2020/02/27

Cappelle la Grande 2020 Day5


カペル5日目は初のGM連戦でした。午前9時からのゲームは、アゼルバイジャンの若いGM Sadikhov が相手です。4R 同様、King's Indian系になることを予想して試合に臨みました。

Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Sadikhov, U (GM, AZE, 2496)
Cappelle la Grande 2020 (6)

1. Nf3 g6 2. d4 Bg7 3. c4 d6 4. g3 Nd7 5. Bg2 e5 6. O-O Ne7 7. Nc3 O-O 8. e4 exd4 9. Nxd4 Nc6 10. Nde2 a5 11. Rb1



オープニングはModern Defence の一変化で、何回か指した経験があります。ポーンストラクチャーはKing's Indian なのですが、黒のナイトの位置が違うため、早いf7-f5 を気を付けておく必要があります。

11... Nc5 12. Be3 Ne5 13. b3 f5?!


このタイミングは少し早すぎると感じました。単純にf5 を取る手はb1 のルークがターゲットになってしまいますが、白には上手い切り替えしがあります。

14. Bxc5!



一般的にc5 でのビショップナイト交換は、将来的な黒マス、特にd4 のマスを弱めてしまうためにリスクがあります。しかし、ここではそうした黒マスを利用される前に白が展開の早さを活かし、主導権を握れると考えました。

14... dxc5 15. Qxd8 Rxd8 16. Rbd1 Bd7


16... Rf8 と避けてくると思っていたので、この手は少し意外でした。いずれにせよ、白はa8-h1 のダイアゴナルを開いて駒得を狙います。

17. exf5 Bxf5 18. Bxb7 Rxd1 19. Nxd1!?



19. Rxd1 とルークで取りかえすほうが自然にも思えますが、c3 のナイトが黒マスビショップの脅威にさらされ続け、e2 のナイトが動けないことを気にしました。

19... Re8 20. Bd5+ Kh8 21. Ne3 Nd3


21... Bd3 22. Re1 という展開を予想していましたが、これでも白の優位は揺るがないでしょう。本譜では、Nd3-Nb4 の狙いにどう対処するかがポイントです。

22. Bc6!



これがシンプルながら良い手です。黒ルークがeファイルから外れればe2 のナイトが安全になり、8段目から外れればバックランクが弱くなるため、Rf1-Rd1 が指しやすくなります。

22... Rb8 23. Nxf5 gxf5 24. Rd1 Ne5


ナイトは当初の予定通りにb4 にいく手もありそうです。24... Nb4 25. Ba4! Nxa2 26. Rd5+/- それであれば、a2 は見捨てながらもb3 をきっちり守り、別のポーンを取り返すつもりでした。

25. Ba4!?



白マスビショップの位置は難しいところですが、黒の白マスビショップを消すことに成功したため、黒のNe5-Nf3+ はさほど怖くないだろうと判断しました。a4 に退くポイントは、黒からのa5-a4 をストップし、e8 のマスを抑えて続けて黒ルークがeファイルに戻れないようにすることです。

25... Bf6 26. Nf4 Nf3+ 27. Kg2 Nd4 28. Re1!


dファイルをふさがれても、eファイルにルークを切り替えれば白はさらなる駒得を目指せます。

28... Kg7 29. Nd3!



d5 も良さそうなマスですが、c5 のポーンという具体的なターゲットがあるマスはこちらです。この時にBf6-Be7 ができないことも、Rd1-Re1 のポイントです。

29... Nc2 30. Re6 Rd8 31. Nf4!


c5 のポーンを取る手が魅力的に見えますが、黒のRd8-Rd2 からの抵抗を抑え込むには、ポーンを取るよりキングを直接攻めるほうが有効です。Nf4-Nh5 がビショップ取りの狙いになるため、黒はルーク侵入の前に1手入れなければいけません。

31... Kf7 32. Rc6 Rd2 33. Rxc7+ Kf8



7段目でチェックをした際に、8段目にキングを押し込めるのが、31手目からの構想のポイントです。この後どう決めるか少し悩むかと思いましたが、答えはすんなり見つかりました。

34. Ne6+ Kg8 35. Be8!


こうして白マスビショップも攻撃に参加するとメイトのチャンスです。

35... h5 36. Bg6! 1-0



ナイトが黒マス、ビショップが白マスを抑える理想的なフォーメーションでメイトを狙い、白の勝ちです。久々のGM戦勝利でした! そして続く7R は、ペルー代表のGM Martinez Alcantara との対戦になりました。長くなりそうなので、ゲーム終盤のみ解説をします。


