今年も4日間に渡るジャパンオープンが無事に閉幕しました。最後まで結末が読めない大会でしたが、私はTuさんとハラハラする試合をドローで乗り切り、弘平くん、大塚さんと並んで6/7 で全試合を終了しました。タイブレークは僅差で2人を上回り、なんとか今年もジャパンオープン優勝の栄冠を手にすることができました。入賞者の皆さん、おめでとうございます!
1st Place Kojima Shinya 6/7
2nd Place Yamada Kohei 6/7
3rd Place Otsuka Shou 6/7
4th Place Tran Thanh Tu 5/5/7
5th Place Higashino Tetsuo 5.5/7
Japan Open 2022 Final Standings
2nd Place Yamada Kohei 6/7
3rd Place Otsuka Shou 6/7
4th Place Tran Thanh Tu 5/5/7
5th Place Higashino Tetsuo 5.5/7
Japan Open 2022 Final Standings
今夜は当然、最終戦のTuさんとの試合をお届けまします。トップで迎えた最終戦でのTuさんとのマッチングは、今年の全日本の嫌な記憶がよみがえりますが、今回は序盤から上手く指せたと思っています。
Kojima, S (IM, JPN, 2330) - Tran, T T (CM, JPN, 2408)
Japan Open 2022 (7)
1. e4 c5 2. Nc3 Nc6 3. Bb5
Sicilian Rossolimo、Moskow と並び、用意していた3つ目のAnti-Sicilian です。思えば今大会はこの3種類を全て使っています。Japan Open 2022 (7)
3... e6 4. Bxc6 bxc6 5. d3 d6 6. f4
通常のRossolimo と違う点は、白がNg1-Nf3 を遅らせているため、f2-f4 が早くできることです。キングサイドでのアクションを見据えつつ、黒のクイーンサイドのポーンストラクチャーの悪さにも目を光らせておきます。
6... g6 7. Nf3 Bg7 8. O-O Ne7 9. Kh1 O-O 10. Qe1 Rb8 11. b3!?
c3 ナイトを一時的に浮かせて危なく見えますが、黒はそれに漬け込むチャンスはないので問題ありません。白のb2-b3 のアイディアはb2 ポーンを受けておくこと以外に、Bc1-Bb2 からのビショップ交換、またはBc1-Ba3 からc5 をアタック(黒がd6-d5 としてきた場合)、そしてNc3-Na4 を支えておく等、豊富にあります。11... f5 12. e5 Nd5 13. Bd2 Nb4
単純にピースを交換すれば、黒はダブルビショップが満足に働けないうえにポーンストラクチャーが悪いので、ピース交換を避けて勝負します。一方で白もc5 を狙るチャンスができそうなので、残ったピースをこのポーンへの攻撃に集中させます。
14. Rc1 d5 15. a3 Na6 16. Na4 Re8 17. Be3 Bf8 18. Ra1 Rb7 19. Qf2 d4!? 20. Bd2 c4
こうした手が跳んでくるので、Tuさんとの試合はいつも勉強になります。じっと待っているだけでは分が悪い黒は、1つポーンを捨ててでもa8-h1 のダイアゴナルを開き、白マスビショップの活用をはかります。21. dxc4 c5 22. Nb2 h6 23. Nd3 Rg7 24. b4!
ナイトをd3 に組み直した後は、黒のキングサイドアタックが来る前にクイーンサイドから仕掛けます。c5 を崩せば、d4 まで押し込んだポーンも弱点になり、白はさらに駒得を重ねることができそうです。しかし、問題はこれから開くgファイルと、白マスビショップを使ったg2 への攻撃がどれくらい早いかです。
24... Bb7 25. bxc5 Nxc5 26. Nxc5 Bxc5 27. Bb4 Bb6 28. c5 Bc7 29. Nxd4 Be4 30. Rad1 Qb8
c5 を捌いて2ポーンアップになりましたが、黒もg2 への反撃を着々と進めています。ここで30... Qa8 を予想していたのですが、Tuさんはe5 を確実に崩し、白のNd4-Nb5 を止める本譜を選びました。かなり時間を使って30手目を読んでいただけに少し予想が外れてショックでしたが、落ち着いて作戦を修正できたと思います。31. Qe2 g5 32. fxg5 Rxg5 33. Rf2 Qa8 34. Nb5
Qf2-Qe2 とクイーンの位置をずらしておくことで、f2 のマスをルークのために空けると同時に、Nd4-Nb5 の準備を整えました。Nd4-Nb5-Nd6 は24手目付近から描いていた構想ですが、ようやく現実味を帯びてきました。
34... Bxe5 35. Nd6 Rd8 36. Rd2 Bxd6 37. cxd6+-
これでポーンアップのままピースを捌き、大きなチャンスを生むパスポーンと黒マスの弱い黒陣を残し、勝勢になったと感じました。しかし、異色ビショップゆえの相手の反撃チャンスは十分に受けているとはいえ、まだまだ油断はできません。37... a5 38. Bc3 Qc6? 39. Be5
虎の子のパスポーンは当然守るべきと信じて疑わず、試合後にライブを見返して、39. Bf6! の存在に愕然としました。ビショップをc3 に退く以前は、d6-d7 と押し込んだ後でBb4-Be7 を考えていたのに、ダイアゴナルがずれたとたんにルークのフォークが見えなくなるのはまだまだ未熟な証拠です。
39... Rd7 40. h3 Kh7 41. Kh2 Rg6 42. Qe3 Qa4 43. Bb2 Rg8 44. Rf4!?
