2020/11/30

Chubu Rapid Open 2020 Tournament Report

今年の中部快速オープン入賞者たち

昨日は中部快速オープンに参加するために名古屋へと足を運んできました。今年は新型コロナの影響で、例年の6R から1R 減らされ、5R での開催です。私は3R での大多和くんとのドロー以外、4試合を勝ち切って優勝を手にすることができました。オープン、A、B各クラスの入賞者の皆さん、おめでとうございます。

1st Place Kojima, S 4.5/5
2nd Place Ogawa, T 4/5
3rd Place Otawa, Y 3.5/5
4th Place Jiang, L 3.5/5

Chubu Rapid Open 2020 Final Standings


名古屋は東京の大会とは参加メンバーが一風異なり、毎回楽しませてもらっています。今回も2位の小川さん、4位のJiang さんとは初対戦で、どちらのゲームもとても相手の強さを感じるような内容でした。特に日本での公式戦初参加となる小川さんは、多賀くん、Scottさん、大多和くんとリスト上位を次々に破り、4連勝でトップに立ちました。逆転優勝をかけた小川さんとの最終戦をご紹介します。

Kojima, S - Ogawa, T
Chubu Rapid 2020 (5)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 c5 4. Nc3 cxd4 5. Nxd4 Bg7 6. e4 d6 7. Be2 O-O 8. O-O a6 9. Be3 Nc6 10. f3 e5?!

d4 のナイトを追い返したい気持ちは分かりますが、g7 のビショップの利きを止めてしまうという点でこの手には疑問を感じます。d5 のマスとd6 のポーンを弱めてしまうことも気がかりでしょう。

11. Nc2 Be6 12. Qd2 Re8 13. Rfd1 Bf8 14. Rac1 Rc8 15. Bf1 Nh5


黒の作戦はKing's Indian のように、f7-f5 とキングサイドのポーンを伸ばして白キングに攻撃を仕掛けることだと予想できます。 d5 のマスが空いたままであることが、どのように影響するかがポイントです。

16. b4 f5 17. Kh1 f4 18. Bf2 Nf6 19. Nd5 Bxd5?!

このピース交換はd5 のマスを白ポーンで埋め、黒が通常のKing's Indian のように考えやすくはなりますが、c8-h3 のダイアゴナルを抑える重要な白マスビショップが消えることで、黒のキングサイドアタックの力が弱まるというデメリットがあります。d6 のバックワードポーンやd5 のアウトポストの弱点で苦しくはありますが、19... Nd7 と退いてb6 のマスをカバーし、耐える展開もありえたと思います。

20. cxd5 Ne7 21. a4 g5 22. Na3


白としてもd5 のピース交換からKing's Indian Taimanov Variation などと同じポーンストラクチャーになり、クイーンサイドからどのようなアクションを起こせばよいか分かりやすくなります。a7-a6 を突かせていることも白にとってプラスになり、Na3-Nc4-Nb6Bf2-Bb6 のようなb6 のマスを利用したアイディアも使いやすい状況です。試合後に思い付いたのは、本譜の代わりに22. h3 を突いておき、黒のg5-g4 を止めてキングサイドの攻撃を予防する手もありえたでしょう。これも黒の白マスビショップがすでにないために、h3 のポーンへのビショップサクリファイスが無いことを利用した手です。他にも22. a5 と突いて早めにb6 のマスを確保しておくアイディアや、22. b5 で早めにクイーンサイドを崩しにいくアイディアも強力です。

22... Ng6 23. Rxc8 Qxc8 24. Rc1 Qd7 25. b5 g4

互いに逆サイドのポーンを突き合い、King's Indian らしい攻め合いになってきました。直接キング前を攻めている黒のアタックのほうが強そうにも見えますが、白もcファイルからルークが侵入し、b7 を取ってプロモーションを目指せる展開になれば、黒キングへのダイレクトアタックが無くても白には大いにチャンスがある状況です。

26. Nc4 axb5 27. Nb6 Qg7 28. Bxb5 Rd8?!


ルークの逃げ場は少し悩むところですが、28... Re7 として7段目を抑えておくほうが良かったと思います。8段目が薄くなるのは不安にも思えますが、29. Rc8 Rc7 ならば黒はcファイルを取り返して十分です。

29. a5 Qh6?!

h2 を攻めるために指したくなる手ではありますが、c7 にルークが簡単には入れれば白のプレーはとても楽になります。代わりに 29... g3 30. Be1! gxh2 31. Qc3+/- としても、白は1ポーンを取らせてhファイルに蓋をし、cファイルからの侵入で優勢です。試合中はビショップをg1 に退くつもりでしたが、Bf2-Bg1-Bf2 という手損がない分、30. Be1! と退くほうが正確であることを解析で見つけ、勉強になりました。

30. Rc7 g3 31. Bg1


本譜でもなんら問題無いですが、31. Bxg3! fxg3 32. Qxh6 Bxh6 33. Rxb7+- としてビショップを捨ててもクイーン交換をして黒のアタックを消し、b7 を取ってaポーンのプロモーションを狙えば白と勝勢というのがコンピュータの指摘です。白が早めにa4-a5 とポーンを進めておいたプラスと、黒がQg7-Qh6 としてc1-h6 ダイアゴナルにクイーンを置いてしまったマイナスが、上手く噛み合った変化です。

31... gxh2 32. Bf2 Nh4 33. Bf1 Nh5??