Martinez Alcantara, J (GM, AZE, 2617) - Kojima, S (IM, JPN, 2397)
Cappelle la Grande 2020 (7)
Position After 33... Bxh4

一昨年のバツミオリンピアードでペルーと日本は対戦し、その際は松尾さんが彼に勝っています。このゲームも私が黒で満足がポジションまで持っていきましたが、25手付近で時間を使いすぎ、残り時間がかなりぎりぎりの状態が長く続いていました。

34. Rc5 Qd3 35. b5 f3?!


b4-b5 の仕掛けはもちろん予想していましたが、一番正確な受けが分かりませんでした。単純に35... axb5! と取って黒は大丈夫でしたが、読み切れずに怪しい仕掛けをしてしまいます。

36. bxa6 Qxa6 37. Bxf3



37. Bf1 Rg8+ 38. Kh1 Rh8!= これでf2 取りがメイトスレットになるため、すぐにビショップでクイーンを狙う手は黒が大丈夫です。

37... Rg8+ 38. Kh2 38... Bd8??


キングがhファイルに逃げた際、この手でいけるのではないかと時間ぎりぎりまで考えて決めました。しかし、これが負けを決定づける手になってしまいます。38... Qd3! 39. Qb6+ Kb8 40. a6 Bg3+! 41. fxg3 Qd2+= こうしてパペチュアルチェックでドローにするのが正確でした。Qa6-Qd3 と潜り込む手は考えていながらも、ビショップを捨ててパペチュアルチェックになることを読み切る時間が無かったことと、本譜の狙いも十分に通用すると思ったのがミスでした。

39. Be2 f5 40. R1c3!+-



私のRd7-Rh7 のメイトスレットを、彼は時間の増える40手目に冷静に受け、ゲームは終わりました。黒の反撃は無く、ただクイーンが落ちるのみです。

40... Bxa5 41. Bxa6 Bxc3 42. Rxc3 1-0


GM から連続ポイントにならなかったのは残念ですが、2600台にも手ごたえを感じられるゲームができて良かったです。いよいよカペルも残り2試合となりましたので、少しでもポイントが取れるよう頑張ります!

R1 Nilssen, E (WFM, DEN, 2065) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 1/2-1/2
R2 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Cappon, J (FRA, 2087) 1-0
R3 Primel, D (FRA, 1893) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 0-1
R4 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Dimtrov, R (GM, BUL, 2519) 1/2-1/2
R5 Mallevaey, A (FRA, 1714) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 0-1
R6 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Sadikhov, U (GM, AZE, 2496) 1-0
R7 Martinez Alcantara, J (GM, AZE, 2617) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 1-0
R8 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Terryn, E (BEL, 2100)

Cappelle la Grande 2020 R8 Pairings



この日は1ユーロ払って参加するくじ引きで、阿部くんが見事に豪華賞品を引き当てました!

2020/02/26

Cappelle la Grande 2020 Day4


14時から試合スタートだと、どのタイミングでお昼ご飯を食べるか少し悩みます。この日はジャンバール広場の近くにあるパン屋でサンドイッチを購入し、さっと昼食を済ませてからカペル行きのバスに乗り込みます。こうしたシンプルなサンドイッチの美味しさを知ったのも、10年以上前に訪れたこのダンケルクであったことを、懐かしく思い出します。

GM Dimtrov とのゲームをドローで乗り切り、迎えた次の試合が1700台前半というのは驚きでした。3/4 グループで半分に切った際に上のグループの一番下になってしまったので、仕方ないと言えば仕方がないです。それでもカペルで1700台に当たるのは、いつ以来か思い出せないほど久々です。

Mallevaey, A (FRA, 1714) - Kojima, S (IM, JPN, 2397)
Cappelle la Grande 2020 (5)

1. e4 e5 2. Nc3 Nf6 3. a3!?



3. Nf3 Nc6 4. a3!? という手は見たことがあります。狙いはメインのFour Knights を避け、Reversed Scotch Four Knights (黒がd7-d5 と突けば) ですが、単純に白番で黒のオープニングをテンポアップ無しに持つことが良いアイディアだとは思えません。このゲームも自然な展開ですぐに黒が指しやすくなります。

3... Nc6 4. Bb5 Bc5 5. d3 Nd4!


