2018/12/28

2018 公式戦戦績


今年は初めて訪問するモンテネグロで、3か月間試合をこなしました

今年もすべての公式戦が終わりましたので、戦績の集計をしようと思います。ご存知の通り、オリンピアード後に日本に戻らずにそのまま遠征に出た私は、ここ数年で最も多く海外でのFIDE公式戦をこなしました。当然ですがその分、国内での公式戦の数が減っています。

JCA 公式戦 31勝2敗6ドロー、勝率 87%
FIDE 公式戦 41勝23敗28ドロー、勝率 59%


国内はまずまずで、全日本とジャパンリーグで計1ドローでしたので、例年よりもドローの割合は少ないように思えます。一方で、FIDE公式戦は全日本とジャパンリーグで貯金を作りましたが、11-12月の下り坂でそれをほとんど吐き出してしまいました。遠征中はGMにも5勝できましたが、それ以上に下に負けてしまったのをなんとかしないといけませんね。

年明けは14日からセルビアのノビサドで、再びGMトーナメントに戻ります。2400台にレイティングを戻すことは当然として、またGMノームに迫る戦績を安定して取れるように頑張ります。

2018/12/25

Third Saturday GM December 2018 R9


モンテネグロの、そして今年の最終戦の相手はインドのWIM Praytyusha です。今大会で一番レイティングが低いプレーヤーとはいえ、Nikcevic とDrasko に勝っており、8R終了時点では私よりもポイントを取っています。10月、11月とモンテネグロの最終戦では負けて大会を終えている私としては、なんとしても勝ってブダペストに戻りたいところでした。

Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Praytyusha, B (WIM, IND, 2273)
Third Saturday GM December 2018 (9)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 a6 5. cxd5 exd5 6. Bg5!?



このa7-a6 を早めに指すQueen's Gambit Declined は近年爆発的に増えており、私も黒番で指そうかと研究していました。実は序盤を記事の中で省いた7RのBenkovic戦もこのオープニングで、今大会で2回目になります。最終戦は早いスタートだったので、研究し直す時間は十分とは言えませんでしたが、前夜に見つけた新しいアイディアを試してみることにしました。ちなみに7Rでは、6. Bf4 と指しています。

6... Be6 7. e3 Nbd7 8. h3!?


これがこの試合で是非試そうと思っていた手です。よりポピュラーな8. Bd3 h6 9. Bh4 g5 10. Bg3 Nh5 11. Be5 Ng7 は白が良いのかさほど自信がありませんでした。

8... Bd6 9. Bd3 h6?!



Praytyusha は8. h3 のアイディアを知らず、またこの局面で少し不用心であったように思えます。白は黒マスビショップを交換したいため、Bg5-Bf4 と下げたいので、このポーン突きは白を助けています。代わりに9... c6 10. Bf4 Qc7 11. Bxd6 Qxd6 12. 0-0 0-0 と進めるのが良かったでしょう。これでも白は黒マスビショップの交換に成功し、白マスビショップの働きの差で小さな優位を保てるでしょう。

10. Bf4! Qe7 11. O-O


f4 でのビショップ交換は、f4-f5 突きのスレットや、eファイルが開いたことを利用したオープンファイルのコントロール、e5 のサポートをが強まったことによるNf3-Ne5 のアイディアが生まれ、白にとって歓迎すべきものです。ならば黒マスビショップの交換はしばらく様子を見てゲームを進めます。上記のc7-c6, Qd8-Qc7 であれば、黒は早めにd6 でのビショップ交換を催促できました。

11... O-O 12. Rc1 c6 13. Re1 Rfe8 14. a3 Rac8 15. Ne5



黒マスビショップの交換はいつでも白にとって悪くありませんが、盤上に残したままe5 のマスを活用するアイディアも当然ありえます。黒のアクションの起こし方は限られているので、本譜のようにc6-c5 であればクイーンを上げ、そうでなければBf4-Bg3, f2-f4 を考えていました。

15... c5 16. Qf3 b5?!


少しクイーンサイドのポーンの伸び方やルークの位置は違いますが、これに似たポジションを前夜に見てアイディアを拾ってきました。ここはシンプルなタクティクスのチャンスです。

17. Nxd7! Qxd7 18. Bxh6!



17... Bxd7 18. Nxd5 Nxd5 19. Qxd5 Bxf4 20. exf4 Qxe1+ 21. Rxe1 Rxe1+ 22. Kh2 と進めても白が良いと思っていましたが、本譜もわかりやすく駒得です。

18... Ne4 19. Bf4


19. Bxe4! dxe4 20. Nxe4 Bd5 21. Nf6+! gxf6 22. Qxf6 Bf8 23. Qg5+ Kh7 24. Bxf8 Rxf8 25. Qh5+ Kg7 26. e4! Ba2 27. Qg5+ Kh7 28. Rxc5+- この手筋は読んでいましたが、26手目を見つけることができずに断念しました。

19... cxd4?



この捌き方は黒にリスクが大きいでしょう。19... Nxc3 20. Rxc3 c4 21. Bc2 b4 22. axb4 Bxb4 23. Ra1 と進んだ形は、白がエクスチェンジを落としてしまいますが、強力なダブルビショップは十分にそれをカバーできそうです。

20. Nxe4 dxe4 21. Qxe4 Bxf4 22. Rxc8 Rxc8 23. Qh7+ Kf8 24. exf4


1ポーンアップでここまで捌ければ、白の優位は揺るがないでしょう。f4-f5 が次にスレットになっています。

25... f5?



