名古屋オープンのゲームは、大会の結果報告とともに紹介した初日2日目の2ゲーム、そして後日、序盤にスポットを当てた2ゲームの計4つをご紹介してきました。最後はエンドゲームにスポットを当てて、1ゲームをご紹介しようと思います。2Rで対戦した牧野さんは将棋のプロ棋士で、2年ほど前からチェスもかなり本格的にプレーしている印象があります。私とは今回が初対戦でした。
Kojima, S - Makino, M
Nagoya Open 2023 (2)
Position after 50... h5
Nagoya Open 2023 (2)
Position after 50... h5
中盤で少し間違いがあり、ドロー模様のエンドゲームになりました。少し前から勝つのは難しいだろう判断していましたが、ここで黒がh7-h5と指してきたことを見て、よもやと思います。このポーンをぶつける手自体は大きなミスではないですが、キングサイドのポーンを捌ききってしまえば黒のビショップは白ポーンを狙えないのに対し、白のナイトだけが黒ポーンを狙うことができます。
45. h4 gxh4+ 46. Kxh4 hxg4 47. Kxg4 Bd3 48. Kf4 Be4
ここもまだ決定的な問題が起きているわけではないのですが、牧野さんが白キングの侵入に対して警戒が薄いことが伝わってきました。48... Ke6!=としてe5のマスを先に抑え、白キングにこれ以上の侵入を許さなければドローは確実です。
49. Ke5! Bf3 50. Kf6! Be4 51. Nb6+ Kc7 52. Ke7! Bg2?
これは白に決定的なピースの位置改善のチャンスを与えてしまう悪手です。白キングにe7まで入られても、ナイトの協力からさらに黒キングを押し込まれなければ黒はドローに持ち込めます。白にナイトを使わせないためにはd7のマスを抑えることが必須です。52... Bf5! 53. Na4 Be4 54. Nc3 Bf3! (e2,d1のマスを抑えます) 55. Nb1 Be4 56. Nd2 Bg2!= (f3,f1のマスを抑えます) これで白はナイトの位置改善がこれ以上できずに勝つことができません。
53. Nd7!+-
ここでナイトをプレーに戻せれば白勝勢です。とは言え、知識はありながらも初体験のエンドゲームですので、慎重に指していきます。かつて日本の国内大会では、こうしたグッドナイトvs. バッドビショップのエンドゲームを、篠田くんが現アイルランド女子代表のTrisha Kanyamarala 相手に指しているのを見たことがあります。南條くんもこうしたエンドゲームが得意な印象がありますね。53... Bh3 54. Nf8 Bf1
54... Bg4 55. Ne6++- ここまでキングが侵入すればポーンエンディングにしても白勝ちですので、ナイトビショップ交換を受け入れても問題ありません。
55. Ne6+ Kc8 56. Kd6 Bb5 57. Ng5 Ba4 58. Nf7 Bb5 59. Ne5 Kb7 60. Kd7
48... Ke6!と止めておけば白キングはf4止まりでしたが、とうとうd7まで侵入してc6を攻撃できるようになりました。後はナイトでもc6を攻撃し、このポーンを落とします。60... Ba4 61. Nf7 Ka6 62. Nd8 Kb5 63. Nxc6 Kc4 64. Kd6 Bb5
64... Bxc6 65. Kxc6 Kxd4 66. Kb6 Ke3 67. c6 d4 68. c7 d3 69. c8=Q d2 70. Qg4+- ポーンレースは黒ポーンがdファイルであることは関係なく、プロモーションのマスを抑えてしまえば白勝ちです。
65. Na7!
ナイトの守りがd4から外れても、ビショップを攻撃できていれば問題ありません。これでテンポを稼ぎ、Kd6-Ke5でd4を守ってしまいます。65... Ba6 66. Ke5 Bb7 67. c6 Ba6 68. c7 Bb7 69. c8=Q+ Bxc8 70. Nxc8 Kb5 71. Kxd5 1-0
相手に助けられたところもありましたが、こうしたエンドゲームの経験が積めたのは良かったです。年内の試合の予定も残り少ないですが、まだまだ指したことのないポジションを試してみたいですね。
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