久々のブログ更新です。だいぶサボっていて、申し訳ないです。さて、最近のゲームを見ていて面白いと思ったチェスのテーマに、「反撃の防止」というものがあります。このテーマを考える際、私自身のゲームで振り返りたいのは、2年前のハンガリーでの一戦です。
Kojima, S (FM, JPN, 2357) - Bird, A (AUS, 2203)
CAISSA 2013 September IM (3)
Position After 41... Rxe7
クイーンを交換し、持ち時間も増えて一安心した私に、不正確な1手が飛び出しました。このエンドゲームでは、白は確かにa5、もしくはc6 のポーンを狙ってチャンスを作るべきですが、まずは黒の反撃を防いでおくべきです! 実際の試合では、次の手で42... g5!? とポーンを突かれ、キングの前進とルークによる反撃を許してしまいました。それでも白は優勢でしたが、私の不正確なプレーが続き、ゲームはドローになってしまいます。試合後に対戦相手のBird が指摘したのは、最初に42. f4! と指して、黒のg6-g5 からの反撃を防いでおくというアイディアです。
42. f4! Ra7 43. Rb7 Rca8 44. Ke2 Kg7 45. Kd3 Kf8 46. Rxa7 Rxa7 47. Rb6 Rc7 48. Kc3+-
こうして進めてみると、ここまで白は準備を進めてから、a5 を取っても十分なことが分かります。a5、c6 のポーンはどこにも逃げられないため、白はゆっくりとキングのポジションを改善する余裕があるわけですね。つい忘れがちですが、チェスにおいて大切なことは、優勢のポジションから確実に勝つことで、1手でも早く勝つことではないのです。そして最近のゲームでも、この反撃の防止のアイディアが登場したゲームがありました。
Anand, V (GM, IND, 2797) - Nakamura, H (GM, USA, 2776)
4th Zurich CC Classical (4)
Position After 32... g5
どことなく、私のポジションと似ていますね(笑) 白は完全にクイーンサイドを制圧していて、ゆっくりとポーンを狙えば、勝つのは時間の問題です。しかし、ここで黒は反撃として、g6-g5 と仕掛けます。これに対して、Anand はシンプルかつ、有効な1手を返し、黒の反撃を抑え込みます。
黒はh5 を取らせて、さらにf7 をアタックされてはたまりません。そのため、h5 を守るために本譜の手をチョイスします。代わりに33. hxg5?! Qxg5! (33... Bxg5 34. f4!) 34. Rxf7+ Kxf7 35. Qxc8 Qf5 ならば、黒はパペチュアルチェックを絡めた反撃を作ることができます。 以下はChess News で解説を書いた、GM Ramirez の言葉です。35. Qxc8 Qf5 is probably winning, but why allow so much counterplay? やはり優勢の際は、相手の反撃を封じることが、安全にゲームを進めるための、有効なアイディアとなるわけですね!
こうして黒のキングサイドの反撃を消しておき、再びクイーンサイドでの攻撃に戻れば、白の勝勢です。
皆さんも、こうしてGM のゲームからアイディアを学んだ際は、それを実践できているか、いないか、自分のゲームをよく振り返ってみると良いでしょう。このゲーム、あと1週間早ければ、レクチャーでご紹介したかったですね。
Kojima, S (FM, JPN, 2357) - Bird, A (AUS, 2203)
CAISSA 2013 September IM (3)
Position After 41... Rxe7
42. Ra6?!
クイーンを交換し、持ち時間も増えて一安心した私に、不正確な1手が飛び出しました。このエンドゲームでは、白は確かにa5、もしくはc6 のポーンを狙ってチャンスを作るべきですが、まずは黒の反撃を防いでおくべきです! 実際の試合では、次の手で42... g5!? とポーンを突かれ、キングの前進とルークによる反撃を許してしまいました。それでも白は優勢でしたが、私の不正確なプレーが続き、ゲームはドローになってしまいます。試合後に対戦相手のBird が指摘したのは、最初に42. f4! と指して、黒のg6-g5 からの反撃を防いでおくというアイディアです。
42. f4! Ra7 43. Rb7 Rca8 44. Ke2 Kg7 45. Kd3 Kf8 46. Rxa7 Rxa7 47. Rb6 Rc7 48. Kc3+-
こうして進めてみると、ここまで白は準備を進めてから、a5 を取っても十分なことが分かります。a5、c6 のポーンはどこにも逃げられないため、白はゆっくりとキングのポジションを改善する余裕があるわけですね。つい忘れがちですが、チェスにおいて大切なことは、優勢のポジションから確実に勝つことで、1手でも早く勝つことではないのです。そして最近のゲームでも、この反撃の防止のアイディアが登場したゲームがありました。
Anand, V (GM, IND, 2797) - Nakamura, H (GM, USA, 2776)
4th Zurich CC Classical (4)
Position After 32... g5
どことなく、私のポジションと似ていますね(笑) 白は完全にクイーンサイドを制圧していて、ゆっくりとポーンを狙えば、勝つのは時間の問題です。しかし、ここで黒は反撃として、g6-g5 と仕掛けます。これに対して、Anand はシンプルかつ、有効な1手を返し、黒の反撃を抑え込みます。
33. Qe2!
黒はh5 を取らせて、さらにf7 をアタックされてはたまりません。そのため、h5 を守るために本譜の手をチョイスします。代わりに33. hxg5?! Qxg5! (33... Bxg5 34. f4!) 34. Rxf7+ Kxf7 35. Qxc8 Qf5 ならば、黒はパペチュアルチェックを絡めた反撃を作ることができます。 以下はChess News で解説を書いた、GM Ramirez の言葉です。35. Qxc8 Qf5 is probably winning, but why allow so much counterplay? やはり優勢の際は、相手の反撃を封じることが、安全にゲームを進めるための、有効なアイディアとなるわけですね!
33... g4 34. Qa6
こうして黒のキングサイドの反撃を消しておき、再びクイーンサイドでの攻撃に戻れば、白の勝勢です。
34... Qg8 35. Nb6 Rf8 36. Nd7 Qh7 37. Nxf8 Qe4+ 38. Kh2 Kxf8 39. Rb8+ Kg7 40. Qc8 Kg6 41. Qh8 1-0
皆さんも、こうしてGM のゲームからアイディアを学んだ際は、それを実践できているか、いないか、自分のゲームをよく振り返ってみると良いでしょう。このゲーム、あと1週間早ければ、レクチャーでご紹介したかったですね。
2 件のコメント:
ある本を読んでましたら prophylaxis という単語がときどき出ておりました▼o・~・o▼
相手の攻撃が来る前にそれを予防してしまう、prophylaxis という考えは、元世界チャンピオンのPetrosian が得意としましたね。今回扱った、優勢の際に反撃を許さないこととは少しニュアンスが違いますが、ディフェンスのアイディアとして、現在ではポピュラーです。
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