メインのFour Knights でもこうしたビショップをかわすナイトの跳び込みは有効です。

6. Ba4 c6!



白のビショップはどちらに下がるか悩むところですが、a4 ならばb7-b5、c4 ならばd7-d5 のアイディアが生まれるため、cポーンを1つ伸ばしておく手が働きます。さらにはa2-a3 と突いているため、b3 に下がったビショップを取られた際にcポーンで取りかえさなくてはならず、aポーンを突いたことがマイナスになっています。

7. b4 Bb6 8. Bg5 O-O


ここは一瞬dポーンを先に突きそうになりましたが、8... d6?! 9. Nd5! であれば、白はビショップをa4 に退き、g5 でピンにしたことが活きる展開です。

9. Nge2 Nxe2 10. Nxe2?



このミスで黒の駒得が決まり、ゲームはほとんどここで終わりました。10. Qxe2 Bd4! 11. Bd2 (11. Qd2? Bxc3! 12. Qxc3 Nxe4! 13. dxe4 Qxg5-/+) 11... d5 12. O-O Bg4-/+ これでも黒はb2-b4 を突かせたことで弱くなったa1-h8 のダイアゴナルと、早い展開を利用して大きく優勢ですが、白はこちらを選ばなければいけませんでした。

10... Bxf2+! 11. Kxf2 Ng4+ 12. Ke1 Qxg5


典型的なf2 アタックのタクティクスで1ポーンアップし、後は丁寧に指すだけです。

13. Qd2 Qf6 14. Ng3 d5 15. Qe2 d4!?



センターを開く、もしくは保留する選択肢もありそうですが、私はe3 にナイトの跳びこむマスを確保しておくのがシンプルで分かりやすいと考えました。

16. Bb3 Qh4 17. Kd2 Qg5+ 18. Ke1 Nxh2!?


十分に安全だと判断してから2つ目のポーンを取ります。ナイトはどう逃げてもピースが捌けるので、そこからまた反撃を許さないように丁寧に指すだけです。

19. Nf5 Bxf5 20. exf5 Ng4 21. Qe4 Rae8 22. a4 Nf6 23. Qf3 e4 24. dxe4 Nxe4 25. Qe2 Ng3 26. Bxf7+ Kxf7 27. Qxe8+ Rxe8+ 28. Kf2 Qe3# 0-1



危ないポジションもなく、1時間半でゲームは終わりました。前半5試合を終え、3勝2ドロー、うちGMとドローが1つという結果は、2年前のカペルと全く同じです。今日からの後半4戦もポイントを重ねられるよう頑張ります。次はアゼルバイジャンのGM Sadhikov との対戦です!

R1 Nilssen, E (WFM, DEN, 2065) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 1/2-1/2
R2 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Cappon, J (FRA, 2087) 1-0
R3 Primel, D (FRA, 1893) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 0-1
R4 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Dimtrov, R (GM, BUL, 2519) 1/2-1/2
R5 Mallevaey, A (FRA, 1714) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 0-1
R6 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Sadikhov, U (GM, AZE, 2496)

Cappelle la Grande 2020 R6 Pairings



港町ダンケルクに来たからには、海鮮も楽しまなければいけません。こちらはサーモンのタルタルです。

2020/02/25

Cappelle la Grande 2020 Day3


カペル3日目は1日2試合のハードスケジュールです。私は午前中の試合、1800のプレーヤーに勝ち、2.5/3 でようやく中継ボードに上がってきました。一昨年は同じ2.5/3 で、まだ下のプレーヤーとの対戦だったため、今年は上位勢との対戦が早く叶っています。6番ボードで対戦するのはブルガリアのGM Dimtrov です。試合前に調べる時間はあまり取れませんでしたが、King's Indian を中心に様々なFianchetto のオープニングを使うことは把握していました。

Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Dimtrov, R (GM, BUL, 2519)
Cappelle la Grande 2020 (4)

1. Nf3 g6 2. d4 Nf6 3. c4 Bg7 4. g3 d6 5. Bg2 Bf5!?



c7-c6Nb8-Nc6 との組み合わせでは経験がありましたが、このタイミングでのビショップの展開は初めて見ます。Nf6-Ne4 の跳び込みから、ナイト交換を許すかどうかが最初のポイントです。

