2018/08/31

麻布学園チェス部夏合宿 2018


3月の春合宿に続き、麻布学園チェス部の夏合宿で、コーチとして指導をしてきました。今回の合宿地は山梨県の河口湖。中学高校の部活動の合宿や、大学のサークル合宿でも人気の地です。私が河口湖を訪れるのは、数年前の暁星の夏合宿以来で、とても懐かしい気持ちになりました。


河口湖は東側の温泉街が人気エリアですが、今回の宿は西側にあるホテルです。近年の合宿としてはかなり多い、22人の参加者がありました。(春は13人) 中学1年生も複数入部し、初の合宿にも参加しており、OB としては嬉しい限りです。

初日はレクチャーがメインとなり、昼食後から夕飯までみっちりと6時間ほどチェスに取り組みます。前半では発想力を試す課題やチェスの知識を問う質問に答えさせ、その後で実際のゲームを見せて、どのような考え方、ピースの働きが登場するかを確認します。最近見つけて面白かったポジションは、以下のものでしょうか。


Debray, C - Kvashyna, T
Syre Memorial Open 2013 (3)
Black to move

ピースを捨てた直のこの局面、黒が正しい手を指せば勝ちですが、それを見つけられなければピースアップで白勝ちになります。実際のゲームでは、黒は正解を見つけられずに負け... 自分がこうなったらと思うと悔しいですね。


手を考えてもらっている間、22人11ボードを回って生徒の意見に耳を傾けます。「これでどうか」「それに対して、こうならどうするか」「そうかー」とみんな真剣です。上級生と下級生では当然レベルに差はありますが、完全に下に合わせてしまうと上の子たちは退屈です。上手く課題のレベルを調整しながら、難しくとも面白いと感じてもらえる局面、ゲームはどんなものか、私も毎回の悩みですね。

夕飯後は恒例の同時対局を翌日に回し、ブリッツにしました。私と指したい人はどうぞ、と声をかけたところ、次々と挑戦者が現れ1時間半はブリッツタイムが続きました。いつものこの時間は同時対局をしていることを考えれば、私の負担は多少軽いですが、河口湖までの移動もあって終わる頃にはへとへとです。


2日目は私にとっても人生最多となる22面同時対局です。午前中の3時間ほどしか時間がないため、事前に相談して通常の同時対局ではなく、22個の対局時計を使ったクロックサイマルにすることにしました。私が回ってきたら1手指すスタイルの同時対局では、おそらく22面で3時間半~4時間ほどかかりますが、60分+1手30秒の持ち時間であれば、おそらく3時間以内に全て決着はつくと判断しました。しかし、普通はこれほど多い同時対局で時計を使うことはありえないですね(笑)


Kojima, S - Nagataki, K
Azabu Summer 2018 Clock Simul
Position After 33. Qxh6

長瀧くんとのゲームはクイーンを取って勝勢になったはずが、ちょっとした緩手で黒に反撃を許してしまい、形勢をおかしくしてしまいました。

33... Rb8!


ルークがクイーンサイドにまわる手を完全に見落としていて、ここからかなり焦ります。ルークのバックランクの侵入を許すことになれば、g2 のポーンが突如として脅威になって黒勝ちになるでしょう。

34. Bd1 Rb1 35. Qd2 Nd5! 36. f3??



ここが一番難しい局面で、他のゲームも回らなければいけない状況では正解を見つけることができませんでした。36. Qg5+! Ke6 37. Kh2!! Nxc3 (37... Rxd1?? 38. Qg4++-) 38. Bg4+ f5 39 Bxf5+! Bxf5 40. Kxg2= こうしてビショップを捨ててもg2 のポーンを消せば、白はドローに持ち込めるというのがコンピュータ評価です。

36... Bxf3 37. Qg5+ f6??


