ジャパンチェスクラシック入賞者たち photo by Yamada, A
昨日まで4日間開催されたジャパンチェスクラシックも無事に閉幕しました。優勝はAsaka Samuel くんで、最後こそTu さんに敗れましたが、脅威の開幕6連勝により、最終戦を残して優勝を決めました。オーストラリア籍ながら、ここ数年は日本に住み、ずっとプレーを続けてきた若き有望株の初ビッグタイトルです。Samuel くん、おめでとうございます!
私は最終日、塩見さんに勝ち、青嶋くんにドローで5/7 となりながら、タイブレークで青嶋くん、大多和くんに敗れて5位止まりでした。やはり早いラウンドで黒星がついたのが痛かったです。それでも後半はなんとか立て直し、ゲーム内容も良くなってきたので、その点は満足しています。今夜は6R の塩見さんとのゲームをご紹介します。
Shiomi, R (JPN, 2046) - Kojima, S (IM, JPN, 2397)
Japan Chess Classic 2020 (6)
1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. d4 exd4 4. Nxd4 Bc5 5. Nb3 Bb4+!?
1970年代にウクライナのGM Oleg Romanishin が研究し、指し続けた変化です。f2 を狙う自然な
5... Bb6 に比べると古く、指されれる頻度は減っていますが、私は現代でも使えるラインだと考え、自分のScotch 対策として取り入れました。
6. Bd2 a5!
6. c3 Be7 ならば大人しく退き直し、c3 に白がナイトを展開できないことで満足します。
7. a4?!
この手では私もすでに知らないポジションになりました。調べていたのは、
7. a3 Be7 8. Bc3!? Nf6! 9. e5 Ne4 10. Qg4 Ng5 という変化で、実戦例もあります。本譜の手はシンプルに
a5-a4 の押し込みを止めていますが、その代わりにb4 のマスが長期的に弱くなってしまいます。
7... Nf6 8. Bd3 O-O 9. O-O Re8 10. Re1 d5!?
ここでdポーンをぶつけるかどうかは、プレーヤーの好みが分かれるところだと思います。白のセンターポーンがd5 のマスを抑え、白の一番のポイントになる主張だと考えるのであれば、それを消しにいく黒のアクションは自然です。一方でe4 のポーンを簡単にさばいてしまうと、e4 のポーンにピースを集めて反撃するというプランを黒は失うことになります。加えてe4 ポーンを消すことで、開いてしまう
d3-h7 のダイアゴナルも少し気になります。私はそれを承知でも、d5 のマスを奪い返し、ピースをアクティブにして戦うことを決めました。
11. exd5 Rxe1+ 12. Qxe1 Nxd5
ルークを黒から交換するかどうかも難しいポイントで、白は将来的に
Qe1-Qe4 のような手でビショップをクイーンを協力させ、黒のキングサイドを狙うチャンスを作ることができます。黒の主張は一時的にでも白クイーンを
a5-e1 のラインにずらしておくことで、
Nd5-Nf4 といったピンを利用したナイト跳び込みのチャンスを作ることや、将来的に
Ra8-Re8 とルークが回った際、クイーンをターゲットにできるようにすることです。
13. Nc3 Be6 14. Rd1 Qd7!
先述のルークをe8 にまわす準備ですが、先にd1 にきた白ルークの存在も当然気にしなくてはいけません。
15. Nxd5?! Bxd5 16. c4? Bxg2! 17. Kxg2 (17. Bxb4 Qg4!) 17... Qxd3 18. Bxb4 Qg6+ ならば、黒はポーンをかすめ取り、クイーンも生還させることができます。
16. Bxb4 Nxb4 17. c4 Qxa4! も大事な変化で、ビショップが取られてもナイトを取りかえすことができるため、黒は問題ありません。ぎりぎりではありますが、白がdファイルから攻撃を作るためにはもう1歩準備が足りないと読み、
14... Qd7 を指すことができました。
15. Qe4 g6 16. Be2 Re8
16... Rd8 17. Bg5 Nxc3 18. Rxd7 Nxe4 19. Rxd8+ Nxd8 20. Bxd8 はイコールにしかならず、もう少しチャンスを求めて最初の狙い通りにルークはeファイルに動かいsます。