6. Nc3 Ne4 7. Nxe4


7. Nd5!? とかわし、Nd5-Ne3 からビショップを攻撃するアイディアもありました。e4 でのナイト交換は悪くありませんが、黒はc7-c6 を保留していたために、c7-c5 を一気につくことができます。

7... Bxe4 8. O-O O-O 9. Be3 c5 10. Qd2 Qb6 11. Rad1 Nc6



d4 への攻防を中心にお互いピースの位置を決めていきます。ポーンを交換して開く展開は、黒ルークがdファイルに回ることになり、d4 のマスを抑えられる危険があるため、なるべくやりたくありません。ここは閉じてセンターを勝負です。

12. d5 Nb4 13. a3 Nc2 14. Bh6?!


b2 がすでに問題になっていることは覚悟していましたが、ビショップ交換から黒キング周りを薄くすればチャンスは有ると思っていました。実際には、14. Bg5!? としてe7 をすぐに攻撃するほうが良かったようです。

14... Qxb2?



しかし、相手にもミスが出てゲームは面白くなってきます。b2 取りにはRd1-Rb1 からb7 への反撃で勝負するつもりでしたが、さらに白には良い変化があります。14... Bxh6! 15. Qxh6 Bxf3! 次のNf3-Ng5 を止めるためには必要な手ですが、これで白から反撃のチャンスが減り、黒はポーンアップ+グッドナイトで十分に良いでしょう。

15. Rb1 Qxa3


15... Bxh6 16. Rxb2! Bxd2 17. Nxd2 Bxg2 18. Kxg2+/- これは白が良くなると読んでいました。d2 に退いたナイトがぴったりとc4 を守っているため、Nc2-Nxa3 も怖くなく、黒のナイトはd4-f5 と逃げていくほかありません。その間に白はb7 を取りかえせば優勢でしょう。

16. Bxg7 Kxg7 17. Rxb7?!



ここはポーンを取りかえしたうえ、7段目の利きで勝負するのが自然だと思いました。しかし、ここで大きなチャンスを逃しています。17. Ne1! なんとc2 のナイトを取った際にa3 のクイーンに当たるため、これが有効なディスカバードアタックになっています。 17... Ne3 18. Bxe4 Nxf1 19. Kxf1+/= 黒はせめて2ピースvs.ルークにするしかありませんが、これは2ポーン無くとも白が指しやすいでしょう。

17... Nb4!?


単にe7 をどちらかのルークで守ってくると思っていたので、少し予定外の手が来ました。いずれにせよ、私の作戦は変わりません。

18. Nh4!? Bxg2 19. Kxg2 Rae8?!



e7 を取るよりも、ビショップナイト交換を避けてナイトをh4 に跳ばすのが私の頭にあったアイディアで、Nh4-Nf5 と併せてじっくりとe7 を狙いにいきます。しかし、本譜とは逆のルークで守られた際は意外と難しく、19... Rfe8 20. Qg5 Kf8! という予想外の手がありました。h6 のマスにクイーンが入ってチェックすると、Nh4-Nf5 が狙いにならず、思うように黒マスを攻められません。

20. Rxe7!


20. Qg5 もありますが、難解な変化にするよりもここはパペチュアルチェックで十分と判断し、すぐにポーンを取ります。

20... h6!?



相手がドローを拒否するならばこの手だろうと思っていました。20... Rxe7 21. Nf5+ gxf5 (21... Kf6 22. h4!) 22. Qg5+ Kh8 23. Qf6+ Kg8 24. Qg5+ ならばパペチュアルチェックでゲームは終わります。

21. Rd7 Rd8 22. Rb7 Rb8 23. Rd7 Rfd8 24. Rc7


24. Rxf7+ Kxf7 25. Qf4+ もせいぜいパペチュアルチェックしかないため、ルークを捨てるリスクを冒す必要はありません。また黒としても、白のルークを7段目に残すと次のQd2-Qf4 が危険なため、ルーク交換を持ち掛け続けるしかありません。

24... Rbc8 25. Rb7



白から勝負にいくとすればルーク交換で、そのタイミングはこのcファイルでぶつかったときでしょう。ただ、25. Rxc8 Rxc8 26. Qf4 Rd8 と進んでも白が有利だとは思えず、ここはドローで満足することにします。

25... Rb8 26. Rc7 Rbc8 27. Rb7 1/2-1/2


序盤、少し失敗したと思っていたので、この展開であれば満足です。今日はずいぶん下との対戦になったので、しっかり勝って3つ勝ち越し状態でまた上との対戦を迎えたいところです。もちろん油断は禁物です!

