2022/11/30

Cappelle la Grande 2023 tournament information

例年2月に開催されているフランスのカペル大会が、2023年も開催されます。私も高校生の頃から参加している思い入れのある大会で、過去何度も日本からグループを作って参加をしてきました。オーガナイザーからは参加費および、大会期間中の宿泊費と朝食が無料になる招待枠を、4名分(2人部屋×2) いただけることになりました。そこでこれから12月半ばまで、招待枠の希望者を募集しようと思います。以下の項目を確認したうえで、希望者は私までご連絡ください。

【日時】 2023年2月18日(土) - 2月24日(金)
【会場】 Cappelle la Grande, Palace of Arts and Recreation
【形式】 スイス式9R、持ち時間40手90分+30分 + 初手から1手30秒増加のフィッシャーモード
【招待枠受付締め切り】 2022年12月14日(水)21時
【連絡先】 shinya.kojima.chessplayer(a)gmail.com (a)を@に変えてご連絡ください。
【大会公式HP】 L'Échiquier Cappellois

参加希望者が4名を超えた場合、12月のFIDEレイティング順で上位4名とさせていただきますので、ご承知おきください。招待枠で参加する場合でも、パリまでの航空券とパリから宿泊地ダンケルクまでの交通費(一般的には鉄道)、最終日翌日の帰国便の場合、もう1泊分の宿泊費、大会期間中の昼食、夕食などは自費となります。ちなみに私は大会期間に日本で参加する予定のイベントがあるため、今回はカペル参加を見送るつもりです。それでも参加者のためのサポートは惜しまないつもりなので、その点はご安心ください。参加を希望されるかたも検討中のかたも、気になることは何でもお気軽にお尋ねください。ご連絡をお待ちしています。

2022/11/23

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第13回予告

11月のOPENRECでの講座案内です。今月も最終日曜日、11/27 20時からスタートです。

11月のOPENREC の講座テーマは『逃げるは恥だが役に立つ』 です。チェスでは様々なピースが逃げる場面がありますが、それが消極的で良くないのか、それとも有効な戦略なのかは判断の難しいところです。今回の講座ではそんな駒が逃げる作戦を取り上げ、その有効性について考えていきたいと思います。

先月に引き続きYoutube のサブ配信は無く、メインのOPENREC のみとなります。冒頭30分の無料視聴は可能ですので、サブスク登録がまたのかたはこの機会にぜひよろしくお願いいたします。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第13回『逃げるは恥だが役に立つ』 | 2022.11.27
NCS サブスク登録 (OPENREC)

2022/11/14

Nagoya Open 2022 Tournament Report

先週末は名古屋を訪れ、名古屋オープンに参加してきました。昨年は最終戦でAlex に敗れて一歩後退してしまいましたが、今年は3連勝後、Tuさんとドローで互いに3.5/4 フィニッシュです。タイブレークで敗れて優勝の楯こそ逃したものの、満足な結果です。入賞された皆さん、おめでとうございます!

1st Place Tran Thanh Tu 3.5/4
2nd Place Kojima Shinya 3.5/4
3rd Place Akai Kiyotaka 3/4

Nagoya Open 2022 Final Standings


名古屋オープンのゲームはトップの1ボードのみ中継されており、Tuさんとの試合はこちらでご覧いただくことが可能です。今夜のブログでは2R の木下さんとの試合をご紹介したいと思います。

Kojima, S - Kinoshita, A
Nagoya Open 2022 (2)

1. e4 d5 2. exd5 Qxd5 3. Nc3 Qd6 4. d4 Nf6 5. Nf3 c6 6. Be3!?

