二日ほど遅れましたが、今年の全日本選手権最終日のレポートです。7R 終了時点では6ポイントで3人が並ぶ混戦でしたが、最後の2試合で1.5ポイントを取り、単独優勝を飾ったのは青嶋くんでした。青嶋くんは2019年の全日本選手権に続き、3年ぶり2回目目の全日本選手権優勝です。青嶋くんを始め、入賞者の皆さん、おめでとうございます!
1st Place Aoshima Mirai (FM, JPN, 2342) 7.5/9
2nd Place Tran Thanh Tu (CM, JPN, 2386) 7/9
3rd Place Yamada Kohei (FM, JPN, 2161) 7.9
4th Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2353) 6.5/9
5th Place Kobayashi Atsuhiko (JPN, 2141) 6.5/9
Japan Chess Championship 2022 Final Standings
私は8R で青嶋くんと引き分け、首位のまま最終戦を迎えましたが、Tuさんに敗れて今年も優勝を逃しました。悔しい結果ですが、しっかりとゲーム内容を振り返ってまた次につなげようと思います。8R の青嶋くんとのゲームはすでに彼のブログで解説がありますが、私はもう少し違った点を踏まえながら自分なりの分析をお届けしようと思います。
Kojima, S (IM, JPN, 2353) - Aoshima, M (FM, JPN, 2342)
Japan Chess Championship 2022 (8)
1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4!?
3. Bb5 のRossolimo でも良かったのですが、少し違った変化をこの大会では用意していました。多くのBf1-Bb5 ラインと共通していますが、d2-d4 を急がないことによって、c2-c3 も含めた厚いセンター作りのチャンスを残しています。 Japan Chess Championship 2022 (8)
3... g6 4. O-O Bg7 5. c3 d6 6. Re1?!
考えてみれば、あまり早くにこの手を入れる必要はありません。6. d4! とすぐにセンターを抑えていれば、少し違ったゲーム展開になっていたと思います。
6... Nf6 7. h3 O-O
7... Nxe4! 8. Rxe4 d5 は典型的な手筋ですが、白のセンターを崩している分、黒が得しています。8. d4
ここも悩みました。本譜のd6-d5 ブレイクを防ぐのであれば、ビショップを先に退いておくべきですが、8. Bb3 Na5 9. Bc2 c4! という展開からd2-d4 を防がれることを嫌いました。
8... cxd4 9. cxd4 d5 10. exd5 Nxd5
典型的なIQPポジションですが、黒はd7-d6-d5とポーンを突きなおしているため、白はh2-h3、Rf1-Re1 と欲しい手を早く入れられています。11. Bb3 Be6
e6 のビショップはナイト、ルークのターゲットになりえるため、少しリスクのある方針です。11... Nb6 12. d5 Na5 13. Nc3 と進む変化は、白が白マスビショップを諦めても黒のe7 ポーンを固定し、Bc1-Bg5 も使ってプレッシャーをかけられ、少し白が良いと考えていました。
12. Nc3 Qd7?! 13. Ne4! b6 14. Neg5!
クイーンの少し不用意な上がりにより、予期していたようにe6 のビショップがターゲットになりました。白はこのビショップをナイトで攻撃し、ポーンストラクチャーを崩してアドバンテージを得ます。14... Rad8 15. Nxe6 fxe6 16. Be3
16. Re4! はコンピュータの指摘する手でとてもユニークです。e4 のマスがアウトポストになったことで、このマスになんらかのピースを置くことはイメージできていたのですが、それは本譜のようにナイトのつもりでした。e4 のルークは弱いd4 を守りつつ、将来的にeファイルにヘビーピースを重ねてe7 をアタック、場合によってはRe4-Rh4 と振ってキングへの直接攻撃と広いアイディアを持ちます。
16... Na5 17. Bc2 Nc4 18. Ng5
青嶋くんは18. Bc1 と下がる手を試合後に指摘してくれましたが、私はこの攻撃態勢が整っている状態であれば、b2 を捨ててキングサイドアタックに踏み切るべきだと考えました。もちろん、ビショップが退くのも良い手です。18... Nxb2 19. Qg4 Rf6 20. Qh4 h6 21. Ne4 Rf5 22. Ng3 Nxe3 23. fxe3 Rg5 24. Bb3?!