R1 Nilssen, E (WFM, DEN, 2065) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 1/2-1/2
R2 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Cappon, J (FRA, 2087) 1-0
R3 Primel, D (FRA, 1893) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 0-1
R4 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Dimtrov, R (GM, BUL, 2519) 1/2-1/2
R5 Mallevaey, A (FRA, 1714) - Kojima, S (IM, JPN, 2397)

Cappelle la Grande 2020 R5 Pairings


検討をするスペースの横にはチェスショップが今年も出ています。

2020/02/24

Cappelle la Grande 2020 Day2


カペルの2戦目はフランスのベテランプレーヤーとの対戦です。レイティングは落としていますが、昨年もFrance Top12 に参加し、フランスを代表するGM Fressinet と対戦しています。奇しくもそのゲームと同じオープニングでゲームはスタートです。

Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Coppen, J (FRA, 2087)
Cappelle la Grande 2020 (2)

1. Nf3 f5 2. d3 Nc6 3. d4!?



d3-d4 の突き直しは調べておきながらも指すのは初めてです。白は1テンポ損をしても、将来的なd4-d5 を狙い、黒の早めに出たc6 のナイトを攻めにいきます。

3... e6 4. g3 Nf6 5. Bg2 g6!?


Dutch Defence において、e7-e6g7-g6 をミックスする形は、Christmas Tree Variation 呼ばれるものですが、Nb8-Nc6 を早めに決めている中でこのアイディアが良いかは判断の難しいところです。5... Be7 6. O-O O-O 7. c4 d6 8. d5 Ne5 9. Nd4 Nxc4 10. dxe6 g6 11. Bh6 Re8 12. Bc6!+/- が私の準備でした。

6. O-O Bg7 7. c4 O-O 8. Nc3 d6 9. b3!



メインのLeningrad Dutch に比べ、黒がe7-e6 を突いている不思議な状況ですが、黒がe6-e5 を狙うのであれば、ポーンが事前に1手進んでいることはプラスになりません。白は黒にe6-e5 を仕掛けられることを想定し、Bc1-Ba3 の準備をしておきます。

9... Ne7


9... e5 10. dxe5 dxe5 11. Ba3+/= と進む形は、白のビショップがよく利いており、白が指しやすいという展開のゲームを見たことがありました。本譜はd6-d5 を突き直すStonewall Dutch を目指すアイディアですが、一般的な形と比べて黒マスビショップとナイトの位置が不自然です。

10. Bb2 h6 11. Qc2 d5 12. e3 c6 13. Ne2 g5 14. Ne5



e5 のアウトポストを使うのがStonewall Dutch における白のポピュラーな作戦です。14. h4 も考えましたが、g3 を弱めてもhファイルを開くことに意味があるのかわからず、このアイディアは切り捨てることにします。

14... Nd7 15. f4!


e4 のマスを弱めても、黒がそこを利用するのには手数をかけてナイトを戻すしかありません。e5 でのナイト交換にはdポーンで取りかえし、Ne2-Nd4 が強力なアイディアです。

15... Rf6 16. Rac1 g4 17. b4



黒がhファイルを開くにはまだまだ手数がかかるため、白はスタンダードにクイーンサイドを食い破ることにします。

17... a6 18. a4 h5 19. b5 Rf8 20. bxc6 bxc6 21. Ba3!


ここでビショップの利きを切り替えれば勝負ありです。黒はc6 のポーンとg6 のマスの両方が弱く、e5 のナイトはどちらも狙える好位置です。

21... Nxe5 22. dxe5 Bb7 23. Nd4 Qd7 24. cxd5 Nxd5 25. Bxf8 Bxf8 26. Qb3 1-0



この試合はさくっと勝つことができ、今大会、そして今年の初勝利です。初戦でポイントを落としてしまったのは残念ですが、一昨年も最初の2試合は1勝1ドローでのスタートでしたので、ここからまた頑張りたいと思います。

R1 Nilssen, E (WFM, DEN, 2065) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 1/2-1/2
R2 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Cappon, J (FRA, 2087) 1-0
R3 Primel, D (FRA, 1893) - Kojima, S (IM, JPN, 2397)

