2024/09/15

Budapest Chess Olympiad R4 Hungary B - Japan

元ハンガリー代表のGM Balogh CsabaはChess Evolutionのブースにいます。

ブダペストオリンピアード4日目、オープンチームは主催国、ハンガリーのBチームと対戦です。これまで私が参加してきたオリンピアードでは、2008年のドレスデンでドイツCチーム、2016年のバクーでアゼルバイジャンCチームと主催国チームと当たり、いずれも4-0で敗れています。主催国代表は気合の入り方も違いますので、私たちも全員GMのハンガリーBチームに全力でぶつかります。

Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Antal, G (GM, HUN, 2554)
Budapest Chess Olympiad (4)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nf3 Bg7 4. g3 c6 5. Bg2 d5 6. cxd5 cxd5 7. Nc3 O-O 8. Ne5 Nc6 9. O-O Bf5!?

Grunfeldは予想通りでしたが、ここは9... e6を準備していました。とは言え、違う手順でBc8-Bf5も調べていたので、それに沿って指すようにします。

10. Nxc6 bxc6 11. Bf4 Nh5!?


11... Nd7 12. Na4のような進行を予想していたので、このナイト端跳びは意外でした。f7-f5がないため、e3にビショップを退きます。

12. Be3 c5 13. Bxd5!?

ここは様々な手があるようですが、13. Nxd5 e6 14. Nf4 Nxf4 15. Bxf4 cxd4 16. Bxa8 Qxa8という進行は黒に十分なエクスチェンジの代償があると考えて避けました。13. h3のような手でまずはg3-g4を見せるのもあったようです。

13... cxd4 14. Bxd4 Bxd4 15. Qxd4 e6 16. g4


ピースの取り合いになり、かなりさっぱりした局面まで進みます。キング前のポーンが無くなってもさほど問題無いとこの時点では考えていました。

16... Bxg4 17. Qxg4 Nf6 18. Qd4 Nxd5 19. Nxd5 exd5 20. Rfd1?!

ここでどちらのルークを使うか悩みました。a1のルークはc1に回して黒のルークに対抗するか、あわよくばRa1-Rc1-Rc5のようなことを考えていたのですが、ここはf2の守りのためにf1のルークはこの位置に残すほうが良かったです。20. Rad1 Qg5+ 21. Kh1 Rfe8 22. Qxd5 Qxd5+ 23. Rxd5 Rxe2 24. Rb5= と進めばエンドゲームはドローです。

20... Qg5+ 21. Kf1 Qh5 22. Qxd5 Qxh2 23. e3 Rae8!


この手は読んでおらず、指されてみるとRe8-Re5からキングサイドを攻める絶妙なアイディアであると分かります。

24. Ke2?

h1にクイーンやルークをまわして黒の攻撃力を下げようとした判断が間違いで、キングはf1に留まるべきでした。代わりに24. Qf3 Re5 25. Rd5として粘るべきです。

24... Re5 25. Qh1 Qf4 26. Rac1 Qa4


この手は考えていたつもりでしたが、b5の位置でのチェックからb2取りもあることに指されてから気づき、自分の失敗を悟りました。ポーンが落ちてからはこちらから攻めるポイントがなく、じりじりと差を広げられるのみです。

27. Rd2 Qxa2 28. Qb7 Qe6 29. Rc7 a5 30. Rdd7 Rf5 31. Re7 Qf6 32. f3 Rh5 33. b3 Qb2+ 34. Kd3 Qb1+ 35. Kc3 Qc1+ 36. Kd3 Qd1+ 37. Kc3 Rh2 38. Rxf7 Rc2# 0-1

最後はどうしようもなくメイトになりました。1Bはかなり互角に近い形勢でしたが、時間の無い中ビショップサクリファイスをしかけたTuさんが、その勢いのままGM Kozak Adamのキングを仕留め、チームで唯一のポイントをあげました! このオリンピアードで初めての格上、そしてGMからの勝利です。チームは3-1で敗れたものの、この金星はチームにとって大きいものです。