少しだけ指してくるかなと思っていました。先に跳んだナイトをただで落としてしまう痛すぎるミスですが、これがなくても黒は苦しい状況です。 33... Rb8 34. Nd7 Nxd7 35. Rxd7+- でも7段目をルークで強力に抑え、クイーンも使ってb7 を落とせば白の勝ちでしょう。

34. Bxh4 Re8 35. Rxb7 Be7 36. Bf2


当然ながら、g3 のマスをカバーし続けるために黒マスビショップは残しておきます。残りはプロモーションを目指すだけのシンプルな流れです。

36... Bg5 37. a6 Ng3+ 38. Bxg3 fxg3 39. Qe1 Bh4 40. a7 Qf8 41. Nd7 Qe7 42. Rb8 Qxd7 43. a8=Q Rxb8 44. Qxb8+ Kg7 45. Qc1 1-0

試合後、小川さんはナイトのただ落ちを悔しんでいましたが、私はかなり早い段階の、白マスビショップを消した時点から黒のキングサイドアタックは不十分になってしまうのではないかと指摘しています。それでも普段はKing's Indian にはFianchetto Variation で、こうした逆サイドからの攻め合いを避ける展開を選んでいるため、早指しで久々にこのようなゲーム展開は緊張しました。無事に逆転優勝を手にすることができ、一安心です。

今回の遠征で、私の今年の公式戦は全て終わりの予定です。来週の大阪浪速オープンや、クリスマスの大会に参加される皆さんは、あと少し年内の公式戦を楽しんできてください。またコロナ禍でイベント運営も大変な中、東海オープンに引き続き、名古屋チェスクラブには大変お世話になりました。年明け以降も、よろしくお願い致します。
今回はトップボードのみ、こうした電子ボードでの中継がありました。最終戦はボードのエラーで中継が止まってしまうトラブルがあり、こうした問題にどう対処するかは運営としても課題でしょう。海外大会でも中継にエラーが起きることは時々あります。
今回はお土産に少し変わったエビのお菓子を選びました。エビの姿焼き、初めて見ました。

2020/11/19

Understanding the Ruy Lopez Vol.3


ここまでBreyer, Zaitsev とRuy Lopez 対策としては割とポピュラーな変化をご紹介してきました。ならば続くのは、その2つと並ぶ代表的な変化である、Chigorin Variation かと予想したかたは惜しいです。私がZaitsev Variation でBenoni ストラクチャーにする構想を得て、次に目をつけたのはKeres Variation です。どんな変化か、手順を追っていきましょう。

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 d6 8. c3 O-O 9. h3 Na5 10. Bc2 c5 11. d4 Nd7!?

9... Na5 と跳び、c7-c5 を早めに進める変化をChigorin Variation と呼びますが、その中でも11... Nd7 と退く変化をKeres Variation と呼びます。エストニアが生んだ偉大なチェスプレーヤー、Paul Keres が研究し、後にドイツのAlexander Graf に手によって発展しました。11... Qc7 がChigorin Variation のメインですが、こちらのKeres Variation は近年になって、トップクラスのGM たちに見直されてきています。

12. Nbd2


最もスタンダードな手ですが、Benoni ストラクチャーへの変化を嫌うのであれば、12. d5 と早めに押し込む選択肢もあります。こちらの実戦紹介は、後の記事でご紹介しようと思います。

12... exd4 13. cxd4 Nc6

a5 のナイトは遅かれ早かれc6 に戻りますが、Keres Variation のメインラインでは、Benoni ストラクチャーに誘導するように早めに下がるのが一般的です。

14. d5


14. Nf1 cxd4 15. Nxd4 Nxd4 16. Qxd4 Ne5! 17. Ne3? Bxh3! は割とレイティングの高いプレーヤーも見落とすタクティクスで、f3 でのナイトフォークがあるために白はh3 のビショップを取ることができません。白が13手目でこのタクティクスに気付いて別の手を指しても、黒はe4 へのプレッシャー、e5 のマスの活用、cファイルからの反撃などを上手く組み合わせ、十分なポジションと考えることができます。

14... Nce5 15. a4 Rb8 16. axb5 axb5

Zaitsev Variation でも白からa2-a4 と突くアイディアを確認しました。このKeres Variation では短期的に見れば、aファイルを開きルークを使いやすくした白に分があるように見えます。しかし、長期的に見ればクイーンサイドのポーンを1つ捌いたことで、黒はb,c ファイルのポーンマジョリティで将来的にパスポーンを作りやすくなったと考えることもできます。

17. Nxe5 Nxe5 18. f4 Ng6


Benoni Defence でも、e5 に跳んだナイトをf2-f4 から追い返すアイディアはよく見かけます。これを嫌い、Nd7-Ne5 を黒側でためらう人もいるかと思いますが、黒としてもe4 が攻撃しやすくなったこと、a7-g1 のダイアゴナルが弱まったことなど、f2-f4 を突かせたメリットはあります。e4-e5 からのブレイクがさほど早くないのであれば、f2-f4 を白から突くように誘うのは勝負に行く方法として悪くないはずです。