この日は日本勢全員が勝利! 特に篠田くんはウクライナのIM を破る快挙で、各上からポイントを取るのが難しいとされるカペルで、上に連勝スタートになっています。さらに明日はルクセンブルク不動のNo.1 Weidenkeller と9番ボードでの対戦です。昨日は中継機械の不備か、ゲームのライブ配信が無かったようですが、今日は無事に行われると良いですね。私も1日2試合のハードな今日、最初は1800相手にしっかり勝って星を積み重ねたいところです。

Cappelle la Grande 2020 R3 Pairings


この週末、土日はカーニバルが開催されており、町中で仮装した人々を見かけます。


勝利の晩餐です! 日本勢が揃って勝つラウンドは、この後も訪れるでしょうか。

2020/02/23

Cappelle la Grande 2020 Day1


懐かしのカペルへと帰ってきました。いよいよこの日から試合が始まります。初戦はデンマークの女子代表、WFM Nilssen と発表されました。まだレイティングはさほど高くないですが、昨年はWorld Rapid やWorld Blitz で、強豪たちとも試合経験を積んでいます。

Nilssen, E (WFM, DEN, 2065) - Kojima, S (IM, JPN, 2397)
Cappelle la Grande 2020 (1)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 e6 5. cxd5 exd5 6. Bg5 Be7 7. Qc2 g6



FIDE公式戦で久々のSemi-Slav にはExchange Variation がきました。Nb8-Nd7 を保留しているこの形では、黒はBc8-Bf5 と展開できれば十分と考えられています。

8. Bxf6!? Bxf6 9. e4 O-O!


ここは取るのがメインセオリーであることは知っていましたが、勝ちを目指すのであれば無視するほうが良いのではないかとゲーム中に考えました。試合後に相手からも取る手を指摘されましたが、9... dxe4 10. Qxe4+ Kf8 11. Bc4 Kg7 12. O-O Re8 13. Qf4 Be6 14. Bxe6 Rxe6 15. Rfe1 Qd6 16. Qxd6 Rxd6 17. Ne4 Rd8 18. Nxf6 Kxf6= これはほぼドローでしょう。

10. e5 Bg7 11. Bd3 c5?!



どちらにキャスリングするか、選択肢を保留している白に対抗するためには、すぐにセンターへの反撃が必要だと考えましたが、これが早計でした。11... Bg4! がシンプルながら強力で、ビショップナイト交換を見せて形を崩すアイディアで黒は十分に戦えます。

12. dxc5 Nd7 13. O-O Nxc5


13... Nxe5 14. Nxe5 Bxe5 15. Rfe1+/= ではつまらないと思いましたし、それなら12... Nc6 と指しています。

14. Rad1 Be6



ここはd5 をゆっくり支えて勝負するつもりでしたが、14... Bg4!? 15. Be2 Bxf3 16. Bxf3 d4 とする選択肢もありました。このdポーンは孤立で進みすぎ、なによりピンにされていて困っているように見えますが、e5 のポーンをビショップで取れれば安全になりますし、Nc5-Ne6 のアイディアもあります。早めに異色ビショップにし、dポーンをパスポーンとして勝負する方法もあったようです。

15. b4


15. Bc4 dxc4 16. Rxd8 Rfxd8 ならばクイーンを捨ててもダブルビショップで代償ありというのが私の読みです。本譜でも黒はナイトビショップ交換をするのではなく、ナイトを退いてe5 を攻撃して十分なポジションでしょう。

15... Nd7 16. Rfe1 Rc8 17. Qd2 Bg4?!



ここはしっかりと読んで勝負できる手を指したつもりでしたが、結論としてはチャンスを手放してしまう手でした。黒はもっとじっくりとe5 を攻撃すべきです。

18. Be2 Bxf3 19. Bxf3 Nxe5 20. Nxd5!


これが完全に予想外の手で、私は自分のミスを認めざるをえなくなります。20. Bxd5? Nf3+! 21. gxf3 (21. Bxf3 Qxd2 22. Rxd2 Bxc3-+) 21... Bxc3 22. Qe3 Bxe1 23. Bxf7+ Rxf7 24. Rxd8+ Rxd8 25. Qxe1 ならば2ルークvs.クイーンで勝負できます。