しかし、ここで黒に痛恨のミスが出てゲームは終わりました。37... Kf8 38. Qd8+ Kg7 39. Qg5+= ならばドロー。しかし、37... Ke6!-+ ならば白クイーンに有効なチェックは無く、Nd5-Nxc3 があるため、白はビショップを守ることができません。

38. Qg7+ Kd8 39. Qh8+ 1-0



長瀧くんはh7 でのチェックから、ルークが取られてしまうことを見落としていました。ビショップがe4 にいる時点ではルークは守られていたため、そのままだと勘違いしてしまったのでしょう。完全に拾わせてもらったゲームでした。

同時対局は21勝1敗で、新部長の松山くんにだけ敗れました。このゲームは30分私が持ち時間を残していましたが、簡単なタクティクスの見落としでどうしようもない駒損となり、リザインです。クロックサイマルの難しい点として気付いたことですが、通常の試合であれば30分残り時間があれば10分でも、15分でもベストの手を考えられますが、この形式ではそうしてると他のゲームの持ち時間も考えた分だけ減り、どこも時間切迫となってしまいます。どのボードのどこで時間を使い考えるか、もしくは指さずに考えたままで他のボードに移るか、なかなか判断が難しいことを実感しました。それでも良い経験でしたので、また機会があればやってみたいですね。


2日目の昼食後、私は後輩たちに別れを告げて宿を後にしました。移動先は駅ではなく、河口湖の北側に位置する大石公園です。ここでは季節の草花と、目の前の雄大な河口湖を楽しむことができます。この日も海外からの多くの観光客でにぎわっていました。


ちなみに私の目的は大石公園に隣接するハナテラスという場所です。ここには河口湖のお土産を売るショップや、山梨の特産品をメインとしたカフェが集まっています。山梨にせっかく来たので桃か葡萄を食べたいと思い、葡萄屋 Kofu の葡萄ソフトクリームをいただいたのでした。見た目の色の通りの味の濃さで、足を運んだ甲斐がありました!


大石公園を後にしてからは、猫のダヤン作品が展示されている木の花美術館までバスで移動し、そこからオルゴール美術館、河口湖美術館と湖畔に沿って歩き、河口湖大橋も渡って駅まで戻りました。このルートは数年前の合宿でも歩いており、そこを久々に歩きたかったことも、この帰り道を選んだ理由でした。どこかでも書いたかもしれませんが、私は海や川、湖などの水辺でゆっくりするのが好きなようです。

後輩たちの合宿は金曜日が最終日でしょうかね。これが最初、もしくは現役最後の合宿になるメンバーもいることでしょう。皆さん、最後まで楽しんだくださいね。また来年の春合宿でもよろしくお願いします。

2018/08/27

Penguin Highway


今月から全国で公開されている噂のチェス(?)映画、ペンギンハイウェイを見てきました。原作者の森見登美彦は、どこかで聞いたことのある名前だと思っていましたが、10年ちょっと前に話題になった『夜は短し歩けよ乙女』の作者でした。ペンギンハイウェイの原作小説は読んだことがありませんでしたが、チェスがちょこちょこ出てくるアニメ映画が近く公開されると聞いて、今月17日を楽しみにしていました。

ネタバレになるためにあまり内容には触れられませんが、私は十分に楽しめました。ちょっと生意気な少年アオヤマくんと、不思議なお姉さん(名前は出てこない) が、街に突然現れたペンギンの謎を探るという、ひと夏のファンタジーです。中心人物となる少年とお姉さん、そして彼らを取り囲む子供たちも魅力的なキャラクターですが、個人的にはアオヤマくんのお父さんの、息子へのかかわり方が素敵だなと感じました。

そしてチェスは思ったよりは登場しましたが、これまで紹介してきたポーンサクリファイスや、クイーンオブカトワに比べれば、もちろん登場回数は少ないですし、作品の中でもそこまで重要なキーアイテムではありません。それでもちょくちょくでてくる少年とお姉さんのチェスシーンは微笑ましく見ることができました。作品の面白さが損なわれるわけではないので、時々間違っている盤の向きには目をつぶります(笑)

興味を持ってくださったかたは、是非映画館に足を運んでみてください。この夏の思い出として、ペンギンハイウェイをどうぞ!