当然24... f6 がベターですが、これもg6 のマスを弱めるのが痛手となります。

25. Re5! Qc6 26. g3


悪い手ではないですが、この辺りで正確に読めていないのが小さな反省点です。26. Kh2 Qc1 27. Rxe6 Qxf4+ 28. Kg1 Rc1+ 27. Bf1+! は全く問題ないため、先にキングを逃げておいたほうが余計なカウンターを考えずにすみました。

26... Qc1+ 27. Kh2 Qxb2 28. Re2 Qb3



29. Rxe6 Qxd3 30. Qh8+ も白勝ちです。

29. Bxf5 Bg8 30. Qg6 Rd8 31. Qg5 Re8 32. Rxe8+


32. Bg6!+- は美しいフィニッシュでした。

32... Kxe8 33. Qxg7 Bd5 34. Bg6+?!



ここまで白は駒を捌き、後はdポーンさえ消してしまえばほぼ危ないところは無いと言えます。しかし、黒の33手目の意味が分からず、ピンになるようdファイルに黒キングを寄せてからポーンを取るのが安全だと思ってしまいました。黒のアイディアは当然、Qb3-Qf3 ですので、34. Qxd4 Qf3 35. Qe3++- でクイーンを交換できるよう、黒キングはeファイルに留めたままでいるのが簡単でした。

34... Kd8 35. Qf6+?!


黒のクイーンの動きに気付いてがっくりしますが、それでもdポーンを取れば簡単でした。35. Qxd4! Qf3 36. Qb6+! Kd7 37. Bf5+ Ke7 38. Qe3++- やはり黒キングをeファイルに押し戻し、強制交換で白の勝ちです。

35... Kc7 36. Qe5+ Kc6 37. Qe8+ Kc7 38. Qe7+ Kb8?



オリンピアードでの最終戦も、ちょっとした勘違いから勝ちを逃し続けるクイーンエンディングになり、とても勝ち切るのに苦労しましたが、ここでは相手が早めにミスをしてくれてラッキーでした。このキングの位置では、白は理想的なビショップ交換に持ち込めます。

39. Qe5+ Kb7 40. Be4 Bxe4 41. Qxe4+ Kc7 42. Qxd4+-


次にaポーンは取られますが、クイーンが黒キングをカットオフしており、白が先手ですのでこれは問題なく勝てそうです。

42... Qxa3 43. f5 b4 44. f6 b3 45. f7 b2 46. Qa7+ Kc6 47. Qb8


私のアイディアは互いにクイーンを作って取り合った後、Qc8+ からa6 を取ることです。多少遠回りになっても黒のポーンをすべて消してしまえば、白はキングサイドの3コネクテッドパスポーンをゆっくり利用するだけです。

47... Kd7 48. h4 a5 49. Qe8+ Kc7 50. f8=Q 1-0



a5 にポーンを進めたことで、c5 でのチェックがポーン取りのスレットになります。50... Qxf8 51. Qxf8 b1=Q 52. Qc5++- で白の勝ちです。2つ負け越しでのフィニッシュは、もちろん満足できる戦績ではありませんが、最終戦を初めて勝って締めくくることができ、その点は一安心です。2019年は2300代に久々にレイティングを落としてのスタートになりますが、また気持ちを新たに頑張っていこうと思います。

12/15 14:00 (22:00) Tsolakidou, S (IM, GRE, 2387) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/16 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Drasko, M (GM MNE, 2438) 1-0
12/17 09:00 (17:00) Lundin, J (FM, SWE, 2312) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/17 15:00 (23:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Nikcevic (GM, MNE, 2434) 0-1
12/18 14:00 (22:00) Stajonovic, M (GM, SRB, 2522) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/19 Rest Day
12/20 14:00 (22:00) Krishnater, K (FM, IND, 2305) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/21 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Benkovic, P (IM, SRB, 2401) 0-1
12/22 14:00 (22:00) Ivic, V (IM, SRB, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/23 10:00 (18:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Praytyusha, B (WIM, IND, 2273) 1-0

Third Saturday GM December 2018

+5 Tsolakidou
+3 Ivic
+1 Stajonovic, Benkovic, Krishnater
+-0 Nikcevic
-2 Kojima
-3 Drasko, Lundin, Praytyusha

8RでNikcevic を破ったTsolakidou は、そのまま5つ勝ち越しでトーナメントを終え、GMノームを獲得しました。この3か月のGMトーナメントでノームを獲得してきたのは、全て10代のプレーヤーです。彼らの力強いプレーには舌を巻きますが、感心しているだけでなく、対抗していけるだけの力をつけていかなければいけませんね。


3か月連続で戦ったモンテネグロ、来月は来ないことを決めましたが、また機会を見て戻ってこようと思います!

2018/12/23

Third Saturday GM December 2018 R8


16歳にして強豪セルビアの代表入りを果たしたIvic は、今大会最もノームチャンスのあるプレーヤーだと個人的には注目していました。しかし、3R でTsolakidou 相手にブランダーで8手で負けを喫し、苦しい立ち上がりとなります。それでも貯金を少しずつ増やし、トーナメント終盤へとやってきました。

Ivic, V (IM, SRB, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
Third Saturday GM December 2018 (7)

1. e4 c6 2. Nc3 d5 3. Nf3 dxe4!?



Caro-Kann の連敗がどうにも止まらず、Two Knights Variation で新しい手を投入してみることにします。将来にはいくつかの変化を指しわけられるようにしたいですね。

4. Nxe4 Nf6 5. Qe2!?


以前、羽生さん、青嶋くんとトレーニングをした際に、この変化が流行の兆しを見せていることを私から示唆しました。5. Nxf6+ exf6 と進むのが自然に見えますが、1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Nf6 5. Nxf6+ exf6 に比べ、6. c3 Bd6 7. Bd3 0-0 8. Qc2! Re8+ 9. Ne2 というセットアップが使えません。これがTwo Knights Variation で、f3 にナイトがすでに展開されたことを見てNg8-Nf6 をぶつけるアイディアなのです。本譜はf6 でのナイト交換を保留し、黒の出方を伺います。

5... Bg4!?