Open R4 Hungary B - Japan 3-1
Women R4 Japan - Aruba 4-0


女子チームは西インド諸島のアルバをストレートで下し、オープン、女子ともに2勝2敗で4つのマッチを終えています。休憩日に入る前の前半残り2戦、しっかりポイントを取って後半を迎えたいですね。本日のR5はオープンがグアテマラ、女子がベネズエラとともにアメリカ大陸の国との対戦です。
この日はたまたまブダペストを観光中だった知り合いが、会場まで差し入れを届けてくれました。Gerbeaudは150年以上続くブダペストの老舗カフェで、持ち帰りのチョコレートが人気です。私も昨年、初めて足を運びました。

2024/09/14

Budapest Chess Olympiad R3 Botswana - Japan


ブダペストオリンピアードR3はオープンがボツワナ、女子がルクセンブルクとの対戦でした。私は抜け番で皆さんの試合を見守っていましたが、オープンは南條くんがドローを取られたのみで、残りの3人が勝って3.5Pを取ってくれました。パーフェクトとはいきませんでしたが、これで初戦のタンザニア戦に続き2勝目です。

Open R3 Botswana - Japan 0.5-3.5
Women R3 Luxembourg - Japan 3.5-0.5


私は試合会場に足を運び、初めての観戦席で皆さんの試合を追いましたが、やはり双眼鏡が無ければ見えませんね。試合観戦はオンラインが一番です。観戦席を離れてからはイベントコーナーを見て回りました。
これまで開催されたオリンピアードのポスターです。中央にあるタツノオトシゴは、1960年ドイツのライプツィヒオリンピアード。こちらで生まれたFischerの名局は感動ものです。
最初にGMタイトルを与えられた27人の中で最年少だったBronsteinから始まり、史上最年少GM獲得者の歴史です。
本の物販も充実しています。3冊買って15%オフだと、つい買いすぎてしまいそうです。
こちらはiPhoneのアプリを紹介する企業ブースで、対局中の局面をカメラで撮影することでデジタルの盤面にそのまま映すことができるそうです。お客さんと企業側のスタッフがデモンストレーションで試合をしていましたが、スタッフの女性が強くて笑いました。
こちらは国会議事堂や聖イシュトヴァ―ン大聖堂などを駒のモチーフにしたチェスセット。自分用に欲しいです。

さて今日はオープンが開催国であるハンガリーのBチーム、女子がアルバとの試合です。私は憧れのマスターが多くいるハンガリー代表チームと思い切りぶつかってこようと思います。

2024/09/13

Budapest Chess Olympiad R2 Japan - Slovenia

この日は裏のイベントコーナーで、同時対局が行われていました。

ブダペストオリンピアード2日目、オープンチームはGM中心で構成されるヨーロッパの強豪スロベニアとの対戦です。トップGM Fedoseevを温存してきたため、私の相手は若干16歳のFM Lavrencicになりました。唯一GMタイトルを持たないながら、スロベニア代表入りを果たした実力を垣間見ることになります。

Lavrencic, M (FM, SLO, 2360) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
Budapest Chess Olympiad (2)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Be2 Nd7 6. Nbd2 a5 7. a4 h6 8. O-O Ne7 9. Nb3 Qc7 10. Bd2 g5!?

本当は他に指したい変化があったのですが、ちょっとしたムーブオーダーからそれを封じられ、6年ほど前にメインで指していた変化を記憶を頼りながら指すことになります。黒はキングサイド、クイーンサイド両方のポーンを伸ばし、アグレッシブなセットアップですが、伸びたポーンが弱点にもなりえます。

11. Rc1 Bg7 12. c4 O-O 13. Qe1 b6


本譜でも大きな問題はありませんが、ここは13... Qb6! 14. Qd1 (14. Nxa5 Ng6!) 14... dxc4 15. Bxc4 Rfd8という進行もあったようです。

14. cxd5 Nxd5 15. h4 gxh4??

