男子個人戦で優勝し、インタビューを受ける中国のGM Wei Yi
この1週間は過ぎるのがあっという間で驚きました。杭州アジア大会にのチェス種目、男子個人戦は9/27に最終日を迎え、翌日9/28に私たちは帰国しました。8,9Rが行われた4日目は、8Rで韓国のFM Kwonに負け、9Rで不戦勝という結果でした。前日まで偶数参加者で、不戦勝になるプレーヤーはいませんでした。しかし、3日目にイランのMaghsoodlooが連敗してドロップ、最終日だけ奇数人数になったことで1人余るようになったのです。8R負けでも不戦を食らう位置にはいなかったはずですが、下位にいた香港の2人に当たれるプレーヤーがすでにいないことが理由で、私が不戦を引くことになりました。少し納得できないペアリングでしたが、8R負けた自分が悪いとも考えられます。13年ぶりのアジア競技大会は消化不良のまま終わりました。
Kwon, S (FM, KOR, 2192) - Kojima, S (IM, JPN, 2318)
Hangzhou Asian Games Men's Individual (9)
1. d4 d5 2. Nf3 Nf6 3. g3 Bf5 4. Bg2 c6 5. c4 h6 6. Nc3 e6 7. Qb3 Qb6 8. c5 Qxb3 9. axb3 Be7
Slav Defenceに対しても白がキングサイドフィアンケットを組むセットアップは昔からあり、今回はこうしたピースの組み方を黒で準備してきました。白のb3-b4-b5にはb8のナイトを展開せずに待機しておき、b5を取ってからNb8-Nc6とするのがポイントです。
10. O-O O-O 11. b4 a6 12. h3 Nbd7 13. g4 Bh7 14. Bf4 Rfe8
ここはどう指すか少し悩みました。ルークをe8に置くメインのアイディアは、Be7-Bf8もしくはBe7-Bd8と退き、e6-e5とブレイクすることですが、こと後少し気が変わって違うアイディアを試しました。
15. Nd2 Rac8 16. Bg3
最初に意図した通り、
15... Bf8も選べましたが、Nd2-Nb3-Na5を警戒しました。そこでc7でビショップをぶつけてb8のマスを奪い返せるよう、ルークをc8に置くセットアップを選びます。
16... Bd8 17. f4 Bc7 18. Kh2 Re7 19. Rae1 Rd8 20. Kh1 Nf8 21. Bf3 g5!
白はf2-f4からe5を抑え、黒のe6-e5ブレイクに備えてきましたが、黒もf4ポーンをターゲットにするプレーのチャンスが生まれます。
22. e3 Ree8 23. Bg2 Ng6 24. Bh2 gxf4!
直前のルークの動きにあまり自信がなく、c7のビショップを浮かせたことは少し失敗だったかと思いました。しかし、黒はこれでも十分で、自身のhポーンを孤立にしてもh4のマスを使ってチャンスを作ります。
25. exf4 Nh4 26. Bg3 Nxg2 27. Kxg2 Kg7
白マスビショップをいただき、ダブルビショップになった時点でe4を使うアイディアを考えました。チャンスが来るまでは浮いたhポーンのカバーや、キング、ルークの位置を改善しながらその時を待ちます。
28. Bh4 Rd7 29. Rf2 h5 30. Kf3 hxg4+ 31. hxg4 Bd8 32. Bg3 Ne4?!
e4の利きは足りていないように見えますが、dファイルが開けばd4への反撃が生まれ問題無いというのが私の判断でした。しかし1つ見落としがあり、ここではビショップがe4に跳びこむべきでした。
32... Be4+! 33. Ncxe4 dxe4+ 34. Nxe4 Rxd4 (ナイトがg4を当て続けているため、Kf3-Ke3とできないのが本譜との違いです)
35. Nxf6 Bxf6 36. g5 Be7と進めば、黒は白マスビショップを返してもセンターに出てきたルークの力で満足に戦えます。
33. Ndxe4 dxe4+ 34. Ke3
すぐにe4を取らず、d4を守られる手を見ていませんでした。この後e4を取られても、黒は十分に戦えるのですが、時間切迫もあって落ち着いて指せなかったことは反省です。