ペンギンハイウェイ公式サイト

2018/08/26

第9回七盤初心者のためのチェスレッスン


Black to move

昨年12月から続けてきたどうぶつしょうcafe いっぷくでのチェス講座も、ひとまず9月が最終回となります。皆さん、奮ってご参加ください。

【日時】 2018年9月9日(日) 18:30~20:30
【会場】 どうぶつしょうぎcafe いっぷく(最寄駅:清澄白河駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答+対局
【テーマ】 コンビネーション
【参加費】 2000円
【申し込み】 どうぶつしょうぎcafe いっぷく ご予約フォーム

チェスの面白さは多岐にわたりますが、複数の駒の連携によって決まる攻撃の美しさは、いつの時代も観衆を魅了するものです。今回はそうしたピースのコンビネーションをテーマに、チェスの魅力の一面をご紹介したいと思います。

2018/08/20

国際親善チェス大会 in Niigata 2018 日中対抗戦 Event Report


昨日、8/19 は大会に1日遅れ、日中対抗戦が新潟日報メディアシップで開催されました。私はこちらのイベントへの参加を目的に新潟を訪れたため、日程変更のトラブルがありながらも、無事に開催されたことに胸をなでおろしています。今年は昨年のメンバーのうち、羽生さんが大多和くんに変更なり、他は私、南條くん、青嶋くんです。GM Liu Qingnun 率いる今年の中国メンバーはレイティング以上に強かったです。

私はXu Zhinhang とLiu Qingnun と男子メンバーと最初の2試合で当たって連敗。白を持ったLiu Qingnun 戦はかなり面白いポジションにしただけに、時間切迫で崩してしまったのはもったいなかったです。40分の指し切りは毎年厳しいですね。女子プレーヤーとの連戦になる後半戦は、なんとか持ち直しを図らなければいけません。

Hu, Y (CHN, 2070) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Niigata 2018 (3)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nd2 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. Nh3 Nd7!?



Nh3-Nf4 ラインに最近研究しているのが、e7-e5e7-e6 かをすぐに決めない変化です。白の応手によって手を変えられる柔軟性があります。

7. Nf4 Qc7 8. c3 e6 9. h4 Bd6 10. Qf3 Ngf6 11. Bc4!?


11. h5 Bc2 12. h6 ならば、何度か指したことのある変化です。ここはどうするか迷うところですが、まずはイコアライズを目指して手堅く指すことにします。

11... O-O-O 12. Be3 e5!?



ここは少し思いつきにくいですが、12... Bxf4! 13. Bxf4 e5! 14. Be3 exd4 15. cxd4 (15. Bxd4 Rhe8+) 15... Qa5+ と進めるのが面白く、黒は黒マスビショップを諦める代わりにeファイルから素早く手を作ります。

13. Nxg6 fxg6 14. O-O-O exd4 15. Bxd4 Ne5


もちろん本譜も悪くありませんが、少し単調なポジションになってしまいます。黒でなんとしても勝ちを目指すのであれば、もう少しピースを残してチャンスを作るような変化を探すべきだったかもしれません。

16. Bxe5 Bxe5 17. Ne4 Nxe4 18. Qxe4 Rhe8



ナイトを交換するのも自然な流れで、こうした異色ビショップのミドルゲームとなりました。これはどうやってもドローに思えますが、相手のミスをつくテクニックさえあれば、ここからでも形勢は傾きます。

19. Kb1 Bf6 20. Qg4+ Kb8 21. h5?!


黒のキングサイドのポーンは弱みになりませんが、それでもダブルポーンを解消してくれるのはありがたいですし、何より遅く、黒に手を作るチャンスを与えてしまいます。

21... gxh5 22. Qxh5 Qf4 23. Bf7 Qe4+!