19. Nf3 Bh4 20. Rf1 Bg3

早速f2-f4 と突かせて弱くなったキングサイドの黒マスを利用し、f4 のポーンを攻撃します。相手のナイトが利いているマスにビショップを置く手は抵抗があるかもしれませんが、20. Nxh4 Qxh4 は次にBc8-Bxh3 の狙いもあり、白としてはあまり指したくないでしょう。

21. f5 Ne5 22. Ng5 h6


大学生の頃、白を持ってこのポジションを持ちましたが、その際は黒がセオリーを間違えたため、あっさりと試合は終わりました。22... c4? 23. Qh5! h6 24. f6! gxf6 25. Nf3 Ng6 26. e5! f5 27. e6! Nf4 28. Bxf4 Bxf4 29. Qxf5 Be3+ 30. Kh1 Kg7 31. Ng5! 1-0 Kojima, S - Sato, K / Closed Training 2010

23. f6! gxf6!


私が高校生の頃から、このKeres Variation のメインセオリーは23手目付近まで研究されており、このナイト取りを無視したf5-f6 によって白が有利という結論が出ていました。ポイントとしては、23... hxg5 24. Bxg5 g6 25. Ra3!+- が見えづらいスレットで、a1 が突如出てきたルークが3段目を移動し、g3 のビショップを捕まえて白の勝勢となります。しかし、近年になって黒は23... gxf6! で勝負できるという研究が出てきて、このKeres Variation のメインラインも見直されることとなりました。

24. Nf3 Kg7

いかにも黒キングが危なそうな局面ですが、黒はRf8-Rh8f6-f5 の突き捨てなどを駆使してキングを守り抜きます。もし白のアタックを捌ききることができれば、黒にはe5 のアウトポストとクイーンサイドのポーンマジョリティという武器が残り、十分に勝負することができるでしょう。2019年の私のRuy Lopez 対策研究として最も多くの発見があり、1... e5 の奥深さを再認識した変化でした。今後も実戦でお披露目する機会もあるかと思います。

Vol. 4 に続く。

2020/11/14

Understanding the Ruy Lopez Vol.2


Vol.1 で紹介したBreyer は手堅い変化ですが、もう少しアクティブな反撃を作りやすい変化はないかと考えました。そこで1つの発想として、どこかのタイミングでe5 とd4 のポーンを交換し、eファイルを開くことでe4 のポーンへ攻撃しやすいポーンストラクチャーを目指すことにします。そこで目をつけたのは、Breyer Variationと並んで人気のある代表的な変化、Zaitsev Variation です。

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 d6 8. c3 O-O 9. h3 Bb7

b7 に早くフィアンケットを組むZaitsev Variation は、Breyer Variation よりも自然に見えます。冷静にZaitsev Variation の初期ポジションを見ると、黒が圧倒的にマイナーピースの展開が早く、優勢であるように思えます。黒のピースの早さに対抗する白の武器は、d2-d4 から厚く広げるセンターのポーンの壁であるため、これをいかに崩すかが黒のコンセプトと考えることができます。

10. d4 Re8 11. Nbd2


ここで11. Ng5 Rf8 12. Nf3 Re8 13. Ng5 としてすぐ同じ局面を繰り返すのを、俗にZaitsev Draw と呼びます。黒で勝ちにいくのであれば、このZaitsev Draw を避けるアイディアも考えておく必要があるでしょう。

11... Bf8 12. a4

b7-b5 とクイーンサイドを広げた黒に対し、白もaポーンで反撃するのはRuy Lopez におけるポピュラーなアイディアです。しかし、これによりb4 のマスが弱くなることが、この後の展開における大きなポイントになります。メインラインの展開を避けるためであれば、12. a3!? としておき、Bb3-Ba2(もしくはBb3-Bc2) と退いてから、b2-b4, c3-c4, a3-a4 などとクイーンサイドのポーンを広げるアイディアも有効です。

12... h6


Breyer Variation では、e4 をカバーするために白が早めにBb3-Bc2 と退いていて、f7 へのプレッシャーが薄いこと、そしてNd2-Nf1-Ng3 が早いことでf5 を早めにカバーすべきであることから、g7-g6 のポーン突きが一般的でした。Zaitsev でもg7-g6 はありえますが、f7 へのプレッシャーを警戒しておくのであれば、本譜のようにhポーンを突くべきです。様々なRuy Lopez の変化でf8 の初期位置にビショップを退いた際、hポーン、gポーンのどちらを突くかは悩むところです。

13. Bc2 exd4! 14. cxd4 Nb4 15. Bb1 c5 16. d5

黒から動き、ポーンストラクチャーを大きく変化させます。e5 とc3 のポーンを交換することでルークの利きを開いてe4 をアタックしやすくし、c7-c5 からクイーンサイドでもアクションを起こします。白はe4 へのプレッシャーを緩和するためにd4-d5 とポーンを突きこしますが、これによりポーンストラクチャーはBenoni Defence のようになります。Ruy Lopez からBenoni Defence のポーンストラクチャーに変化した際のポイントを、以下にようにまとめておきます。

