昨年の6月から始まったIV League は昨日、記念すべき10回目の開催を迎えることができました。13名による5R ラピッドに加え、全員参加の7R のブリッツで、ラピッド上位者のタイブレークを決める新システムです。さらに今回は、6月に以来となる羽生さんをゲストに招いての開催でした。9時間に及ぶ熱戦を経て、上位3名は以下のように決まりました。
1st Place 小島慎也 4/5 (TB Blitz 5/7)
2nd Place 野口恒治 4/5 (TB Blitz 4.5/7)
3rd Place 塩見亮 4/5 (TB Blitz 2.5/7)
2nd Place 野口恒治 4/5 (TB Blitz 4.5/7)
3rd Place 塩見亮 4/5 (TB Blitz 2.5/7)
私は野口さんに負け、野口さんは塩見さんに負け、塩見さんは私に負けのみで、残り4戦4勝という完全に三つ巴状態でした。タイブレークのブリッツも、6R で私が野口さんに勝ち、7R で塩見さんにドローで、なんとか野口さんを0.5P 差で振り切りました。久々に参加する国内大会で、なんとか優勝することができ、一安心です。
2R で野口さんに痛い負けを喫した私は、逆転優勝のためにトップを全力で追いかけるほかありません。そんな中、4R で羽生さんとのペアリングが巡ってきました。羽生さんも今大会は初戦で弘平くんに敗れており、2勝1敗同士の対戦となります。
Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Habu, Y (FM, JPN, 2415)
10th IVL (4)
1. d4 Nf6 2. c4 c5 3. Nf3 cxd4 4. Nxd4 e5 5. Nb5 d5 6. cxd5 Bc5 7. N5c3 O-O 8. g3!?
10th IVL (4)
羽生さんが去年から、Benoni Defence の研究をしていたことは知っていましたが、私はBenoni をメインで受けません。黒がポーンをギャンビットするこのEnglish Opening Anti-Benoni ラインは、2007年の全日本選手権で一度だけ指したことがあり、今年の夏には生徒の1人と見直していました。
8... Ng4!? 9. e3 f5 10. Be2 Nf6
黒は一度、f2 を狙うことでe2-e3 を突かせてc1-h6 のダイアゴナルを閉じながら、d3, f3 の白マスを弱めます。そのうえでf7-f5 と積極的にポーンを突いて、将来的なキングサイドアタックを狙いますが、f5-f4 が実現できなければ、c8 のビショップの働きは悪いままなので、このプランは一長一短です。e2-e3 を突かせるだけのアイディアであれば、8... Qb6 という手は見たことがあります。
11. O-O Nbd7 12. a3 a6 13. Nd2 b5 14. b4 Ba7
ここは私が試合中に気になったところです。a5 のマスを抑えなければ、Nd2-Nb3-Na5 の可能性があり、Bc8-Bb7 からd5 のポーンを狙うことができません。こうなれば黒のb7-b5! 突きは、a5 とc5 のマスを弱めたというデメリットが大きいように思えます。しかし、14... Bb6 にも、15.a4! から崩しにいくアイディアがあり、白は満足なアドバンテージを得て戦えそうです。
15. Nb3 Nb6 16. Bb2 f4
黒は狙い通り、fファイルとc8-h3 のダイアゴナルを開きますが、白もクイーンサイドのピースの展開が完了しているので、十分に対処することができます。
17. exf4 exf4 18. Nc5 fxg3 19. hxg3 Bh3 20. d6!
白はf2 へのプレッシャーとキング近くの白マスの弱さが気になりますが、c5 のマスでのナイトのブロッケードと、エクスチェンジサクリファイスによって、それらをカバーします。d6 に突き刺さったポーンは、黒のピースの動きを制限しながら、白に広いスペースと十分なエクスチェンジの代償を与えると判断しました。
20... Bxf1 21. Bxf1 Nc4 22. Bxc4+ bxc4 23. Qd4!
白は早めに白マスビショップを返してしまいますが、アクティブなピースと黒キングへのアタックチャンスで優位に試合を進めます。
23... Kh8 24. Rd1 a5 25. N3e4 axb4 26. axb4 Qb6 27. Qxc4
2ポーンエクスチェンジのマテリアルにした後は、f6 のナイトをどかして黒キングを直接攻めて決着をつけます。
27... Nxe4 28. Qxe4 Rad8 29. Rd2!?
d6 が取れないことを読んだうえで、ひとまずf2 を守ってくのが安全だと判断しましたが、コンピュータはここで決定的なタクティクスを見つけます。29. Bxg7+! Kxg7 30. Ne6+ Kf6 31. Qh4+ Ke5 32. Nc5+-
29... Rxd6? 30. Qe7 Rdf6 31. Bxf6 Qxf6 32. Qxa7 Qc3 33. Qe7 1-0
最後は時間切迫からの判断ミスでピースが落ちましたが、d6 のパスポーンとg7 へのプレッシャーは強力ですので、いずれにせよ白が勝っていたでしょう。この試合の後、4連勝だった塩見さんとの対戦も制し、滑り込みでタイブレークに望みをつなげたのでした。
IVL 専属プレーヤーの野口さんは、これまで参加したほぼ全てのIVL で、入賞に絡む実績を上げています。今大会はラピッドで私に勝ち、ブリッツで負けで、最後の最後まで競った争いとなりました。ゲームの内容も非常に面白く、勉強させてもらっています。
IVL 発足時からのメンバーであり、現在は運営にも携わっている塩見さんは、初戦から4連勝でトーナメントをリードし、優勝まであと一歩と迫りました。また次回以降も、運営とプレーの両面でお世話になることと思います。引き続き、よろしくお願い致します!
初戦で羽生さんに勝ち、3連勝まで星を伸ばしながらも、最後の2戦で塩見さんと野口さんに敗れてしまった弘平くんは、少し悔いの残る結果だったでしょうか。今後、正規メンバーとして積極的にIVL に参加し、初優勝を狙ってほしいと思います。
2回目のIVL 参加となる羽生さんは、私と弘平くんに負けて5位でのフィニッシュです。前回に続き、羽生さんのポイントを削ったのは、私たち88年生まれのメンバーのみでした。今後も、南條くんを含めた私たちの世代と、羽生さんの戦いは白熱していくと思います。
そして、タイブレークのブリッツはあわや全勝の6.5/7 で、羽生さんが単独優勝となりました。こうした結果のみならず、ブリッツ後の検討に真剣な様子も、私たちが見習わなければいけない点だと思います。羽生さん、対局の合間でお忙しい中、IVL に参加してくださり、ありがとうございました!
この秋、チーム選手権と東京オープンの2大会連続で優勝を果たし、初の国内レイティング2200を突破した桑田くんは、同期の汐口くんと弘平くんに敗れ、上記の2人と並んで3P グループでした。国内でのさらなる活躍が期待されるプレーヤーですので、今年の残りの大会、そして来年以降も頑張ってもらいたいですね。
今回、参加予定だった松尾さんは残念ながらキャンセルとなってしまいましたが、また次回以降の参加をお待ちしています。代わりに初参加を決めてくれた要くんと、カメラウーマンを務めてくださった長谷川さん、二人ともありがとうございました。次回のIVL 開催の日程は未定ですが、年内にはもう一度開催できると良いですね。12月であれば、私はハンガリーにいて関わることはできませんが、メンバーの皆さんは運営と参加をよろしくお願い致します。
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