世界で唯一国旗にチェスボードが描かれた国、それがクロアチアです。私も2年前のハンガリー、モンテネグロ遠征の中で、クロアチアのドブロヴニクに立ち寄ったり、クロアチア籍のプレーヤーと試合をしたりと、初めて交流を持った国です。クロアチアは他の旧ユーゴスラビアの国同様にチェスのレベルは高く、トーナメントも盛んに開催されていますね。
クロアチアでは、ナショナルチャンプオンシップが3日前から開催されています。この数か月、オンラインでのトーナメント、イベントは活発になりましたが、以前のような直接会ってのチェスイベントはまだどこの国も慎重です。そのような状況の中、クロアチアが大会の開催に踏み切り、多くのチェスファンはその動向を見守っています。トーナメントはGM Kozul Zudenko が3連勝で1P リードし、今夜の4R を迎えました。昨年、Kozul Variation と呼ばれるSicilian の変化についてまとめた本を出版した54歳のベテランは、まだまだ若いGM たちに負けない力強いプレーを見せてくれます。
Kozul, Z (GM, CRO, 2597) - Bosiocic, M (GM, CRO, 2625)
Croatian Chess Championship 2020 (3)
1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Bb4 5. Bg5 h6 6. Bxf6 Qxf6 7. e3 O-O 8. Rc1 dxc4 9. Bxc4 c5 10. dxc5 Nd7 11. O-O Nxc5 12. Nb5!?
Croatian Chess Championship 2020 (3)
Ragozin Variation の変化で、このタイミングでナイトが跳ぶ手は2018年にCarlsen が採用し、成功したことで注目されました。ナイトをかわしておくことで、次にa2-a3, b2-b4 がピースを取るスレットになります。
12... Ba5
黒は先にビショップを逃がしましたが、早めにルークをセンターに回す12... Rd8 や、12... a6 13. Nbd4 Nd7 といった手のほうが有力だったかもしれません。
13. Be2! Qe7 14. Qd6!
このポジショナルプレーの感覚がマスターならではです。黒マスビショップがa3-f8 のダイアゴナルから離れたことで、弱くなった黒マスを活用し、ナイトを敵陣深くに潜り込ませます。黒マスビショップを手放した白が、黒マスを強力に抑えているのが面白いですね。
14... Qxd6 15. Nxd6 Na4 16. Ne5! Bb4 17. Ndxf7!
私は大人しい17. Rfd1 のような手でも白が有利かと思っていましたが、この手が成立します。f7 で2ピースとルークを交換しても、次のRc1-Rc4 がピースを取るスレットになっています。
17... Nxb2 18. Bh5!
d6,e5 の黒マスを抑えることでf7 を取った後は、弱くなったキング周りの白マスを利用しにいきます。単純ながら強力で、黒にはあまり抵抗する方法がありません。
18... a5 19. Rc7 Na4 20. Bg6 1-0
勝負はあっという間に決まりました。g6 のマスにビショップを潜り込ませれば、次に21. Nxh6+! gxh6 22. Bh7+ Kh8 23. Ng6# がメイトの狙いとなります。これを避けるためには駒損になることが決まってしまうため、黒はここで試合を諦めました。今回のCroatian Chess Championship 参加者12名の中でレイティングトップのBosiocic にとっては不出来なゲームだったでしょう。ただしまだ前半3試合が終わっただけですので、この先どうなるかはまだまだ読めません。4R 以降のゲームも、是非ライブでチェックしてみてください。
Croatian Chess Championship 2020
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