライン選びから工夫を凝らします。
10... cxd4 11. Ne4 Qe7 12. a3 Ba5 13. Qxd4 Rd8 14. Qe5 Nc6?!
試合後にSantagati とは、この手がすでに不正確なのではないかと話をしています。一見自然な展開の手にも見える
14... Nc6 ですが、クイーンをキングサイドに振られた後で、キング前のディフェンスに気を配らなくてはならなくなります。
14... Bb6! と早めにビショップを退いておけば、c5 のマスをカバーしつつ、
Nb8-Nd7-Nf6 のチャンスを残すことができました。
15. Qh5 Bd7 16. g4!
白は黒駒がクイーンサイドに集まりすぎていることに着目し、薄いキングサイドを攻撃しにいきます。単純な狙いですが、次の
g4-g5 を防がなければ、黒はキング前を崩されてしまいます。
16... f6 17. Qc5?!
しかし、私もこの手は緩手でした。黒の
f7-f6 でe6 のポーンが弱くなり、クイーン交換からe6 を狙うアイディアが良いように感じました。ただし、これは少しタイミングが早く、
17. Rfd1 Bb6 18. Nd6 Be8 19. Nxe8 Rxd1+ 20. Rxd1 Rxe8 と指したほうが良かったと思います。
17... Kf8?
この手は最初はなるほどと思いましたが、大きな落とし穴があります。
17... Bb6! 18. Qxe7 Nxe7 19. Rfd1 Kh7! であれば、黒はe6 の守りも大丈夫で、満足にゲームを続けることができそうです。
18. Nh4!+-
g6 のマスが弱くなっているため、ここでのナイトフォークのアイディアは単純ながら強烈です。
18... Qxc5 19. Nxc5 g5 20. Bxe6 Ke7 21. Bxd7 gxh4
ひとまず駒得を確定させた私は、ここで少し時間を使ってこの先のプランを考えます。2ポーンアップのダブルルークエンディングになる未来は見えますが、そこから確実に勝つ方法があるか、この時点から読みを進めます。私は白のポイントとなる手をいくつか見つけ、そのラインに跳び込む決意を固めました。
22. Bxc6 bxc6 23. Nb7 Rd5 24. Nxa5 Rxa5 25. Rxc6 Rb8 26. Rb1!
これが大事な手で、白はa3 でポーンを1つ返してしまっても、ルークを1つ交換したうえでキングをg2 に上げることができれば、確実に勝てるルークエンディングを迎えることになります。そのため、黒は
26... Rxa3 とは指せないことが分かります。ならばパッシブにも見えるこの手で、一時的でもb2 を守っておき、その間にキングの前進を目指します。
26... h3 27. f3!
まだ油断は禁物ですが、これでキングを上げる準備を整え、少し余裕が出てきました。22手目の時点からここまでの形をイメージできたのは、この試合に冷静に取り組めていた証拠だと思います。
27... h5 28. Kf2 hxg4 29. fxg4 Ra4 30. Kf3 Rg8 31. Rg1 Rg5 32. Rg3 Kf7 33. Rxh3 Raxg4 34. Rh6 1-0
前日の希望通りに有終の美を飾り、6.5/9 でのフィニッシュです。当たりの厳しさが違うので単純に比較はできませんが、カペルでの4つ勝ち越しは自身の最高戦績です!
3/3 16:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Dumas, V (FRA, 2070)
1-0
3/4 14:00 R2 Cieza, A (FM, PER, 2181) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/5 09:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Nadhini, S(IND, 1833)
1-0
3/5 16:00 R4 Real, T (BEL, 2218) - Kojima, S (IM, JPN, 2402)
0-1
3/6 14:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Shyam, S (GM, IND, 2525)
1/2-1/2
3/7 14:00 R6 Rabineau, C (FM, FRA, 2248) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1-0
3/8 14:00 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Kollar, R (FRA, 2135)
1-0
3/9 14:00 R8 Holtel, J (FM, GER, 2194) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/10 10:00 R9 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Santagati, A (FM, ITA, 2247)
1-0
Cappelle la Grande 2018 Final Standings
最終順位は22位で、スタートよりもほんの少しだけ上がっています。しかし、レイティングは-2 と微減で、なかなかベスト更新はかないません。また5月の全日本選手権で、レイティングを稼げるように頑張りたいと思います。
今回の試合で良かったことは白番での戦績で、下がほとんどながらGM 戦も含めて負けはなく、4勝1ドローの高パフォーマンスを残しています。黒でも同じパフォーマンスを出すことができれば、大幅なレイティングアップ、そしてそれに伴うノーム獲得もかなうかもしれません。自分の試合をこれまで以上に振り返りながら、さらなるレベルアップを図りたいですね。
最終戦、7P でGM Bauer、GM Nikolov、Gukesh が並び、見事に白でBauer とNikolov が勝利を収めました。トップの写真にもある通り、優勝のカップはタイブレークでBauer がゲットしています。一方でGukesh とStany のインドコンビも最後まで上位勢に迫りましたが、あと一歩及ばず残念。2006年生まれのGukesh はインドジュニアでも注目株で、これからも成長が楽しみです。
最終戦の後、会場を綺麗に片づけ、それから表彰式です。カペルではレイティング100ごとにセクション分けし、全セクションでトッププレーヤーが表彰されます。日本から参加したTさんも、最終戦に勝利したことで見事、1500-1600セクションでの優勝です!
最終日の夜はフランスのIM Payen とホテル近くの日本料理屋、Sakuraへ。Payen は4年前にケチケメートのトーナメントで知り合い、このトーナメントで久々の再会となりました。篠田くんも以前のカペルで親しくなっており、彼を交えた夕食の席になったのです。話も大いに盛り上がり、ダンケルクの夜はあっという間に更けていくのでした。
最後になりますが、8日間のトーナメント、応援ありがとうございました。関東勢は今日、リールでフランス最後の時間を過ごし、夜の便で日本へと帰国します。また日本の大会でも、よろしくお願い致します。