二夜連続のゲーム解説記事の更新です。ここ二回は連続でFrench, Sicilain と白番でのゲームをご紹介してきたため、今夜は黒番でついさきほど指した試合を振り返ろうと思います。
xyz1981 (2610) - imsk (2531)
Lichess Blitz
1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 e6 5. Bg5 Nbd7
Semi-Slav をメインの戻してから、
5. Bg5 に何を指すかは悩み続けています。一昨年はCambridge Springs をメインに据えていましたが、去年からはシャープな
5... dxc4 のBotvinnik Variation なども少し試しています。
6. e3 h6!?
Cambridge Springs は黒マスビショップの位置を決めずに
Nb8-Nd7 で待っておき、
6... Qa5 とすれば基本形が完成します。
6... h6 の変化は昨年の名古屋の大会で、
7. Bh4 g5!? 8. Bg3 Nh5 としてナイトビショップ交換を仕掛け、局面の均衡を崩す難しい変化を試してみました。この試合ではもう少し手堅く、分かりやすい変化を求めて初めての手を指してみます。
7. Bh4 Be7 8. Qc2 O-O 9. cxd5!?
大人しくキャスリングした黒に対して、白がExchange Variation にしてきたのは少し意外でした。d5 でポーンを交換せずに
Qd1-Qc2 と上がる変化は、偉大なるポーランドのプレーヤーの名前を取り、Rubinstein Variation と呼ばれ、
9. Rd1 と指して黒の
dxc4 を待つのが一般的なアイディアです。一方で本譜のように白がExchange Variation にしてきたのは、黒が
h7-h6 を指したのを見ての判断でしょう。私がチェスを始めた頃は、Exchange Variation において
h7-h6 のポーン突きはg6 のマスを弱めるために良くないという意見が強かったですが、近年の試合では一概にそうとは言えないと評価が変わっています。
9... exd5 10. O-O-O?!
クイーンサイドキャスリングが効果を発揮しやすいのは、早めに
h2-h3 を入れてビショップをf4 に退き、白から
g2-g4 と仕掛けられる時です。本譜ではシンプルにピースを捌き、黒のアタックチャンスを限定します。
10... Ne4 11. Bg3 Ndf6 12. Bd3 Bf5!
一時的でもe4 にナイトが残せると、最も厄介な白マスビショップまで捌くことができます。これで黒の序盤の問題はほぼ解決できたので、あとはクイーンサイドをいかに攻撃するかを考えます。
13. Kb1 Nxc3+ 14. Qxc3 Bxd3+ 15. Qxd3 Ne4 16. Nd2 Nxd2+ 17. Rxd2 Bd6 18. a3 Re8 19. Ka2 a5!
QGD Exchange では
b2-b4 からのマイノリティアタックへの備えとして
a7-a5 とすることが多いですが、ここでは白が
a2-a3 とポーンを伸ばしたのを見て、a4 までポーンを刺し、ルークをaファイルから出陣させるアイディアです。
20. Qf5 a4 21. Rc2 Ra5 22. Bxd6 Qxd6 23. g4 Rb5 24. g5 g6 25. Qf3 h5
こうしてキングサイドを固めてしまえば、白からの有効なアタックは封じることができます。クイーンサイドの突破は簡単ではないものの、これで自分の攻撃に集中でき、だいぶ楽になったと感じました。
26. h4 Re4 27. Qh3 Qe6 28. Qg3 Qc8 29. Rc3 Qd8 30. f3 Re6 31. Rd1 Qb6 32. Rd2?
b2 を守る自然な1手に見えますが、
f2-f3 と突いてe3 のポーンを弱めてしまったことが痛手となります。
32... Qf2 がb2 とe3 をカバーする唯一の手でした。
32... Rb3!
e3 とb3 を守る最重要ピースを消してしまえば、黒は駒得と白キングへのアタックを容易に実現します。
33. Rdc2 Rxe3 34. Rxe3 Rxe3 35. Kb1 Qb3!
d4 のポーンを落とすことよりも、a2 のマスを抑えて白キングを逃がさないようにし、f3 とb2 へのプレッシャーを残すようにします。
36. Qb8+ Kg7 37. Qf4 Re1+ 38. Rc1 Re2 0-1
白はb2 を守ることができず、
39. Qf6+ Kg8 40. Qd8+ Kh7 でチェックも続きません。派手さはありませんが、丁寧に指せた好ゲームだと思います。