2022/09/30

Chennai Olympiad 総括 ~2024年に向けて~

チェンナイオリンピアードの総括は別に書くと最終戦の記事で触れておきながら、9月も後半まできてしまいました。チェンナイではチームから陽性者も出て十分なパフォーマンスが出せなかった選手も複数おり、以前のバツミオリンピアードのような総括は書きづらいので、どうしたものかと思っていたのが、ここまで遅れた要因です。また私自身、試合解説以外の記事について書くことのモチベーションが少し下がっていることもあります。それでも、クラウドファンディングの報告会が終わり、返礼品の準備なども順当と聞いているこのタイミングが、チェンナイを振り返る遅すぎない最後のタイミングかと思い、記事にしてみることにします。

今年のオリンピアードは4年ぶりの開催であり、コロナ禍で初、そして日本のチェス団体がJCA からNCS になって初のオリンピアードでした。過去のオリンピアードで選手と団体がどのようなやりとりをし、どのような準備でオリンピアードに臨んでいたかはJCA からあまり伝えられておらず、今年の頭に理事になった真鍋さんを始め、NCS スタッフもオリンピアードに関して知らないことが多かったと思います。その中で選手の負担軽減のため、クラウドファンディングという新しい試みに踏み切ってくれたこと、そしてそれに多くのチェスファンが賛同してくださったことは、とても嬉しく思います。

5月に全日本選手権が終わり、オープン、女子チームともに日本代表のメンバーが確定しました。そしてコーチを交えた最初のミーティングで、オープンチームは私、女子チームは妻のなつみがリーダーを務めることが決まり、私は内心驚きました。これまで私が参加していたオリンピアードでは、現地で会議に出席したり、オーダー提出の責を負うキャプテン(オープンチームは長くミーシャ)とは別に、選手の中からチームを取りまとめるリーダーを選出することはありませんでした。もちろん、年長者や経験、あるいはリーダーシップのある人が必要に応じてリーダー的な役割を負い、実質的にリーダーを務めていたということはあります。しかし、メンバーが決まった段階でリーダーを決めること自体は、私が知るこれまでのオリンピアードで初めてのことです。

リーダーの業務がNCS との相談や報告、オリンピアード初参加メンバーのサポート、チームの取りまとめ程度(もちろん、とりまとめの大変さはメンバーにもよるでしょうが)ならば良かったですが、ビザの取得やPCR検査についての調査、ユニフォームの製作と発注、クラウドファンディングの準備、コーチとのやり取りなど多岐に渡りました。これらの一部は選手個人ではなく、NCS がやるべきことにも見えますが、NCS も人手が足りない中でかなりの作業量をこなしてくれていたことは承知しているので、選手として協力できる点をすることは吝かではありません。しかし、これらは選手のごく一部(リーダー)だけが担うものではないはずで、その点は少し気がかりでした。もちろん他のメンバーが手伝ってくれたことも多数ありますが、女子チームは特に未成年選手のサポートや、コーチの体調不良による一部期間離脱などもあり、リーダーの現地での負担も予想よりずっと大きいものでした。

選手とNCS が準備期間と現地での負担をどのように分担するかについては、2024年への課題として、NCS に対してフィードバックを出しています。そのうえでこの記事を書いていて思ったのは、そもそもオリンピアード代表にリーダーが必要なのかということです。グループ内でリーダーを明確にしていたほうが連絡や相談、意思決定などがやりやすいのは承知しています。しかし、リーダーを決めることで一部の選手の負担が大きくなったり、さらには日本代表としての自覚に多少のばらつきが出てしまったのは、今回のチーム作りの反省点だったと思っています。次回のオリンピアードでリーダーを廃止するというのは極端かもしれませんが、リーダーという役職があろうとなかろうと、全員が日本の代表の一員として自発的にできることを考え、動けるメンバーを選出することや、そうした意識の共有がチーム作りに必要なのではないかというのが、今回のオリンピアードを通した私の結論です。

それは具体的にどうするの?と言われるとまた難しいですが、自分の中でまとまってきたらNCS に提言していければと思います。2024年は私にとって馴染みのあるブダペストでのオリンピアード開催ですので、終わった際に1つの悔いなくというのは無理でも、チーム全員が行って良かったと心から思えるオリンピアードにしたいですね。そのために早めに動いて準備できることは、今からしていきたいと思います。