時間は互いに切迫ですが、キングを逃がせるスペースを少し作り、気持ち的には余裕が生まれてきました。g2 の守りを減らすのは少し不安ではありますが、h6 への攻撃や、いざというときの4段目でのエクスチェンジサクリファイスを準備しておきます。44... Qb5 45. Rh4 Rg6 46. Qd4 Qb8 47. c4??
ポーンをc5 まで進めてd6 を安定させれば、より勝利は確実なものだろうと信じていました。しかし、これがとんでもないブランダーで、黒に勝ちのタクティクスが生まれます。正しくは47. Rxe4! fxe4 48. c4+- と先にエクスチェンジを捨ててしまうことで、e4 の攻守に利くビショップを消し、c6 のマスのコントロールを奪ってからゆっくりポーンを進めて勝ちでした。
47... Rdg7?
47... Rxd6! 48. Qxd6 Rxg2+! 49. Rxg2 Qxd6+-+ こんな手筋でクイーンを取られてしまうとは完全に見えていませんでした。Tuさんもこれを見落として再び白が息を吹き返しますが、次はあまりにひどいミスでした。48. Qxg7+?
ここも先ほどと同様に、48. Rxe4! fxe4 49. Qxe4+- としてエクスチェンジを捨ててしまえば白の勝ちです。e4 の強力なビショップを消してしまうことは、Rf2-Rf4 の1つのアイディアであったはずなのに、なぜかこのタイミングでは頭からすっぱり抜け落ちていました。
48... Rxg7 49. Bxg7 Kxg7 50. Rxe4
私の勘違いはd6 ポーンがピンになっており、すぐに進めることができなかった点です。仕方がないのでもうエクスチェンジも捨て、2つのパスポーンに望みを託します。50... fxe4 51. c5 Kf6?
ライブを見返していましたが、Tuさんはこの時点で残り2分まで時間が回復しており、そこまで焦らなくても良かったと思います。しかし、4日間の長丁場の最終戦の最終盤、しかもこのようなシーソーゲームになり、私たち2人はどちらも冷静でなかったのでしょう。51... e3 52. Re2 Qb5 がぴったりルークの攻撃しつつ、c6,d7 のマスをカバーする好手でした。52. Rc2 も考えられますが、白はピンのためにすぐにはどちらのポーンも進められないため、52... Kf7 とトコトコキングがパスポーンを止めに向かい、間に合ってしまいます。
52. c6 e3 53. c7
黒は2つの迫りくるパスポーンを止めることはできず、お互いにクイーンを作りあうことになります。こうなれば、先手の白はドローには十分です。53... Qxc7 54. dxc7 exd2 55. c8=Q d1=Q 56. Qf8+ Kg6 57. Qg8+ Kf6 58. Qf8+ 1/2-1/2
互いのミスにより最後は視聴者の心臓に悪そうなシーソーゲームでしたが、最後は前日同様クイーンのパペチュアルチェックでドローに終わりました。少し前に2B もドローに終わっており、タイブレークはおそらく勝っているだろうと予想していませした。そちらの予想は外れることがなく、ほっと胸をなでおろしました。
今年の東京でのビッグトーナメントは全て終了しました。今年も多くのプレーヤーと交流ができ、満足な1年間でした。今大会だけでなく、多くの大会を運営してくださっているNCS スタッフの皆さんにも、あらためてお礼申し上げます。来週末は続けて名古屋の大会に参加する予定ですので、そちらでも良い戦績を残せるよう頑張ってきます。また次のトーナメントでも、よろしくお願いいたします。
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