メインラインとされる6. g36. Ne5 に代わり、Chessable のSo Wesley コースで勧められているのがこちらです。9月のチーム選手権で指した際はうろ覚えだったため、その後少し調べ直しました。

6... Bg4


チーム選手権での塩見さんとの試合では、6... Bf5 7. Be2 e6 8. Nh4 Bg6 9. Nxg6 hxg6 10. g3+/= と進み、ビショップのペアを得て優位に立ちました。本譜でもそうですが、白は黒が展開したビショップとナイトを交換し、ダブルビショップで戦うのが一般的なアイディアです。

7. h3 Bxf3 8. Qxf3 e6

Caro-Kann でも黒が一番問題になりがちな白マスビショップを諦め、c6, e6 の堅いポーンストラクチャーで戦おうとする場合はあります。確かにこのポーンストラクチャーは、白がダブルビショップを活かしにくいと言われます。ただしピースの展開の早さとちょっとしたアイディアで、白はここからチャンスを作ることができます。

9. O-O-O Qc7 10. Kb1!


展開の早さを活かすのであれば、とにかく早く攻めるべきと思われがちですが、こうしたディフェンスの待ち手を入れておくことも効果的です。白はa2 をキングで守りつつ、将来的にh6-c1 のラインでチェックされないようにしており、場合によっては空いたc1 のマスにビショップを逃がします。

10... Nbd7 11. g4!

これも覚えておくべき1手で、白はキングサイドでスペースを確保して攻撃のチャンスを拡大し、g4-g5 を見せておくことで黒キングにクイーンサイドキャスリングを許しません。このポジションでは黒キングはセンターに留まることも、どちら側にキャスリングするのも危険です。このgポーンを突くアイディアは、いくつかのゲームで見ましたが、Fressinet が2017年に指したゲームは、フィニッシュまでとても美しく印象的でした。

11... Be7 12. Bd3 Nb6 13. g5 Nfd5 14. Nxd5 Nxd5


14... cxd5 15. Bb5+ となると、黒はキャスリングを諦めるか、ナイトを戻すしかなくなります。ここでも黒は展開が遅く、キングがまだセンターにとどまっていることの問題が浮き彫りとなります。

15. Bd2 b5 16. h4!

b7-b5 と突くアイディアは、白のc2-c4 を止め、d5 のマスをアウトポスト化してナイトを強化する典型的なアイディアです。私もCaro-Kann を指していた時期に使った経験があります。このように部分的に見れば黒は上手くいっているのですが、キングをどうするかという最大の問題は未解決です。白はg6 までポーンを伸ばすことで黒キングの守りを崩壊させるというプランが明確なため、黒はナイト1つ安定しているだけでは、白の作戦に対抗できません。

16... a5 17. h5 Bd6 18. g6 O-O-O 19. gxf7


f7 とh7 のどちらのポーンを取るか迷いましたが、連続でe6 が弱くなって落ちそうなf7 を選びました。コンピュータはどちらでも大きく白が優勢との判断です。

19... Bf4 20. Qg4 Qxf7?!

e6 を一時的に守るためにも、早くf7 を回収したいのは理解できますが、20... Bxd2 21. Qxe6+ Qd7 22. Bf5 Qxe6 23. Bxe6+ Kc7 24. Rxd2 Nf4 はf7 をキープできないので、白優勢ながら少し自信がありませんでした。本譜では伸ばしたaポーンが仇となり、白は分かりやすく優勢を維持できます。

21. Bxa5 Rde8 22. Rhe1 Bd6 23. Bd2 Nf4 24. Be4


f4 にナイトが入る手は反撃として使いたいですが、b7-b5 によってc6 の守りを消してしまった弱点を利用されてしまいます。本譜の代わりに24. Qf3! も強力です。

24... Kc7 25. Qf3 e5 26. Bxc6 Re7 27. dxe5 Bxe5 28. Rxe5 1-0

最後はシンプルなタクティクスが決まりました。やはり白マス黒マスの両方でチャンスを幅広く作れる、ダブルビショップは頼れる存在です。

今年も名古屋チェスクラブの大会には複数参加させていただき、運営の皆さんにはお世話になりました。また来年も都合が合えば参加させていただきますので、名古屋近隣のプレーヤーの皆さんは、来年もよろしくお願いいたします。これで一応私の2022年国内公式戦は終わりの予定ですが、また気が変わってエントリーするかもしれませんし、見学にだけ顔を出すかもしれません。また次の大会でも、参加者の皆さんと交流できる機会を楽しみにしています。

2022/11/06

Japan Open 2022 Day4 Tournament Report

今年のジャパンオープン入賞者たち Photo by Manabe

今年も4日間に渡るジャパンオープンが無事に閉幕しました。最後まで結末が読めない大会でしたが、私はTuさんとハラハラする試合をドローで乗り切り、弘平くん、大塚さんと並んで6/7 で全試合を終了しました。タイブレークは僅差で2人を上回り、なんとか今年もジャパンオープン優勝の栄冠を手にすることができました。入賞者の皆さん、おめでとうございます!

