モンテネグロの、そして今年の最終戦の相手はインドのWIM Praytyusha です。今大会で一番レイティングが低いプレーヤーとはいえ、Nikcevic とDrasko に勝っており、8R終了時点では私よりもポイントを取っています。10月、11月とモンテネグロの最終戦では負けて大会を終えている私としては、なんとしても勝ってブダペストに戻りたいところでした。
Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Praytyusha, B (WIM, IND, 2273)
Third Saturday GM December 2018 (9)
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 a6 5. cxd5 exd5 6. Bg5!?
この
a7-a6 を早めに指すQueen's Gambit Declined は近年爆発的に増えており、私も黒番で指そうかと研究していました。実は序盤を記事の中で省いた7RのBenkovic戦もこのオープニングで、今大会で2回目になります。最終戦は早いスタートだったので、研究し直す時間は十分とは言えませんでしたが、前夜に見つけた新しいアイディアを試してみることにしました。ちなみに7Rでは、
6. Bf4 と指しています。
6... Be6 7. e3 Nbd7 8. h3!?
これがこの試合で是非試そうと思っていた手です。よりポピュラーな
8. Bd3 h6 9. Bh4 g5 10. Bg3 Nh5 11. Be5 Ng7 は白が良いのかさほど自信がありませんでした。
8... Bd6 9. Bd3 h6?!
Praytyusha は
8. h3 のアイディアを知らず、またこの局面で少し不用心であったように思えます。白は黒マスビショップを交換したいため、
Bg5-Bf4 と下げたいので、このポーン突きは白を助けています。代わりに
9... c6 10. Bf4 Qc7 11. Bxd6 Qxd6 12. 0-0 0-0 と進めるのが良かったでしょう。これでも白は黒マスビショップの交換に成功し、白マスビショップの働きの差で小さな優位を保てるでしょう。
10. Bf4! Qe7 11. O-O
f4 でのビショップ交換は、
f4-f5 突きのスレットや、eファイルが開いたことを利用したオープンファイルのコントロール、e5 のサポートをが強まったことによる
Nf3-Ne5 のアイディアが生まれ、白にとって歓迎すべきものです。ならば黒マスビショップの交換はしばらく様子を見てゲームを進めます。上記の
c7-c6, Qd8-Qc7 であれば、黒は早めにd6 でのビショップ交換を催促できました。
11... O-O 12. Rc1 c6 13. Re1 Rfe8 14. a3 Rac8 15. Ne5
黒マスビショップの交換はいつでも白にとって悪くありませんが、盤上に残したままe5 のマスを活用するアイディアも当然ありえます。黒のアクションの起こし方は限られているので、本譜のように
c6-c5 であればクイーンを上げ、そうでなければ
Bf4-Bg3, f2-f4 を考えていました。
15... c5 16. Qf3 b5?!
少しクイーンサイドのポーンの伸び方やルークの位置は違いますが、これに似たポジションを前夜に見てアイディアを拾ってきました。ここはシンプルなタクティクスのチャンスです。
17. Nxd7! Qxd7 18. Bxh6!
17... Bxd7 18. Nxd5 Nxd5 19. Qxd5 Bxf4 20. exf4 Qxe1+ 21. Rxe1 Rxe1+ 22. Kh2 と進めても白が良いと思っていましたが、本譜もわかりやすく駒得です。
18... Ne4 19. Bf4
19. Bxe4! dxe4 20. Nxe4 Bd5 21. Nf6+! gxf6 22. Qxf6 Bf8 23. Qg5+ Kh7 24. Bxf8 Rxf8 25. Qh5+ Kg7 26. e4! Ba2 27. Qg5+ Kh7 28. Rxc5+- この手筋は読んでいましたが、26手目を見つけることができずに断念しました。
19... cxd4?
この捌き方は黒にリスクが大きいでしょう。
19... Nxc3 20. Rxc3 c4 21. Bc2 b4 22. axb4 Bxb4 23. Ra1 と進んだ形は、白がエクスチェンジを落としてしまいますが、強力なダブルビショップは十分にそれをカバーできそうです。
20. Nxe4 dxe4 21. Qxe4 Bxf4 22. Rxc8 Rxc8 23. Qh7+ Kf8 24. exf4
1ポーンアップでここまで捌ければ、白の優位は揺るがないでしょう。
f4-f5 が次にスレットになっています。
25... f5?