・ e5 のポーンを消したことで、白からのe4-e5 ブレイクを警戒しなければいけないものの、e4 への攻撃やe5 のマスの活用が考えられます。
・ 一般的に白がa2-a4 から止める黒のクイーンサイドのポーンが、b7-b5 とすでに伸ばせており、黒はクイーンサイドにポーンマジョリティという武器を持ちます。
・ f8 に退いた黒マスビショップは、g7-g6, Bf8-Bg7 のように組み直して通常のModern Benoni と同様に使っても、f8 に置いたままでd6 の弱点のディフェンスに使っても良いでしょう。

通常のBenoni Defence との相違点を理解し、上手く指しこなすことができれば、このRuy Lopez におけるBenoni ポーンストラクチャーは、黒が攻撃的に戦える形だと言えると思います。

16... Nd7!


e4 へのプレッシャーを保つか、e5 のマスのコントロールに切り替えるかは悩むところですが、b7 のビショップがe4 に利かない以上、e4 への攻撃には限界があります。ここでのナイト退きは、e5 を抑えるだけでなくもう1つのナイトのマスを見据えています。

17. Ra3 c4!

こうしてd4 のマスを白のナイトに明け渡してでも、Nd7-Nc5-Ncd3(もしくはNbd3) というマヌーバリングのチャンスを作れば、黒はアクティブにプレーして戦うことができます。Kasparov - Karpov のマッチで有名になったfポーンを突くアイディアは、d5 を弱めてb7 のビショップを通すという点で面白いアイディアですが、17... f5 18. Nh2 Nf6 19. Rg3 と進んだ際にキングサイドの攻撃が厳しく、現代ではリスクの高い変化と考えられています。

Zaitsev Variation は今回紹介したメインラインのように、クイーンサイドでアクティブにプレーして戦えるチャンスがあり、とても面白い変化だと思います。ただし、このメインラインもかなり研究が細かく進み、ドロー模様のイコールポジションまで一直線に進んでしまうこともあります。11. Ng5 のドロー変化にどう対応するかという問題もあるでしょう。Zaitsev Variation も1つの武器として使えるように勉強し、Benoni ストラクチャーへの変化というアイディアも学んだうえで、他の変化の研究に移ることを決めました。

Vol.3 に続く。

2020/11/09

Understanding the Ruy Lopez Vol.1


私がここ2年ほどで研究してきた、Ruy Lopez のラインを紹介する新連載を始めようと思います。黒番で1. e4 e5 を指し始める構想は、昨年ハンガリーから戻った直後にスタートしました。実際、昨年の東京チェス選手権では1. e4 e5 を早速試しています。Caro-Kann には大きな不満はありませんでしたが、生徒たちに1. e4 e5 を教えるうえでも、自分のプレーの幅を広げるうえでも、1. e4 e5 を自分で指すことはいつか必要だと感じていました。

1. e4 e5 のレパートリーを作るためには様々な白からの変化に対応できなくてはいけませんが、その筆頭がRuy Lopez (1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5) です。3. Bc4 のItalian もトップGM の間で人気が上がっているとはいえ、Ruy Lopez が1. e4 e5 の一番人気であることは変わりません。Ruy Lopez への理解を深めるために、そして黒番でも勝ちにいくためにどんな変化が良いか研究を始め、最初に目をつけたのはBreyer Variation です。

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 d6 8. c3 O-O 9. h3 Nb8!?

ナイトが初期位置に戻るBreyer Variation は、初めて見る人にとって驚くべき変化の1つだと思います。黒はナイトをd7 に組み替えることでb7 に組む白マスビショップの利きを通し、e4 にプレッシャーをかけやすくします。

10. d4 Nbd7 11. Nbd2 Bb7 12. Bc2 Re8 13. Nf1


私が白番で1. e4 を指していた際は、13. a4 とクイーンサイドで早めに仕掛けるラインを採用していましたが、Nf1-Ng3-Nf5 を狙うこちらのラインがメインとして考えられています。

13... Bf8 14. Ng3 g6

ビショップを初期位置に退いてルークの利き筋を通し、f5 のマスを抑えてナイトの侵入を防ぐと同時に、様子を見てBf8-Bg7 とフィアンケットに組み直します。この攻防一体のアイディアは1. e4 e5 を指すプレーヤーは特に覚えておくと良いと思います。

15. a4 c5!


私も昨年松尾さんに教えてもらうまできちんと理解していなかったのですが、白がa2-a4 を突いたのを見てからcポーンで反撃するのがポイントで、dポーンの押し込みに対してc5-c4 をすぐ突き、b3 のマスをの弱さを利用することができます。a2 にポーンが残っている段階で、c7-c5-c4 を急ぎすぎると、b2-b4 にアンパッサンをしても、白もaxb3 と取りかえし、再びb3-b4 からc5 のマスをカバーできます。

16. d5 c4 17. Bg5

ここでの黒の手は17... Be7 とすぐ戻るか、17... Nc5 とナイトを跳ばすか、17... h6 と早めにビショップを追い返しておくか、こうした選択肢があります。f8 に退いたビショップはg7 に組むのが自然にも思えますが、e5 ポーンが固定されている(黒からexd4 と開くチャンスがもうない) 状況では、g7 のビショップはあまり利きが良くないと考えられます。

