私がチェスの留学先として選んでいたハンガリーには、Caro-Kann を好んで指す文化が存在します。Mega Database のCaro-Kann のゲーム解説に登場するPeter Lucas は、60歳を超えるハンガリーのベテランGM ですし、その研究は現在の代表である、Leko、Rapport、Berkes らに受け継がれています。2004年のWorld Championship Match の最終戦で、ハンガリーのLeko がCaro-Kann を使い、Kramnik に敗れたのは、私にとって思い出深い出来事です。
ハンガリーでは私が争ってきたジュニアたち(全員、IM になっています!)もCaro-Kann を使いますし、それに応じて発展してきた、Caro-Kann 対策も豊富に存在します。私自身、ハンガリーのGM トーナメントで、3人のGM、Sax、Varga、Groszpeter、らにCaro-Kann を指してポイントを取ってきたことは、大きな経験になっています。
そして今夜は、ハンガリーの若いGM をご紹介します。Peter Prohaszka は、1992年生まれの23歳で、黒番では1. e4 対策にほとんどCaro-Kann を使います。2012年途中から、Caro-Kann での負けゲームは1つもなく、先日終わったDubai Open でも、4試合Caro-Kann を指して3勝1ドローという結果を残しています。(この大会で、勝った試合は全てCaro-Kann!)
Rathnakaran, K (IM, IND, 2422) - Prohaszka, P (GM, HUN, 2601)
Dubai Chess Open 2015 (9)
1. e4 c6 2. d3 d5
Dubai Chess Open 2015 (9)
Caro-Kann の2. d3 Variation は、昨年の全日本で2試合、先日のHawaii ではHou Yifan に1試合指されるなど、私にも馴染みのある変化です。
3. Nd2 e5 4. Ngf3 Bd6 5. g3 Nf6 6. Bg2 O-O 7. O-O Re8 8. b3 a5 9. a3 Qc7 10. Bb2 Bg4 11. h3 Bh5 12. Qe2 Nbd7 13. Rae1 dxe4 14. dxe4
オーソドックスですが、King's Indian Attack の...Bg4 の変化にトランスポーズしています。黒はナイトとビショップの組換えがここからのカギとなりますが、Prohaszka は見事な指しまわしを見せます。
14... Nc5! 15. Qd1 b5 16. Qc1 Nfd7 17. Nh4 Ne6
d4 にナイトを運ぶのは、スタンダードなマヌーバリングです。d4 に跳びこむタイミングと、もう1つのナイトとの行方にも要注目です。
18. Nf5 Bf8 19. Nf3 f6!
e5 を守るだけでなく、f7 にマスを作ることで白マスビショップを退けるようにします。
20. N3h4 a4! 21. b4 Nb6!
これで5段目に2つのナイトが跳びこむ準備ができました。先に黒陣に侵入している白のナイトはさほど脅威ではなく、ここまでくれば私も迷わず黒を持ちたいポジションです。
22. Ne3 Bf7 23. Nhf5 Rad8 24. Ng4 Nc4 25. Bc3 Nd4 26. f4 Nxf5 27. exf5 h5 28. Nf2 exf4 29. gxf4
白のナイトを捌いてしまい、ポーンストラクチャーも乱してしまいます。これで白のキングサイドを弱めると同時に、2つのビショップとナイトで、さらにクイーンサイドにプレッシャーをかけます。
29... Qb6 30. Be4 c5! 31. Kh2 cxb4 32. axb4 a3 33. Re2 a2
いまだにマテリアルはイコールですが、白はどうしようもないポジションです。こうした丁寧なプレーができるのであれば、大きなリスクを取ることなく、Caro-Kann でも大きく勝ち星を稼ぐことができるでしょう。
34. Rg1 Kh8 35. Nd3 Nd6 36. Ne5 fxe5 37. Bf3 Nxf5 38. fxe5 Nd4 39. Rf2 Qc7 40. Ba1 Qxe5+ 41. Kh1 Bd5 42. Bxd5 Qxd5+ 43. Rgg2 Qe6 44. Qf4 Qxh3+ 0-1
Prohaszka はDubai Open ではレイティングを下げたものの、現在ハンガリーの国内ランキング8位に食い込む強豪で、これからの活躍次第では、ハンガリーの代表入りも十分にありえます。今のところチェックしているのは、Caro-Kann の試合が中心ですが、今後は他のゲームも見ながら、応援を続けていきたいですね。
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