2020/06/28

Croatian Chess Championship 2020 Vol.2


前回の記事から数日たち、クロアチアの国内選手権は佳境を迎えています。3連勝を飾ったKozul は途中の連敗で優勝戦線から一歩後退。Kozul を破ったZelicic が一時トップに立ちましたが、昨日の9R で敗れ、首位はめまぐるしく変動しています。昨日は6ボード中4ボードで決着がつき、大会終盤でも火花が激しく散っています。難しいルークエンディングを勝ち切り、トップに立ったGM Saric Ante のゲームを今夜は見ていこうと思います。

Saric, A (GM, CRO, 2541) - Plenca, J (IM, CRO, 2483)
Croatian Chess Championship 2020 (8)

1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 Be7 5. Bg5 Nbd7 6. e3 h6 7. Bh4 O-O 8. Rc1 c6!?



Orthodox Variation にh7-h6 が入ったような形ですが、白の黒マスビショップを下げさせているので、Nf6-Nd5 からのビショップ交換の誘いは成立しません。このブログのQGD シリーズの連載では、代わりに8... c5!? を勧めています。こちらはもう少し書きたい変化がありますが、もう少し更新はお待ちください。

9. Bd3 dxc4 10. Bxc4 b5 11. Bd3 Bb7


こうしたセットアップはSemi-Slav Meran でポピュラーですが、QGD でもありえなくはありません。黒はc6-c5 から白のセンターポーンを崩し、イコアライズを狙います。

12. O-O Rc8 13. Qe2 b4 14. Ne4 c5 15. Nxf6+ Bxf6 16. Bxf6 Nxf6 17. Ba6 Bxa6 18. Qxa6 Qb6 19. Qc4



白はc4 のアウトポストで戦おうとしますが、ここまでピースを捌いていれば黒も満足です。

19... Nd7 20. d5!? exd5 21. Qxd5


難しい決断ですが、白はcxd4 とされる前にdポーンを進め、ポーンの残りファイルを全く同じにさせないようにします。黒はクイーンサイドのポーンマジョリティをいかしたいところですが、c4 のマスを抑えられてしまうとそれも簡単ではありません。

21... Qc6 22. Rfd1 Qxd5 23. Rxd5 Rc7 24. Nd2 Rfc8 25. Nc4 Nb6 26. Rd2 Nxc4 27. Rxc4 Rc6 28. Kf1 Ra6 29. b3 Ra3 30. Ke2



クイーンを交換し、ダブルルークエンディングへと突入します。コンピュータ評価はさておき、c5 のポーンのほうが負担になりやすく、キングがセンターに近い白が指しやすいように見えます。

30... a5 31. Rb2 a4 32. Rc1 Kf8 33. Kd3 Rd8+ 34. Kc4


黒のcポーンをブロックと同時にアタックするため、キングとルークを入れ替え、Kc4 の形を作っておきます。

34... axb3 35. axb3 Ra5 36. Rcc2 Rd1 37. Rd2 Rc1+ 38. Rdc2 Rd1 39. Rd2 Rc1+ 40. Rbc2 Rb1 41. Rd8+ Ke7 42. Rb8



黒の反撃を振り切りつつ、白はルークを1つ敵陣へと向かわせました。これでc5 を落とすチャンスが出てきますが、黒は当然ながらb3 に反撃します。

42... Ra3 43. Rb7+ Ke6 44. Kxc5 Raxb3 45. Rc4 g5!


f4 のマスを抑え、ルークチェックからf7 が落ちることを防ぎます。黒のbポーンはすぐには脅威にならず、白はルークでのチェックを駆使して局面の改善を目指します。

46. Rb6+ Ke7 47. Kd5 Rc3!? 48. Rxc3 Rd1+ 49. Kc4 bxc3 50. Kxc3



黒はbポーンを諦めてもルークを1枚交換し、ルークエンディングへと持ち込みました。一般的には同じサイドでポーンが4対3のルークエンディングはドローになりやすいものですが、実戦でやってみるとディフェンス側が正確に指すのは難しいでしょう。

50... f6 51. Rb2 Ke6 52. Rd2 Rh1 53. h3 Ke5 54. Kd3 h5 55. Ke2 g4 56. f4+!


これはなるほどと思った手です。シンプルにポーンを消していくと、ディフェンス側の黒にとってはフィリドールポジションに近づいていき、ドローを取りやすくなります。h,g ポーンを交換せずにf2-f4 を伸ばすことで、キングサイドのポーンを残したままキングが前進するマスを作ります。

56... Ke6 57. hxg4 hxg4 58. Kf2 f5



e5 のマスは弱めてしまいますが、g4 ポーンを守り、白のポーンがe3-e4 と伸びるのを防いでおきます。

59. Ra2 Rb1 60. Ra6+!


ここは60. Kg3 Rb3 61. Kh4 Rxe3 62. Ra6+ Kd5 63. Ra5+ Ke6 64. Kg5 Re2 65. g3 Re3 66. Ra6+ Ke7 67. Kxf5 Rxg3 も考えられますが、g4 をルークで取りにいってもフィリドールポジションにしかならず、ドローです。

60... Ke7 61. Ra5 Kf6 62. Ra6+ Kf7 63. e4!



e4 のマスを抑え込んでいたf6-f5 でしたが、ここで白はe3-e4 のブレイクを決行します。一時的にポーンはバラバラになりますが、白はどちらも回収することが可能です。

63... fxe4 64. Kg3 Rb2 65. Rh6 e3 66. Rh1 Re2 67. Rh4 Re1 68. Rh5 Kf6


68... Re2 69. Rg5 でも、g4 を落として白が勝てるでしょう。

69. Kxg4 Rg1 70. Rf5+ 1-0



最後は70... Ke6 71. Re5+ Kf6 72. g3 でgポーンを守りつつ、e3 を落としにいけば白の勝ちです。f2-f4e3-e4 のアイディアが絶妙で、黒の伸ばしすぎポーンを上手く弱点とできたのがポイントでした。残り2試合、私は誰を応援するということもなく、最終結果を待とうと思います。

Croatian Chess Championship 2020 Live Games

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