1st Place Kojima Shinya 6/7
2nd Place Yamada Kohei 6/7
3rd Place Otsuka Shou 6/7
4th Place Tran Thanh Tu 5/5/7
5th Place Higashino Tetsuo 5.5/7

Japan Open 2022 Final Standings


今夜は当然、最終戦のTuさんとの試合をお届けまします。トップで迎えた最終戦でのTuさんとのマッチングは、今年の全日本の嫌な記憶がよみがえりますが、今回は序盤から上手く指せたと思っています。

Kojima, S (IM, JPN, 2330) - Tran, T T (CM, JPN, 2408)
Japan Open 2022 (7)

1. e4 c5 2. Nc3 Nc6 3. Bb5

Sicilian Rossolimo、Moskow と並び、用意していた3つ目のAnti-Sicilian です。思えば今大会はこの3種類を全て使っています。

3... e6 4. Bxc6 bxc6 5. d3 d6 6. f4


通常のRossolimo と違う点は、白がNg1-Nf3 を遅らせているため、f2-f4 が早くできることです。キングサイドでのアクションを見据えつつ、黒のクイーンサイドのポーンストラクチャーの悪さにも目を光らせておきます。

6... g6 7. Nf3 Bg7 8. O-O Ne7 9. Kh1 O-O 10. Qe1 Rb8 11. b3!?

c3 ナイトを一時的に浮かせて危なく見えますが、黒はそれに漬け込むチャンスはないので問題ありません。白のb2-b3 のアイディアはb2 ポーンを受けておくこと以外に、Bc1-Bb2 からのビショップ交換、またはBc1-Ba3 からc5 をアタック(黒がd6-d5 としてきた場合)、そしてNc3-Na4 を支えておく等、豊富にあります。

11... f5 12. e5 Nd5 13. Bd2 Nb4


単純にピースを交換すれば、黒はダブルビショップが満足に働けないうえにポーンストラクチャーが悪いので、ピース交換を避けて勝負します。一方で白もc5 を狙るチャンスができそうなので、残ったピースをこのポーンへの攻撃に集中させます。

14. Rc1 d5 15. a3 Na6 16. Na4 Re8 17. Be3 Bf8 18. Ra1 Rb7 19. Qf2 d4!? 20. Bd2 c4

こうした手が跳んでくるので、Tuさんとの試合はいつも勉強になります。じっと待っているだけでは分が悪い黒は、1つポーンを捨ててでもa8-h1 のダイアゴナルを開き、白マスビショップの活用をはかります。

21. dxc4 c5 22. Nb2 h6 23. Nd3 Rg7 24. b4!


ナイトをd3 に組み直した後は、黒のキングサイドアタックが来る前にクイーンサイドから仕掛けます。c5 を崩せば、d4 まで押し込んだポーンも弱点になり、白はさらに駒得を重ねることができそうです。しかし、問題はこれから開くgファイルと、白マスビショップを使ったg2 への攻撃がどれくらい早いかです。

24... Bb7 25. bxc5 Nxc5 26. Nxc5 Bxc5 27. Bb4 Bb6 28. c5 Bc7 29. Nxd4 Be4 30. Rad1 Qb8

c5 を捌いて2ポーンアップになりましたが、黒もg2 への反撃を着々と進めています。ここで30... Qa8 を予想していたのですが、Tuさんはe5 を確実に崩し、白のNd4-Nb5 を止める本譜を選びました。かなり時間を使って30手目を読んでいただけに少し予想が外れてショックでしたが、落ち着いて作戦を修正できたと思います。

31. Qe2 g5 32. fxg5 Rxg5 33. Rf2 Qa8 34. Nb5


Qf2-Qe2 とクイーンの位置をずらしておくことで、f2 のマスをルークのために空けると同時に、Nd4-Nb5 の準備を整えました。Nd4-Nb5-Nd6 は24手目付近から描いていた構想ですが、ようやく現実味を帯びてきました。