ここは事前の研究でも何を指すか悩みました。5... Nxe4 6. Qxe4 Qa5!? 7. Qf4 Qf5 8. Qe3 Qxc2 9. Bd3 Qa4 はポーンの代償がありそうなギャンビットです。

6. Nxf6+ gxf6 7. h3 Bxf3 8. Qxf3 e6 9. g3


ポーンストラクチャーこそ違いますが、Two Knights のメインラインに近くなりました。白のクイーンに2回動いてもらっているため、黒は展開の面では十分です。白はdポーンをどう突くか工夫が必要ですが、まずはフィアンケットからクイーンサイドへのプレッシャーを見せておきます。

9... Nd7?!



事前に研究してきたPaichadze のゲームでは、9. b3 Bd6 10. Bb2 Be5 11. c3 Nd7 12. d4 Bd6 という手順で、これだとクイーンサイドのアタックにぎりぎりで対抗できます。g2 のビショップは私の予想以上に強力で、この形では逆サイドから攻めあうのは無茶でした。9... Qd5! 10. Bg2 (10. Qxf6?? Qe4+-+) 10... Qxf3 11. Bxf3 Nd7= というアイディアでクイーンを確実に交換しておくのが安全策です。10... Qe4+ が見えないとはひどい...

10. Bg2 Bd6 11. O-O Qe7 12. d4 O-O-O


試合後にIvic からは、クイーンサイドキャスリングではなく、f6-f5, Nd7-Nf6 でなければダメなのではないかと指摘されました。私もそれは考えていたのですが、12... f5 13. b4 と早く仕掛けるのが良いのではないか思い、b7 を守るためにもキャスリングを急ぎました。

13. c4 Rhg8 14. c5!



ギャンビットのつもりでb2-b4 を仕掛けてくるかと思いましたが、Ivic は慎重です。しかし、これでも十分白の攻めは早く、かつ強力でした。

14... Bc7 15. b4 Nb8


このアイディアでbファイルからの攻めに備えるアイディアを見つけた際は、黒のgファイルからの攻めも十分いけると思ったのですが、やはりナイトがキングサイドから離れては黒の攻撃力は不十分です。

16. Be3 Rg6 17. Rab1 Rdg8 18. Rb2



g3 のサクリファイスに何で備えるのかと思いましたが、これは予想外でした。シンプルなアイディアですが、遠くbファイルからg2 のビショップを守り、Rf1-Rb1 とbファイルのダブルルークにも備えています。

18... f5 19. b5 Qd7


c6 を受けつつ、d4 にプレッシャーをかけ、f5-f4 を見せたつもりでした。しかし、ここはもう思い切ってピースを捨てるしかありません。19... Bxg3 20. fxg3 Rxg3 21. Qf4 Rxh3 これで3つのポーンを回収しますが、白はダブルビショップですし、ゆっくりとキングの安全性を確保して白が有利なのは確実でしょう。

20. Kh1!+-



手堅いですね。20. Rfb1? Bxg3! 21. fxg3 Rxg3 22. Qf4 Qd5! が私のアイディアだったのですが、キングをhファイルに避けられてしまうとこれができません。h3 のポーンも取れなくなった以上、黒はこれ以上キングサイドを攻めることが難しくなります。

20... f4


20... Qd5 21. Qe2! Qd7 22. bxc6 Nxc6 23. Rxb7!! Kxb7 24. Qb5+ Bb6 25. cxb6 a6 26. Qb3+- これはエクスチェンジを捨てますが、使い勝手の悪い黒のルークよりも、白のダブルビショップが強力であることは明らかです。

21. bxc6 bxc6 22. Bxf4 Qxd4 23. Rxb8+!



きっちり決めてきますね。完敗です。

23... Kxb8 24. Qxc6 1-0


すでに今日の最終戦も終わり、結果は下にある通りです。また最終戦についての記事は、明日以降更新します。

12/15 14:00 (22:00) Tsolakidou, S (IM, GRE, 2387) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/16 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Drasko, M (GM MNE, 2438) 1-0
12/17 09:00 (17:00) Lundin, J (FM, SWE, 2312) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/17 15:00 (23:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Nikcevic (GM, MNE, 2434) 0-1
12/18 14:00 (22:00) Stajonovic, M (GM, SRB, 2522) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/19 Rest Day
12/20 14:00 (22:00) Krishnater, K (FM, IND, 2305) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/21 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Benkovic, P (IM, SRB, 2401) 0-1
12/22 14:00 (22:00) Ivic, V (IM, SRB, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/23 10:00 (18:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Bodda, P (WIM, IND, 2273) 1-0

Third Saturday GM December 2018

+5 Tsolakidou
+3 Ivic,
+1 Stajonovic, Benkovic, Krishnater
+-0 Nikcevic,
-2 Kojima,
-3 Drasko, Lundin, Bodda


2018/12/22

Third Saturday GM December 2018 R7


昨日は色々と事件がありました。Benkovic は試合直前にドローオファーし、私がこれを蹴ると、彼は試合開始時になっても席に着かず、オーガナイザー、アービターと何やら話し始めました。10分たっても初手を指さないので、どういうことか話を聞きにいくと、オーガナイザーはこう説明してくれました。Benkovic は前日の試合で相手の時間落ちを指摘したが、アービターはそれを認めず、試合続行を指示。試合は結局2ポーンアップからBenkovic がドローにしてしまいましたが、アービターの裁定に不満を持った彼は、翌日の私との試合をやりたくないと言い出したのです。