20... Re8



20... Nxf3+ 21. gxf3 Re8 (21... Kh8 22. Qf4) 22. Ne7+ Qxe7 23. Rxe7 Rxe7 ならばドローにはできるでしょうが、黒が積極的にこの変化に跳びこむ理由はありません。白のポーンストラクチャーを乱しても、Nd5-Ne7 の跳び込みスレットや、d5 のナイト自体が強く残ってしまうことを過小評価していました。本譜ではビショップを取らず、ルークを活用して作戦を練り直します。

21. Be2 Nc6 22. Bb5 Re5


22... Re6!? も面白い手ですが、ポーンストラクチャーが乱された後のエンドゲームに自信が無く、安全策をとることにします。

23. Rxe5 Bxe5 24. Qe2 Qd6 25. g3 Kg7 26. Bxc6 Rxc6 27. Nf4



ビショップは貰いましたが、相変わらず白のナイトは強力で、ポーンストラクチャーも対称形であれば黒が勝つチャンスは限りなく少ないでしょう。

27... Qb8 28. Nd5 Re6 29. Qc4 Qd6 30. Ne3 Qe7 31. Ng4 h5?!


ここでビショップを返すのは完全に勝ちにいくのを諦めるようなものです。唯一31... Bb2! だけがビショップを手元に残して置ける手で、これであればa1-h8 のダイアゴナルをカバーしたまま、Re6-Re2Re6-Re4 で戦えそうです。

32. Nxe5 Rxe5 33. Qd4 Kh7 34. h4 a6 35. a3 Re2 36. Qd5 Qf6 37. Rf1



これでルークをパッシブなマスに押し戻し、a3 を狙うチャンがあるかと思いましたが、すぐにカバーされてしまいました。

37... b5 38. Qd3 Ra2 39. Qb3 Rb2 40. Qe3 Rc2 41. Rd1 Qc6 42. Qf4 Kg7 43. Qe5+ Kh7 44. Qf4 Kg7


ここは同じ手を蹴ってもドローです。44... Qc4 45. Qxc4 Rxc4 46. Rd6 a5 47. bxa5 Ra4 48. a6 Rxa3 49. Rb6 Kg7 50. a7 Rxa7 51. Rxb5=

45. Qe5+ Kh7 1/2-1/2



相手はアービターに46. Qf4 を指摘し、ゲームはドローに終わりました。大きなピンチは無かったものの、勝負所での形勢判断を誤ったのは反省です。私はポイントを取り損ねましたが、この日は篠田くんが2200台のフランスのプレーヤーを破る金星を挙げ、日本勢初の勝利となっています。

R1 Nilssen, E (WFM, DEN, 2065) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 1/2-1/2
R2 Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Cappon, J (FRA, 2087)

2試合目はフランスのプレーヤーとの対戦です。今はレイティングを落としていますが、2200台だったこともあるようですので、気を引き締めて試合に向かおうと思います。篠田くん以外は下との対戦ですので、ここはきっちり白星を重ねたいですね。2日目も頑張ります!

Cappelle la Grande 2020 R2 Pairings


初日は午前中、外をぶらついて水など必要なものを購入しにいきます。


試合会場の様子です。今年の参加者は330名程になりました。

2020/02/22

Cappelle la Grande 2020 Arrival


今日は1日2本更新です。昨晩、パリから列車を乗り継ぎ、フランスのダンケルクに到着しました。隣村のカペルで開催されるチェストーナメントは、かつての規模はないものの、伝統的なフランスのトーナメントとして広く知られています。高校2年生の冬に初めて参加して以来、私も幾度となく参加してきました。今年のカペルのスケジュールは以前の記事でも出していましたが、同じものをもう一度載せておきます。

2/22 15:30 Opening Ceremony, 16:00 R1
2/23 14:00 R2
2/24 09:00 R3, 16:00 R4
2/25 14:00 R5
2/26 09:00 R6. 16:00 R7
2/27 14:00 R8
2/28 10:00 R9, 17:00 Closing Ceremony

Cappelle la Grande 2020

参加選手はまだ確定していませんが、元フランス代表で2年前の優勝者、Christian Bauer や、Jules Moussard、Momchil Nikolov ら、常連の強豪たちの名前も招待選手欄に連ねられています。日本からはキャンセルが2名出たため、招待枠通りの4名が参加します。早く初戦のペアリングを確認して、会場に乗り込みたいですね。2月は更新が滞っていた分、このカペルトーナメント期間中は更新を続けていきたいと思います。


日本ではみかけないサイズのマカロン。ミニバーガーくらいあります!


今年は空港からリールまで、Ouigo という安い列車を使いました。

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