昨日は中部快速オープンに参加するため、5月以来となる名古屋遠征でした。9月からヨーロッパに渡り、秋の名古屋オープンに参加できない私にとって、年内最後の名古屋でのイベントです。2000オーバーが半分以上という驚きのハイレベルなメンツとなり、優勝を目指してアツい戦いが始まりました。
トーナメント序盤、私は藤沢さん、入江さん、野口さんに3連勝で前半を折り返します。同じく3連勝は馬場さん、Alexのみで、リスト1のTuさんはAlex に負け、リスト5の松尾さんは一昨年のジュニアチャンピオン、田中泰良くんにドローを落としています。泰良くんはカナダでプレーしている中学生で、2.5/3 でぴったり3連勝組の後をつけ、後半戦も上位陣を破って今大会の台風の目となりました。
Baba, M (FM, JPN, 2399) - Kojima, S (IM, JPN, 2497)
Chubu Rapid Open 2018 (4)
Position After 33... a5
4R との馬場さんとの対戦では、このようなポジションになりました。黒はポーンを捨ててみたものの、代償はイマイチで少し苦しい展開が続きました。しかし、白マスでのプレッシャーを保ってここまで来て、ようやく白のミスが出ます。
34. f3? Qxd3 35. Qb8 Kg8 36. Qxb7 b4
白はピースを取りかえしましたが、その代わりに黒クイーンに潜り込まれ、反撃のチャンスを許しています。34. Bc5! から黒マスビショップを交換していれば、ゆっくり指して白が優勢だったでしょう。
37. Qc8 bxc3!?
ここは時間がほぼない中、パスポーンを作って勝負に行くことにします。しかし、Bd4-Bc5 の手が見えていながら、それに対する正しいディフェンスを探す余裕はなかったのであれば、37... Qd2 からパペチュアルチェックを狙うのが安全策でした。
38. Bc5 Kh7?
これが決定的な間違いで、白はピースアップを保ちながらパスポーンをブロックできます。代わりに38... c2! 39. Qxf8+ (39. Bxf8 ではクイーンに1段目に潜り込まれてからプロモーションされ、白はどうしようもありません。) 39... Kh7 (こうしてチェックされてから初めてキングが避ければ、本譜と違って白クイーンをcファイルから外していますし、なによりポーンが7段目まで前進しています。) 40. Ba3 Qd4+ 41. Kf1 Qa1+ 42. Ke2 Qd1+ 43. Ke3 c1=Q+ 44. Bxc1 Qxc1+ 45. Kf2 Qb2+ これであれば、問題なくドローです。
39. Bxf8 Qd4+ 40. Kh2 Qxh4+ 41. Qh3 Qd8 42. Ba3 g6 43. Bc1 1-0
以下、c1 を抑えられて負けです。ビショップを捨ててパスポーンを作ったのに、それをすぐに生かさなかったのは悔やまれるプレーでした。
これで馬場さんは4連勝。続くAlex との4連勝対決も制して、5R終了時点で優勝を決めました。最終戦もTuさんとドローになり、1P のリードをつけての優勝はさすがです! 私は5R で東芝さんにドローになった後、最後は鈴木さんとの対戦になりました。
Suzuki, M (JPN, 2062) - Kojima, S (IM, JPN, 2497)
Chubu Rapid Open 2018 (6)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Nbd2 Nd7 6. Nb3 Ne7 7. Be3 Bg6 8. Bd3 Nf5 9. Qd2 Be7 10. O-O a5 11. a4 Nxe3 12. Qxe3 O-O 13. Ne1 b6 14. f4 Bxd3 15. Qxd3 c5 16. Qh3 f5
Chubu Rapid Open 2018 (6)
最終戦はここからにしましょう。かつて馬場さんとの全日本選手権のゲームでも、同じようなポーンストラクチャーにしたことがありました。f4-f5 の押し込みを防いでおき、互いにどちらがgポーンを伸ばしてキングサイドを開くかという展開になります。ただし、白は2マイナーピースをすでに交換しているため、アタックの力は不十分で、黒はすでに満足なポジションだと判断できると思います。
17. Nf3 Rc8 18. Rfd1 Kh8 19. Kf2?!
キングの避ける方向として、この手には疑問が残ります。白からg2-g4 とする気配がはっきりとないのであれば、黒はゆっくりとg7-g5 のブレイクを準備できるでしょう。Kg1-Kh1 からルークをh1に戻し、どこかでg2-g4 を仕掛けるべきなのではないかと思います。
19... c4 20. Nc1 Qe8 21. Ne2 Rg8 22. Ng5 Qg6??