ここは単純な23... Rf8 を始めいくつかの手を考えましたが、白キングをa1 に押し込むことでバックランクの弱さをつく作戦を思いつきました。

24. Ka1 Rxd1+ 25. Rxd1 Re5!


相手にオープンファイルを明け渡すのは不安もありますが、d8 はきちんとビショップでカバーしているため、大きな危険はありません。黒のビショップはd8 をカバーしつつ、c3 でのサクリファイスをにらんでいるのに対し、白の白マスビショップは不安定で仕事も不十分です。異色ビショップのミドルゲームでも、ビショップの働きに差があればチャンスは作れます。

26. Qh3 Qc2 27. Qd7?



ルークを守りつつ、d6 でのチェックを狙うことで反撃を作ろうという作戦ですが、これは完全に失敗です。f2 を捨てて耐えるのがベストですが、それでも黒に勝ちのチャンスがあるのは明らかです。

27... Rd5!!


この手で勝ちになることを読み切りました。白はバックランクの弱さが苦しく、上手い受けがありません。

28. Qe8+ Kc7 29. Rb1 Rd1 0-1



ようやく中国チームに一矢報いるのことができました。ここまでの3R は、4-0負け、2.5-1.5負け、2-2引き分けで、少しずつですが僅差になっています。最後こそチームとして勝ちたい最終戦、私はWFM のXu Tong との対戦です。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Xu, T (WFM, CHN, 2131)
Niigata 2018 (4)

1. Nf3 Nf6 2. c4 d6 3. d4 g6 4. g3 Bg7 5. Bg2 O-O 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 exd4 9. Nxd4 Re8 10. h3 Nc5 11. Re1 a5 12. Ndb5 Bd7 13. Bf4 Bxb5 14. cxb5 Nfd7 15. Qc2 Ne6 16. Be3 Ne5 17. Rad1 h5 18. Nd5 Nd7 19. f4 Rc8 20. Qf2 b6 21. Nc3 Qe7



最終戦はここから簡単な解説にします。King's Indian で理想的な押し方をしてきた白は、ここで決め手を探します。

22. e5! dxe5 23. Bc6


ポーンを一時的に捨てても、白マスビショップとdファイルを開いて活路を見出します。23. f5, 23. Nd5 もありそうですが、どの順番からがベストかわからずに分かりやすいスレットを先に作ります。

23... exf4 24. Nd5 Qf8 25. Bxd7



ここも単純な駒得に走るか、もう少しプレッシャーを残すか迷いましたが、残り時間も少ないために前者を選びました。25. gxf4 からf4-f5 の押し込みを狙っても白は面白いポジションです。

25... fxe3 26. Rxe3 Qc5?


この手はどこかであるかなと考えていましたが、このタイミングはタクティクスが決まるためにダメです。

27. Bxc8 Rxc8 28. Rxe6! 1-0



クイーンを交換すれば、e7 でのフォークが決まって白は駒得を広げられます。1つ前の試合同様、パズルのようなタクティクスを決めて無事に連勝し、星をタイに戻したところで新潟での全試合を終えました。

最後も2.5-1.5負けで、日本はチームとして勝ち無し。全体では4勝10敗2ドローという戦績でした。今年はもう少しポイントを取れても良いメンバーだったと思いますが、40分指し切りで最後に時計の叩き合いになると、こちらが落ちるという展開がいくつかあり、それが響いたように思えます。来年は日本代表のチームtでプレーするか分かりませんが、持ち時間を25/10 にするよう進言してみるつもりです。いずれにせよ、日程変更のトラブルもあった中、きちんとイベント実現を成した運営の皆さんには感謝致します。


新潟のイベントは、参加者がこれから各々のブログでレポートを出すこともあると思います。それをチェックするのを楽しみにしつつ、私からのレポートも終わりにしようと思います。また来年もイベントが成功することを願っています。