この先のゲーム展開や、他のラインの研究も踏まえ、Breyer Variation は非常にプロフェッショナルな変化だと結論付けました。トップGM にも採用される、手堅く優秀な変化であることは否定しないのですが、自分の好みや求めるものとは少しずれがあり、また各々のラインでのアイディアを正しく理解することは難しいとも思いました。例えば、私がこのBreyer Variation のメインラインを見て、黒側が難しいと思うポイントは、2つのビショップの働きをどのように改善し、具体的にどう試合を進めていくかが見えづらい点です。白もc2 のビショップをどう活用するかなど、課題はありますが、クイーンサイド、キングサイド、どちら側でも仕掛けを行いやすいのは白に見えます。私が求めるのは多少リスクはあっても、もう少し黒側から何をやるかが分かりやすい変化でした。それがどういったものかは、Vol.2 で細かく説明をしようと思います。

Vol.2 へ続く

2020/11/08

第26回七盤初心者のためのチェスレッスン

Izeta Txabarri, F - Andersson, U
Bilbao 1987
Black to move

11月のいっぷくでのチェスレッスンは、3連休の初日開催です。店舗でもオンラインでも、ふるってご参加ください。

【日時】 2020年11月21日(土) 18:30~20:30
【会場】 どうぶつしょうぎcafe いっぷく
【形式】 レクチャー+質疑応答+対局
【テーマ】 ナイトの跳躍
【参加費】 2500円
【申し込み】 どうぶつしょうぎcafe いっぷく ご予約フォーム

ナイトはチェスのピースの中で唯一直線的ではない動きをし、予想が最も難しい駒だと思います。今回はそんなナイトの動きに着目し、様々な活躍パターンを見ていきましょう。

2020/11/04

Japan Chess Championship 2020 Day4

3度目の全日本優勝を決め、アルゼンチン大使から優勝カップを受け取るTuさん Photo by Yamada, A

1日遅れましたが、全日本選手権最終日の報告です。すでにご存じのかたも多いかと思いますが、最終戦ではリストトップの3人、私、青嶋くん、Tuさんが全員黒で勝ち、上位入賞を決めました。5連勝の後、1つドローでポイントを落としただけのTuさんが3度目の優勝、私は4年連続の2位、初の連覇を狙った青嶋くんは3位となっています。1-3位のポイントはそれぞれ単独となりましたが、4.5P が複数いたため、タイブレークで4位はSimonさん、5位は小林くんとなっています。

1st Place Tran Thanh Tu (CM, JPN, 2346) 6.5/7
2nd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2386) 5.5/7
3rd Place Aoshima Mirai (FM, JPN, 2349) 5/7
4th Place Bibby Simon (FM, JPN, 2147) 4.5/7
5th Place Kobayashi Atsuhiko (JPN, 2125) 4.5/7


入賞者の皆さん、おめでとうございます。そして参加者の皆さん、運営スタッフの皆さん4日間、本当にお疲れ様でした。コロナ禍での延期と短縮があり、例年よりも開催は大変だったことは間違いありません。こうして無事に大会が終えられたこと、とても嬉しく思います。

では、最終戦の解説に移りましょう。小林くんとの黒を持った対戦は、昨年の全日本選手権でもありました。今回は彼が最近GMレベルで人気のセットアップを採用していることを知り、前夜に見つけた手順を試してみることにしました。

Kobayashi, A (JPN, 2125) - Kojima, S (IM, JPN, 2386)
Japan Chess Championship 2020 (7)

1. c4 e6 2. Nf3 Nf6 3. Nc3 d5 4. e3!?

私の印象としては、このアイディアは昨年からよく見かけるようになりました。東野さんとの試合では、1. Nf3 d5 2. e3!? という手順で同じアイディアを使われたこともあります。白のコンセプトはSemi-Slav Anti-Meran のように低く構えつつ、黒がどのようにポーンを伸ばすかを見てから対応するというものです。黒がc7-c6 とd5 を補強してきたときにはd4 にはポーンを置かない、もしくは遅らせ、c7-c5 とセンターを主張してきた際には、d2-d4 から崩してd5 にポーンが残るIQP を目指すというのがスタンダードな作戦です。

4... a6!?


試合前夜に見つけた手ですが、私は以前のレパートリーでも、a6 Slav やSemi-Tarrasch でaポーンを突く手を試しており、ここでもあまり違和感のないアイディアでした。1手待って白の出方を探る意味もありますが、IQP になった際にBf1-Bb5 を止め、d4 のマスをコントロールされることを防ぐ意味がここでは大きいと思います。

5. b3 c5 6. cxd5 exd5 7. d4?!

前述の通りのセットアップですが、少しタイミングが早いと感じました。7. Bb2 Nc6 8. d4 cxd4 9. Nd4 Bd6 ならばスタンダードなIQP ポジションで、互いに主張がありながらも、白がこのラインで目指した形になると思います。

7... cxd4 8. Nxd4 Bb4!


