7月の羽生さんとのトレーニングは、新潟行きの前日である今日に急遽決定。朝10時の待ち合わせは台風の影響でどうなることかと思いましたが、いつも通りに午前中からスタートすることができました。
Habu, Y (FM, JPN, 2415) - Kojima, S (FM, JPN, 2373)
Training (1)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Be2 Nd7 6. O-O h6 7. Nbd2 Ne7 8. Nb3 g5!?
南條くんとの全日本との試合でも使いましたが、現在私にとって最も関心のあるアイディアです。
9. a4 Bg7 10. a5 O-O 11. a6 b6 12. c3 c5 13. Be3 Rc8
このポジションですでに感触は悪くありません。cファイルを開くことも、
c5-c4 から閉じることも候補に入れ、後は
f7-f6 からキングサイドを開く準備を整えます。
14. Ne1 Bh7 15. f3 Ng6 16. Kh1 Kh8 17. Bb5 c4 18. Bxd7?
羽生さんはここで、白マスビショップを放棄したことを悔やんでいました。確かに
c5-c4 と閉じられても、
Bb5-Ba4-Bc2 と戻れば、ビショップの使い道は十分に残されています。
18... Qxd7 19. Nc1 f6 20. exf6 Rxf6 21. Ne2 Bf8!? 22. Nc2 Bd6 23. Bd2 Rcf8 24. Ne3 Qg7 25. Ng3 Nf4 26. Ng4 R6f7 27. Qe1 Qg6?!
白マスをつけば黒が優位に試合を進められるかと思っていましたが、e5 のアウトポストの存在が頭から抜けていました...
28. Ne5 Bxe5 29. Qxe5+ Qf6 30. Qd6 Nd3 31. f4?
検討では、この手は一体何だったのかと互いに首をかしげています。f4 のマスは十分に黒が抑えているため、ここでポーンを捨てる手はまるで働きません。
31... g4?
互いに時間が相当なかったとは言え、
31... gxf4 となぜ取れなかったのか。
32. f5 Bxf5 33. Nxf5 exf5?
ここも
33... Rd8! で黒優勢でしたが、互いに見落としていました。
34. Qxd5 g3 35. Bf4
これで白の勝ちでしょう。黒のキングサイドでの攻撃は、全く届かないものでした。
35... Nxf4 36. Rxf4 gxh2 37. Raf1 Qg5 38. Qxc4 Rg7 39. Qd5 Rf6 40. Rxf5 Rxf5 41. Rxf5 Qc1+ 42. Kxh2 Qc2 43. Rf8+ Kh7 44. Qf5+ 1-0
序盤で十分なポジションを築いておきながら、白マスの弱さをうまく突くことができず、eファイルからのカウンターを許してしまったのは、大きな反省点です。ちなみにこの試合、検討戦には2時間をかけました。
お昼はすぐ近くのインド料理へ。私は去年から気になっていた店ですが、羽生さんも初来店だそうです。昼食の席での話題は、明日からお互いに行く青森や新潟の話や、他のボードゲームについて。羽生さんは将棋、チェスに限らず、多くのボードゲームのプレーヤーとかかわりのあることが感じられます。
午後は当然、色を変えて私が白です。先月はトリッキーなオープニングでしたが、今回はこれまでもよく指している、Semi-Slav の一変化になりました。
Kojima, S (FM, JPN, 2373) - Habu, Y (FM, JPN, 2415)
Training (2)
1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. d4 c6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3 O-O 8. O-O dxc4 9. Bxc4 b5 10. Bd3 Bb7 11. Rd1 b4!?
Ponomariov - Giri のこの変化は、ハンガリーでも一度指された経験があります。
12. Na4 c5 13. dxc5 Rc8 14. Qe2 Nxc5 15. Nxc5 Rxc5 16. Bd2 a5 17. e4 Qb8 18. h3 Rd8
ここまで羽生さんはノータイム。対する私は少しばかり時間を使って、なにか有効なアイディアがないかを考えます。
19. a3 bxa3?!