当然
24... f6 がベターですが、これもg6 のマスを弱めるのが痛手となります。
25. Re5! Qc6 26. g3
悪い手ではないですが、この辺りで正確に読めていないのが小さな反省点です。
26. Kh2 Qc1 27. Rxe6 Qxf4+ 28. Kg1 Rc1+ 27. Bf1+! は全く問題ないため、先にキングを逃げておいたほうが余計なカウンターを考えずにすみました。
26... Qc1+ 27. Kh2 Qxb2 28. Re2 Qb3
29. Rxe6 Qxd3 30. Qh8+ も白勝ちです。
29. Bxf5 Bg8 30. Qg6 Rd8 31. Qg5 Re8 32. Rxe8+
32. Bg6!+- は美しいフィニッシュでした。
32... Kxe8 33. Qxg7 Bd5 34. Bg6+?!
ここまで白は駒を捌き、後はdポーンさえ消してしまえばほぼ危ないところは無いと言えます。しかし、黒の33手目の意味が分からず、ピンになるようdファイルに黒キングを寄せてからポーンを取るのが安全だと思ってしまいました。黒のアイディアは当然、
Qb3-Qf3 ですので、
34. Qxd4 Qf3 35. Qe3++- でクイーンを交換できるよう、黒キングはeファイルに留めたままでいるのが簡単でした。
34... Kd8 35. Qf6+?!
黒のクイーンの動きに気付いてがっくりしますが、それでもdポーンを取れば簡単でした。
35. Qxd4! Qf3 36. Qb6+! Kd7 37. Bf5+ Ke7 38. Qe3++- やはり黒キングをeファイルに押し戻し、強制交換で白の勝ちです。
35... Kc7 36. Qe5+ Kc6 37. Qe8+ Kc7 38. Qe7+ Kb8?
オリンピアードでの最終戦も、ちょっとした勘違いから勝ちを逃し続けるクイーンエンディングになり、とても勝ち切るのに苦労しましたが、ここでは相手が早めにミスをしてくれてラッキーでした。このキングの位置では、白は理想的なビショップ交換に持ち込めます。
39. Qe5+ Kb7 40. Be4 Bxe4 41. Qxe4+ Kc7 42. Qxd4+-
次にaポーンは取られますが、クイーンが黒キングをカットオフしており、白が先手ですのでこれは問題なく勝てそうです。
42... Qxa3 43. f5 b4 44. f6 b3 45. f7 b2 46. Qa7+ Kc6 47. Qb8
私のアイディアは互いにクイーンを作って取り合った後、
Qc8+ からa6 を取ることです。多少遠回りになっても黒のポーンをすべて消してしまえば、白はキングサイドの3コネクテッドパスポーンをゆっくり利用するだけです。
47... Kd7 48. h4 a5 49. Qe8+ Kc7 50. f8=Q 1-0
a5 にポーンを進めたことで、c5 でのチェックがポーン取りのスレットになります。
50... Qxf8 51. Qxf8 b1=Q 52. Qc5++- で白の勝ちです。2つ負け越しでのフィニッシュは、もちろん満足できる戦績ではありませんが、最終戦を初めて勝って締めくくることができ、その点は一安心です。2019年は2300代に久々にレイティングを落としてのスタートになりますが、また気持ちを新たに頑張っていこうと思います。
12/15 14:00 (22:00) Tsolakidou, S (IM, GRE, 2387) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/16 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Drasko, M (GM MNE, 2438)
1-0
12/17 09:00 (17:00) Lundin, J (FM, SWE, 2312) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/17 15:00 (23:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Nikcevic (GM, MNE, 2434) 0-1
12/18 14:00 (22:00) Stajonovic, M (GM, SRB, 2522) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
1/2-1/2
12/19 Rest Day
12/20 14:00 (22:00) Krishnater, K (FM, IND, 2305) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
0-1
12/21 14:00 (22:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Benkovic, P (IM, SRB, 2401) 0-1
12/22 14:00 (22:00) Ivic, V (IM, SRB, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/23 10:00 (18:00) Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Praytyusha, B (WIM, IND, 2273)
1-0
Third Saturday GM December 2018
+5 Tsolakidou
+3 Ivic
+1 Stajonovic, Benkovic, Krishnater
+-0 Nikcevic
-2 Kojima
-3 Drasko, Lundin, Praytyusha
8RでNikcevic を破ったTsolakidou は、そのまま5つ勝ち越しでトーナメントを終え、GMノームを獲得しました。この3か月のGMトーナメントでノームを獲得してきたのは、全て10代のプレーヤーです。彼らの力強いプレーには舌を巻きますが、感心しているだけでなく、対抗していけるだけの力をつけていかなければいけませんね。
3か月連続で戦ったモンテネグロ、来月は来ないことを決めましたが、また機会を見て戻ってこようと思います!