34... Bxe5 35. Nd6 Rd8 36. Rd2 Bxd6 37. cxd6+-

これでポーンアップのままピースを捌き、大きなチャンスを生むパスポーンと黒マスの弱い黒陣を残し、勝勢になったと感じました。しかし、異色ビショップゆえの相手の反撃チャンスは十分に受けているとはいえ、まだまだ油断はできません。

37... a5 38. Bc3 Qc6? 39. Be5


虎の子のパスポーンは当然守るべきと信じて疑わず、試合後にライブを見返して、39. Bf6! の存在に愕然としました。ビショップをc3 に退く以前は、d6-d7 と押し込んだ後でBb4-Be7 を考えていたのに、ダイアゴナルがずれたとたんにルークのフォークが見えなくなるのはまだまだ未熟な証拠です。

39... Rd7 40. h3 Kh7 41. Kh2 Rg6 42. Qe3 Qa4 43. Bb2 Rg8 44. Rf4!?

時間は互いに切迫ですが、キングを逃がせるスペースを少し作り、気持ち的には余裕が生まれてきました。g2 の守りを減らすのは少し不安ではありますが、h6 への攻撃や、いざというときの4段目でのエクスチェンジサクリファイスを準備しておきます。

44... Qb5 45. Rh4 Rg6 46. Qd4 Qb8 47. c4??


ポーンをc5 まで進めてd6 を安定させれば、より勝利は確実なものだろうと信じていました。しかし、これがとんでもないブランダーで、黒に勝ちのタクティクスが生まれます。正しくは47. Rxe4! fxe4 48. c4+- と先にエクスチェンジを捨ててしまうことで、e4 の攻守に利くビショップを消し、c6 のマスのコントロールを奪ってからゆっくりポーンを進めて勝ちでした。

47... Rdg7?

47... Rxd6! 48. Qxd6 Rxg2+! 49. Rxg2 Qxd6+-+ こんな手筋でクイーンを取られてしまうとは完全に見えていませんでした。Tuさんもこれを見落として再び白が息を吹き返しますが、次はあまりにひどいミスでした。

48. Qxg7+?


ここも先ほどと同様に、48. Rxe4! fxe4 49. Qxe4+- としてエクスチェンジを捨ててしまえば白の勝ちです。e4 の強力なビショップを消してしまうことは、Rf2-Rf4 の1つのアイディアであったはずなのに、なぜかこのタイミングでは頭からすっぱり抜け落ちていました。

48... Rxg7 49. Bxg7 Kxg7 50. Rxe4

私の勘違いはd6 ポーンがピンになっており、すぐに進めることができなかった点です。仕方がないのでもうエクスチェンジも捨て、2つのパスポーンに望みを託します。

50... fxe4 51. c5 Kf6?


ライブを見返していましたが、Tuさんはこの時点で残り2分まで時間が回復しており、そこまで焦らなくても良かったと思います。しかし、4日間の長丁場の最終戦の最終盤、しかもこのようなシーソーゲームになり、私たち2人はどちらも冷静でなかったのでしょう。51... e3 52. Re2 Qb5 がぴったりルークの攻撃しつつ、c6,d7 のマスをカバーする好手でした。52. Rc2 も考えられますが、白はピンのためにすぐにはどちらのポーンも進められないため、52... Kf7 とトコトコキングがパスポーンを止めに向かい、間に合ってしまいます。

52. c6 e3 53. c7

黒は2つの迫りくるパスポーンを止めることはできず、お互いにクイーンを作りあうことになります。こうなれば、先手の白はドローには十分です。

53... Qxc7 54. dxc7 exd2 55. c8=Q d1=Q 56. Qf8+ Kg6 57. Qg8+ Kf6 58. Qf8+ 1/2-1/2


互いのミスにより最後は視聴者の心臓に悪そうなシーソーゲームでしたが、最後は前日同様クイーンのパペチュアルチェックでドローに終わりました。少し前に2B もドローに終わっており、タイブレークはおそらく勝っているだろうと予想していませした。そちらの予想は外れることがなく、ほっと胸をなでおろしました。