2022/09/24

こどもチェス大会のご案内

来月、吉祥寺にある将棋の森で、小中学生を対象としたこどもチェス大会を開催いたします。詳細は下記の大会要項にあるリンクをご参照ください。申し込み方法なども、リンク先からご確認いただけます。

【日時】 2022年10月23日(日) 14-17時
【会場】 将棋の森@吉祥寺 (吉祥寺駅より徒歩4分)
【対象】 小中学生
【形式】 手の空いた同士で指す将棋大会形式、持ち時間15分+10秒/手
【参加費】 4000円
【大会要項】 こどもチェス大会イベント詳細

自分がチェス大会の運営に携わるのはコロナ前の2019年以来で、こどもを対象とした大会はさらに久々となり、とても楽しみにしています。公式戦の大会とは違い、棋譜の記録義務なし、途中抜けあり、スイス式ではない将棋大会形式ですので、始めたばかりの子でも気軽に参加していただけると思います。参加するこどもたちには、目いっぱい楽しんでもらえるよう工夫するつもりですので、奮ってご参加ください。10月23日に吉祥寺でお会いできることを楽しみにしております。

2022/09/23

Weekly Chess Puzzle Vol.69

Ogasa, S (JPN, 1654) - Kojima, S (IM, JPN, 2346)
Japan Chess Classic 2022(1)
Black to move

Kojima, S - Sakai, E
Japan Team Chess Championship 2022(1)
White to move

久々のチェスパズル出題です。今年指したゲームもかなり溜まっており、その中から面白いものがピックアップできるようになったので、今夜はそれらをご紹介します。どちらもテーマとしては共通していますので、それもぜひ考えたうえで、それぞれの最善手を当ててみてください。いつも通り答えのわかったかたは、お気軽にコメント欄へどうぞ。

2022/09/21

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第11回予告

9月のOPENRECでの講座案内です。今月はこの週末の日曜日、9/25 20時からスタートです。

9月のOPENREC の講座はテーマを『ビショップとナイトの連携』 にさせていただきました。ビショップとナイトは一般的に、ともに3点の価値があると言われる駒ですが、状況次第ではそれ以上の強さになることも、逆にそれ以下の強さになることもあります。そしてなによりも、それぞれの特徴が大きく違う駒です。そんなビショップとナイトの特徴の理解を深め、それらの連携が生み出すチャンスを見ていきましょう。

ちなみに今月はYoutube のサブ配信は無く、メインのOPENREC のみとなります。冒頭30分の無料視聴は可能ですので、サブスク登録がまたのかたはこの機会にぜひよろしくお願いいたします。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第11回『ビショップとナイトの連携』 | 2022.09.25 (OPENREC)
NCS サブスク登録 (OPENREC)

2022/09/20

Japan Team Chess Championship 2022 Tournament Report Day2

入賞した8x8 Blunders、Osaka Club Senior、Aichi Champions のメンバーたち

1日遅れましたが、チーム選手権2日目のレポートです。私たちTabiya Chess Club のチームは最終戦でトップボードまで上がり、5連勝中だった8x8 Blunders との直接対決に挑みましたが、2.5-1.5 の僅差で敗れ、最終順位は7位に終わりました。8x8 Blunders は24試合して1敗しかしない強さを誇り、チームマッチは6連勝で完全優勝を決めました。優勝チームには一歩及ばなかったものの、入賞を果たしたOsaka Club Senior と、Aichi Champions のメンバーの皆さんもおめでとうございます!

