チェンナイオリンピアード2試合目のレポートです。この日はオープンがリトアニア、女子がミャンマーとの試合でした。リトアニアは1人だけいるIMを休ませ、全員GMで日本戦に臨んできました。日本チームは初戦に続き白を引きましたので、私は98年生まれの若いGM Stremavicius との対戦です。
Kojima, S (IM, JPN, 2346) - Stremavicius, T (GM, LTU, 2532)
Chennai Olympiad (2)
1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 e5 4. O-O Bd6 5. c3 a6 6. Ba4 b5 7. Bb3 c4 8. Bc2 Nf6 9. d4 cxd3 10. Qxd3 Bc7 11. Bg5 h6 12. Bxf6 Qxf6 13. Bb3
Sicilian Rossolimo のこの変化は試合前に調べていたのですが、13. b4 が準備であったのに忘れてしまいました。白はd5 のマスを握って勝負する形です。 Chennai Olympiad (2)
13... Rb8 14. Nbd2 O-O 15. Rfd1 Rd8 16. Nf1 d6 17. Ne3 Ne7 18. Ne1
ここは早めに18. Nd5 と入って交換する手もありましたが、f3 のナイトもNf3-Ne1-Nc2 と組み替え、d5 に迎えるよう先に準備しておきます。
18... Bb6 19. N1c2 g6 20. Rd2 a5 21. a3 Kg7 22. Qe2 h5 23. h3 Qg5 24. Kh1 Qh4 25. Nd5!
細かく手を準備したのちにd5 への跳びこみを決行します。この先の流れは少し意外でした。25... Be6?! 26. Nxe7! Qxe7 27. Bd5
私はd5 のマスを長く握ってピースを置き続ける作戦が好きなのですが、ここは27. Bxe6 fxe6 28. Rad1 とビショップを交換し、d6 を攻める形にするのもありでした。
27... Ba7 28. Rad1 Bd7 29. Ba2 Bc6 30. Bd5 Be8 31. Rd3 Rbc8 32. Qd2 Bd7 33. Ba2 Bb8 34. Ne3 Qh4 35. Bd5
再びe4 を攻められた際、どうするかが分からずビショップを戻しました。これは手堅くはあるのですが、せっかくe3 に置いたナイトが少し活躍の場を失います。35. Nd5! Qxe4 36. Nb6! ならばc8 のルークの逃げ場がないことを見落としていました。35... Rf8 36. Nf1 Ba7 37. Ne3 Rcd8 38. Qe2 b4 39. axb4 axb4 40. c4?!
時間が増える40手目が正確ではありませんでした。ここは40. cxb4! Bb5 41. Bc4 Bxe3 42. Bxb5 を受け入れるべきで、これでも互角の形勢でエンドゲームに向かいそうです。本譜では白はクイーンサイドのポーンを活かしづらいうえ、d4 のマスが弱くなり、d6 を攻めるチャンスが減ってしまいます。
40... Bc5 41. Kg1 Rc8
ここはもう41... f5! から押し切れば黒の優位は揺るがなかったでしょう。ここで黒が慎重にいこうとしすぎたことで私も生き延びるチャンスが生まれました。42. Ra1 Be6 43. Qc2 Bd4 44. Qd2 Bxd5 45. Rxd4!
e4,c4 のいずれかがただ落ちるだけでは勝負にならないため、エクスチェンジを捨てて戦います。
45... exd4 46. Qxd4+?!
試合後に対戦相手から、46. Nxd5 のほうが良いのではないかと指摘されました。クイーンでe4 を取る手にはRa1-Re1、ルークでc4 を取る手にはb2-b3 からそれぞれ追い返し、d4 はその後でも取ることができます。クイーンでd4 を取ってチェックした際、f6 のマスを早めにナイトでカバーしておくほうが良いという指摘でした。46... Qf6 47. Qxf6+ Kxf6 48. Nxd5+ Ke5
このエクスチェンジダウンのエンドゲームは厳しいと思っていましたが、ナイトを上手く組み替えて黒の決定打を与えないようにします。
49. b3 Kxe4 50. Nxb4 Rb8 51. Re1+ Kf5 52. Nc6 Rb6 53. Nd4+ Kf6 54. Nb5 Rc8 55. Rd1 Ke6 56. Rd3 Rc5 57. Nd4+ Ke7 58. Nc2 Ra6 59. Ne3 Ra3 60. g3 Re5 61. h4
このf2-g3-h4 と階段状に伸びるポーンストラクチャーを築くことができ、少しチャンスが出てきたかもしれないと思いました。b3 を攻められないように気をつけつつ、1つの反撃を狙います。61... Rea5 62. Kg2 Kd7 63. Nd5 Ra6? 64. Rf3!