2018/08/18

国際親善チェス大会 in 新潟2018 Tournament Report


1年ぶりに国際親善チェス大会に参加するため、新潟へと舞い戻ってきました。ブログでは初めて触れますが、ジャパンリーグ同様に中国からのゲストにトラブルがあり、彼らの来日が予定より1日遅れることが、大会直前に私たちに伝えられました。そこで私が参加する予定だった日中対抗戦は、18日から19日の開催へと変更になっています。


今年の大会会場はこれまで使ってきた天寿園から、新潟国際情報大学の中央キャンパスになりました。駅の南口からさらに南に下って向かう天寿園とは完全に逆方向、駅の万代口を出て北上します。途中で通った万代橋は、新潟市の観光名所の一つ。日本一の長さを誇る信濃川に100年以上かかる橋です。


万代橋を渡ってすぐに見えるのが新潟日報のビルです。こちらの20階展望台で、明日は日中対抗戦が朝8時から行われます。


会場に到着すると、一般参加者のトップであるAクラスのエントリーリストに、私たち日中対抗戦のメンバーの名前もありました。私は大多和くんと個別にトレーニングや話をするために大会は辞退、遅れて到着の青嶋くんも不参加で、南條くんのみがAクラスでプレーすることになりました。目下のライバルと思われた中国代表の女子プレーヤーも初戦で土がついたとなれば、南條くんを止められるプレーヤーはAクラスであろうと誰もいません。上位クラスは南條くんの4連勝となりました。


私が会場全体のゲームを見ていて目を引いたのが、Bクラス最終戦の1B、岩原くんのゲームです。3連勝同士で迎えた決勝戦、岩原くんは中国からの参加者相手に一歩も引かず、以下のポーンエンディングを迎えました。一見すると黒に勝ちのチャンスがあるように思えます。


Iwahara, S - N.N
Niigata 2018 (4)
Black to move

1... b5 2. b3!


2. cxb5 axb5 3. b3 b4 4. a4 c4! 5. a5 cxb3 6. a6 b2 7. a7 b1=Q 8. a8=Q Qg1# お互いにクイーンを作りあう展開は黒が1手早く、さらにはメイトにされてしまうために白失敗です。

2... b4 3. axb4 cxb4 4. Kf2! a5?



私は中国の選手がこの手を指したのを見て、白の大逆転勝利の目が生まれたと確信しました。ただし、この手が悪手なのは間違いないのですが、黒が最善を指しても白がきちんと応えればドローになるというのは、ゲーム中に読めていませんでした。4... Kf6! 5. Ke3 Ke7 6. Kd3 Kd7 7. Kd2 Kc7 8. Kc2 Kb6 9. Kd2 Kc5 10. Ke3! (言われてみれば当たり前ですが、黒のKc5--Kd4 を阻止できるのはこのマスもありました。代わりに10. Kd3?? a5!-+ ならばツークツワンクとなり、d4 に黒キングの侵入を許して白の負けです。) 10... a5 11. Kd3= 今度は上記と同じ局面でも手番を黒に渡しているためドローです。

5. Ke2 Kf6 6. Kd3 Ke7 7. Kc2?


白は唯一の勝機を逃がしました。7. c5!! dxc5 (7... a4 8. cxd6+ Kxd6 9. bxa4+-) 8. Kc4 Kd6 9. Kb5!+- こうして力強く白キングを上げる手が見つけづらく、白はポーンを一時的に捨てて勝負にいく変化を避けてしまいました。これでa5 を取ってからbファイルに戻れば、黒はc5 も守り切ることができず、白の勝ちです。

7... Kd7 8. Kd2 Kc7 9. Kc2 Kb6 10. Kd2 Kc5 11. Kd3 Kb6 12. Kc2= 1/2-1/2



白はc2,d2 のマスでキングを待機させ、黒キングがc5 にきたタイミングでd3 にキングを上げればドローです。勝ちを逃したとは言え、小学生で大人にも難しいこのポーンエンディングを指すというのは驚きでした。