ここが勝負の分かれ目で、ポーンを突きこすか取るかで30分悩み、間違った選択をしました。15... g4! 16. Nh2 h5! 17. f3は伸ばしすぎたポーンを崩されてしまうと考えたのですが、ここで17... Nxe5!という手がありました。h2のナイトは一時的に行き場がなく困っています。すぐに17. f3が成立しないと分かっていれば、gポーン、hポーンを伸ばすことを躊躇わなかったでしょう。

16. Nxh4 Bh7 17. f4 Rae8 18. f5!


本譜の白の攻撃はあまり直線的でありながら、早く力強いものでした。f7-f6の反撃を準備はしたものの、お構いなしにfファイルから仕掛けてきます。

18... exf5 19. Nxf5 Bxf5 20. Rxf5 f6 21. Bc4!

ここで開いたcファイルも活用されてしまうのを見落としました。eポーンはさらに黒陣に刺さり、消すことができません。

21... Qd8 22. e6 Nb8 23. Qe4 Qd6 24. Re1 Ne7 25. Qg4 Nxf5 26. e7+


26. Qxf5からBc4-Bd3と切り替えてくるものだと思っていましたが、本譜のほうがすぐに決着です。

26... Rf7 27. Bxf7+ Kxf7 28. Qh5+ 1-0

恐れていたサイドからの仕掛けに対応を間違え、一気に持っていかれたゲームでした。チームメイトも全員破れ、この日はスロベニアに完敗です。私の相手だけGMではありませんでしたが、GM中心のチームがいかに強いかということを実感できた1日でした。

Open R2 Japan - Slovenia 0-4
Women R2 Eswatini - Japan 0.5-3.5


女子チームはエスワティニに勝利し、オープン、女子ともに1勝1敗となっています。3日目の今日はオープンがボツワナ、女子がルクセンブルクとの対戦と発表されています。私も2008年にボツワナと対戦しましたが、今日は私が抜け、Tu、南條、青嶋、山田というメンバー構成です。4-0での勝利を期待しているので、日本の皆さんの応援配信を私も見ながらチームを見守ろうと思います。

2024/09/12

Budapest Chess Olympiad R1 Japan - Tanzania

10日に開会式を迎えたブダペストオリンピアードは、11日から1日1試合のペースで進んでいきます。初日の昨日はオープンがアフリカのタンザニア、女子がヨーロッパの強豪フランスとの対戦でした。オープンチームは南條くんを休ませ、Tu、青嶋、小島、山田というメンバーで初戦に臨みます。私の相手は2016年、2018年のオリンピアードタンザニア代表のCMです。

Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Hassuji, N (CM, TAN, 1847)
Budapest Chess Olympiad (1)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 e6 5. Nf3 Bd6 6. Qc2 Nbd7 7. Bd3 a6 8. O-O O-O 9. Rd1 Re8 10. e4!

Semi-SlavのAnti-Meranから始まったゲームは、早めにこちらからe3-e4の仕掛けを行います。e4でのポーン交換が起これば、黒のa7-a6が意味を失います。

10... dxe4 11. Nxe4 Nxe4 12. Bxe4 Nf6?!


昔、Semi-Slavを学んだ際、ナイト交換後にすぐf6にナイトを補充するアイディアは不正確だと学びました。白がe3-e4からc1のビショップのダイアゴナルを開いたのであれば、黒もe6-e5からc8ビショップのダイアゴナルを開きたいものです。しかし、ナイトをf6に早く移動させてしまうと、黒はe5のコントロールを失い、e6-e5の実現が難しくなります。そのため、 12... h6とかわしてh7を受けておくほうが良かったでしょう。

13. Bg5! h6 14. Bh4 g5 15. Bg3 Nxe4 16. Qxe4 f5?

ここは代わりに16... e5!?とする手がありえました。このポーンは捨てることになりますが、それにより白マスビショップの利きを開いて勝負します。本譜はクイーンが逃げた後にノアの箱舟と呼ばれるf5-f4のビショップトラップを狙ったのだと思いますが、g6へのクイーン跳びこみがあるため成立しません。