Japan Team Chess Championship 2022 Final Standings

私は4R でTuさんに敗れたものの、残り試合を全て勝って個人では5勝1敗でした。ゲームは僅差の勝ちも多かったですが、内容にはある程度満足しています。最終戦で久々の日本公式戦復帰を果たした南條くんと対戦できましたので、そちらを今夜はご紹介します。

Kojima, S - Nanjo, R
Japan Team Chess Championship 2022 (6)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Bc5 5. O-O O-O 6. h3 h6 7. Nbd2 d6 8. c3 a6 9. Bb3 Be6 10. Bc2 Ba7

オープニングは全日本選手権で東野さんと指したItalian Old Line (白がa2-a4 とせず、Bc4-Bb3 と退くライン) になりました。黒の10手目はビショップが退く手がポピュラーですがd6-d5, Rf8-Re8, Bc5-Bf8 と組み替えるアイディアも面白く、あえてビショップをc5 に残しておくてもありえるかもしれません。

11. Re1 Ne7?!


私の経験上、e6 に配置したビショップと、Nc6-Ne7-Ng6 のアイディアはマッチしません。Bc8-Be6 と組み合わせるのであれば、東野さんが指したようにd6-d5 のセンターブレイクを使うべきだと思います。ナイトの組み替えとビショップをe6 に上げるアイディアが良くない組み合わせるである理由はすぐに分かります。

12. Nf1 Ng6 13. Ng3 Qd7 14. d4 Rad8 15. Be3

白はd3-d4 とポーンを突きなおし、d4-d5 とさらに押し込んだ際にe6 のビショップを攻撃するスレットを作れるようにします。白のセンターポーンの突き直しが早く、e6 のビショップがターゲットになりやすいのが黒のセットアップの弱点です。しかし、白もh3 へのサクリファイスを見越して、d4-d5 のタイミングは慎重に見極めなければいけません。15. d5? Bxh3! 16. gxh3 Qxh3 と進んだ場合、a7 のビショップの利きを通してしまっているため、次のQxg3 がスレットになっているのが困ります。本譜ではe3 に先にビショップを置くことで、d4-d5 と今度こそスレットにしています。

15... Qc8 16. Qd2 d5?


黒はd4-d5 を受けるためにクイーンを少し妙な位置に下げるしかなく、そのうえで今度は白のBe3-Bxh6 のスレットに備えなければいけません。私はキングがh7 に上がるしかないと思っていましたが、これもc2 にいるビショップのダイアゴナルに入る位置であるため、指しづらいのも理解できます。16... Kh7 17. a4+/- それでも黒はこれで耐えるしかなく、本譜はすぐに駒損になってしまいます。

17. Nxe5


d6-d5 のポーンブレイクは、私も黒番で準備が万端なら仕掛けたいですが、ここではe5 のポーンの守りが薄くなるのが難点です。白はこれを利用してポーンアップしますが、もう1つキングに強襲を仕掛けるのも良いアイディアでした。17. Bxh6! dxe4 18. Bxe4! Nxe4 19. Rxe4 Bd5 20. Bxg7!+- g7 まで取り込むアイディアは、先日のトレーニングで平尾くんに負けたこともあり、実戦的なアイディアとして知っていました。しかし、その前の分岐が細かいため、チーム戦で難解なピースサクリファイスをするよりも、堅実なポーンアップを選ぶべきとこの時は判断しました。

17... Nxe5 18. dxe5 Nxe4 19. Nxe4 dxe4 20. Qe2 Bxe3 21. Qxe3 Bf5 22. Bxe4 Bxe4 23. Qxe4+/-

ここまでほぼ一本道で、白はe4 を回収してポーンアップになります。しかし、このエンドゲームを勝ち切るのは一苦労です。

23... Rd2 24. Re2 Rfd8 25. Rae1 c6 26. Rxd2


すぐにヘビーピースを捌くのではなく、26. f4 として様子を見るのもありえました。

26... Rxd2 27. Re2 Qd7 28. Kh2 Qd3 29. Qxd3 Rxd3

クイーンを交換し、ルークエンディングになりました。黒キングが上がるのはかなり早く、ここからどう局面を進展させるのか、あまり自信が持てませんでした。

30. f4?!


f2 のポーンをターゲットにされることなくe5 を支え、g7-g5 も防げればよいかと思いましたが、f4 のマスにキングを運べなくなることを失念していました。30. f3! Kf8 31. h4 Ke7 32. h5 Ke6 33. Kg3+/= こうしてゆっくりキングのポジションを改善していくというのが、コンピュータの示すアイディアです。

