2018/03/29

Grandmaster Preparation Calculation


今夜は、最近読み進めている本の紹介です。Grandmaster Preparation シリーズは、デンマークのGM Jacob Aagaard によって書かれており、彼の公式HP では、Calculation、Strategic Play、Positional Play、Attack and Defence、Endgame Play の5冊が紹介されています。2月に羽生さんとお会いした際、この中の1冊であるCalculation をいただきました。中身は基本的にタクティクスの問題集なのですが、そのタイトル通り、かなり読まなければ正しいラインを見つけられないものが多くなっています。例えば今日解いた中で面白かったのは、以下のポジションです。


Najer, E (GM, RUS, 2681) - Lysyj, I (GM, RUS, 2612)
62nd Russian Championship Higher League 2009(2)
White to move

14. Nb5!


実際のゲームでは14. c4 と指し、それでも白がゆっくりとしたゲーム展開で勝利を収めましたが、こちらの手はさらに強力です。すぐにクイーンを交換する変化は白が良さそうなので、黒はクイーンをかわしますが...

14... Qb6 15. Qxd8+! Bxd8 16. Be3 Qa5 17. b4 Qxb5 18. Rxd8+ Qe8 19. Rxe8+ Nxe8 20. Rd1+/-



まだ駒数こそイコールですが、白はダブルビショップとdファイルのコントロールで大きなアドバンテージを握ります。クイーンを捨てても必ず取りかえせるのが、この変化のポイントですね。しかし、何かあると言われれば気付きそうですが、Najer もベストムーブを逃しているので、なかなか実戦で指せるかというと難しいでしょう。他にもAronian が逃したタクティクスも紹介されており、そちらはさらに難しいかもしれません。


Nakamura, H (GM, USA, 2753) - Aronian, L (GM, ARM, 2807)
Grand Slam Final 4th 2011(8)
Black to move

こちらは解答を書かないでおきます。是非チャレンジしてみてください。ちなみに私はさっぱり分かりませんでした(笑)

私は自分があまり正確に読まないタイプ(大局観とポジショナルプレー中心で、正確に読まずとも指せる局面を目指すタイプ)だと思っていますが、昨年のマン島でのNihal Sarin 戦のように、正確な読みが必要な局面でメイトを見逃して負けということもあります。自身の弱点を克服するために、こうした細かな計算が必要な問題に取り組むのも必要だと思い、この本を読み進めています。しばらくは投げ出さずに続けていきたいですね。


7 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

質問です。
なぜ、世界のGMたちはitalianでなく、ruy lopez を指すのだと思いますか?
また、どちらの方が、教育的価値が高いと思いますか?

wiano さんのコメント...

白が先にNf4と捌けると黒のh6ナイトがピンされてしまうし、一気に黒が面白くない気がします。
1...g5 2.f4?! は直ぐにははっきりしない?、1...Bh4 2.Nf4(2.Bh2 g5!) Bxg3 3.fxg3 Qf6/g5 でh-fileをケアするか。1...Ng8は悠長かもしれません(△2...Nc4 3.Bxc4 Bxg4)。
Nが邪魔、白の白マスはかなりタイト…。他には1...Nxg4 2.Bxg4 f5 3.Be2 f4 4.Bxf4 Rxh3 5.Rxh3 Bxh3。黒窮屈ではなくなるけれどポーンの形で白よさそう。

やはり戻って1...g5 2.f4 f5?!として徹底的に白のNf4を消し、黒からNxg4を狙う、でどうでしょうか。約30分消費… ただ確信は無し。

wiano さんのコメント...

いや、1...g5 2.f4 f5 3.Nxg5 でダメですね。。f4気にしすぎました。投稿した瞬間に気づいた(指した瞬間に気づくやつ)
実戦なら1...g5まで指して気づいて1...g5 2.f4 Nxg4 3.Bxg4 f5 4.Bh5+ Kd7 (5.Ke2? g4)
と方向転換すると思います。

wiano さんのコメント...

…全然ダメでした。負ける。1...Bh4 2.Nf4 Bxg3 3.fxg3 Kd7 何もタクティクスが無いので間違ってると思いますが。。難しいです。

wiano さんのコメント...

2時間考えて、やっと分かりました…。4連投恥ずかしい。。一応1手目は伏せて、2手目に1つだけ動く手ですね。これで白のh-fileが痺れて黒はっきり良しですね。

Shinya_Kojima さんのコメント...

コメントありがとうございます。近年はRuy Lopez の研究が進み、Marshall、Berlin、Breyer などは、黒が互角に戦えるチャンスが増えてきているように思えます。その影響から、トップのGM たちは以前よりもItalian を指すゲームが増えてきています。Ruy Lopez の深い研究を外し、形成互角に近くとも地力を発揮する勝負にしたいのでしょう。

チェスを始めたばかりであるならば、Italian からf7 への早い攻撃のチャンスや、f5 へのナイトのマヌーバリングを学び、慣れてきたらRuy Lopez からセンターの支配の重要性や、盤全体でのプレーを学ぶべきかと思います。

どちらが教育的価値が高いということは無く、自分のチェスの段階に応じて、どちらからも別のこと(共通することもあります) を学べば良いでしょう。

Shinya_Kojima さんのコメント...

2手目の静かな手が思いつきづらいので、1手目をためらってしまいますよね。多分当たっていると思います。

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