17. Qc2 Bxg3 18. hxg3 Qf6 19. c5!?


黒からのc6-c5を止めたうえで、Nf3-Ne5の跳びこみを決行します。d5のアウトポストは黒から活用する上手いチャンスがなく、白にはNf3-Ne5-Nc4-Nd6(or Nb6) というチャンスがあるため、cポーンの押し込みは白にとって得だと考えました。

19... Bd7 20. Qb3! Rab8 21. Ne5 Re7 22. a4! Kg7 23. a5

黒のa,bポーンを完全に固定してしまったうえで、Ra1-Ra4-Rb4からb7へプレッシャーを作ります。

23... Be8 24. Ra4 Rc7 25. Rb4 Bf7 26. Rb6!


ここで黒のa7-a6が余計だったことがさらにはっきりします。b6のマスに潜り込んだルークは、ピンを利用してa6,c6どちらも取りを狙っています。黒には上手いディフェンスがありません。

26... Qd8 27. Rd3 Qd5 28. Qxd5 exd5 29. Rdb3 Be8 30. Rxa6 Kf6 31. Ra7 1-0

ここで相手の時間が落ちたのですが、それでも相手の時間は30分増えました。時間が増えるのは40手過ぎてからでは?と思い、アービタ―と協議になります。どうも今回のオリンピアードで使われている最新の時計は、既定の手数まで到達しようとしていまいと、時間が0になった時点で追加の持ち時間が足されるようです。よく見ると時計には旗のマークがでており、それが時間落ちを示しているようです。分かりづらい...

なにはともあれ、オリンピアード初戦を白星で飾ることができました。局面も1ポーンアップのうえ、次にa5-a6で完全に白勝ちです。今大会の日本チーム最初の勝利を良い形でもたらすことができ、満足しています。怪しいゲームもありましたが、残り3ボードも勝ってタンザニアには4-0での勝利でした。R1の応援配信も大いに盛り上がったようで、感謝しています。応援ありがとうございました!

Open R1 Japan - Tanzania 4-0
Women R1 Japan - France 0-4


女子チームは残念ながら強豪フランスに負けてしまいましたが、今日の2戦目を初勝利を期待します。本日のR2はオープンがハンガリーのお隣のスロベニア、女子が南アフリカのエスワティニとの対戦です。私はプレミアムから5連勝中ですので、この勢いで強豪スロベニアからもポイントを取ってきたいと思います。
ハンガリーのチェスイベントなら必ずあるのがJuditコーナーです。私はこの日、試合前にたまたま遭遇したJuditと握手、試合後にこのコーナーにいたJuditと写真を撮ることができました。