今年の東京でのビッグトーナメントは全て終了しました。今年も多くのプレーヤーと交流ができ、満足な1年間でした。今大会だけでなく、多くの大会を運営してくださっているNCS スタッフの皆さんにも、あらためてお礼申し上げます。来週末は続けて名古屋の大会に参加する予定ですので、そちらでも良い戦績を残せるよう頑張ってきます。また次のトーナメントでも、よろしくお願いいたします。

2022/11/05

Japan Open 2022 Day3 Tournament Report

ジャパンオープン3日目です。5R は長瀧くんに少し工夫したItalian 対策を使って勝利。6R で互いに5連勝中だった弘平くんとの直接対決を迎えます。明日も大事な最終戦があるため、試合の解説は最終盤だけをお届けします。
Kojima, S (IM, JPN, 2330) - Yamada, K (FM, JPN, 2172)
Japan Open 2022 (6)
Position after 31... Rcb6


32. fxe6 fxe6 33. Qf6!


クイーンサイドに弱点を作られている白は、勝負を続けるにはリスクが高く、ドローで満足するべきです。時間ぎりぎりまで考え、ルークを見捨ててパペチュアルチェックの道を選びました。

33... Qxe3 34. Qxe6+ Kg7 35. Qe7+ Kh6??

しかし、ここで黒はキングの逃げ場を間違えます。35... Kg8 36. Qe8+= ならば何事もなくドローで終わりです。

36. Qh4+? Kg7 37. Qe7+ Kh6?? 38. Qf8+!


ルークを捨てた時点では頭にありませんでしたが、黒キングを5段目に押し上げれば、意外と危険であることに気づきました。時間がほとんどなくメイト形は完全に見えていませんでしたが、ある程度進めてもパペチュアルチェックは残っているので、思い切って手を変えてみることにします。

38... Kh5 39. Rd5+ g5 40. g4+?

しかし、詰めを誤りました。g3-g4 が決め手になるのはあっていましたが、クイーンの位置を改善してからであればメイトでした。40. Qf7+! Kh6 41. Qf6+ Kh5 42. g4+ (こうしてクイーンをf6 に移動させておけば、黒キングは6段目に戻ることができず、差し出されたポーンを取るしかありません。) 42... Kxg4 43. Qf5+ Kh5 44. Qxh7+ Kg4 45. h3+ Qxh3+ 46. Qxh3+ Kf4 47. Rf5# ぴったりメイトです。

40... Kg6=


時間切迫で焦ってしまったと言えばそれまでですが、悔しいのはこうしてキングを6段目に戻されるまで、この手の選択肢に気づいていませんでした。上記のメイト形を見つけてg3-g4 に踏み切ったつもりだっただけに、焦ってクイーンの位置を変える手を省いてしまったのは残念です。

41. Qg8+ Kh6 42. Qf8+ Kg6 43. Qe8+ Kg7 44. Qe7+ Kg6 45. Qe6+ Kg7 46. Qd7+ Kg6 47. Qe6+ 1/2-1/2

ワンチャンスを逃した後はドローにしかなりません。トーナメントの優勝を決める決定的なチャンスを逃し、決着は最終戦に持ち越しです。私と弘平くんが5.5/6 で半歩リード、5/6 でTuさん、東野さん、大塚さんが追ってきています。

Japan Open 2022 R7 Pairings
Japan Open 2022 R7 Youtube 実況解説

最終戦でTuさんを引く流れは、今年の全日本選手権と同じです。その際とは色も違って白を引けましたので、最終戦頑張ってきます!

2022/11/04

Japan Open 2022 Day2 Tournament Report

この日は対局の様子もカメラに映され、より臨場感のある実況解説がお届けされたと思います。

ジャパンオープン2日目です。去年はこの日にドローがあって1歩後退しましたが、今年はなんとか連勝を4まで伸ばし、トップグループに残っています。私以外では、弘平くんと長瀧くんも4つまで連勝を伸ばし、三つ巴の様相を呈しています。今夜のブログでは、4R の大塚さんとの試合をご紹介します。

Kojima, S (IM, JPN, 2330) - Otsuka, S (JPN, 2118)
Japan Open 2022 (4)