しかし、ここで事件が起きました。私たちは互いに何事もなくゲームを進めましたが、後になってこれはディフェンスが成立しておらず、23. Qxh7+! Qxh7 24. Nf7# があることに気付きました。教科書的なクイーン捨てからのナイトの窒息メイトです。黒が正しくh7 とe6 を守るためには、22... Nf8 と指すべきでした。
23. Nf3? h6 24. Ng3 Rcf8 25. Ng1 Qh7
最初思いついた際はルークを最終的にg5 に置けば良いと思っていましたが、それよりもg5 にポーンが残るほうが良いと思いなおし、ゆっくりとg7-g5 の準備を進めます。クイーンもh7 に下げてしまえば、h6 を守りながらgポーンの邪魔からどくことができます。
26. Re1 Rf7 27. Re3 g5!
念願のブレイクをベストのタイミングで実行し、完全に黒がキングサイドでイチシアチブを握りました。後はgファイルを開いた際に理想的なアタックができるようにさらに準備するのみです。
28. N3e2 Nf8 29. g3 Ng6 30. Re1 Rfg7 31. Qf1 gxf4 32. gxf4 Bh4+ 33. Ng3 Nxf4 34. Rf3 Nh5 35. N1e2 f4 36. Nxf4 Nxf4 37. Rxf4 Rxg3 38. Rxh4 Qf5+ 39. Rf4 Qxf4+ 40. Ke2 Rg2+ 0-1
勉強はしていても、実践したことのないアイディアをラピッドで使うのは難しいと実感したゲームでした。これでなんとか4.5/6 となり、去年最終戦負けで逃した入賞に滑り込んだのでした。
1st Place Baba Masahiro 5.5/6
2nd Place Tran Thanh Tu 4.5/6
3rd Place Averbukh Alex 4.5/6
4th Place Kojima Shinya 4.5/6
5th Place Tanaka Tyler 4.5/6
Chubu Rapid Open 2018 Final Standings
2nd Place Tran Thanh Tu 4.5/6
3rd Place Averbukh Alex 4.5/6
4th Place Kojima Shinya 4.5/6
5th Place Tanaka Tyler 4.5/6
Chubu Rapid Open 2018 Final Standings
終わってみればサマーオープン同様、順番こそ入れ替わったものの、リストトップ4人が4位まで入賞... なのですが、そこに泰良くんが入ったのがすごいです。泰良くんは国内のレイティング1500台でありながら、2000台に3勝1敗1ドローで今大会を乗り切りました。FIDEレイティングが2000台であることを考慮しても、素晴らしい戦績だったと思います。その他、A,B の入賞者、そして参加者、運営に皆さん、この日1日お疲れ様でした。来年以降、また名古屋の大会には顔を出したいと思いますので、その際はよろしくお願い致します。
私の試合での幻のメイトも教科書的できれいでしたが、こちらもなかなか。6Rでのとある最終局面です。
大会終了後は松尾さんと2人で反省会と称し、オリンピアードに向けての話や過去の海外大会の話などをしていました。大阪に帰る松尾さんを見送った後は、1人で指定の新幹線の時間までお茶をします。名古屋駅構内のこちらのカフェは、ぴよりんというひよこ型プリンが名物なのですが、週末は夕方には売り切れるそうで、なかなか実物にはお目にかかることができません。代わりのグレープフルーツのゼリーでほっと一息ついて、東京への帰路についたのでした。