2024/09/11

Budapest Chess Olympiad Opening Ceremony

昨日、9/10にブダペストでは2年に1度のチェスの祭典、チェスオリンピアードが開幕となりました。先に現地入りし、2つのトーナメントでプレーしていた私は、チームメイトの弘平くんとこれから到着するメンバーを迎えにリスト・フィレンツェ空港へと向かいます。私も弘平くんも3番線の青いメトロ沿いに滞在していたため、メトロとバスを乗り継いで空港に向かうのはそう大変ではありませんでした。8時半過ぎには上海経由でブダペストに到着したメンバーと合流です。
その後はオリンピアード用のホテルに移動し、欧州在住の他のメンバーの到着を待ちます。チェックインまでの待ち時間、近くのスーパーに買い物に行き、昼食も済ませました。こちらはハンガリーの揚げパン、ラーンゴシュです。前日に弘平くんと中央市場で見た際は2500フォリントからと目が飛び出るような価格でしたが、ブダペスト郊外のホテル近くでは900フォリントからとお手頃でした。20代前半、ハンガリーに来たばかりの頃によく食べた懐かしの味です。
16時半前にはチームメンバーが揃い、オープニングセレモニーへとバスで移動します。オープニングセレモニーの会場はドナウ川を渡ったブダ側、王宮の少し裏にあるDr. Koltai Jano Sports Centerでした。普段はリングを作って格闘技のイベントをやりそうな会場で、ブダペストオリンピアードの開会が宣言されます。
会場にはあやしげな巨大ルービックキューブが。建築学者のルビクはハンガリー人で、このよく知られたパズルはハンガリー発祥なのです。
こちらは晴天の日の国会議事堂です。ブダペストの名所をモニターに映しながら、音楽の演奏とともにセレモニーは進みます。
日本でも7月にFIDE100周年を記念する大会が開催されましたが、この日は同時に世界各国でチェスイベントが開催されました。こちらはFIDE会長のArkady Dvorkovichです。セレモニーでも本人による挨拶がありました。
記念式典の様子だけでなく、各国のチェスを指すイベントの様子も移されました。日本のような大会形式ではなく、同時対局を行った場所も多かったようです。
ハンガリーの伝説的な女性プレーヤー、Judit Polgarによる聖火との入場もありました。
続いてJuditの姉たち、SusanとSofiaによる初戦の色決めが行われました。巨大ルービックキューブは色決めのためのアイテムだったんですね。キューブ中央から手を引き入れ、手にしたのは黒いキューブ。Sofiaも同様で、オープン、女子ともにトップシードの国が初戦は黒に決まりました。
最後にモニターで出場国が国旗とともに紹介されましたが、以前のオリンピアードであったような行進は無し。日本が呼ばれるのを確認してから、セレモニー会場を後にしてホテルに戻り、夕食を取りました。夕食は凄く品目が多いわけではありませんが、肉、魚どちらもあり、十分満足できる内容です。
21時からはオープン、女子ごとに集まり、ミーティング(オープンはそう称したエンドゲームの研究)を行いました。私が事前にMishaに送っていたゲームも取り上げられ、勝ったゲームでも相手にドローアイディアがあることを教わりました。

そして一夜明けた今日から試合が始まります。ブダペストオリンピアードの初戦、オープンはタンザニア、女子はフランスと発表されています。では試合に行ってきます!

Budapest Chess Olympiad Open R1 Pairings

Budapest Chess Olympiad Women R1 Pairings

2024/09/09

XIII. Prémium Nemzetközi Sakkverseny Budapest Day4

Welcome Olympiad!よりも1日長かったプレミアムも、無事に最終日を迎えました。私は4日目も連勝し、パラグアイのGM Delgado Ramirezを抑えて優勝することができました。3Rでの彼との直接対決で敗れた際は優勝は難しいと思いましたが、残り試合を粘り強く指せたことが良い結果に繋がったと思います。入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2299) 6/7
2nd Place Delgado Ramirez Neuris (GM, PAR, 2484) 5.5/7
3rd Place Almiron Antonio (FM, PAR, 2312) 5/7
4th Place Miszler Levente (FM, HUN, 2262) 5/7
5th Place Latorre Matias (FM, PAR, 2264) 5/7

XIII. Prémium Nemzetközi Sakkverseny Budapest Final Standings


午前に指したIM Nomin-Erdeneとの試合は、少し判断を間違えてアドバンテージを手放してしまいましたが、相手のキャスリングできないキングに対して積極的に攻め、なんとか白星を手にしました。続く午後のラウンドはパラグアイのAlmironだと思っていましたが、ハンガリーのHorvathが相手だと発表されました。今日はこちらの最終戦をお届けします。

Horvath, K (HUN, 2154) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
XIII. Prémium Nemzetközi Sakkverseny Budapest (7)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Be2 Nd7 6. O-O a5 7. Nbd2 a4 8. c4 h6 9. cxd5 cxd5 10. Nb1!?

黒はaポーンをa4まで伸ばすことでNd2-Nb3を防ぎますが、それに対して白はナイトを組み替えて伸びすぎaポーンを狙います。この組み換えをしなければ、黒はNe7-Nc6, Bf8-Be7と組めて満足でしょう。

10... Ne7 11. Nc3 a3 12. Nb5 Nc6 13. bxa3 Be7 14. Ne1


黒は一時的にポーンを失いましたが、白のポーンストラクチャーを乱せており、c4のマスが将来的に活用しやすいアウトポストになっています。本譜のナイトを退く手は、g2-g4,f2-f4-f5を狙う典型的なアイディアですが、14. Bd3! Bxd3 15. Qxd3 Nb6が私のメインの準備でした。

14... O-O 15. g4 Bh7 16. Ng2 Qb6!