30... Kf8 31. Re4


本譜はルークの侵入を許すことは分かっていましたが、31. Kg1 Ke7 32. Kf2 Ke6 でも局面を進展させられないため、思い切ってbポーンを狙うプランに切り替えます。

31... Rd2 32. Rb4 b5 33. a4 Ke7 34. axb5 axb5 35. Kg3 g6 36. Kf3 h5 37. c4 bxc4 38. Rxc4 Rxb2 39. Rxc6 Ra2

クイーンサイドのポーンを全て捌き、キングサイドに4vs.3 のポーンが残るルークエンディングになりました。残っているピースがナイトであれば白は実戦的に勝負にいけることを最近学んでいましたが、ルークの場合、多くはドローになります。それでも白は負ける危険が無いのであれば、ドローで早々に終わらせる理由もなく、とことん続けることにします。またこの辺りで他のボードでの決着がつき、チームの負けが決まってしまったことも関係します。自分が勝ってもチームの負けは覆らないため、ドローにしても良さそうです。しかし逆に考えれば、ここから私がリスクをとって万が一負けたとしても、チームの結果に影響がないということでもあります。

40. Rf6 Ra3+ 41. Kf2 Ra2+ 42. Kg1 Ra5 43. h4 Ra4 44. Kh2 Ra5 45. Kh3 Ra3+ 46. Kh2 Ra4 47. Kg3 Ra3+ 48. Kf2 Ra2+ 49. Kf3 Ra3+ 50. Ke2 Ra2+ 51. Kf1 Ra1+ 52. Kf2 Ra2+ 53. Kg1 Ra5 54. Rd6 Ra4 55. g3


かなり遠回りしましたが、このポーンストラクチャーにするしかないという結論に落ち着きました。ここから白が勝負をするのであれば、f4-f5 のブレイクしかありません。

55... Ra1+ 56. Kg2 Ra2+ 57. Kf3 Ra3+ 58. Kf2 Ra2+ 59. Ke3 Ra3+ 60. Rd3 Ra4 61. Kf3 Rb4 62. f5

先述の作戦を実行できました。一時的にポーンを捨てますが、ルークでf5 かh5 は回収できます。たとえマテリアルをイコールにしても、パスポーンを作って勝ちのチャンスがわずかにでもできるのであれば、試合を続けるべきです。

62... gxf5 63. Rd6 f4!?


こうしてポーンを返す手は考えてなかったの驚きました。黒は最善を尽くせばどれでもドローですが、実戦的に間違えにくく、ドローに持ち込みやすい形がどれかと言われると判断に悩むところです。63... Re4 64. Rh6 Rxe5 65. Rxh5 Kf6= として、hポーンをキングで抑える形もドローは分かりやすいかもしれません。

64. gxf4 Rb3+ 65. Ke4 Rh3 66. Rh6 Rxh4 67. Kf5 Rh1 68. Rh7 Re1 69. Rxh5

7段目のピンを利用することでe5-e6 を見せ、再度ポーンアップ状態に戻ることができました。しかし、ここまできても普通に最後のポーンを捌けばフィリドールポジションになるだけなので、白は黒キングをなんとかポーン近辺から追い出し、ルセナポジションに持ち込むアイディアを探さなければいけません。

69... Rg1 70. Rh8 Ra1 71. Rh6 Ra2 72. Rd6 Ra1 73. Rb6 Ra4 74. Kg5 Ra5 75. Kh6 Ra1 76. Rb7+ Ke8 77. f5


勝負するためにはどこかで突かなければいけないポーンですが、一度進むと戻れないというポーンの性質上、かなり慎重になりました。77. Kg7 Rg1+ 78. Kf6 Rg6+ 79. Kf5 Rg1= でも進展がないことを読み、fポーン突きを実行しました。

77... Rg1 78. Rb6 Rg2 79. Kh5 Re2??