19... Rcc8 20. axb4 axb4 と進めた場合、白は本当にわずかなアドバンテージがありますが、黒は大きな問題はないでしょう。
20. Rxa3 Qa8 21. Bb4!
a5 がターゲットとなった黒は、そのサポートに奔走しますが、あまりうまいアイディアはありません。私はこれで優勢を確信しましたが、ゲームはここから怪しい展開へと突入します。
21... Nh5
羽生さんはエクスチェンジを捨てて、f4 にナイトを運ぶプランを取りました。
21... Rh5 22. Bxd6 Rxd6 23. e5 Bxf3 24. Qxf3 Qxf3 25. gxf3 Rxe5 26. Bxh7+ Kxh7 27. Rxd6+- この変化はもちろん白勝ちです。
22. Bxc5 Bxc5 23. Rc3 Nf4 24. Qd2 Bd6 25. e5!
残り時間2分まで考えて、これで勝てるだろうと読みました。この手が好手なのは間違いありませんが、私は大きな勘違いをしていました。
25... Nxg2 26. Bxh7+!
ポイントとなる手です。
26... Kxh7 27. exd6?
27. Qc2+! g6 (27... Kg8 28. Rxd6+- c8 のチェックがあるので、ナイトを取ることができません!)
28. Rxd6 Rxd6 (28... Nf4 29. Ng5+ Kg8 30. Rc7+-) 29. Ng5+ (29. exd6!? Bxf3 30. d7 Ne1 31. Rc8+-) 29... Kg8 30. exd6+- こうなれば、白はエクスチェンジの駒得をキープしたまま、d6 のパスポーンの存在もあいまって勝勢でした。この変化を指せなかった要因は、
27. Qc2+ Be4?? 28. Ng5+ というシンプルな手を見落としたことです。
27... Bxf3 28. Qd3+ Be4 29. Qg3
2ピースルークになったこのポジションでも、d6 のパスポーンと、g2 のナイトが行き場がないことで優勢だと考えていましたが、なかなかそう単純でないことを検討で確認することができました。
29... Bd5 30. Rc7
30. f3 Qb8 31. Qxg2 Qxd6 このようにナイトを取る変化も、肝心のパスポーンが落ちてポーンストラクチャーが悪ければ、黒はエクスチェンジの代償ありで戦うことができそうです。
30... e5?
この辺りは細かい駆け引きが続きますが、羽生さんの手は判断ミスでした。
30... Kg8 31. Kh2 ならば、まだ形勢不明です。
31. Qxe5 Be6 32. Qh5+?!
32. Rd3!+- こうしてh3 をシンプルに守り、
Rd3-Rg3 からg7 のメイトとナイトを狙えば勝勢でした。この勝ちの1手を逃したことは、今日最も悔やまれるポイントです。
32... Kg8 33. Qg5?
時間切迫の中、h3 を取らせても大丈夫だと読みましたが、大きな読み抜けがありました。
33... Bxh3 34. Rd3 Nf4 35. Rg3?
この後は駒が足りずに白の完全に負けです。唯一救いになるのは、ルークをサクリファイスする大胆な1手でした。
35. Rxf7! Ne2+ (35... Kxf7 36. Qxf4++/-) 36. Kh2 Kxf7 37. Rxh3 Rxd6 38. Qh5+ Rg6 39. Qf5+ Rf6 40. Qh5+ Rg6= これでパペチュアルチェックでドロー! 時間の無い状況では、読み切ることは不可能でした。
35... Ne2+ 36. Kh2 Nxg3 37. Qxg3 Be6 38. Qf4 Qd5 0-1
今日は互いにすぐ時間切迫になり、悪手が目立つ1日でした。勝負所であと1手手が伸びなかったことは、オリンピアードに向けて改善していきたいポイントですね。羽生さん、今月もトレーニングにお付き合い、ありがとうございました!