1. e4 d6 2. d4 Nf6 3. Nc3 e5 4. Nf3 Nbd7 5. Bc4 Be7 6. a4 O-O 7. O-O c6 8. Re1 exd4 9. Nxd4 Ne5 10. Ba2 Re8 11. h3

全日本選手権での大塚さんとの試合では少し自信がなく、Phildor のメインラインを外しておかしな形勢にしてしまいましたが、今回はある程度調べ直して勝負に臨みました。試合途中でこの形は、全日本選手権の東野さんと試合や、オリンピアードのUAE戦の白黒を入れ替えたようなものだと気づきます。他のオープニングの知識と繋げられたことで、気持ちの面で余裕を持って局面を見ることができました。

11... Bf8 12. Be3 Ng6 13. Qf3 c5


d5 のマスを弱めるので難しい判断ですが、局後に大塚さんはどう指してよいか分からなかったと教えてくれました。13... Bd7 のような待つ手もありそうですが、白は単純にルークをセンターにまわしてd6 にプレッシャーをかけられれば満足でしょう。13... Ne5 14. Qg3 Ng6 15. Rad1! もe4 取りを無視できる白が良い流れです。

14. Nde2 Nh4 15. Qf4! Ng6 16. Qg3! Rxe4?

このエクスチェンジサクリファイスはやりすぎで、白は駒得を十分な勝ちのチャンスに繋げられるでしょう。13... Nxe4?! 14. Nxe4 Rxe4 15. Bxf7+! は典型的な切り返しで、次にQg3-Qf3+ があるため、黒はこのビショップを取ることができません。16... Be6 17. Bg5! がおそらく黒のベストですが、白はd5 の弱いマスを上手く活用して優位に立てると思います。

17. Nxe4 Nxe4 18. Qf3 d5 19. Rad1 Be6 20. Nf4!


黒はd5 のポーンでセンターを抑え続けられれば、エクスチェンジの代償を伴ってプレーできそうですが、ここではc2-c4 のアイディアもあるため、d5 は単に負担になってしまいそうです。

20... Ng5 21. Qh5 d4 22. Nxg6 hxg6 23. Bxg5 gxh5 24. Bxd8 Bxa2 25. Be7 Be6 26. Bxf8 Kxf8 27. Re5!

この5段目のルークがフォークになっていることを読み、22手目以降ピース交換を進めることを決断しました。h5 のポーンを取ったルークの次なる行き場を少し迷いましたが、本譜のように指して問題無かったようです。

27... b6 28. Rxh5 Ke7 29. f4 f6 30. Kf2 Bd7 31. b3 Bc6 32. a5!


試合後、31... a5 と白からのa4-a5 を止めていたら、白はどう勝つのかと大塚さんに尋ねられました。私は試合中はそこまで自信があったわけではないですが、32. Re1+ Kd6 (32... Kf7 33. Rd5! だとb6 を弱めた黒は厳しいでしょう) 33. Rh7 Rg8 34. g4 と進めて、白は勝てるのではないかと思います。黒には反撃らしい反撃がありません。

32... Kf7 33. b4!

白からa4-a5 を押し込んだのは黒のaポーンを止めておく意味もありましたが、このブレイクがもう1つの狙いでした。c5-d4 の連携が崩れ、5段目のルークがクイーンサイドに影響し始めれば、白は勝ちが具体的に見えてきます。

33... Be4 34. bxc5 Rd8 35. cxb6 axb6 36. axb6 f5


36... Bxc2 37. Rd2 d3 38. Rc5+- 黒はc2 を取ってもパスポーンを進めるすべがなく、反撃はここまでです。

37. Rd2 Ke6 38. c3 d3 39. Ke3 Rb8 40. Rg5 Rxb6 41. Rg6+ 1-0

最後にルークが落ちたのは、見落としではなくリザインの代わりだと思います。今年4回目の白での対戦で、ここ2回はポイントを落としている大塚さんにきっちり勝ち、全勝一番乗りを決めました。