膨大な実戦経験と知識を持つ南條くんらしからぬ1つのミスで、長かったイコールの形勢が大きく傾きました。f4-f5 の気がかりな点はe5 の守りが無くなることなのですが、黒ルークはこれをアタックすることよりも、キングをカットオフしてfポーンに近づかせないことに徹するべきでした。79... Rg1 ならば白は勝つプランがありません。

80. Kg5! Rxe5 81. Kf6+-


この形は少し前でイメージしていましたが、こうして実際に局面に現れると白はここまで粘った甲斐があったと感無量です。白はe5-e6 のようにポーンを単にぶつけて捌いた際と違い、理想的に白キングを寄せたうえで、黒キングを遠ざけてポーンを取ることができます。

81... Ra5 82. Rb8+ Kd7 83. Rf8 Ra1

本譜は黒キングをeファイルに寄せさせることなくポーンが回収できるため、白として勝ちが楽になったと感じました。実際にはf5 へのアタックを残していても、83... Rb5 84. Rxf7+ Ke8 85. Kg7 Rc5 86. Rf8+ Kd7 87. f6+- として勝勢であることに変わりありませんでした。

84. Kxf7 Ra5 85. f6 Rf5 86. Ra8 Rf1 87. Ra2


後はルークを退き、スタンダードなルセナポジションのアイディアを使うだけです。

87... Kd6 88. Rd2+ Kc7

こうして一度チェックをして黒キングを1ファイル離すのが最初のポイントです。88... Ke5 89. Ke7 Rxf6 90. Re2+ Kf5 91. Rf2++- ならばルークを取って白の勝ちです。

89. Ke7 Re1+ 90. Kf8 Rf1 91. f7 Kc6 92. Rd8 Kc7 93. Rd4!


こうして4段目にルークを配置するのが、ルセナポジションで勝つために重要なアイディアで、Building a Bridge(橋を架ける) と呼ばれます。このルークは5段目だと黒キングにすぐ狙われて追いやられ、3段目だと自分のキングから遠すぎるため、4段目である必要があります。

93... Rf2 94. Kg7 Rg2+ 95. Kf6 Rf2+ 96. Kg6 Rg2+ 97. Kf5 Rf2+ 98. Rf4 1-0

こうしてルークの後ろからのチェックをカットしてしまうのが、4段目のルークの役割です。こうして長いゲームを制したことで、マッチで敗れたものの、優勝した8x8 Blunders に一矢報いることができました。

今回、160名を超える参加者が集まった日本最大級の大会を運営してくださったスタッフの皆さんには、心からお礼を申し上げます。今回、初の大会参加となったプレーヤーたちも、また違う大会で会える機会を楽しみにしてます。
Tabiya Chess Club チームのメンバーとは、今後も交流を持ってさらにパワーアップしたいと思います!

2022/09/17

Japan Team Chess Championship 2022 Tournament Report Day1

3R 直前のTabiya Chess Club とTodai B

3年ぶりのチーム選手権が今日と明日、王子の北とぴあで開催されています。Tabiya Chess Club のトップボードで参加している私は、個人でもチームでも3連勝と良いスタートが切れました。今夜は時間が無いので、3R の松山くんとのエンドゲームを簡単に振り返ります。
Kojima, S - Matsuyama, K
Japan Team Chess Championship 2022 (3)
Position after 28... Rxd5

序盤でポーンアップし、駒得を残したままエンドゲームに入りましたが、白はポーンストラクチャーが良いとは言えず、理想的な終盤ではありませんでした。それでもここに到達するまでにチームの勝ちはほぼ決まっていたので、ドローでも構わないと気楽にプレーを続けます。

29. Rc7


7段目に先に入っておくのは自然だと思いましたが、29. Rc3 b5 30. b3+/= とじっと耐えてゆっくり進めるアイディアもあったようです。

29... Rb6


bファイルからの反撃は効果的に見えますが、試合後に松山くんにはもう1つの可能性であるbポーンをぶつける手を指摘しました。29... b5 30. axb5 Rxb5 31. Rd2 Rfb6 これで黒は反撃を作ることができ、十分なドローチャンスがありそうです。

30. Rd2 Rb3 31. Rdc2!?

d3 を見捨て、7段目での反撃で再び駒得を目指します。

31... Rdxd3 32. Re7 Rd8?