これは私の不戦勝になるのかと思いましたが、35分ほど持ち時間が減ったところでBenkovic は席に着き、試合を開始しました。戦績不振によるトーナメントリタイア、病欠、遅刻による不戦勝はこれまで見たことがありましたが、対戦相手が会場にいるのに試合が始まらないというのは長いチェス歴の中で初めてでした。時間落ち云々は直接時計の状態を見ていないので何とも言えませんが、色々と考えさせられる出来事でした。


Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Benkovic, P (IM, SRB, 2401)
Third Saturday GM December 2018 (7)
Position after 40... Qd6

序盤で多少良くなった私は、このポジションまできて時間が増えても、まだ自分のほうが有利だと信じて疑いませんでした。しかし、コンピュータの評価はやや黒良しです。この辺りの形勢評価については、また時間のある時に考えてみるつもりです。

41. Qc5 Qa6 42. Qb6 Nd3+ 43. Kf1 Qxb6 44. Nxb6 Nc5 45. Bc2 Kf8


クイーンをいくらか右往左往してきましたが、進展がないのでクイーンを交換してマイナーピースエンディングでの勝負に踏み切ります。

46. Nc8 Ke8 47. Nd6+ Ke7 48. Nb5 Nfd7 49. Ke2 Nb8 50. Kd2 Nc6 51. Kc3 Nb4 52. Bb1 Nc6 53. Bc2 Nb4 54. Nd4!?



aポーンがないせいでb4 がアウトポストとなり、黒のナイトも十分な働きができています。54. Bc2 のドローで試合を終わらせても良かったのですが、もう少し続けて何かが起こせることを期待します。

54... Kd6 55. Bb1 Ke7 56. Ne2 Kd6 57. Nf4 Nc6 58. Ne2 Ke5 59. Nd4 Nb4!? 60. f4+


fポーンを突くチャンスを貰えたのは意外でした。59... Kd6 ならばドローにしかならないでしょう。これでf7 を狙いやすくなり、多少白がチャンスを作りやすくなったと感じました。

60... Kd6 61. Nf3 Nc6 62. Ng5 Nd8 63. Bc2 Nce6 64. Nf3 Nc6 65. e4



黒の孤立ポーンを捌いてしまいますが、代わりにビショップがc4, e4 のマスを使うことができ、アクティブなります。しかし、これによってf4 のポーンが土台として多少弱くなるため、g6-g5 の可能性が出てくることをもう少し考慮すべきでした。ただここはもう互いに時間がほとんどありません。

65... Kc5 66. exd5 Kxd5 67. Bd3 Kc5 68. Bc4 Kd6 69. Bb5 Nb4 70. Ne5 Nd5+ 71. Kd2 Nd8 72. Bc4 g5!


h5-h4 をメインで警戒しており、この手を軽視していました。ここで落ち着いて考えられたら良かったのですが...

73. Bxd5?!



73. Nd3= と退けば何事もないのですが、f7 への攻撃が私のメインのアイディアだったため、ナイトを下げることは頭にありませんでした。

73... Kxd5 74. Kd3?!


74. Nc4 gxf4 75. gxf4 Ke4 76. Nxa5 Kxf4 77. Ke2= ならば安全にドローでしょう。

74... gxf4 75. gxf4 Ne6 76. g3 h4!



どこかで黒はf7 を受ける1手を挟み、それによってできた余裕で、白はf4 をカバーするかa5 を狙いにいくか選べると思っていました。しかしBenkovic は容赦なく私のキングサイドのポーンを崩しにきます。

77. Ke3 hxg3?


77... h3! 78. Kf2 Nd4 79. Nxf7 h2 80. Kg2 Nxb3 81. Ne5 a4 82. Nd3 a3 83. Nb4+ Kc4 84. Na2 Nc5-+ ならば黒の勝ちです。aとhに離れたパスポーンを作られては、止めることはできません。

78. Kf3??


時間がないとはいえひどかったですね。78. Nc4 Nxf4 (78... Nd4 79. Nxa5 Kc5 80. Nb7+ Kb4 81. Nd6 f5 82. Nc4 Nxb3 83. Ne5 Kc5 84. Kf3=) 79. Nxa5 g2 80. Kf2 Kc5 81. b4+ Kxb4 82. Nb7 Kb3 83. Nd6 f6 84. Ne4 f5 85. Nd6= f4 を見捨て、aポーンを取りにいくのがドローの変化でした。最後まで勝ちの低いf7 にこだわったのが完全に失敗です。

78... g2 0-1



結果自体は悔しいですし、失敗したことは反省ですが、安易にドローにせずに勝負にいったことは後悔していないです。こうした失敗から学んだことが、いつか結果に結びつくと信じています。

12/15 14:00 (22:00) Tsolakidou, S (IM, GRE, 2387) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/16 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Drasko, M (GM MNE, 2438) 1-0
12/17 09:00 (17:00) Lundin, J (FM, SWE, 2312) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/17 15:00 (23:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Nikcevic (GM, MNE, 2434) 0-1
12/18 14:00 (22:00) Stajonovic, M (GM, SRB, 2522) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/19 Rest Day
12/20 14:00 (22:00) Krishnater, K (FM, IND, 2305) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/21 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Benkovic, P (IM, SRB, 2401) 0-1
12/22 14:00 (22:00) Ivic, V (IM, SRB, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/23 10:00 (18:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Bodda, P (WIM, IND, 2273)

Third Saturday GM December 2018

+4 Tsolakidou
+2 Ivic,
+1 Nikcevic, Benkovic, Krishnater
+-0 Stajonovic,
-1 Bodda
-2 Kojima, Lundin
-4 Drasko