期待していた反撃が通りました。黒はf7 を守るためにはg6 を弱めるしかありません。これを防ぐためには63... Ra7 と指すべきでした。
65... f5 65. Nf4 d5?
このポーンをただで捨てるのは、白に全くリスクがなくなってしまうので危険です。65... Rb6 から互いにポーンを取り合うとまだ勝負は分かりません。66. Nxd5 Re6 67. Rd3 Kc6 68. Nf4 Rd6 69. Rxd6+?!
私はこのルークを交換すれば安全にドローだと考えました。しかし、実際にはルーク交換を避け、キングが上がってg6 を攻撃するなどの工夫を見せて白が勝ちを目指せるポジションでした。
69... Kxd6 70. Nxg6 Rxb3 71. Nf4 Rc3 72. Nxh5 Rxc4 73. Nf4 Ke5 74. Ng6+ 1/2-1/2
ここでお互い進展を作ることができないと判断し、ドローで試合を終わらせました。途中かなり苦しい局面でしたが、白を持って簡単に負けるわけにはいかないので、こうしてポイントを取れて胸をなでおろしています。Open R2 Lithuania - Japan 2.5-1.5
Laurusas, Tomas (GM, LTU, 2561) - Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) 1-0
Stremavicius, Titas (GM, LTU, 2532) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) 1/2-1/2
Pultinevicius, Paulius (GM, LTU, 2539) - Averbukh, AlexC (CM, JPN, 2155) 1-0
Kazakouski, Valery (LTH, 2528) - Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) 0-1
Women R2 Myanmar - Japan 1-3
San, San (MYA, UR)- Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) 0-1
Hla, Zabu (MYA, UR) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) 0-1
Min, Amarawatti (MYA, UR) - Misawa, Yuki (JPN, 1587) 0-1
Nan, M K Khine Hlyan (WFM, MYA, 1979) - Arai, Yuki (JPN, 1495) 1-0
Laurusas, Tomas (GM, LTU, 2561) - Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) 1-0
Stremavicius, Titas (GM, LTU, 2532) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) 1/2-1/2
Pultinevicius, Paulius (GM, LTU, 2539) - Averbukh, AlexC (CM, JPN, 2155) 1-0
Kazakouski, Valery (LTH, 2528) - Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) 0-1
Women R2 Myanmar - Japan 1-3
San, San (MYA, UR)- Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) 0-1
Hla, Zabu (MYA, UR) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) 0-1
Min, Amarawatti (MYA, UR) - Misawa, Yuki (JPN, 1587) 0-1
Nan, M K Khine Hlyan (WFM, MYA, 1979) - Arai, Yuki (JPN, 1495) 1-0
私のドロー以外には小林くんがGM Kazakouski を破り、今大会のGM戦初勝利を挙げました! 前回は後半のペルー戦まで対GMの勝利がなかったので、今回は早かったですね。私たちも続けるよう、次からのラウンドも頑張ります。
女子チームはミャンマーを3-1で下し、再び上位チームにチャレンジすることになりました。3日目はこの勢いで上のチームからポイントを取ることを期待したいですね。
次はオープンがサウジアラビア、女子がアイルランドとの対戦です。サウジアラビアは2000未満で構成されるチームですので、ここはしっかりポイントを取ってマッチに勝ちたいですね。一方女子の対戦するアイルランドは格上チームで、かつて日本でプレーしていたKanyamarala兄妹の妹、Trishaが1番ボードを務めます。こうした縁のあるプレーヤーとの再会もオリンピアードの楽しみですね。引き続き、日本チームの様子を見守っていただけると嬉しいです。NCS公式チャンネルでの実況中継のリンクも貼っておきます。