先述のようにf2-f4が普通だと思いましたが、ナイトをe3、またはf4に跳ぶ準備をされるとどうするか少し悩みました。f7-f6から開こうとする手はe6を弱め、Ng2-Nf4で困っています。そこで考えたのはb6にクイーンを出してa7-g1ダイアゴナルを抑え、f2-f4を牽制すると同時に、b5のナイトとd4のポーンをターゲットにするアイディアです。b5のナイトは好位置に見えますが、実際はあまり狙う駒もマスもありません。

17. Bd3? Bxd3 18. Qxd3 Na5?!


白マスビショップの交換は、b1のマスを奪い返してRa1-Rb1をできるようにする自然なアイディアで、私も予想の範疇でした。しかし実際にはこれが悪手で、試合後に相手から、18... Nxd4! 19. Qxd4 (19. Nxd4 Nxe5 20. Qe3 Qxd4!-+) 19... Qxb5-+ ができたと指摘されました。e5からナイトを捨てる手は考えていたのですが、d4からは盲点でした。やはり白は中途半端にgポーンだけを進めたことがマイナスになっています。

19. Rb1 Nc4 20. Ne3 Qc6 21. Bd2 Bxa3

タクティクスのワンチャンスは見逃したものの、白マスビショップ交換後にc4のアウトポストにナイトを潜り込ませ、なおかつポーンも取り返せたのでこれで黒が良くなったと感じました。そしてこの辺りで隣のトップボード、パラグアイの代表対決がドローで終わりました。タイブレークで不利な私がDelgado Ramirezを上回るためには、1P必要なことがこの時点でほぼ決まり、この試合を勝ちにいく覚悟を決めます。

22. Nxc4 dxc4 23. Qg3 Be7 24. a3 Nb6


c4のナイトは捌かれましたが、代わりに強力なパスポーンが生まれ、d5が新しいアウトポストになっています。そこに残ったナイトを向かわせるのは自然なアイディアに思えます。

25. Rfc1 Nd5 26. h4 Ra4 27. h5 Kh8 28. g5 hxg5 29. Bxg5 Bxg5 30. Qxg5 f6!

これはタイミングを図っていた手で、fファイルを開くことでf4のマスを抑え、Nd5-Nf4を実現します。d5のポーンがc4にずれたことでa8-h1ダイアゴナルが開いたことも黒としては大きな武器で、g2でのメイトやe2でのナイトをフォークを狙ってプレーを続けます。

31. Qg2 Nf4!


白キングの危うさを踏まえれば、クイーンは残しておきたい気持ちもありました。しかし、白のバラバラなポーンをどんどんと狙え、e2のフォークのチャンスもあるならば、ナイトを早めにf4に入れておく判断は良かったと思います。

32. Qxc6 bxc6 33. Nd6


白のナイトは難しい決断を迫られます。c3に退いてe2のマスをカバーするのが自然に思えますが、c4に反撃するタイミングが遅れるうえ、ナイト自体がターゲットになります。33. Nc3 Rxa3 34. Kf1 fxe5 35. dxe5 Nd3-+ 黒はエクスチェンジを取れずとも、ばらばらな白のポーンを早く落として勝勢でしょう。