Tsolakidou は7R も勝って独走状態に入りました。この大会の最大の注目ポイントは、彼女がGM ノームを獲得するかどうかとなっています。

2018/12/21

Third Saturday GM December 2018 R6


天気の良い日には、モンテネグロの山頂が雪で白く染まっている様子を目にすることができます。

休み明けのR6はインドの16歳、Krishnater との対戦です。ここに来る前はノヴィサドのGMトーナメントに参加していたようで、精力的にノーム獲得を目指してプレーしています。思えば10月から面子は変われど、ずっとインドの若いプレーヤーとの対戦が続いていますね。

Krishnater, K (FM, IND, 2305) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
Third Saturday GM December 2018 (6)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. cxd5 cxd5 4. Bg5



この3日間でCaro-Kann の試合を200試合以上並べましたが、初手が1. d4 でした(笑) このExchange の変化はこの遠征中初めてですが、どこかで指される可能性はあるだろうと自分なりに納得できるラインを探していました。

4... h6 5. Bh4 Qb6 6. Nc3 e6 7. Qd2 Ne7


7... Be7 8. Bxe7 Nxe7 9. e3 は堅く、ドローにはできる自信がありますが、なるべく勝ちにいけるような変化を探してきました。ちなみに7手目でドローオファーされましたが、この日はやる気満々ですので、もちろん蹴って勝負にいきます。

8. f3 Nbc6 9. Rd1 Ng6!?



これが私の用意していた新手です。前例のある9... Nf5 10. Bf2 は、将来的にf5 のナイトがe2-e4 からアタックされるので面白くないと思いました。d4 を取るのもリスキーで、あまりやりたくありません。

10. Bf2 Be7 11. e4 Bg5


この手でクイーンを脅かし、f4, e3 といった黒マスを抑えるのがNe7-Ng6 の狙いです。11. e3 であればこれを防げますが、f2 に退いたビショップとポーンの相性は当然良くありません。

12. Qc2 Nb4



私は悩んだ末に、ナイトを一度跳び込んでおくことにしました。12... O-O 13. h4 Bd8 14. a3 dxe4 15. fxe4 e5 16. h5 Nxd4 17. Rxd4 exd4 18. hxg6 Qf6 19. gxf7+ Qxf7 20. Nd1 Be6 これがコンピュータの提案ですが、人間にはかなり指しにくそうです。ただe6-e5 のアイディアは本譜でも登場します。

13. Qb1 14. g3?!


展開の遅れている白は、f4 を抑えるためとはいえ、こうした手に時間をかけるべきではないでしょう。14. h4 Bd8 15. a3 Nc6 16. h5 Nge7 17. Bd3 Bd7 はお互いに指せる展開だと思っていました。本譜では白の展開の遅さをつき、センターを開くことにします。

14... dxe4 15. fxe4 e5


f3-e4 のセンターは固く見えますが、こうして崩すのは時々見られるアイディアです。

16. d5 Be3 17. Bxe3 Qxe3+ 18. Be2 f5!



ここでさらにラインを開き、白キングにプレッシャーをかけます。これで一気に押し切れれば楽ですが、もちろんそんなに簡単ではありません。

19. a3 fxe4! 20. Qxe4


20. axb4 Qf2+ 21. Kd2 Bf5! 22. Kc1 Rac8 (22... Qg2? 23. g4!) 23. Qc2 (23. g4 Bxg4 24. Bxg4 Qf4+ 25. Kc2 Qxg4 26. Kb3=) 23... Qg2 24. d6 Kh7 25. Bh5 Qxh1 26. Nh3 Qxd1+ 27. Kxd1 Bxh3 28. Bxg6+ Kxg6 29. Qxe4+ Bf5 30. Qxe5 Kh7= 私も本譜をメインに考えていましたが、b4 のナイトを取る選択肢もありえたようです。黒はすぐにQe3-Qf2-Qg2 が決まるかと思いましたが、これも予想より複雑でした。

20... Qxe4 21. Nxe4 Nc2+ 22. Kd2 Nd4



クイーンを交換し、ひとまずは黒が満足なポジションです。d4 のナイトは重要な白マスを複数抑える好位置におり、g1 のナイトが出るマスを抑えています。

23. Rf1 Bf5 24. Nc3 Rad8 25. Nf3 Bh3


25... Nxe2 26. Kxe2 Bh3 27. Rf2 Rfe8 28. Ke3 Ne7-/+ はもう1つの変化で、安全に相手の白マスビショップを消したうえで、d5 のポーンを取りにいきます。

26. Nxd4 exd4 27. Rxf8+ Kxf8 28. Nb5 Rxd5 29. Nxa7



駒損を回復するにはポーンを取るしかありませんが、このナイトは生還できるのか、しっかり読んだうえで指さなければいけません。29. Rc1 a6 30. Nc7 Rd6 はポーンを取りかえそうとせずに戦う変化ですが、これでも黒が多少良いのが明らかですので指しづらかったでしょうか。

29... d3! 30. Bf1 Bd7!?


ビショップの退く位置はどこも良さそうで悩みました。将来的なNg6-Ne5-Nc4+ をサポートするために、c4 のマスに利く30... Be6 も、dポーンが進んだ際にプロモーションのマスを抑える30... Bg4 もそれぞれ良さがあるため、どこがベストなのか判断は難しいところです。本譜の手はナイトが逃げる可能性のあるb5 を抑えておき、a4 にも白がポーンを進めづらくする狙いでした。

31. a4?