これが用意していたアイディアで、白はc3 のピンされたナイトをカバーするため、ビショップをd2 に置かざるをえなくなります。するとb2-b3 が意味のないものとなり、a3 のマスを弱めたことなども弱点になる可能性があります。b4 に出たビショップはテンポロスを気にすることなく、d6 あたりへ将来的には戻るつもりでした。

9. Bd2 O-O 10. Bd3

通常のIQP であれば、d4 のマスのコントロールが重要ですので、クイーンの前をふさぐようにビショップは配置しないでしょう。e2 がスタンダードなビショップの位置です。しかし、こここではd2 にビショップを置いてしまっているため、e2 にビショップがいてもb2 ビショップとクイーンでd4 をコントロールする理想的な配置ではありません。それであれば、e2 のマスをNc3-Ne2 と組み替えに使うアイディアもありえるでしょう。

10... Nc6 11. Nxc6 bxc6 12. Rc1 Ba3!


黒はナイトを1枚捌き、ポーンストラクチャーを変化させました。これでd5 は強化されましたが、将来的にc6 のポーンが弱点になることを覚悟しなければいけません。一方で白もNg1-Nf3-Nd4-Nxc6 と手数をかけてナイトを消したことで、将来的にキングサイドが弱くなっており、それをどうカバーするかという問題があります。ビショップの位置をd3 に決めたため、Bf1-Be2-Bf3 ができないことも気がかりです。

本譜の手はBb4-Bd6 と組み直す前にc1 のルークを当てておき、c2 に上げさせることです。それにより、d3 のビショップがc2, b1 へ退くチャンスが無くなるうえ、Bc8-Bf5 などのターゲットにもなりうると考えました。一方で、d5-d4 からセンターを開いた際や、f2 を攻めた際に2段目にルークが上がっていることが、白にとってディフェンス面でプラスになるかもしれないとも考えました。難しい判断ですが、トータルで判断して、1度ルークをc2 に上げさせる決断をします。

13. Rc2 Bd6

コンピュータの指摘ではビショップ退く手を入れずに、13... Ng4! と先に跳ぶ手が良いとのことですが、このマスのナイトが力を発揮するのは、d6 のビショップと組み合わせてこそだろうと思い、本譜ではそちらを優先します。

14. Ne2 Ng4


ここで前述のアイディアを実行します。キングサイドを攻めることで白にキャスリングさせづらくし、Ng4-Ne5 からd3 のビショップをアタックしつつ、c6 を守ることも視野に入れています。

15. Ng3 Re8

ここはなにかありそうだとも思いながら、ベストの手がわかりませんでした。15... Qh4 16. Rxc6 Bxg3 17. fxg3 は白の形を崩しながらも、クイーンを退く1テンポと黒マスビショップを諦めなくてはいけないことが気になり、さほど自信がありませんでした。正しい手は15... Qf6! 16. Bc3 Qh4! で、こうしてc3 にビショップを上がらせておけば、c6 を取られる心配がなくなります。Qd8-Qh4Qd8-Qf6 は両方考えていながらも、ミックスするという発想に至らなかったのは反省です。

16. Be2 h5 17. h3?


黒がキングサイドでプレッシャーをかける面白い展開ながら、まだまだ形勢は難しいと思っていました。しかし、この手で白陣は一気に崩れてしまいます。続く黒の典型的な手を小林くんが見落としたのは意外でした。

17... Nxf2! 18. Kxf2 Qh4-+

ナイトを捨ててポーンを取り、g3 のナイトを確実に取りかえして黒の勝勢です。白はc6 やh5 を取れるチャンスはあるものの、キングが無防備すぎること、h1 のルークが出てこられないことが痛手となります。

19. Kf1 Bxg3 20. Rxc6 Bd7 21. Rc3 Re6 22. a4 Rae8 23. Rd3 g5


もう少し分かりやすい決め手があるかと思いましたが、Be2-Bf3Rd3-Rd4 がディフェンスになり、どう決定的な局面を迎えるかが分かりませんでした。そこで少しキング前を崩しても、g7-g5-g4 からf3 のマスを抑え、Be2-Bf3 のディフェンスを無効化することにします。

24. Bxh5 Rf6+ 25. Bf3 g4 26. Bc3 gxf3

本譜のようにダブルビショップvs. ルークにしても黒は大きな問題はありませんが、26... Be5 とビショップを捌くシンプルな手が見えなかったのはひどかったです。

27. Bxf6 Qxf6 28. gxf3 Kf8!?


時間もあまりない中自信はありませんでしたが、gファイルからキングを避けておいたほうが安全だろうと思いました。しかし、前日の弘平くんとの試合では安全だと思って避けたf8 のキングが、あわやひどい状況になるところだったので、油断はできません。

29. Rg1 Bxh3+ 30. Ke2 Bh2 31. Qa1 Qh6!

h3 を捨ててもルークを活用し、キングをセンターに逃がすのは実戦的な判断ですが、31. Rh1 Bg2! があるため、結局のところルークはターゲットになってしまいます。本譜ではクイーン交換を避け、e3 を狙うとともに将来的なQh6-Qh2+ のチャンスを伺います。

32. Qa3+ Bd6 33. Qc1 Bf5!


おそらく小林くんが直前まで見えていなかったのがこの手で、hファイルからのクイーンの侵入と、ルークを狙いe3 のディフェンスを減らすアイディアがぴったりとなります。