こうしたエンドゲームでは、基本的に8段目にルークを退くようなパッシブなディフェンスは上手くいきません。32... e4! 33. f4 (33. Rxe4 Rd7! 34. Re5 b6=) 33... Kf8 34. Rxe4 Rd7= こうしてeポーンを見捨てる代わりに7段目を守るのがコンピュータの指摘です。

33. Rxe5?!

e5 でポーンを取ればa5 に当たるテンポがあるため、上記のe5-e4 と突き捨てる形と少し違うかなと思い、ポーンを取りました。しかし、ここはもうすぐに7段目のダブルルークに踏み込んで勝勢でした。33. Rcc7 Rxb2 34. Rxg7+ Kf8 35. Rcf7+ Ke8 36. Rxb7 Rxb7 37. Rxb7 Rd4 38. Rb5 Rxa4 39. Rxe5+ Kf7 40. Kf2+- 黒のバラバラな端ポーン2つはとても弱いため、白はダブルポーンを含む3つのポーンで十分に勝つことができます。

33... b6 34. Re7 Rb4?


すっかり見落としていましたが、黒はちょっとした工夫でg7 を守ることができます。34... Kh7! 35. Kh2+/= (35. Rcc7 Rg8)

35. Rcc7+-

こうして7段目にダブルルークを揃え、メイトスレットを残しながらg7 を取れば堅実に勝つことができます。

35... Rxb2 36. Rxg7+ Kf8 37. Rcf7+ Ke8 38. Rb7 Kf8 39. Rgc7 Kg8 40. Rc6 Rb4 41. Rg6+ Kf8 42. Rxh6 Kg8 43. Rc6 Rxa4 44. Rcxb6 Ra2 45. Rb8


黒は1ポーン1つでは何もできないため、ルークを交換してしまえばあとは簡単です。

45... Rxb8 46. Rxb8+ Kg7 47. Rb6 a4 48. Ra6 a3 49. Kh2 Kf7 50. Kg3 Ra1 51. g5 Kg7 52. f4 a2 53. Ra7+ Kg8 54. Kg4 Kh8 55. Kf5 Kg8 56. Kf6 Rc1 57. Ra8+ 1-0

最後はプロモーションが止まらなくなるかと思いましたが、その前にメイトになりました。

チームは8x8 Checkmates、Keio OB、Todai B にそれぞれ、4-0、3-1、4-0 で勝って星を伸ばしています。3連勝はトップ4チームに絞られましたので、明日の直接対決も頑張ります! 4R はTuさんのいる、Osaka Club Senior とのペアリングが発表されています。ボードペアリングを見ると、すでに明日試合をするメンバーは発表されているように見えますが、実際には試合スタート直前のオーダー提出により変更がありえます。トップボードのオーダーと結果をお楽しみに!

Japan Team Chess Championship 2022 R4 Team Pairings

2022/09/14

Japan Team Chess Championship 2022 Tournament Preview

3年前のチーム選手権の様子

オリンピアード明け最初の大会であるチーム選手権が、いよいよ今週末開催と迫ってきました。チーム選手権の開催はコロナ禍で初、つまり3年ぶりとなります。私は3年前に出場したTokyo Chess Meetup からクラブ名を変更した、Tabiya Chess Club の所属で出場します。チーム構成は以下の通りです。

Kojima Shinya (IM, JPN, NCS 2491, FIDE 2330)
Jones Stephen (FM, USA, NCS 2285, FIDE 2285)
Shioguchi Tatsuya (JPN, NCS 2076, FIDE, 1950)
Wijaya Tony (INA, NCS 1644, FIDE 1955)
Dos Santos Rafael Caetano (JPN, NCS 1118)


チームとしての力は未知数ですが、上位は2000クラスの面白いメンバーが揃ったと思っています。上位4人の平均は2124で、スタート順位は3位となっています。南條くんがいる8x8 Blunders、TuさんがいるOsaka Club Senior と渡り合えれば、優勝も狙えるでしょう。

今年は36チーム、計160人以上のプレーヤーが参加し、日本で最も参加人数の多いトーナメントになる予定です。優勝を本気で狙うチームから、初めての公式戦を経験する若いプレーヤーたちのチームまで様々ですが、参加する皆さんがこの2日間を大いに楽しめると良いですね。それでは週末、王子でお会いしましょう。

Japan Team Chess Championship 2022 Team Composition
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