17. Bf3 Nxc3! 18. Bxc3 Bxc3!
この手を見つけることができて一安心しました。少し変化はありますが、いずれも黒が十分優勢なエンドゲームへと突入します。
19. Rxd7
19. bxc3 Qxd1+ 20. Bxd1 Bd7 21. Qe2 Rxe2 22. Bxe2 b6 23. Bb5 Nb8-/+ 白からクイーンを取ってこなかった場合も、黒から強引にクイーンルークの交換をしてしまい、バックランクメイトを利用してクイーンを取りかえすことができます。
19... Bxd7 20. Nc5 Rxe4
コンピュータが示した変化は驚くもので、
20... Nd4!? 21. Nxd7 Nxf3+ 22. gxf3 Rxe4 23. fxe4 Bxb2-+ として1ポーンアップで黒が勝勢とのことです。しかし、本譜でも十分黒のプランが分かりやすい勝勢ですので、どちらが良いかは一概には言い切れないでしょう。
21. Bxe4 Nb8!
このナイトを退く手がポイントで、ビショップを守りつつ、
b7-b6 の際にa6 のマスにナイトに跳びこまれないようにします。勝ちを目指す黒は、白が望む異色ビショップの展開は避けるようにします。
22. bxc3 b6 23. Nxd7 Nxd7-+
これで多少霧が晴れ、どのような局面か明らかになってきました。マテリアルこそイコールですが、ターゲットが無く、a4 の弱点をサポートしなければいけない負担を抱えたビショップよりも、黒のナイトのほうが強い状況です。
24. Bd5 Nc5 25. Bb3 Ne4 26. c4
ここは
25... b5!? 16. axb5 a4 とパスポーンを早めに作ってしまうのもありですが、急がなくてもビショップナイトの働きの差で黒の優位は揺るぎません。私はもう1つの作戦であるc3 ポーンを狙い、全ての白ポーンを白マスに移動させることにします。白はビショップが完全に閉じ込められ、悲しい状況です...
27... Kf8 27. f3 Nc5 28. Kf2 Ke7 29. Ke3 Kd6 30. g4 Nxb3!
白の30手目を見て、ポーンエンディングでも黒勝ちを確信しました。基礎的なポーンエンディングをきちんと勉強しておくと、こうしてピースを捌く判断が正確にでき、確実な勝ちを手繰り寄せることができるようになります。、
31. cxb3 Kc5 32. Kd3 Kb4 33. Kc2 g5!
この手以外はおそらく勝てないでしょう。
g4-g5 として黒のポーンを固定するプランを防ぎ、逆に白のg,fポーンを固定してしまいます。黒には進めることができるポーンが3つ (しかもcポーンは2回に分けて動くこともできます。) あるため、テンポ調整も容易で簡単に白をツークツワンクに追い込むことができます。
34. Kb2 h6 35. Kc2 Ka3 36. Kc3 c5 37. h3 f6 38. Kc2 Ka2-+
こうしてオポジションを取り、b1 から潜り込んでb3 を落とせば黒の勝ちです。手番が逆であればドローになるのが、エンドゲームの難しくも面白いポイントですね。
39. Kc3 Kb1 40. Kd3 Kb2 41. Ke4 Kxb3 42. Kf5 Kxc4 43. Kxf6 Kd5 44. Kg6 c4 45. Kxh6 c3 46. Kxg5 c2 0-1
白の反撃は遅く、先にクイーンを作ることのできた黒の勝ちです。最初から最後まで、満足のいくゲーム内容でした。最終戦の青嶋くんとの試合も手堅く指せ、危ないところは無かったのでそれも良かったです。
Fukuda, T (JPN, 1740) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
0-1
Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Scott, T (JPN 2190)
1-0
Otawa, Y (JPN, 2122) - Kojima, S (IM, JPN, 2397) 1-0
Kojima, S (IM, JPN, 2397) - Yesbolatova, A (KAZ, 1814)
1-0
Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Tran, T T (CM, JPN, 2338) 1/2-1/2
Shiomi, R (JPN, 2046) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
0-1
Aoshima, M (FM, 2350) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1/2-1/2
今大会中、8月開催予定だった女子選手権、ユース選手権、カデッツ選手権の3大会は中止が発表されました。次の大会の見通しは立っていませんが、また試合会場で皆さんとお会いできることを楽しみにしています。次の大会でもよろしくお願い致します。