34. Rh1 Bxd3+ 35. Kxd3 Rxe3+! 36. Qxe3 Qxh1 37. Qb6 Qd1+ 38. Ke3 Qg1+ 0-1

最後はピースアップの状態から、クイーンを取って勝ちです。時折ベストの手は逃がしましたが、前日の孔平くんとの試合のように優勢から相手に逆転のチャンスを与えるような大きなミスをしなかったのは良かったと思います。

R1 Noguchi, K (JPN, 1996) - Kojima, S (IM, JPN, 2386) 0-1
R2 Kojima, S (IM, JPN, 2386) - Nakamura, N (JPN, 2105) 1-0
R3 Asaka, S (AUS, 2253) - Kojima, S (IM, JPN, 2386) 1/2-1/2
R4 Kojima, S (IM, JPN, 2386) - Aoshima, M (FM, JPN, 2349) 1-0
R5 Kojima, S (IM, JPN, 2386) - Tran, T T (CM, JPN, 2346) 0-1
R6 Yamada, K (FM, JPN, 2116) - Kojima, S (IM, JPN, 2386) 0-1
R7 Kobayashi, A (JPN, 2125) - Kojima, S (IM, JPN, 2386) 0-1

Japan Chess Championship 2020 Final Standings

今年の全日本選手権も、結果に喜ぶ人、落ち込む人、終わっての反応は様々だったと思います。私も優勝こそなりませんでしたが、レイティングはプラスで終われましたので及第点といったところでしょう。また月末、名古屋のトーナメントを頑張りたいと思います。またそちらでは、この全日本で終えなかったプレーヤーたちとの交流も楽しみにしています。
カップは優勝者だけですが、他の入賞者および、シニア、ジュニア、女性の成績優秀者には、スポンサーの陶楽さんより有田焼のナイトが贈られています。私はジャパンチェスクラシックで獲得し損ねたため、今回が初めてです。
表彰式後には、下北沢で開催されているシモキタ名人戦に顔を出してきました。シモキタ名人戦は将棋、囲碁、連珠、バックギャモンなどのボードゲームのイベントです。毎年GW に開催されていましたが、チェスの全日本選手権同様、今年はこの時期に延期されていました。ちなみに私はバックギャモンで中村くんに惨敗でした...

2020/11/02

Japan Chess Championship 2020 Day3

全日本選手権3日目が終わり、ゴールが見えてきました。私は午前の試合でTuさんに負けてしまい、今年も優勝がかなり厳しくなってしまいました。午後の試合では弘平くんに黒を持って戦います。試合が長いため、序盤を割愛して中盤の難しいところから解説します。
Yamada, K (FM, JPN, 2116) - Kojima, S (IM, JPN, 2386)
Japan Chess Championship 2020 (6)
Position after 36... Ba8

37. Qh7!


エクスチェンジと2ポーンアップで、後はどう白の反撃を振り切るかという段階ですが、直前にBc6-Ba8 と下がった手がまずく、白に逆転のチャンスを与えてしまいます。

37... Rb6 38. Re1 Rd6 39. Re8+?

互いに残り1分台で、私たちは正解の手が見えていませんでした。試合後にTuさんが指摘したのは、39. Bxf7! Qxf7 40. Qh8+ Qg8 41. Re8++- で白は黒クイーンを取ることができ、勝っているという変化です。私もa8 のビショップを返す本譜しか見えていませんでした。

39... Rxe8 40. dxe8=Q+ Kxe8 41. Qg8+ Ke7 42. Qxa8 Qa1+! 43. Kh2 Qe5!


ビショップは落ちたものの、黒は豊富にポーンが残っているうえ、白のナイトは不安定です。39手目付近では、この局面は黒がはっきり良いと考えていました。

44. Ne4 f3+ 45. g3 Rd4-+

ナイトは逃げ場が無く、これで黒は完全に勝勢です。それでも、この先少しヒヤリとする局面がありました。

46. Nxg5 hxg5 47. Qxf3 Qf6 48. Qe3+ Kd8? 49. Bxf7 Kd7


キングの逃げるマスを間違え、不必要な手を入れざるをえなくなりました。それでも、黒キングは問題なく、依然として黒勝勢です。

50. Be8+ Kd6 51. Bb5 b3 52. Qxb3 Qxf2+ 53. Kh1 Qe1+

53... Rd2 54. Qa3+ c5-+ でチェックも続かず、メイトでゲームは終わりでした。時間が無くてもこれは見えなければいけません。

54. Kg2 Rd2+ 55. Kf3 Qd1+


完全に読み切っていたわけではないですが、このルークvs. ビショップは勝てると判断してクイーンを交換します。

56. Qxd1 Rxd1 57. Kg4 Rd5 58. Be8 c5 59. Bf7 Re5 60. h4 gxh4 61. gxh4 c4 62. h5 c3 63. Bg6 Re2 64. h6 c2 65. h7 c1=Q 66. h8=Q Qg1+ 67. Kf5 Rf2+ 0-1

最後はビショップをチェックで取ることができ、黒の勝ちです。心臓に悪い試合でしたが、駒得してから余計な反撃を許した自分の未熟さゆえです。明日の最終戦は反省を生かしてしっかりと指したいですね。

