2018/03/06

Cappelle la Grande 2018 R3 and R4


ゲーム開始直前の会場

カペル3日目は1日2試合のスケジュールです。9時前に会場入りし、試合の開始を待ちます。私の相手はインドの女子プレーヤーでした。

Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Nandhini, S (IND, 1833)
Cappelle la Grande 2018 (2)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 Bb4 5. Bg5 h6 6. Bxf6 Qxf6 7. e3 O-O 8. Rc1 dxc4 9. Bxc4 c5 10. dxc5 Nd7



Queen's Gambit Ragozin に対しては、ソリッドな8. Rc1 ラインを採用しています。昨年のXu Deshun とのゲームではすぐに10... Bxc5 と指されましたが、今回はナイトでポーンを取りかえそうとする10... Nd7 でした。中国のNi Hua がこの手を指して黒で勝っていたことを記憶していますが、そのゲームもどういった展開かあまり覚えておらず、ここから手さぐりになります。

11. c6 Ne5!?


この手は昨年のGiri-Carlsen で指された手のようですが、ピース交換を進めることは白にとってありがたいように思えます。

12. Nxe5 Qxe5 13. Qb3 Bxc3+ 14. Rxc3 bxc6 15. O-O+/=



これで黒マスビショップも取り戻し、単に白がポーンストラクチャーの良い局面になりました。c6 をメインのターゲットにしつつ、ゆっくりとポジションを改善していきます。

15... Rb8 16. Qc2 Rd8 17. b3 Bd7 18. Be2 Rdc8 19. Rc1 Be8 20. Rc5 Qd6 21. Rd1


この手は正直、必要なかったと後で思いました。本譜の作戦通り、c6 を狙いつつ、aファイルへのヘビーピースの切り替えのタイミングを伺うのが素直でしょう。

21... Qc7 22. g3 Rd8 23. Rc1 Rd6 24. Bf3 Rb6 25. Qc4!?



2段目を弱めても、クイーンの位置を切り替えて勝負を仕掛けます。狙いはaファイルにピースを振り、a7 を落とすことです。

25... Qd7 26. Qa4 Kh7 27. Ra5 Rb7 28. Ra6 Rc7 29. Rc5!


これで勝ったと思いました。黒はc6 とa7 を同時に守り続けることはできません。

29... g6 30. Rca5 c5 31. Rxd6 1-0



最後はピースアップが決まって勝利。全体を通して上手く指せたと思います。


お昼は会場向かいのパン屋さんへ。なぜカペルのような田舎の村にあるのか不思議なほど、オシャレな内装と商品のパン屋でした。パリに出店してもおかしくありません。


私はチキンのサンドイッチとシュークリームをゲット。シュークリームは大小が重ねられ、タワーのようになっています。

この3R は、日本勢5人で2勝3敗と初めて負け越しのラウンドとなりました。阿部くんはデンマークのWIM との対戦で、相手のブランダーでピースアップになったものの、直後に時間が落ちてしまったのが残念でした。

昼食後、スーパーマーケットに行くなどして時間を潰し、4R のペアリング発表を待ちます。15時過ぎにペアリングが公開され、私の相手はベルギーの若者だと判明しました。上位ボードに上がり、GM ノームのチャンスを残すのであれば、黒でも勝たなければいけない相手です。

Real, T (BEL, 2218) - Kojima, S (IM, JPN, 2402)
Cappelle la Grande 2018 (4)

1. d4 d5 2. Bf4 c5 3. e3 Nc6 4. c3 Nf6 5. Nd2 Bf5 6. Ngf3 e6 7. Nh4 Bg4 8. f3?!



London System で始まったゲームは、Slav e3 ラインのように白が早々に黒のビショップを消しにきました。g6 で交換をしても構わないのですが、少しひねって一度クイーンに当てることにします。これに対してはすぐに8. Qb3 と避けるのが良いと思っていました。f2-f3 をすると、h4 のナイトがターゲットになることが気になります。

8... Bh5 9. Qb3 Nd7! 10. g4 Na5?!


Nf6-Nd7 からh4 のナイトを当てるのはよくある手筋です。これに対して白はかなり時間を使い、g2-g4 というアイディアを出してきました。私はb7 を守ってからナイトを取るのが良いと判断しましたが、これがやや不正確。思いつきづらい10... g5! が正解で、あえて取れるナイトをすぐ取らず、ビショップもターゲットにすることで黒が優勢です。

11. Qa4 Qxh4+ 12. Bg3 Qg5 13. Qxa5!



私はまさかe3 を捨てることはありえないだろうと思っており、ここでこちらが長考に入ります。13... Qxe3+? 14. Kd1! Bg6 15. Bb5! と進めば、黒はクイーンが一人離れすぎており、キングを守るためにはa7,b7 などを落とさざるをえません。これはまずいと思って冷静に読み、おとなしくビショップを退くことを決めます。

13... Bg6 14. Bb5 Qd8! 15. Bc7 Qc8


クイーンを自陣に戻し、キングをディフェンスすれば当面の危機は去ったと考えられそうです。

16. dxc5 Bxc5 17. Bxd7+ Kxd7 18. Qb5+ Kxc7 19. Qxc5+ Kd7



少し変わった応酬でしたが、無事にピースを捌きました。ここでのキングの逃げ場所は19... Kb8 もあったと思いますが、ルークとの位置関係から不自然だと考え、センターのマスを選びました。e3 を捨てる場面もそうですが、私は一見して不自然な手を優先的に排除してしまうので、それが時に弱点になっていると思います。

20. Qd4 f6 21. g5


このアイディアも厄介ですが、21. c4 とされても黒は少し対応を考えなくてはいけません。ピンにされたd5 を守るためには、クイーンを上げるか、思い切ってe6-e5 から捨てるか、黒は悩ましいところです。

21... Ke7 22. Qb4+?! Kf7 23. h4 h5 24. gxf6 gxf6 25. O-O-O b6!?