そのポーンを進めさせないための30... Ba4 のつもりでしたので、彼がこの手をチョイスしたことにとても驚きました。すぐにポーンを捨て、c8 にナイトを逃がせるようにする作戦だと分かりましたが、私が考えていた変化と比較して大きなマイナスがあります。31. b4! Rd6 32. a4 Ne5 33. Nb5 Bxb5 34. axb5 Rd4 35. Bg2 Rxb4 36. Bxb7 Rxb5 37. Be4=/+ これであれば、黒はd3 のパスポーンを簡単には活かせず、白はまだ粘れたでしょう。

31... Ne5! 32. Bg2


a4 のポーンの回収は後回しにして、Ne5-Nc4 を狙うのが正解です。32. Nb5 Bxb5 33. axb5 Rxb5 34. b4 (34. Kc3 Rc5+ 35. Kd4 d2 36. Be2 Rc1 37. Rd1 Nc4! 38. Kd3 Nxb2+ 39. Kxd2 Rxd1+ 40. Bxd1 Nxd1 41. Kxd1 Kf7-+) 34... Rb6! (34... Rxb4? 35. Bxd3 Rd4 36. Ke3 Rxd3+ 37. Ke4=/+) 35. Bg2 Rxb4-+ これも2ポーンアップになった黒が勝てるでしょう。

32... Rc5!-+



上記の31. b4 の変化と比較して31. a4 が悪いのは、c5 のマスを抑えていないためにこの手を許してしまうことです。

33. Rc1 Rxc1 34. Kxc1 Nc4!


おそらくKrishnater は31手目の時点でここまで見えていなかったのでしょう。キングが戻ってくる前に、d2 の黒マスを抑えてしまえば、白はプロモーションを止めるためにピースを捨てざるをえなくなります。

35. Bf3 Bxa4 0-1



ダブペストでは逃した2勝目をこのラウンドで挙げ、少しだけ気持ちが上向きました。白を引く今日の試合も、なんとか勝ってイーブンに戻したいですね。

12/15 14:00 (22:00) Tsolakidou, S (IM, GRE, 2387) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/16 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Drasko, M (GM MNE, 2438) 1-0
12/17 09:00 (17:00) Lundin, J (FM, SWE, 2312) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/17 15:00 (23:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Nikcevic (GM, MNE, 2434) 0-1
12/18 14:00 (22:00) Stajonovic, M (GM, SRB, 2522) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/19 Rest Day
12/20 14:00 (22:00) Krishnater, K (FM, IND, 2305) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/21 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Benkovic, P (IM, SRB, 2401)
12/22 14:00 (22:00) Ivic, V (IM, SRB, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/23 10:00 (18:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Bodda, P (WIM, IND, 2273)

Third Saturday GM December 2018

+3 Tsolakidou
+2 Ivic, Nikcevic
+1 Krishnater
+-0 Stajonovic, Benkovic
-1 Kojima, Lundin
-2 Bodda
-4 Drasko


6Rまでが終わり、順位はこうなっています。18歳のギリシャ女子代表、Tsolakidou がDrasko を破って4勝目を挙げ、今大会初の単独トップに立ちました。残り3試合、私も悔いのないように指し続けたいと思います。

2018/12/18

Third Saturday GM December 2018 R3-5


ダブルラウンドだった3日目を含め、R3-5 はまとめて更新します。3R で私はスウェーデンのベテランFM Lundin に割とあっさり負け。10月からそうですが、黒番では負けるときは10数手で見落としがあり、30手付近でリザインせざるをえないというゲーム展開がいくつかあります。手堅く指していることを心がけてはいるつもりなのですが、どうも考えと盤上での手が上手くマッチしていないような感じがします。

4R はモンテネグロではもう顔なじみのGM Nikcevic との3回目の対戦です。10月は負け、11月は勝ちで、お互いに意識せざるをえない相手です。

Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Nikcevic (GM, MNE, 2434)
Third Saturday GM December 2018 (4)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. Qc2 c5 5. a3 Bxc3!?



先月の試合とはここで手を変えてきます。c7-c5 とビショップナイト交換の変化は珍しいですが、手順前後で4... 0-0 の変化になることがほとんどです。

6. Qxc3 b6 7. g3


前日のDrasko戦と基本の駒組みは同じでいきます。しかし、本譜のd7-d5 を防ぐのであれば、早めにb2-b4 としておくのが良かったかもしれません。Kramnik の試合をチェックしていたはずが、忘れていました。

7... Bb7 8. Bg2 O-O 9. O-O d5!?



b2-b4 が遅かったためにこの手を許しました。前日のDrasko戦と比較すると、d7-d6 がない分、黒が1テンポ得をしています。

10. cxd5


この手は悪いわけではないのですが、Hedgehog の経験が十分でない私としては避けるべきだったかもしれません。本譜のReversed Sicilian の形は白がOKですが、ややパッシヴであるとも言えます。10. b4 もしくは10. d3 と様子を見る選択肢もありました。

10... Nxd5 11. Qc2 Nc6 12. b3 e5 13. Bb2 Re8 14. d3?!



e5-e4 の押し込みを防ぐためには自然な手に見えます。しかし、Nc6-Nd4 の跳び込みを防ぐためには、14. e3! を先に指すべきでした。14... Qd7 (14... e4? 15. Nh4!) 15. d3 Rad8 16. Rfd1 f6 は、白黒反転のReversed Sicilian です。白が黒のように低く構え、d3-d4 ないしはb3-b4 のブレイクを目指す展開ですが、10手目の選択はこういう形を白で指したいかどうか、という話になります。

14... Nd4!


次にe2-e3 を突こうと思っていた私は、この手でしまったと思いました。d4 でのピース交換からeファイルを開く展開は、e2 をアタックしやすくなる黒に好ましいはずです。

15. Qd1 Qd7 16. e3 Nxf3+ 17. Qxf3 Rab8 18. Qe2



e2-e3 のポーンの形にはしましたが、不必要なピースの捌きを入れてしまい、d3, b3 の弱点が気になる展開になってしまいます。まだここからbポーンかdポーンのブレイクが決まれば勝負は分かりませんが、この後の指し方が消極的過ぎました。

18... a5 19. Qc2 Nf6 20. Bxb7 Rxb7 21. Rad1?!