33... Ne2+ 34. Kf1 Nxc1 35. Rxc1

念願のナイトフォークで、この試合初めて黒が駒得になりました。はっきりと優勝が見えてきましたが、だからこそ細かなミスもできないと試合中は緊張しました。

35... fxe5 36. dxe5 Rxa3 37. Rxc4 Ra2 38. Ne4 Rf4! 39. Rd4 Raxf2+


e4のナイトをピンしたことで、f2のポーンを落とすことができました。これで1段目に縛り付けたキングをメイトするチャンスも増え、かなり黒が楽になります。

40. Kg1 Rc2

しかし、相手も反撃のバックランクチェックを狙っているため油断は禁物です。ここで40... Re2? 41. Rd8+ Kh7 42. Ng5+ Kh6 43. Nxe6 Rg4+ 44. Kf1と進もうものなら、h8でのメイトとルーク取りがダブルスレットになり、大逆転です。これを防ぐためにルークは白キングから離しておき、何かあった時のためにcポーンを守っておきます。

41. Rd8+ Kh7 42. Ng5+ Kh6 43. Nxe6 Rg4+ 44. Kf1 Kxh5 45. Nd4 Rd2 46. Rh8+


46. Nxc6 Rxd8 47. Nxd8 Re4-+と進んでも、ルークを切ってeポーンとナイトを消してしまえば黒は残ったgポーンのみで勝てます。

46... Kg6 47. Nf3 Rf4 48. Ke1 Rd3 49. Nh4+ Kg5 50. Ke2 Rh3 0-1

最後はナイトを捕まえて決着となりました。タクティクスのチャンスのは逃したものの、終始こちらのペースで指せたと思います。オリンピアード本番も、これくらいの安定度で星を積み重ねたいですね。今日1日休み、明日日本チームのメンバーと合流すれば、いよいよオリンピアード開幕です!

09/05 16:00 R1 Salamon, L (HUN, 2001) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
09/06 09:30 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Nandin-Erdene, D (HUN, 2039) 1-0
09/06 15:00 R3 Delgado Ramirez, D (GM, PAR, 2484) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 1-0
09/07 09:30 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Minga-Nagy, A (HUN, 2054) 1-0
09/07 15:00 R5 Miszler, L (FM, HUN, 2262) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
09/08 09:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Nomin-Erdene, D (IM, MGL, 2319) 1-0
09/08 14:00 R7 Horvath, K (HUN, 2154) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
ブダペストは良い天気の日が多いです。ドナウ川の向かいには左手に王宮、右手に漁夫の砦が見えます。

2024/09/08

XIII. Prémium Nemzetközi Sakkverseny Budapest Day3

お昼は国会議事堂を眺めながらいただきました。

プレミアム3日目のこの日は、午前のラウンドで2013年生まれのジュニア、Minga-Nagyを下し、大きな勝負の5Rを迎えます。午後の相手はハンガリーのFM Miszlerで、先日のブリッツ大会で当たりこそしなかったものの、GMにも勝って最後はトップボードに上がっていくのを見ていました。昼休憩の間に彼が指す変化を調べ、万全の態勢で試合に向かいます。

Miszler, L (FM, HUN, 2262) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
XIII. Prémium Nemzetközi Sakkverseny Budapest (5)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. Nh4 e6 7. Nxf5 exf5 8. e3 Bd6!?

以前は8... Bb4を指していましたが、今回はこちらを調べてきました。オンラインでの経験もほぼなく、ぶっつけ本番です。

9. Bxc4 O-O 10. Qf3 Qd7 11. h3 Na6 12. Bd3 g6 13. g4 Nb4 14. Bb1 c5!


f5を狙ってg7-g6を突かせ、g2-g4から崩すアイディアは10年以上前に登場し、対策が練られてきました。ここではf3のナイトがいないことを利用し、d4への反撃で対抗します。

15. gxf5 cxd4 16. exd4 Nc6 17. Be3 Bb4 18. O-O?!