Japan Open 2022 R5 Pairings
Japan Open 2022 R5 Youtube 実況解説

全勝者が消える明日、トップで最終日を迎えられるよう頑張ってきます! 皆さん、3日目もよろしくお願いいたします。

2022/11/03

Japan Open 2022 Day1 Tournament Report

今日から4日間、蒲田でジャパンオープンが開催されています。54名の定員は募集からすぐ埋まり、申し込み損ねたという声も事前に聞こえていました。去年はTuさんとの熱戦を制してこの大会で優勝し、チェンナイオリンピアードの代表をいち早く決めた私としては、今年も連覇を目指してしっかりプレーしてきたいと思います。初戦の後はとんかつ激戦区の蒲田でNo.1 の呼び声も高い、檍(あおき)でロースかつを食べてから午後の2戦目に向かいました。

Kojima, S (IM, JPN, 2330) - Sakai, E (JPN, 1895)
Japan Open 2022 (2)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 g6 4. O-O Bg7 5. Re1!?

オリンピアードではSo Wesley の勧めである5. c3 のラインを指しましたが、もともと調べていたのはこちらの手でした。2017年にMamedov がDubov を相手に指し、注目されたラインです。

5... Nf6 6. e5 Nd5 7. Nc3 Nc7 8. Bxc6 dxc6 9. Ne4 Ne6


9... b6 10. Nf6+ Kf8 11. Ne4Mamedov のゲームで登場した分岐です。本譜でも、Ne4-Nf6 の跳びこみはポイントになります。

10. d3 h6 11. a4 a5 12. Be3 b6 13. Qd2 Nd4 14. Nxd4 cxd4 15. Bf4 g5?!

この手はキングサイドを弱める割りにメリットがないので、あまり考えていませんでした。Ne4-Nf6 の跳びこみを警戒し、15... Be6 と指しておく手はあったと思います。

16. Bg3 c5 17. f4!


17. Nf6+ Kf8 18. Nh5 Bg4 19. Nxg7 Kxg7 はさほど白が良いとは思えず、ナイトの跳びこみの前にキングサイドを崩してチャンスを拡大しておきます。

17... g4 18. Bh4!


fファイルが開かなかった代わりにe5 のポーンの守りが安定したため、ビショップのダイアゴナルを切り替え、e7 とf6 に利きを作ると同時にNe4-Nd6 を狙いにしておきます。

18... Qd5 19. Nf6+! Bxf6 20. exf6 e6 21. Re5 Qc6 22. f5 Kf8

待望のNe4-Nf6 からセンターを開きます。22... Bd7 23. fxe6 Bxe6 24. Rxe6+! fxe6 25. f7+ Kf8 26. Qf4+- はエクスチェンジの代償が十分にあり、白勝勢だと考えていました。

23. b3!? exf5 24. Re7!


1ポーンを捨てますが、黒はキングとh8 ルークの位置に不満があり、白マスビショップも同じ色のポーンにブロックされていて働きが悪いです。Bc8-Be6 の前にルークを7段目に侵入させ、さらに黒陣にプレッシャーをかけます。

24... Be6 25. Qf4! Re8 26. Re1!?

Qd2-Qf4 を指した時点では、ルークをeファイルでぶつけられた際の対応は3択で完全には決めていませんでした。26. Rc7!? として7段目のルークを残す選択はもちろんありです。すぐ駒得になるのは、26. Rxe8+ Qxe8 27. Qd6+ Kg8 28. Qxb6 Kh7 29. Qxa5 の変化ですが、2ポーンを捨ててもa8 の白マスをBe6-Bd5 で抑えれば、黒には反撃のチャンスがあると考えました。本譜はe7 でルークを交換しても、パスポーンが7段目に刺されば満足という判断です。

26... Bd7


26... Rxe7 27. fxe7+ Kg7 28. Bf6+! (恥ずかしながら、この手はゲーム中に見落としていました。) 28... Kxf6 29. Qe5+ Kxe7 30. Qxh8+-

27. Rxe8+ Bxe8 28. Qb8 b5 29. Bg3 1-0

Bg3-Bd6 から黒キングを引き離せば、ピンにしたe8 のビショップを落として勝負ありです。

上位勢に大きな崩れはなく、10名が連勝で2日目を迎えます。私は同級生の汐口くんとの試合ですが、さらに同級生の南條くんが解説に明日は入ると聞いています。また面白いゲームをお届けできるよう、2日目も頑張ってきます。

Japan Open 2022 R3 Pairings
Japan Open 2022 R3 Youtube 実況解説
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