日中対抗戦が翌日に移ったことを抜けば、特に大きなトラブルもなく今年も各クラス新潟の大会は無事に終わりました。今年も4クラスで70名を超える参加者がいたそうで、いつも通り盛況です。各クラスの入賞者の皆さん、おめでとうございます。そして参加者の皆さん、お疲れ様でした。今夜新潟市内に泊まり、明日の日中対抗戦も見学にくると言ってくれる人たちは多かったので、私は明日の本番に向けて気合を入れていこうと思います。


大会に参加しなかったのに後夜祭に出るのも妙だと思い、私と妻は大多和親子とともに閉会式後に会場を抜けてピア bandai へ。この施設にある寿司屋さんが目的地でしたが、あまりの人気ぶりに1時間待ちだったため、施設内のお土産屋さんをぶらぶらすることに。2万円で鮭をまるまる買う人は現れるのでしょうか...


米どころである新潟では、お土産屋さんにお米や関連の商品がずらっと並んでいます。一般家庭ではなかなか使われない羽釜、そしてなにより、かまどが売っていることにびっくり!


後夜祭後に交流した南條夫妻、青嶋くんも含めて、お寿司屋さんには日本代表全員が揃いました。私たちからすれば、これが前夜祭ですね。美味しいお寿司も頂きましたので、明日の日中交流戦はポイントを重ねられるように頑張ってきます。

2018/08/16

Japan League 2018 Day4 Tournament Report


ジャパンリーグ最終戦、私はTuさんから公式戦初勝利を挙げ、優勝を決めました。2B のAlex-Simon はドローとなり、6/7 での単独優勝でした。振り返ってみれば、2015年のジャパンリーグ以来、東京でのメジャートーナメントの優勝はこれが丸3年ぶりのことで、本当に嬉しいです! 応援してくださった皆さん、ありがとうございます。

1st Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2408) 6/7
2nd Place Averbukh Aleander (CM, JPN, 2101) 5.5/7
3rd Place Simon Bibby (FM, JPN, 2171) 5.5/7

Japan League 2018 Final Standings



最終戦のTuさんとのゲームは、序盤での彼の構想がおかしく、早い段階で優勢になりましたが、彼の負けまいという粘りのプレーに、なかなか最後まで気の抜けない展開が続きました。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Tran, T T (CM, VIE, 2352)
Japan League 2018 (7)

1. Nf3 d6 2. d4 Nc6 3. g3 g6 4. Bg2 Bg7 5. c4 Nf6 6. O-O O-O 7. Nc3 Nd7!? 8. h3!?



こうした手順からKing's Indian になることは、ある程度予想はしていました。ナイトを退かれる手は意外でしたが、これにはe7-e5 をじっと待ち、面白いアイディアを仕掛けようと画策します。

8... e5 9. Bg5! f6 10. Be3 h6?


前日のScott戦でもそうでしたが、g5 のマスを抑えたいのは理解できますが、fポーンとhポーンを両方動かしてしまえば、gポーンが極端に弱くなってしまいます。それを十分に補うアイディアなく、軽率にポーンを進めてはいけません。

11. dxe5!



展開の早い白は局面を開きます。白マスビショップも通っており、d5 のマスを綺麗に抑えている白は、すでに大きなポジショナルアドバンテージがあります。

11... fxe5?


ここは11... Ndxe5 12. Nxe5 Nxe5 13. c5 と進むだろうと予想していました。これでも白は展開の早さを活かして優勢です。

12. Nh4! Rf6 13. Nd5 g5!?



g6 を守り切るのが難しい黒は、思い切ってエクスチェンジを捨ててきました。13... Re6 14. Qc2 Nf8 15. Rfd1+/- であればg6 のポーンはすぐには落ちませんが、代わりにルークのがひどいポジションです。

14. Nxf6+ Qxf6 15. Nf3 Nd4 16. Bxd4!?


ここは悩むところですが、ビショップのペアを諦めてナイトを取り除きます。駒得し、展開の依然早い白はピース交換を進めながら、ルークが活きる展開を目指します。

16... exd4 17. Qd2 Nb6 18. b3 c5 19. Rad1 Bd7 20. Nh2!?



