昨日、新潟市の天寿園で開催された国際親善チェス大会 in 新潟 2017 に参加してきました。この大会は新潟チェスクラブが主催するもので、今年で13回目を迎えます。一般の参加者は80名ほどで、A~Dの各クラス上位5名の入賞者が呼ばれる表彰式は壮観です。Aクラス優勝のAlex を始め、各クラスの入賞者の皆さん、おめでとうございます!
私はAクラスのさらに上、Sクラスと呼ばれる日本選抜4名のチームに入り、中国からのゲスト4名との45分指し切り対抗戦に参加してきました。今夜の記事では、私が参加したこちらの対抗戦の様子を中心にお届けしようと思います。今年の日本選抜のメンバーと、中国からのゲストは以下の通りです。
羽生善治 (FM, JPN, 2399)
小島慎也 (IM, JPN, 2401)
南條遼介 (IM, JPN, 2338)
青嶋未来 (JPN, 2257)
Yu Shaoteng (GM, CHN, 2469)
Xiu Deshun (GM, CHN, 2532)
Chen Qi (CHN, 2345)
Yu Kaifeng (FM, CHN, 2389)
日本のメンバーはIM の私と南條くん、将棋棋士の羽生さんと青嶋くんの4名です。去年のメンバーから馬場さんが抜け、代わりに私が入る構成になっています。一方で中国のメンバーは経験豊富なGM 2人、そして注目の若手2人という構成です。14歳のYu Kaifeng は、中国でU12 からU14 まで3連覇中の天才少年で、今後の成長が大きく期待されています。
オリンピアード同様、このように4つの席を並べて試合を行います。初戦は日本チームが全員白を持ちますが、残念ながら全員が負け... 厳しいスタートとなります。昼食後にスタートした2R は日本側が全員黒でしたが、南條くんが見せてくれました。
Yu Kaifeng (FM, CHN, 2389) - Nanjo, R (IM, JPN, 2338)
Niigata (2)
1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. Bb5+ Nd7 4. d4 cxd4 5. Qxd4 a6 6. Bxd7+ Bxd7 7. Nc3 e5 8. Qd3 h6 9. O-O Nf6 10. a4 Rc8 11. Rd1 Be7 12. Nd2 Bg4 13. Re1 O-O 14. Nc4 Be6 15. Ne3 Qd7 16. a5 Bd8 17. Rd1 Rc6 18. Ncd5 Qc8 19. c4 Ng4 20. b3 Nxe3 21. Bxe3 f5 22. Nb4 Rc7 23. exf5 Bxf5 24. Qxd6 Be7 25. Qd2 Bxb4 26. Qxb4 Be4!
Yu Kaifeng の棋譜を見ると
1. d4 が中心だと思っていましたが、今回は
1. e4 できました。序盤、巧みな指しまわしで黒のポーンを奪いますが、ここから南條くんは反撃に出ます。
27. h3 Qf5 28. Kh2 Qg6 29. f3?
やや不自然ではあっても、ここは
29. Rg1 と指しておけばまだ白が優勢でした。私は隣のボードでこの試合を見ており、このタイミングがチャンスだと感じていました。
29... Bxf31 30. gxf3 Rxf3 31. Rg1 Qh5 32. Rg3 Rxg3 33. Kxg3 Rf7!-+
f3 でビショップを捨て、ルークを最大限に活用すれば黒のアタックは決まります。白はキングを守り切ることができません。
34. Bf4 Qe2 35. Bxh6 Rf3+ 36. Kh4 Qe4+ 0-1
こうして南條くんが一矢報い、2R 連続での全敗は免れました。それでも、中国側は強いです! 羽生さん、私、青嶋くんは連敗で、次に日本チームが白が持つ3R に望みを託します。私は南條くんに負けたばかりのYu Kaifeng との対戦です。
Kojima, S (IM, JPN, 2401) - Yu Kaifeng (FM, CHN, 2389)
Niigata 2017 (3)
1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O a6 7. Nc3 c6 8. e4 Nfd7 9. Be3 b5 10. cxb5 axb5 11. a3 Nb6 12. Nd2 N8d7 13. Qc2 e5 14. dxe5 Nxe5 15. Rfd1 Ng4 16. Nf1 Nxe3 17. Nxe3 Qe7 18. Qd2 Rd8 19. Rac1 Be6 20. Ne2 Bb3 21. Re1 c5 22. Nc3 Qe5 23. Nxb5 Qxb2 24. Qxb2 Bxb2 25. Rb1 Na4 26. Nd1 Rab8 27. Nxb2 Nxb2 28. Rxb2 Rxb5
序盤はしっくりきませんでしたが、こうして駒を捌いてみると白はさほど悪くないように思えます。黒のパスポーンをうまくブロックし、反撃のチャンスを伺いします。
29. Bf1 c4 30. Rc1 Ra8 31. Rd2 Rxa3 32. Rxd6 Rc5 33. Rc3!
a3 のポーンのほうが弱く見えていましたが、これを取るためにはルークを1つ回さなければいけないため、白は無事にd6 と交換することができます。そしてここまで進んでみると、黒のcポーンはパスポーンとしての強みよりも、孤立ポーンとしての弱みのほうが目立ってきます。
33... Kg7 34. Rd4 h5?!