18. fxg6 fxg6 19. Ba2+ Kg7 20. O-O-O Bxc3 21. bxc3 Rac8が私の準備でした。白がすぐにd4を返すようであれば、黒はポーンの形の良さですでに優勢でしょう。

18... Nxd4 19. Bxd4 Qxd4 20. Rd1 Qe5 21. Qg3 Rfe8


キングが不安定な白はクイーンを交換したがりますが、ポーンストラクチャーの差で十分勝負できる黒はこれを受け入れます。21... Qxg3+からe3のマスを狙うアイディアもあったようですが、白のポーンを繋げない本譜も自然に見えます。

22. Qxe5 Rxe5 23. fxg6 hxg6 24. Bd3 Bxc3!?

24... Kg7からルークをh8で使い、hポーンを狙うアイディアと迷いましたが、ここは早めにビショップナイトを交換し、さらに白のポーンを乱しておきます。白のビショップは具体的なターゲットが無く、ナイトに比べて働きが良いとは言えないでしょう。

25. bxc3 Rc8 26. c4 b6 27. Re1 Nd7 28. Red1 Rc7 29. Bf1 Ra5!


a4-a5のポーンの突き捨てを止めつつ、a4をターゲットとして固定します。c4,a4どちらを取れても満足な黒は、白に消極的な守りを強いてゆっくり指し進めます。

30. Rdb1 Ne5 31. Rb5 Nxc4!?

ここで捌いて1ポーンアップのルークエンディングは勝てると考えました。ポイントはこの後のルークの切り替えです。

32. Bxc4 Rxc4 33. Rxa5 bxa5 34. Rd1 Rxa4 35. Rd7 Rf4!


a7のポーンが落ちることは決まっているため、黒ルークはaポーンの前から早めに脱出し、縦ではなく横のディフェンスに切り替えます。

36. Rxa7 Rf5!-+

このf5の位置がポイントです。a5とf7を守りつつ、f2を攻め、さらにh5まで白のポーンが前進するのを止めています。後は黒キングが白ルークに寄り、aポーンの後ろから追い出せば黒の勝ちです。

37. Kg2 Kf8 38. f4


私がメインで読んでいたのは白がhポーンをh5まで伸ばす作戦ですが、それもぎりぎり黒が勝てます。38. Kg3 Ke8 39. h4 Kd8 40. Kg4 Kc8 41. h5 Kb8! 42. Re7 (42. hxg6 Kxa7 43. g7 Rxf2 44. Kh3 Rf6!-+) 42... Rxh5 43. Rxf7 Rf5!-+ こうしてf5でルークをぶつけ、f2を取ってしまえば黒勝ちです。

38... Ke8 39. Kf3 Kd8 40. Ke4 Kc8 41. h4 Kb8 42. Rd7 a4 43. h5 Rxh5 44. Rxf7 Ra5

ポーンを1つ交換しましたが、aポーンの後ろにルークを切り替えることができたので、ここからできる限りポーンを押し進めます。

45. Rd7 a3 46. Rd1 a2 47. Ra1 Kc7 48. Kd3 Kd6 49. Kc3 Ke6 50. Kc2 Kf5


aポーンを止めていないといけない白は、f4を助けることができません。黒はfポーンも落として第2のパスポーンを作ります。

51. Kb2 Ra6 52. Kc2 Kxf4 53. Kb2 g5 54. Rf1+ Ke3 55. Ka1 g4 56. Re1+ Kf2 57. Rc1 g3 58. Rc2+ Kg1 0-1

この大きなラウンドを黒で勝ち、トップに0.5P差の2位で最終日を迎えます。6Rの相手は2Rの相手の姉、モンゴルのIM Nomin-Erdeneです。10年以上前から互いにハンガリーでプレーしていましたが、対戦は今回が初めてです。残り2試合、しっかり指して良い流れでオリンピアードに入りたいですね。

09/05 16:00 R1 Salamon, L (HUN, 2001) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
09/06 09:30 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Nandin-Erdene, D (HUN, 2039) 1-0
09/06 15:00 R3 Delgado Ramirez, D (GM, PAR, 2484) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 1-0
09/07 09:30 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Minga-Nagy, A (HUN, 2054) 1-0
09/07 15:00 R5 Miszler, L (FM, HUN, 2262) - Kojima, S (IM, JPN, 2299) 0-1
09/08 09:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2299) - Nomin-Erdene, D (IM, MGL, 2319)
09/08 14:00 R7

XIII. Prémium Nemzetközi Sakkverseny Budapest R6 Pairings
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