2021/03/25

Understanding the Ruy Lopez Vol.6


Vol.5 で説明したAronian Variation の実戦紹介です。私がこの変化を初めて投入したのは、昨年のカペルでした。格下相手とは言え、初めてのオープニングを公式戦で投入するときは、いつでもドキドキです。

Primel, D (FRA, 1893) - Kojima, S (IM, JPN, 2397)
Cappelle la Grande 2020 (3)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 g6 4. O-O Bg7 5. c3 a6 6. Ba4 Nge7 7. d4 exd4 8. cxd4 b5 9. Bb3 d6 10. h3 O-O 11. Nc3 Na5 12. Bc2 Bb7 13. Qd3!?

e4 に対するプレッシャーを緩和しつつ、将来的にb1-h7 のダイアゴナルを意識したアタックを目指します。

13... Qd7 14. Bg5 h6 15. Bf4 f5!?


この変化で白のセンターに対する黒の反撃として、非常に魅力的なポーンのブレイクです。f6 ではなくe7 に展開したナイトは、fポーンをブロックすることなく、f7-f5 のサポートに使えます。キングのディフェンスこそ多少弱めますが、fファイルを開いてルーク活用する、e4 ポーンを崩してa8-h1 のダイアゴナルを開く、d5 のマスを得るなど、黒にはメリットがいくつも考えられます。数手前にQd8-Qd7 と上がった手は、f5 のマスを支えると同時に、弱くなったe6 のマスをカバーする働きがあります。

16. e5 Kh7 17. exd6 cxd6 18. Rad1 Nc4

d6 でポーンを交換すれば、fファイルこそ開かなったものの、b7 ビショップの働きが強力なことから黒満足な展開です。dポーンは互いに孤立ですが、白のd4 ポーンのほうがわずかに狙われやすいのではないかと思います。

19. Bc1 Rac8 20. Rfe1 Rfe8?!


しかし、このオープンファイルで張り合う手が緩手で、次の白の手を見落としていることが分かります。20... Nd5! 21. Nxd5 Bxd5 と進めば、d5 のマスをがっちりと抑えて黒にアドバンテージがあったでしょう。

21. h4! Bxf3!? 22. Qxf3 h5

h3-h4-h5 のブレイクを軽視しており、ルークがfファイルから離れてf5 のポーンの守りを減らしてしまったことを後悔しました。そこで強力な白マスビショップとの交換でも、f3 ナイトを消してNf3-Ng5 のチャンスを潰し、h6-h5 でhファイルからのブレイクを止めておきます。

23. Bb1 Nc6! 24. Ne2 Nxd4! 25. Nxd4 Bxd4 26. b3?


バックランクを利用したタクティクスでポーンをかすめ取りましたが、相手の緩手に救われています。26. Rxe8 Rxe8 27. Qf4! Bg7 28. g4! ならば、白の反撃は強力で難しい形勢だったでしょう。

26... Rxe1+ 27. Rxe1 Ne5! 28. Qf4 Qg7!

相手はd4 のビショップに行き場がなく、h6 でのチェックが受けずらいと計算しましたが、この手がディスカバードチェックの狙いでd4 のビショップを守りつつ、ぴったりh6 も抑える手になっています。

29. Rd1 Ng4! 30. Rxd4 Qxd4 0-1


最後もバックランクをうまく活用したタクティクスが決まりました。f7-f5 からe4 のポーンを崩すブレイクは、Vol.5 で紹介したようにリスクが高く、失敗する可能性も大いにあります。だからこそリスクが低く、メリットの多いタイミングを見極められれば、強力な武器になりえるでしょう。このAronian Variation は、f7-f5、c7-c5 の2つのポーンブレイクを武器に黒が戦える、面白い変化であると思います。

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