不必要なチェックをしてくれたおかげで、少し楽になったと感じました。チェックを挟まずに、h2-h4-h5-h6 のアイディアが良かったでしょう。それでも黒はg6 のビショップが浮いてしまっているため、将来的なgファイルからの攻撃を気を付けなければいけません。そこで私はb7-b6 から、クイーンをc5 でぶつけるアイディア、Qc8-Qa6 からa2 とd3 をにらむアイディアで対抗します。

26. Qd6 Rd8 27. Qg3 Qc5


a6 に出たい気持ちはありますが、それではc7 のマスへの侵入を許してしまうことになります。ここはe3 を当てつつ、cファイルのダブルヘビーピースでチャンスを待ちます。

28. f4 Rac8 29. Rhg1 Rg8 30. Qf3 Qb4 31. e4?



相手は深刻な時間切迫だったため、ここでミスをします。この手を許さないためのQc5-Qb4 で、e4 のポーンはタダで取ることができます。もちろん、Rc8-Rxc3 からのメイトを防がないといけませんが、それには31. Rxg6! とエクスチェンジを捨てるのが最善だったでしょう。

30... dxe4 32. Qe3 Qa4 33. Nb3 Qxa2?


しかし、私も残り時間が少なくなってきて、この大事な局面で正確性を欠くプレーをしてしまいます。d7 へのルークの侵入を防ぐため、クイーンはひとまずa4 に残したままでポジションを改善するべきでした。33... Bf5! 34. Rd4 Rxg1+ 35. Qxg1 Qc6!-/+ (35... Qxa2?? 35. Rd7+ Ke8 36. Qg7+- なぜかクイーンでd7 を守り続けるアイディアを思いつかず、Bg6-Bf5 はダメだと思ってしまいました。)

34. f5 exf5 35. Qd4?



ここで白が簡単な筋を見つけられず、黒勝ちになったのは完全にラッキーでした。35. Rd7+! Ke8 36. Qd4! Qxb3 37. Qd6! Rxc3+ 38. bxc3 Qxc3+ 39. Kd1 Qa1+ 40. Ke2 Qa2+ 41. Kf1 Qc4+ 42. Ke1 Qc1+= こうして白がメイトスレットを作れば、黒はルークを捨ててパペチュアルチェックをいれざるをえないでしょう。

35... Rgd8! 36. Qb4 Qa6!-+


これでキングを守り切り、黒の駒得は勝ちに十分なものとなります。

37. Rd4 Rxd4 38. Nxd4



38. Qxd4 Qd3!-+ でもダメですが、本譜はルークが取れるため、黒にとって楽な展開です。

38... Qa1+ 39. Kc2 Qxg1 40. Qd6 Re8


これで時間が増え、間違える要因は一切なくなりました。エクスチェンジを返しても、パペチュアルチェックのチャンスさえ与えなければ黒勝ちです。

41. Qd5+ Kg7 42. Qd7+ Kh6 43. Nxf5+ Bxf5 44. Qxe8 Qh2+ 45. Kb3 Qxh4 0-1



h4 のポーンを消せば、キングが白サイドに上がることができ、パペチュアルチェックもなくなります。この大事な2連戦で連勝できたことはとても大きいですね! この日は実は結婚記念日で、連勝できたのも日本から応援してくれている妻のおかげだと思っています。またこの1年間、私たちを見守ってくださった皆さんにも、この場をお借りしてお礼申し上げます。

3/3 16:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Dumas, V (FRA, 2070) 1-0
3/4 14:00 R2 Cieza, A (FM, PER, 2181) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 1/2-1/2
3/5 09:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Nadhini, S(IND, 1833) 1-0
3/5 16:00 R4 Real, T (BEL, 2218) - Kojima, S (IM, JPN, 2402) 0-1
3/6 14:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2402) - Shyam, S (GM, IND, 2525)
3/7 14:00 R6
3/8 14:00 R7
3/9 14:00 R8
3/10 10:00 R9

Cappelle la Grande R5
Live Games

さぁこの5R からが私の正念場です。今日の相手はインドのGM Shyam を引きました。一昨年のマン島のゲームですが、激闘の末に勝ち切れなかった悔しい思い出がありますので、今度はチャンスがあれば逃さないように慎重にプレーしたいと思います。


ロシア、そしてヨーロッパU12 の世界ランキング1位、Makoveev の集中ぶりは大人顔負けです。4R ではポンランドのIM Kryzanowski に敗れてしまいましたが、それでもこの大会、後半戦も注目されそうなプレーヤーです。


日本勢では阿部くんがこの3日目に大きなポイントを挙げました。3R に続いてデンマークの女子タイトルホルダーと対戦し、逆転勝ちを収めました。参加人数は過去と違いますが、それでもカペルで350上から白星を挙げるのは、なかなかできることではありません。


ダンケルクに戻ってきたのは夜の10時近くです。夜の時間帯はコミュニティセンターが綺麗にライトアップされています。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

世界ラインキングとポーンランドで笑いました。

Shinya_Kojima さんのコメント...

ご指摘ありがとうございます(笑) 直しておきました。

ピカチュウ さんのコメント...

ポンランドって麻雀が盛んなのでしょうか・・・▽o・~・o▽汗

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