最初はe2-e3 とセンターを開きにいくつもりでしたが、g5-g4 があることに気付き、作戦変更です。ナイトを組み替えてNh2-Ng4 を狙いつつ、もう1つの大きな方針に踏み込むか検討します。

20... Bc6 21. Bxc6 bxc6 22. f4!


e2,e3 を弱めますが、ルークを持つ白はその力を最大限に発揮できるよう、オープンファイルを作りにいきます。キングの守りは気になりますが、g4 のマスでナイトが安定することも踏まえれば、十分に仕掛ける価値はあると判断しました。

22... Re8 23. Ng4 Qe7 24. fxg5 hxg5 25. Rf2



少し迷いましたが、一度e2 を守っておき、fファイルのダブルルークで攻撃チャンスを作りにいきます。

25... d5 26. Rdf1 dxc4 27. Rf7 Qxf7


Tuさんはすぐにクイーンを諦めましたが、もう1つの変化はどうなのかと試合中は悩んでいました。27... Qd6 28. Rxg7+!! Kxg7 29. Qxg5+ Qg6 30. Qxc5!+- この手が絶妙で、黒はd4 を取られてチェックからの攻撃に上手く対処する方法がありません。ルークを捨てる変化は頭にありながら、読み切るのにもう一歩というところで、試合中に指せたかは自信がありません。

28. Rxf7 Kxf7 29. bxc4 Nxc4 30. Qxg5 Rxe2



駒がずいぶん捌け、あまり経験のない駒割のエンドゲームになりました。キングサイドに2コネクテッドパスポーンはありますが、まずは黒のポーンを取りにいき、リスクを抑えるのが正しい作戦でしょう。

31. Qxc5 Ne5 32. Nxe5+ Rxe5 33. Qxc6 Re3 34. Kf2!


g3 を守るだけでなく、dポーンのブロックにキングを使います。メイトの危険さえなければ、白キングは積極的にセンターで使うべきです。

34... Bf6 35. a4 Ke7 36. a5



最初はhポーンを伸ばすつもりでしたが、ビショップが抑えているh8 でのプロモーションよりも、aポーンをつかうほうが賢いことに気が付きました。a7 はいつでも取れるため、先にポーンを伸ばして黒にプレッシャーをかけます。

36... Be5 37. Qc5+ Ke6 38. Qxa7 Ra3 39. a6


黒のルークは後ろに回りましたが、ビショップがa7 を抑える方法がないため、白のパスポーンは止められません。パペチュアルチェックもメイトの危険もないことはきちんと読み、ようやくしっかりと勝ちを意識しました。

39... Ra2+ 40. Kf3 Ra3+ 41. Ke2 Ra2+ 42. Kd1 d3 43. Qb6+ Kf5 44. a7 1-0



今大会、中村くんに初負けを喫してレイティング大幅マイナスかと思われましたが、Tuさんからの初勝利でレイティングを取り戻し、6勝1敗で変動は+-0です。オリンピアード前に少し上げておきたいところでしたが、下がらなかっただけでもOKとしましょう。2408 のままオリンピアードではプレーすることになりそうです。

そしてオリンピアードから帰国せずにハンガリーに向かう私にとって、おそらく今回が年内最後の国内公式戦になると思います。そんな大会を久々の優勝で飾れたので、喜びもひとしおです。公式戦ではなくとも、残り1か月のなんらかのチェスイベント、もしくは年明け以降の大会で皆さんまたお会いしましょう!


3年ぶりにメジャー大会の優勝盾が増えました。

2018/08/14

Japan League 2018 Day3 Tournament Report


3日目のジャパンリーグ Photo by Yamada, A

2日目に痛すぎる白での負けを喫した私ですが、しっかり休んで取り組んだ3日目は完全復活です。自分でも満足の指しまわしができたと思います。午前のラウンドはScottさんに白と、全日本選手権最終戦と同じペアリングと色になりました。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Scott, T (JPN, 2065)
Japan League 2018 (5)

1. d4 f5 2. Nf3 Nf6 3. g3 g6 4. Bg2 Bg7 5. O-O O-O 6. b3 d6 7. Bb2 Na6 8. c4 c5 9. d5 Bd7 10. Nbd2!?