私はチャンスがあるとすれば、ブレイクはd3-d4 だと思っていました。しかし、そのdポーンブレイクを成功させるために必要なのは、c5 のポーンを削ることです。21. b4! axb4 22. axb4 cxb4 23. Qc4 ならば、aファイルとcファイルを開いてルークとクイーンをアクティブにすると同時に、d3-d4 のチャンスを作ってd3 の負担を軽くすることができます。一時的に捨てたポーンは取りかえせればそれで良し、取りかえせなくてもピースのアクティビティーとe5 へのプレッシャーで問題無いという評価ができます。本譜は積極性を欠き、黒に楽をさせてしまう流れで、この辺りがHedgehog の経験不足でした。

21... h5! 22. Rfe1 Qf5



白のキング周りの白マスは弱く、黒はじっくりとそれを利用します。ナイトは白マスに利くが、黒マスビショップは決して白マスに利かないというのもポイントです。

23. a4 Rd7 24. Qc4 Red8 25. d4


なんとかd3 の負担を減らそうとポーンを進めましたが、これはAnisimov戦と同じで、ただのターゲットにしかなりません。

25... Ne4! 26. Qc2



g3 取りにはe3-e4 の返しがあることに気付いてクイーンをc2 に退きましたが、白からは特にスレットやブレイクがあるわけではなく、やはりジリ貧です。

26... h4 27. Qe2 cxd4 28. exd4 Ng5!


eファイルを開いてくれるのはありがたいと思い込んでいましたが、これでf3 のマスを狙われるといよいよ厳しくなります。ポーン交換を挟んだのは、白にf2-f4 をさせないようにするためでした。

29. Kh1 exd4 30. f4 Re7!



ポーンアップになった黒は、30... Ne6 くらいでゆっくり指しても勝てると思いますが、Nikcevic は厳しい手で勝負を決めにきます。

31. Qxe7 Qd5+ 32. Re4 Nxe4 33. Kg1


33. Rxd4 Nxg3+ 34. Kg1 Qh1+ 35. Kf2 Qf1+ 36. Ke3 Qe2# ポーンを取りかえそうとしても、ダブルチェックからぴったりメイトです。

33... d3 34. Qxh4 Qc5+ 35. Kh1 Rd6 36. Rf1 d2 37. Qg4 Nf2+ 0-1



最後、Nikcevic が隣のボードからクイーンを取ってきたので、37... d1=Q?? か?と思いましたが、そんなはずはありませんでした。この試合は完全に作戦負けで、私が自分の経験不足な形に自分からしてしまった感じがします。これも勉強ではあるのですが、次回はもう少し白がアドバンテージを活かしやすい違った指し方をしてみようと思います。

12/15 14:00 (22:00) Tsolakidou, S (IM, GRE, 2387) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/16 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Drasko, M (GM MNE, 2438) 1-0
12/17 09:00 (17:00) Lundin, J (FM, SWE, 2312) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/17 15:00 (23:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Nikcevic (GM, MNE, 2434) 0-1
12/18 14:00 (22:00) Stajonovic, M (GM, SRB, 2522) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/19 Rest Day
12/20 14:00 (22:00) Kushager, K (FM, IND, 2305) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/21 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Benkovic, P (IM, SRB, 2401)
12/22 14:00 (22:00) Ivic, V (IM, SRB, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/23 10:00 (18:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Bodda, P (WIM, IND, 2273)

Third Saturday GM December 2018

+2 Kushager, Tsolakidou
+1 Ivic, Nikcevic, Benkovic,
+-0 Stajonovic, Lundin
-2 Drasko, Kojima
-3 Bodda

今日の5Rはすでに終わり、Misha とはドローにしています。明日の休憩日はじっくりと準備をして、後半の4試合でなるべく勝てるように頑張りたいですね。

2018/12/17

Third Saturday GM December 2018 R2


Third Saturday の2戦目は、モンテネグロ元代表のGM Drasko Milan との対戦です。先月は黒番で多少有利になりながらも、チャンスを掴み切れませんでした。今月は好調の白番も引けたため、前日の負けを払拭する白星を挙げたいラウンドです。

Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Drasko, M (GM MNE, 2438)
Third Saturday GM December 2018 (2)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. Qc2 O-O 5. a3 Bxc3 6. Qxc3 d6!?



試合前にDrasko のレパートリーをチェックし、このAnti-Nimzo-Indian の6... d6 であることはほぼ確信していました。6... b6 と違い、e6-e5 からc8-h3 のダイアゴナルで白マスビショップを使う可能性を残しています。このアイディアは、Nimzo-Inadin やBogo-Indian でも見られます。

7. b4 b6!?


彼の以前の試合では、e6-e5 セットアップでしたので、こちらのチョイスには多少驚きました。しかし、このAnti-Nimzo-Inadin のメインラインは、ブダペストでAnisimov戦のためにかなり調べていました。 これまで採用しいていたe2-e3 ではなく、初めてキングサイドフィアンケットを採用します。

8. g3!? Bb7 9. Bg2 c5 10. Bb2 Nbd7 11. O-O Rc8 12. d3 d5



このdポーン突きはあまり覚えておらず、ここから考え始めます。もし12... Qe7 13. e4 ならば白はd6-d5 をストップし、Ra1-Re1, Nf3-Nh4, f2-f4 などと仕掛けるつもりでした。

13. Rac1


この手は悪くはないですが、前例がなかったようです。試合途中でe2-e4 を早く目指す作戦を思いついたので、それに沿うのであれば、13. b5! Qe7 14. Rae1 からe2-e4 を指せば良かったでしょう。

13... Qe7 14. b5 Rfd8 15. Rfe1 d4



13 b5 d4 とすぐ固める試合がKorchnoj の実戦であり、e2-e3 から開けば問題ないことを覚えていました。試合中に気にしていたのは、dポーンを突きこさずにe6-e5 と突かれることでしたが、これにはe2-e4 を返せばOK です。

16. Qd2 Ng4 17. Qf4 h5?!


Drasko はこの試合、序盤からかなり時間を使っており、20手を超える手前からかなり残り時間が少なくなっていました。h5 まで伸びたポーンは将来的にターゲットになりうるため、突くべきではありません。17... Nh6 18. e4 dxe3 19. Qxe3 Nf5 とナイトをすぐ組み替えたほうが良かったでしょう。

18. h3 e5 19. Qd2 Nh6 20. e4 Nf8?!



