2020/01/20

Ju Wenjun takes a lead again!


自分が参加しない海外大会の話題を久々に出そうと思います。現在進行中で、注目の海外大会は主に2つ。毎年恒例オランダのTata Steel と、女性世界チャンピオン決定戦です。今夜は後者をご紹介しようと思います。

今回の女子世界選手権は、数年前に来日し、新潟のチェス大会にも参加した中国の現世界チャンピオン、Ju Wenjun に、ロシアのAleksandra Goryachkina が挑む12試合のマッチです。そのマッチにこの数日で大きな動きがあり、緊迫した状況で大詰めを迎えることとなりました。前半戦、1勝1敗4ドローのイーブンで後半戦に突入した2人でしたが、後半戦はいきなりGoryachkina が先勝。Ju Wenjun が白でどういったプレーをし、星を取り戻すか注目されたのが、昨日の第8試合です。

Ju, W (GM, CHN, 2584) - Goryachkina, A (GM, RUS, 2578)
Ju - Goryachkina Women's World Championship (8)

1. Nf3 d5 2. b3 c5 3. e3 a6 4. Bb2 Nc6 5. d4 Nf6 6. Nbd2 cxd4 7. exd4 g6 8. a3 Bg7 9. Bd3 Nh5 10. g3 O-O 11. Ne5 Nxe5 12. dxe5 d4 13. f4 f6 14. Qe2 fxe5 15. fxe5 Bh6 16. O-O-O Be3 17. Rhf1 Bh3 18. Rxf8+ Qxf8 19. Kb1 b5 20. Nf1 Bg1 21. a4 bxa4 22. bxa4 Qc8 23. Bc4+ Kh8 24. e6 Nf6 25. Rxd4 Bxd4 26. Bxd4 Qb7+ 27. Ka2 Rd8 28. Bb2 Rb8 29. Bb3 Qg2



オープニングはあまり詳しく触れませんが、b3-Bb2 セットアップをJu Wenjun が採用したことは、多くの観客にとって驚きだったと思います。今回のマッチの前半では1. e4 も採用していますが、彼女は基本的に1. d4 の王道が最も得意なレパートリーで、こうしたマイナーオープニングはあまり好まない印象がありました。

上の局面は白がエクスチェンジを切った中盤で、黒のQb7-Qg2 でのピース強制交換に対応が難しいとライブを見ていた私は思いました。この局面で白は困っているのではないかと思っていたので、しばらく時間が経ってから試合結果と途中の流れを見て大変驚きました。

30. Qe5!


この手は私も考えたつもりでしたが、黒にはきちんとした応手があり、Qe5-Qxb8+Qe5-Qxf6+ も問題ないと最初は読んでいました。

30... Rxb3 31. cxb3 Qc6



私が読み落としていたのは、31... Qxf1 32. Qc7! と進めば、白は一時的にピースダウンでもe7 のポーンを確実に取って勝てるということです。これはおそらくGoryachkina もQc7-Qg2 時点では読み落としていたのでしょう。こうしてエクスチェンジを返してもらった白は、e6 を落とされて駒得は無くとも、ポーンストラクチャーの良さとクイーンサイドのポーンマジョリティーでチャンスを掴みます。

32. Nd2 Bxe6 33. Ka3 Kg8 34. Nf3 Qd5 35. Qb8+ Kg7 36. Ne5 Qc5+ 37. Qb4 Qxb4+ 38. Kxb4+/-


こうしてクイーンを交換し、キングがアクティブに動けるようになれば、白のクイーンサイドでのチャンスは明らかとなります。

38... Kf8 39. Nc4 Ne4 40. Bd4 Ke8 41. Ka5 Nd6 42. Nd2 Bc8 43. Kb6 Kd8 44. Be5 Kd7 45. Bf4 g5 46. Bxg5 e5 47. Be3 Ke6 48. Kc7 Bd7 49. Bc5 Nf5 50. Kb6 Kd5 51. Nb1 e4 52. Nc3+ Ke5 53. Kxa6 e3 54. a5 Nd4 55. b4 Bg4 56. Kb6 e2 57. Bxd4+ Kxd4 58. Nxe2+ Bxe2 59. a6 Bf3 60. a7 h5 61. b5 Kc4 62. h3 Kd5 1-0



最後の手は黒が負けを認めたということでしょうかね。a8 のマスをビショップで抑え続けても、g3-g4 からのブレイクに対抗できないため、白の勝ちとなります。これで星をタイに戻したJu Wenjun でしたが、続く今日の第9試合は黒で勝ち、逆転に成功しました。本来であればそちらを記事のメインにすべきでしたが、昨日のゲームの面白いポジションは紹介すべきだと思い、今夜は8試合目を扱いました。9試合目のエンドゲームはまた考え直してみるので、余裕があれば明日あらためて記事にしようと思います。

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