34... Bf6
ここも白マスビショップを邪魔するとしても、単に
34... f5としてe4を守っても良かったでしょう。
35. Rd2 Red8 36. Red1 Be7 37. Nxe4 f5?!
37... Bxe4! 38. Kxe4 Rd5= 白マスビショップを返すアイディアは終始頭になく、相手の持っていない白マスビショップを使ってなんとかポーンの代償を作ることにこだわりすぎました。冷静に考えれば白マスビショップを捌き、黒マスビショップだけを残せば、白マスに残った全てのポーンを置いている黒は安全で、白はd4の守りに縛られて1ポーンアップを活かすことができません。この後、ナイトと白マスビショップ交換のチャンスが再度訪れますが、それも見逃してしまいました。
38. Nf2 fxg4 39. Nxg4 Bf5 40. Ne5 Rd5 41. Nc4?!
41. Rg1! Kf8 42. Rh1! Bf6 43. Bh4+- 一度g1にルークを振り、黒キングをfにずらしてからhファイルに切り替えるのが巧みなアイディアです。
41... Rh8 42. Rh2 Rxh2 43. Bxh2 Rd8 44. Bg3 Rh8 45. Na5 Rb8?
h8に振り、反撃を見せたルークをb7のディフェンスに戻すのは消極的であると分かっていましたが、b7を捨てて大丈夫だとは思えませんでした。
45... Rh3! 46. Kf2 Kg6! 47. Nxb7 Kh5 48. Nd6 Kg4 49. Nxf5 exf5= 2ポーン目を取らせても、g3のビショップの働きが悪い白は駒得を活かすプランを作れません。
46. Rh1 Bd8 47. Nc4 Be7 48. Rh2 Rd8 49. Na5 Rd7 50. Bh4 Bf8 51. Bg5 Kg6 52. Nc4 Bg7 53. Rd2 Bb1?!
53... Bh8!はd4への攻撃を保ちつつ、7段目を開けてRd7-Rh7を狙う機敏な1手です。
54. Nb6 Rf7 55. Rg2 Kh7 56. Nc8 Ba2 57. Nd6 Rd7 58. Rd2 Bd5 59. Ne4 Kg6?
ここが最後にナイトビショップを交換するチャンスでした。
59... Bxe4! 60. Kxe4 Kg6=
60. Nc3 Bc4? 61. Rd1 Kf5 62. Ne4 Bd5 63. Nd6++-
e4での交換を避け、急所のd6に潜り込めれば白のナイトを強さは明らかです。e4を死守するためにビショップはd5に残し、
60... Kf5とするのが正しい判断でした。
63... Kg6 64. Rg1 Kh7 65. Ne8 Bc4 66. Bf6 Bf8 67. Be5 Rf7 68. Nf6+ Kh6 69. f5 Rxf6 70. Bxf6 exf5 71. Kf4 Bd3 72. Rg8 1-0
最後は時計を叩いているだけというような状態でした。ポーンを失い、時間切迫でも負けないためのプランを落ち着いて考えられるようになりたいですね。
9/20 Arrival (Narita-Shanghai)
9/21
9/22
9/23 20:00 Opening Ceremony
9/24 15:00 Individual Rapid R1 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Sindarov, J (GM, UZB, 2607) 0-1
9/24 17:00 Individual Rapid R2 Kwong, W K (HKG, 1850) - Kojima, S (IM, JPN, 2318) 0-1
9/25 15:00 Individual Rapid R3 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Jumabayev, R (GM, KAZ, 2517) 0-1
9/25 17:00 Individual Rapid R4 Ahn, H (IM, KOR, 2125) - Kojima, S (IM, JPN, 2318) 1-0
9/26 15:00 Individual Rapid R5 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Kao, J E (HKG, 1651) 1-0
9/26 17:00 Individual Rapid R6 Setyaki, A (IM, INA, 2334)- Kojima, S (IM, JPN, 2318) 1/2-1/2
9/26 19:00 Individual Rapid R7 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Yamada, K (FM, JPN, 2157) 0-1
9/27 15:00 Individual Rapid R8 Kwon, S (FM, KOR, 2192) - Kojima, S (IM, JPN, 2318) 1-0
9/27 17:00 Individual Rapid R9 Bye
9/27 20:30 Prize Ceremony
9/28 Departure (Hangzhou-Narita )
応援してくださった皆さんに申し訳ないような戦績でしたが、また気を取り直して国内外の大会で頑張っていきたいと思います。まずは明日から始まる名古屋オープンです。久々にリスト1で参加する国内大会となりますので、優勝できるように精一杯プレーしてきます。
帰りに杭州空港で選手たちを見送るマスコットのリャンリャンたち。杭州アジア大会もそろそろ閉幕です。