2021/06/07

Instructive Endgames in Blitz Games Vol.4


このシリーズも久しぶりの更新です。昨晩、lichess で指したゲームに面白いエンドゲームがありましたので、そちらをご紹介させていただきます。まずは序盤中盤を飛ばして、エンドゲームの入り口までいきましょう。

monty8 (2515) - imsk (2516)
lichess

1. e4 c5 2. Nc3 e6 3. d3 d5 4. g3 Nf6 5. Bg2 Nc6 6. Nge2 dxe4 7. Nxe4 Nxe4 8. Bxe4 Be7 9. O-O O-O 10. Be3 Nd4 11. c3 Nf5 12. Bf4 Nd6 13. Bg2 Bd7 14. d4 cxd4 15. Nxd4 Qb6 16. Qb3 Nb5 17. Nxb5 Bxb5 18. c4 Bc6 19. Qxb6 axb6 20. Be5 Rfc8 21. b3 Bxg2 22. Kxg2 b5 23. cxb5 Rc5 24. Bd4 Rxb5 25. Rfc1 Bf6!?

形勢は互角ですが、ここからどういった構想を見せるか、アイディアの練りどころです。私はポーンストラクチャーを崩してもビショップを交換し、素早くキングが上がれるようにするのが良いと考えました。

26. Bxf6 gxf6 27. Rc2 Ra3


ここは指した直後にb3 を取るタクティクスを見落としたかと思いましたが、本譜のようにゆっくりa2 にプレッシャーをかけるアイディアでOKです。27... Rxb3 28. axb3 Rxa1 29. Rc8+ Kg7 30. Rb8 ならば、黒はb7 を見捨てなければならず、駒得はキープできません。それならば、本譜のようにダブルルークを残すほうがチャンスを作れるでしょう。

28. Rac1 Rba5 29. Rc7 Rxa2 30. Rxb7 Rf5 31. Rf1 Rb2

f2 をアタックすることで白の1つのルークをディフェンスに縛らせ、少し指しやすくなったと感じました。白のパスポーンは後ろからルークで止めれば、怖い存在ではありません。しかし、ここからどう局面を改善するためにはひと工夫必要です。

32. b4 Kg7 33. Rb8 h5 34. h4


黒からのh5-h4 は黒の孤立ポーンを捌かせてしまうため、白からh2-h4 と止めるのが自然に見えます。一方でこれによりg3 のポーンが弱まったため、黒からはf5-f4-fxg3 という構想が生まれます。

34... Rd5 35. Rb7 f5 36. Kf3 Rd4 37. b5 Kf6 38. Rb8 Rd3+ 39. Kg2 f4!

一時的にポーンを捨てても、白のポーンストラクチャーをバラバラにしたうえで、黒キングが上がれるマスを作っておきます。

40. gxf4 Kf5 41. Rg8 f6!


Rg7-Rg5 を止めておき、h5 のポーンを取られないようにする大事なアイディアです。

42. Rh8 Kg4 43. Rg8+ Kxf4 44. Rh8 Rxb5?!

このポーンを取ってh5 を守り、1ポーンアップを確定させるのは悪くないはずだと思いました。しかし、f2 へのアタックを外してしまうことでf1 のルークが動けるようになり、反撃を許してしまうことになります。44... Rg3+! 45. Kh2 e5 46. Rxh5 Rg4-/+ として黒が大きく優勢というのは、コンピュータの評価です。1ポーンアップでも反撃を許してしまう本譜よりも、1ポーンダウンでもf1 ルーク、h2 キングの動きを縛るほうが、黒にとって優位に立てるというのは難しい判断だと思います。

45. Re1 Rd6 46. Rh6 Rf5 47. Re3 Kg4 48. Rg6+ Kf4 49. Rf3+ Ke4 50. Re3+ Kd4 51. Rh6 e5 52. Ra3


ルークを横に振って広く使うのも悪くはないですが、分かりやすいのは52. Rf3! としてルーク交換を迫る手です。f5 のルークが消されてしまうと、h5 を守り切ることはできません。1ポーンアップしたときは有利になってたと思っていましたが、こうした変化があることを見るとやはりf1 ルークを自由にさせるべきではなかったことが分かります。

52... Kd5 53. Ra5+ Ke6 54. Ra7 Rd4 55. Kg3?

これは明らかなブランダーで、白のポーンがぽろぽろと落ちていきます。55. Ra6+ Rd6 と戻してから考え直すつもりでした。

55... Rg4+! 56. Kh3 Rf3+ 57. Kh2 Rxf2+ 58. Kh3 Rf3+ 59. Kh2 Rxh4+


立て続けに2つのポーンを取り、ここから確実に勝つ方法を考えます。こうした局面では駒得のキープにこだわりすぎず、駒を多少返しても駒交換を進めるほうが勝ちやすいものです。

60. Kg2 Rff4!? 61. Ra6+ Kd5! 62. Rhxf6 Rxf6 63. Rxf6 Rf4!

1ポーンを返しても、fファイルでカットオフしてしまい、eポーンをキングでサポートしながらプロモーションを目指せば十分に黒が勝てるポジションです。しかし、まだミスの起こりうる局面です。

64. Rh6 h4 65. Ra6 Ke4 66. Kh3 Kf5 67. Ra5 Rb4 68. Ra8 Kf4 69. Kxh4 e4?


相手キングは十分に抑え込んでいるので、ポーンを進めるくらいで十分だと思っていました。正しい手は69... Rb1! からメイトスレットを作っておき、70. Kh3 Rg1! とカットオフをし直せば簡単でした。それでは、本譜では白にどんな反撃の手段が生まれるでしょうか。

70. Rf8+ Ke3 71. Kg3 Rb7 72. Kg2 Ke2 73. Ra8?

試合後の解析で気づきましたが、76. Rf2+! Kd3 Ra2! がドローに持ち込む唯一の方法でした。黒はfファイルでカットオフをやり直したいところでしたが、それにはaファイルを上下するルークの横からチェックが十分な反撃となります。ロングサイドからのルークの横チェックは相手の頭にあったのだと思いますが、aファイルにすぐルークを回す手では、本譜のように白キングが引き離されてしまい、横チェックの反撃が有効ではなくなってしまいます。

73... Rg7+ 74. Kh2 e3


こうして白キングをhファイルに押し込んでしまえば、シンプルなルセナポジションとなって黒の勝ちです。

75. Ra2+ Kf3 76. Ra8 e2 77. Rf8+ Ke3 78. Re8+ Kf2 79. Rf8+ Ke1 80. Re8 Rg5 81. Kh3 Kd2 0-1

最後はルークを5段目に置いて、Building a Bridge と呼ばれるアイディアを使います。続けるとしても、82. Rd7+ Ke3 83. Re7+ Kd3 84. Rd7+ Ke4 85. Re7+ Re5-+ とルークをぶつけてしまい、プロモーションを決めて黒の勝ちとなります。ルークエンディングの難しさを再認識するようなゲームでした。

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