試合後に悔やんだ手で、弱いa2-g8 のダイアゴナルとe6 のポーンを見据え、c4 のマスに黒ナイトを逃がさないことを目的としました。実際にはe6 よりもg6 のほうが不安定で、こちらへのプレッシャーを残したまま戦うほうが良かったです。24. Ne4 Rf5 25. Nd2! は試合中に考えなかったマヌーバリングで、黒ルークがf6 に退いた場合、e5 のマスへの利きがなくなるため、白はNd2-Nf3-Ne5 と組み替える絶好のチャンスになります。このことからも、白マスビショップはb1-h7 ダイアゴナルに残しておくほうが良かったです。
24... Nd3 25. Rf1 Nb4 26. Ne4 Rf5 27. Ng3 Rg5 28. Kh1 Nd5 29. Rf3 Rf8 30. Raf1?
それでもまだチャンスがあった白でしたが、ここでのルークの捌きを間違えていよいよ互角に近づいてきます。30. Rxf8+ Bxf8 31. e4! としてナイトを早めにどかしてけば、黒はe6 のディフェンスを気にしなければならず、白の残った攻撃への対処が大変になります。30... Rxf3 31. Rxf3 Qc7 32. Qe4
e6 のポーンはクイーンで攻めつつ、g5 のルークをなんとか攻めるアイディアはないものか考えていました。コンピュータの指摘は32. Ne2 からナイトを組みなおすものです。f4 のマスがe6、g6 を同時に攻撃できる好位置であることは分かっていたのですが、ルークをg5 から逃がすチャンスを与えてしまうことが気がかりでした。
32... Qd6 33. Kg1 a5 34. h4?
白から進展させる手にはリスクがあるため、悩んだ末にドローでも良いと思って選んだ弱気な手が、さらに悪いものでした。ここは難しくとも34. Kf2 と上がって、ナイトを守り勝負すべきです。34... Rxg3 35. Rxg3 Qxg3 36. Qxe6+ Kh7 37. Bxd5 Qe1+ 38. Kh2 Qxh4+ 39. Kg1 h5!
この手がQe6-Qg8 のアタックをかわしておくのに十分で、黒は自らパペチュアルチェックにしてなくても良いというのが私の読み抜けでした。局面は一転し、白がドローを目指すポジションになります。
40. a4 Kh6 41. Be4 Qg3 42. Bf3 Qe1+ 43. Kh2 Bxd4
このポーンが落ちるのは完全に予想外で、負けたと一瞬思いましたが、異色ビショップであることで希望が残っていました。44. Qxe7 Qxe3 45. Qxe3+ Bxe3 46. Bc6 Bf2 47. g4
必要ではないかもしれませんが、白が白マスだけブロックしていればドローに十分だと分かりやすい局面にしておきます。
47... h4 48. Kh3 Kg5 49. Bb5 Kf4 50. Bc6 g5 51. Bb5 Ke3 52. Bc6 Bg3 1/2-1/2
意外とあっさりとドローになったのは幸運でした。最終戦はTuさんに知らない序盤からなんとか満足な中盤にしたものの、3つくらいの判断ミスが立て続けに起こってあっさり負け局面にしてしまいました。要所要所で正解の手を候補手にも入れなかった、反省の多いゲームです。最終戦の内容はさておき、5日間の全日本選手権が終わりほっとしている一面もあります。全日本選手権と同時並行で開催されていたゴールデンウイークオープンはほとんど見に行く余裕はありませんでしたが、こちらも盛況だったようで何よりです。両大会を運営し、盛り上げてくださったNCS の運営スタッフの皆さんにはとても感謝しています。また次の大会で、皆さんとお会いできることを楽しみにしています!
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