全日本選手権ではサイドラインにしましたが、この日はメインに近いラインで勝負です。9手目までのポジションを先程調べ直したところ、データベースで1試合見つかり、それは私が5年前にハンガリーで指したゲームでした(笑) そのときは10. Nc3 と指して勝ちましたが、今回はナイトを低く組むことにします。狙いは将来的にe2-e4 を突き、e7 をアタックすることです。

10... Rb8 11. Re1 b5 12. Bc3!?


黒からのbファイルオープンのアイディアにはビショップをかわして対抗します。

12... bxc4?!


ゲームの流れを見ると、ここで早めにbファイルを開いたことは、黒よりも白にとってプラスになっているように思えます。d5 のポーンを弱めたくない白はb5 を自分から取ることはしないので、ポーンのぶつかりは保ったままなんらかのアクションを考えたほうが良かったでしょう。

13. bxc4 Qe8 14. Rb1! Nb4 15. Rb2!



開いたbファイルで早速ルークをぶつけ、オープンファイルを取りかえしにいきます。黒は自分からルーク交換をして完全にbファイルを明け渡すのも、相手にとられたクイーンなりナイトなりがb8 に戻るのも少し嫌でしょう。

15... h6 16. a3 Na6 17. Rxb8 Qxb8 18. Qc2!


Leningrad Dutch は試合経験が乏しく、苦手意識もありましたが、この日はKarpov のプレーをイメージして丁寧に指せたと思います。g5 へのナイトの侵入を嫌ったh7-h6 でしたが、それによって弱くなったg6 を狙うとともに、ルークをbファイルに回すアイディアも見せておきます。

18... Qc7? 19. Nh4!+-



このタイミングでg6 を狙う絶好の手が入り、白が勝勢になったことを確信しました。e2-e4 の切り札もある以上、黒がe7, e6, g6 のすべての弱点を支え切ることは不可能です。

19... Be8 20. e4 f4 21. e5 Ng4 22. Nxg6 fxg3 23. fxg3 Nxe5 24. Nxf8 Bxf8


これではっきりと駒得になり、後は無理なく決め手を探すだけです。

25. Bh3 Bg7 26. Be6+ Kh8 27. Rf1 Nb8 28. Nf3 Nbd7 29. Nxe5 Nxe5 30. Bxe5 dxe5 31. Qf5 Qa5 32. Qg4!



g8 でのメイトがあるため、次にRf1-Rf8 と跳び込むことができます。このメイティングアタックを避けるにはほぼ一本道ですが、ピースの交換が進めば白の勝ちのエンドゲームとなります。

32... Kh7 33. Bf7! Bxf7 34. Rxf7 Qe1+ 35. Kg2 Qd2+ 36. Kh3 Qg5 37. Qxg5 hxg5 38. Rxe7 1-0


続くSamuelくんとのゲームも上手く指して勝ち。この日は2連勝と調子を取り戻しました。トップを走っていたAlexはTuさんに負け。TuさんとSimon が連勝で、5/6 が4人並ぶデッドヒートになっています。明日の最終戦は私を含めたこの4人が当たり、優勝の行方が決まります。スペインのDavidさんと青嶋くんも4.5/6 で追ってきており、最大で5人同時優勝があり得ますね。

Kojima, S (5) - Tran, T T (5)
Averbukh, A (5) - Simon, B (5)
Aoshima, M (4.5) - Rivas Vila, D (4.5)

Japan League 2018 R7 Pairings


5勝1敗で4人が並ぶ珍しい展開がどういった結末を迎えるか。明日の最終戦も、皆さんよろしくお願い致します。


乗り換えで使う五反田駅に隣接したカフェの、日替わりカレーはいつも美味しいです。

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