レストランからの帰りにDrasko とたまたま会い、この局面では20... dxe3 21. Rxe3 f6 と、ポーン交換からセンターを開いたほうが良かったといわれました。確かにe4 にポーンが残るとf5 のマスが抑えられてしまい、h6 のナイトの行き場がなくなりますが、代わりにe5 のポーンを守るためにf7-f6 を突かなくてはいけなくなります。コンピュータはそれで問題ないと評価しますが、私もDrasko も黒キング前の白マスの弱さを気にしていたので、人間の感覚では取りづらいでしょう。

21. Nh4


こうした局面ではオーソドックスなアイディアで、fポーン突きを見せると同時にf5 へのナイトの侵入を狙います。h6 の使えていないナイトとの交換は損にも思えますが、eファイルを開いてe5 をアタックできるというメリットがあります。

21... Rd6 22. Re2!?



ここは22. Qe2 g6 とh5 を守らせておき、g6-g5Nf8-Ng6 のチャンスを消しておくアイディアもありだったでしょう。

22... Nh7 23. Rce1 Kh8 24. Bc1!?


ここはeファイルをこじ開けにいく24. f4 か、本譜のビショップの組み直しかどちらか迷いました。結論を言えば、gファイルからの反撃を恐れずにf2-f4 をやっても良かったと思います。

24... g5 25. Nf5 Nxf5 26. exf5 Bxg2 27. Kxg2 Qb7+ 28. Re4!



ここはキングが避ける手が自然に見えますが、あえてピンになるようにルークをe4 に上げます。このアウトポストのルークは4段目で強力な利きを持ち、将来的にf2-f4h3-h4 のブレイクの手助けをするだろうと思っていました。

28... f6


28... Nf6? 29. Qxg5 Nxe4 30. Qxh5+ Kg7 31. Rxe4+- ならば、エクスチェンジを捨ててg,hポーンを取った白の勝勢です。

29. Qe2 Qf7 30. Rh1?!



ここからどう進めるか悩みましたが、すぐにセンターを開けば勝ちでした。30. f4! gxf4 31. gxf4 Rg8+ 32. Kh2 Qg7 33. Qf3! このシンプルなg3 のマスの守りを見落としていました。これであれば黒のgファイルからの攻撃に危険は無く、eファイルを突破した白にチャンスがあります。 33... exf4 34. Bxf4 Rd7 35. Re8!+- コンピュータが示したこの局面をよくよく考えてみましたが、不用意に伸びたままのh5 のポーンはターゲットになり、h7 のナイトは行き場がありません。白が決定的な駒得になるのも時間の問題です。

30... Rg8 31. f3!?


a3-a4 などからじっくりやるしかないのかとも思いましたが、唯一見つけたキングサイドのブレイクがこの手です。クイーンの利きを遮ってh5 へのアタックを消してしまいましうが、その代わりにg4 のマスを抑えることで、黒にg5-g4 の突き超しを許しません。

31... Qd7?



残り時間30秒で指し続けていたDrasko に決定的なミスが出ました。ここは白のh3-h4 ブレイクを止めるため、先に31... Qg7 とgファイルに回っておくしかありません。

32. h4! Qxf5


32... g4 33. f4! Qxf5 34. fxe5 Qf3+ 35. Qxf3 gxf3+ 36. Kxf3+/- これも黒が苦しい展開です。

33. hxg5 Qg6 34. Reh4 Rd7 35. Rxh5 1-0



e4 に上がったルークも上手く連携し、hファイルを素早く突破して勝利を収めました。先月のモンテネグロから白番の好調は続き、これで10試合して5勝5ドローです。全部白ならばGMノームが取れますが、それはオリンピアードのようなチーム戦以外無理ですので、黒番でも星を重ねられるように頑張ります。

12/15 14:00 (22:00) Tsolakidou, S (IM, GRE, 2387) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/16 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Drasko, M (GM MNE, 2438) 1-0
12/17 09:00 (17:00) Lundin, J (FM, SWE, 2312) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/17 15:00 (23:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Nikcevic (GM, MNE, 2434)
12/18 14:00 (22:00) Stajonovic, M (GM, SRB, 2522) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/19 Rest Day
12/20 14:00 (22:00) Kushager, K (FM, IND, 2305) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/21 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Benkovic, P (IM, SRB, 2401)
12/22 14:00 (22:00) Ivic, V (IM, SRB, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/23 10:00 (18:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Bodda, P (WIM, IND, 2273)

Third Saturday GM December 2018

+1 Ivic, Benkovic, Kushager
+-0 Stajonovic, Nikcevic, Kojima, Tsolakidou
-1 Drasko, Lundin, Bodda

今日は唯一のダブルラウンドの日で、午後の試合は1時間早まった15時からとなりました。このタフな1日をしっかり乗り切り、Misha との5R を迎えたいですね。ちなみにMisha は2日目も現れず、2試合延期状態となっています。


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