34手目の私の手を見て、c4 のポーンを守れないと気付いたYu Kaifeng は明らかにがっかりとした表情をしました。
34... Ra4? 35. Rxb3! を見通していたのかもしれません。ここからは黒がドローを目指すエンドゲームですが、その手順が正確ではありません。
34... Ra1! 35. Kg2 Kf6 36. f4 Ra2+ 37. Kg1 Rca5 38. Bxc4 Bxc4 39. Rcxc4 Kg7 一度ルークが潜り込む手は意味があるのか私も疑問でしたが、こうして
f2-f4 を白に突かせてしまえば、7段目を抑えてドローにできそうです。
35. Bxc4 Ra1+ 36. Kg2 Bxc4 37. Rcxc4 Rxc4 38. Rxc4
こうして白は何事もなくc4 のポーンを取ってしまいました。この同じサイドにポーンが4対3のルークエンディングは、正確に指せばドローだと思いますが、私は実戦的に勝つ方法を勉強したことがあったため、残り少ない持ち時間でそれを試してみることにします。ちなみに私はすでに5分を切って棋譜を取っていなかったため、棋譜が正確でない可能性があります。
38... Ra3 39. Rc6 Ra2 40. Kf3 Rb2 41. e5!
白が勝つとすれば、
e4-e5 までポーンを進め、f7 のポーンを固定する必要があります。この弱点を解消できなければ、黒は長くパッシブなプレーを強いられます。
41... Rb5 42. Ke4 Rb2 43. Rf6!
e5 までポーンを進めたメリットとして、この手でf2 を守れることが挙げられます。これで黒の反撃を一時的に抑え込み、白はさらなるポジションの改善を考えます。
43... Rb4+ 44. Ke3 Ra4 45. Rd6! Ra5 46. f4!
ルークをdファイルに戻したうえで、fポーンを伸ばしてe5 を守れば、白が理想とした形にだいぶ近づいてきました。黒の反撃をルークを挟んで防ぎ、キングをhファイルに戻しにいきます。
46... Ra3+ 47. Rd3 Ra2 48. Rd2 Ra4 49. Kf3 Rb4 50. Rd7 Kf8 51. Kg2 Ke8 52. Ra7 Kf8 53. Kh3 Rb2 54. Rc7 Kg8 55. Ra7 Kf8 56. Kh4!
自信がなかったため、一度ルークの動きを挟みましたが、勝負をするのであればh2 を捨ててキングを前進させるほかありません!
56... Rxh2+ 57. Kg5 Rb2 58. e6! Rb5+ 59. Kh6!+-
59. Kf6?? Rf5# は大変なことになりますが、逆側に潜り込んでg6 のポーンを取れば一安心です。
59... fxe6 60. Kxg6 Rf5 61. Rh7 Ra5 62. Rxh5 Ra3 63. Kf6 Ke8
63... Rxg3 64. Rh8+ Rg8 65. Rxg8+ Kxg8 66. Kxe6 Kf8 67. f5 Ke8 68. f6 Kf8 69. f7+- ルークを交換したポーンエンディングは、もちろん白の勝ちです。
64. Kxe6?!
しかし、最後にやや詰めが甘かったです。本譜でも正確に指せば勝ちになりますが、少し難しくなってしまいます。
64. g4! Ra4 65. Kxe6 Rxf4 66. Rh8+ Rf8 67. Rxf8+ Kxf8 68. Kf6+- なら間違いなく勝ちです。
g3-g4 から4段目にポーンが並ぶと、取られやすくなってしまうのではと思い込んでしまいましたが、ポーンエンディングに持ち込めば問題ないことを見落としていました。
64... Kf8?
試合中、ポーンを取られたら勝てるのか自信がなくなってきました。試合後に振り返ると、
64... Re3+ 65. Kf6 Rxg3 66. Rh8+ Kd7 67. f5 Rf3 68. Rf8! Rf1 69. Kg7 Rh1 70. f6 Rg1+ 71. Kf7 Rf1 72. Ra8+- これで勝ちであることが分かりました。時間は2分を切っていたため、この変化になっていた場合、落ち着いて68手目の手を見つけられたかは疑問です。
65. Kf6 Ra6+ 66. Kg5 Kg7 67. Rh1 Rb6 68. Ra1 Rb7 69. g4 Rb6 70. Ra7+ Kg8 71. f5 Rb4 72. Kh5 Rf4 73. Kg5 Rb4 74. f6 Rc4 75. Kh5 Rb4 76. g5 Rb8 77. Kg6 Rf8 1-0
2コネクテッドパスポーンができれば、残り時間が1分台でもさほど問題はありません。最後、ステールメイトに気をつけつつ、フィニッシュを何にするか悩んでいたところで相手がリザイン。3R にしてようやく貴重な1勝を挙げることができました。
4R のXiu Deshun - 南條戦
4R のChen Qi - 青嶋戦と、Yu Kaifeng - 羽生戦
3R の残り試合は残念ながら3人とも負け。4R も青嶋くんがChen Qi からなんとかドローを取るに留まり、全試合を終えました。今年の日中対抗戦は、日本側の2勝13敗1ドローと厳しい結果でした。レイティングを考えれば、もう少しポイントが取れても良かったですが、全体の試合運びから、とっさの判断まで、まだまだ彼らとの差を感じました。また東京で鍛えなおして、来年以降もっとポイントが取れるように頑張りたいと思います! こうした中国のマスターたちとの試合の機会を与えてくださった新潟チェスクラブと、今大会の運営に協力された皆さんに深く感謝致します。
今回の日中対抗戦の棋譜や各クラスの結果、大会の様子の写真などは、今後
新潟チェスクラブのHP に掲載されることになると思います。私もそこで全棋譜をあらためてチェックしてみようと思いますので、皆さんも公開を楽しみに待っていてください。それではまた次のイベントでもよろしくお願い致します。
Sクラスの参加賞として、クイーンをモデルにしたチャームを頂きました。
今回食べ物で印象的だったのは、ヤスダヨーグルトのフローズンヨーグルト。新潟駅に併設されたCoCoLo 南館で購入できます。