R1 Noguchi, K (JPN, 1996) - Kojima, S (IM, JPN, 2386) 0-1
R2 Kojima, S (IM, JPN, 2386) - Nakamura, N (JPN, 2105) 1-0
R3 Asaka, S (AUS, 2253) - Kojima, S (IM, JPN, 2386) 1/2-1/2
R4 Kojima, S (IM, JPN, 2386) - Aoshima, M (FM, JPN, 2349) 1-0
R5 Kojima, S (IM, JPN, 2386) - Tran, T T (CM, JPN, 2346) 0-1
R6 Yamada, K (FM, JPN, 2116) - Kojima, S (IM, JPN, 2386) 0-1

Japan Chess Championship 2020 R7 Pairings

過去最短の全日本選手権は、いよいよ明日の7試合目で全試合を終えます。奇しくも最終戦のトップボードは、ジャパンチェスクラシックの最終戦と同じペアリングで、色も全く同じです。1P リードするTuさんがそのまま逃げ切るか、ジャパンチェスクラシックで優勝したSamuelくんが意地を見せるか、最後まで目が離せません。

2020/11/01

Japan Chess Championship 2020 Day2

全日本選手権2日目のレポートです。7試合しかない今年は、2日目から優勝候補同士がぶつかり合います。私はSamuel くんと午前中の試合でドローになり、午後は昨年のチャンピオンである青嶋くんとの試合を迎えます。

Kojima, S (IM, JPN, 2386) - Aoshima, M (FM, JPN, 2349)
Japan Chess Championship 2020 (4)

1. Nf3 d6 2. d4 Nc6 3. e4 e5 4. Bb5

全く予想外でしたが、オープニングはRuy Lopez Steinitz Variation になりました。100年前であれば頻繁に指されていましたが、現代の考えでは黒のダブルビショップが少し消極的すぎるため、a7-a6 を早めに指す変化のほうが好まれます。

4... Bd7 5. Nc3 Nf6 6. O-O exd4 7. Nxd4 Be7 8. Re1 O-O 9. Bxc6 bxc6 10. h3


どういったセットアップにするか悩みましたが、一度h2-h3 を突いてg4 のマスを抑え、Nf6-Ng4-Ne5 というマヌーバリングを防いでおくのはポピュラーなアイディアだったと記憶しています。

10... Rb8 11. b3 Re8 12. Qf3 h6 13. Bf4 c5 14. Nde2 Bc6 15. Rad1 Bf8 16. Ng3 Rb4 17. Re2

黒はe4 にプレッシャーをかけてきますが、それをじっと耐え、Nc3-Nd5Ng3-Nf5 の2つのナイト飛び込みのタイミングを待ちます。

17... a5 18. Bd2 Rb8 19. Rde1 Nd7 20. Nf5


e4 へのプレッシャーが薄まったところでまず1つ。f8 のビショップはe7, g7, h6 を上手くディフェンスしているようにも見えますが、動きようがないためにずっとこの位置のままでは困るとも考えられます。

20... Qf6 21. Nd5!

ナイトが退いた代わりにクイーンが上がる手は私も自然だと思っていましたが、2つ目のナイトの飛び込みと、Bd2-Bc3 の組み換えによってターゲットになります。

21... Bxd5 22. exd5 Rxe2 23. Rxe2 a4


クイーンがa1 に跳び込んでポーンをかすめ取るような手も考えたくなりますが、h6 取りからQf3-Qg4+ がd7 のナイト取りになっており、クイーンがキング前から離れることは危険です。しかし、本譜でも白は黒クイーンをターゲットに手を作ることができます。

24. Bc3 Qg5 25. h4! Qg6 26. Bxg7+-

25... Qc1+ 26. Kh2 もg7 取りがスレットになっているため、ディフェンスは難しそうです。本譜では分かりやすくe7 のナイトフォークを利用してキング前のポーンを奪い、白が勝勢です。

26... axb3 27. axb3 c4 28. Bd4 cxb3 29. cxb3 Nf6 30. Nxh6+


ここは黒からの反撃が不十分であることを確認し、2つ目のポーンを取ってゲームを決めにいきます。

30... Bxh6 31. Bxf6 Qb1+ 32. Kh2 Kf8 33. Re7 Rxb3 34. Rxc7 1-0

最後はバックランクとBf6-Bg7+ がどちらもメイトスレットになっているため、黒は勝負を続けることができません。良いゲームで大一番を取ることができました。

R1 Noguchi, K (JPN, 1996) - Kojima, S (IM, JPN, 2386) 0-1
R2 Kojima, S (IM, JPN, 2386) - Nakamura, N (JPN, 2105) 1-0
R3 Asaka, S (AUS, 2253) - Kojima, S (IM, JPN, 2386) 1/2-1/2
R4 Kojima, S (IM, JPN, 2386) - Aoshima, M (FM, JPN, 2349) 1-0

Japan Chess Championship 2020 R5 Pairings

4試合を終え、Tuさん1人が全勝を守っています。明日は私とTuさんの対局がありますので、ここも上手く指せるように頑張りたいと思います。いつもより早い折り返しですが、皆さん後半戦もよろしくお願いします。
地方の参加者から可愛いお土産をいただきました。久々の大会で、なかなかお会いできない人と交流できるのも嬉しいですね。
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